地獄堂霊界通信

登録日:2012/05/23(水) 22:26:53
更新日:2022/12/20 Tue 21:20:47
所要時間:約 11 分で読めます




地獄堂霊界通信とはポプラ社から刊行された児童向けホラー小説シリーズ。著者は香月日輪。イラストは「ハニ太郎です。」の作者前嶋昭人。
1994年から1997年まで刊行された第1シリーズ、2001年から2005年まで刊行された第2シリーズが存在し、
現在は講談社ノベルズ・講談社文庫から完全版が刊行されており、そちらで手軽に手に入れることができる。
第3シリーズも執筆予定だったそうだが、著者の逝去により未完となってしまった。

  • 第1シリーズ/全10巻
1.ワルガキ、幽霊にびびる!
2.ワルガキ、生き霊を追って走る!
3.ユーレイ屋敷の家なき子
4.ワルガキ、初恋をする!?
5.ワルガキと、うわさの幽霊通り
6.ワルガキと魔女の転校生
7.ワルガキと満月の人魚
8.ワルガキと地獄のドライブ
9.ワルガキとひとりぼっちの超能力者(エスパー)
10.ワルガキvs.死神 さいごの戦い

  • 第2シリーズ/全6巻
1.魔弾の射手
2.ワルガキ in 恐怖の花園
3.ワルガキ、最悪の危機(クライシス)
4.闇からの挑戦状
5.幸福という名の怪物
6.そこにいる ずっといる……

  • 完全版/全8巻
第1シリーズと第2シリーズを合わせた全16巻を再編集し、原作2巻分を一冊にまとめた完全版。
本編中にイラストは一切無しで原稿の漢字が子供向けから大人向けになっており、ショートエピソードが追加されている。
また一部のエピソードのサブタイトルが変更されている。


児童書でありながら時折想像もつかないほどガチで怖いエピソードを混ぜるのが特徴(特に初期)で、大人が読んでも十分楽しめる内容である。かつ人間の本質に斬り込んだ話も多く、涙腺崩壊する話も多い。

また悪霊を敵とした勧善懲悪のエピソードのみならず、普通の人間の内側に潜む狂気をテーマにした話も取り揃えており、明らかに児童が置いてけぼりになってしまうことも多い。

現在、good!アフタヌーンでみもりが作画を担当した漫画版が連載中。

みもりは完全版の挿絵も担当しているが、キャラの作画はポプラ社版に比べると可愛い仕上がり。
少年誌ではなく青年誌で連載されていることからも、その内容についてはお察しください

なおOVAと実写映画もあるが、後者は原作者自ら「失敗でした」と評した問題作。


【あらすじ】

てつし、リョーチン、椎名の悪ガキ三人組は上院町で知らない者はいない「イタズラ大王三人悪」として恐れられていた。
彼らの住む上院町の町はずれにある薬屋「極楽堂」はその不気味な雰囲気から「地獄堂」と呼ばれていた。

その地獄堂に彼らはひょんなことから出入りするようになり店主のおやじから邪悪な存在と戦う力を与えられる。
三人悪は今日も持ち前の力と真心、それに仏の力を駆使して悪霊たちと戦いの日々を続ける…。


【登場人物】

≪三人悪(さんにんあく)≫

○金森てつし

真言:なうまくさまんだばざらだんかん

通称・てっちゃん。5月5日生まれのO型。
三人悪のリーダー格にして、上院小を率いる番長「上院のてつ」。
根っからの悪ガキだが情には熱い熱血漢であり、その持ち前の明るさ、真摯さゆえに人望は高い。
不動明王尊の力を持ち、攻撃力の高い術を駆使する。それだけに攻撃術については文句なしの天才で、札も真言もなく気迫だけで雷を呼んだことすらある。
集中力は散漫で、式神の扱いについてはてんでダメ(1回だけ成功したことはある)。椎名に言わせれば「土壇場で力を発揮するタイプ」。
ちなみに祖父・竜太郎とは三人揃って波長が合うらしく、彼が寝たきりならぬ「動いたっきり」と呼ばれる超アクティブなじーさまであることも合わせ、全員揃うと「四人悪」と化して手が付けられなくなる。


○新島良次

真言:おんかかかびさんまいえいそわか

通称・リョーチン。7月4日生まれのA型。
動物や花が好きで怖がり屋の心優しい少年だが、俊足の持ち主でその脚力はてつしをも凌駕する。
結構可愛い顔つき。
地蔵菩薩の力を持ち、防御力の高い結界を張ることを得意とする。
ちなみにネーミングセンスが壊滅状態。霊媒としての才能も持ち、本人も意図せず霊に取り付かれることが多い。


○椎名裕介

真言:おんあらはしゃのう

通称・椎名。11月11日生まれのO型。
三人悪の参謀的存在で、冷静沈着な性格だが怒るとてつしですら手が付けられない。そのためそこまで気安くなれないということで苗字で呼ばれている。
無口・無感動・無表情の「三無主義」。
母がかなりのセレブで芸術センスも豊富。
第2シリーズでは「幸福」と対峙した際、てつしとの心中願望を匂わせる意味深な心情を曝け出され、珍しく本気でキレていた。
文殊菩薩の力を持ち、高い霊視能力を有する。経典を用いた戦法も行う。また、経典に書かれている真言をほぼ全て記憶しており、その気になれば諳んじて術を使える。
ちなみに将来の夢はイギリスの田舎暮らしか、新興宗教の教祖。オイちょっと待て。


≪地獄堂関係者≫

○妖怪おやじ
地獄堂の店主。見た目から不気味な老人で、冷酷かつ無慈悲な印象を持つ。
様々な霊具を有し霊に関する知識も豊富で、三人悪を術師として育て上げる。
悪霊に関する事件については上から目線で傍観するのが基本で、冷徹な印象があるが反面、
物事の本質を見極めておりそうしたことを三人悪に教える意外な一面も持つ。

○ガラコ
おやじの飼っている黒猫。人間の笑い声で鳴き変身能力も持つ不気味な猫。
眼が金色で人間に変身したときも同じ。ちなみに人間形態は黒いロングヘアに切れ長の瞳の美人だが、性別不明でかつ喋らない。実はれっきとした妖怪の一つで、「変化(へんげ)」と呼ばれる化生の仲間。

○藤門蒼龍
欧米で有名な術師で、日本屈指の霊能者・藤門龍雲の弟子。この名は龍雲にもらったもので、本名は「荻原空也」。
ロン毛のイケメンだがこう見えても49歳
初期は穏やかな好青年であったが徐々にネタキャラ化した。
神剣「天臨丸」を駆使した除霊を得意とする。

◯ヴェレット
蒼龍と旧知の仲である化け物専門の殺し屋。
スーパーモデルのような容姿の美女だが、蒼龍よりも年上。
自らを生まれながらの銃撃ちと豪語し、次元大介を上回る速度の早撃ちなど銃に関しては超人的な腕を持つ。
意外にもゲーマーでマーカスによると彼との修行以上に熱心にプレイしているらしい。

◯サー・マーカス・ヴァレンタイン卿
ヴェレットの師。身長2メートル以上の体躯のシブいオッサン。
現役を引退し、今は後進の育成を手掛けているが、今でも世界最高の魔弾の射手と言われている。
実際に劇中では、木々が複雑に入り組んだ森の中で100メートルほど離れた位置にいる魔物の急所を的確に撃ち抜くという人間離れした芸当を披露している。
森の僅かな手掛かりから獣や妖精の行動を正確に読み取るなど、狩人としての能力も非常に高い。


≪周囲の人々≫

○金森竜也
てつしの兄で、中学校の番長「上院の竜」。
文武両道眉目秀麗な完璧男だが、極度の低血圧で典型的な夜型人間。
かなりの兄バカで弟が危険な目に遭うことに非常に心配している。

○三田村豪
駅前交番に勤める警官。通称・ミッタン。
実は元ヤンという経歴の持ち主。
三人悪のいいおもちゃ。

○亜月カンナ
三人悪と同じ学校に通う少女。
霊感はそれほど強くないが、正義感が強く純粋な性格。
一度怒らせると三人悪はもちろん、流華ですら頭が上がらない。

○日向
イラズの森に憑く霊獣(イヌガミ)という妖怪。
人間への怒りから人間を襲おうとしていたが、カンナの優しさに触れて改心し、彼女のペットのハクビシンとして生活する。
人間に変身することも可能。
なお、元々は「月代」という連れ合いがいたが環境の問題で衰弱しており、初登場の話で亡くなっている。

○拝征将
カンナの幼なじみの病弱な少年。
術師の家系で霊感も強い。実は霊媒としての能力が途轍もなく高く、邪神から大天使まで何でもござれ。

○鳴神流華
てつしのクラスに転校してきた日西のハーフの帰国子女。
その正体は降霊術を得意とする魔女。魔犬「ゾディアック」を使い魔として連れている。
気品ある気位の高い美少女で、最初はツンツンしていたが徐々に丸くなっていった。
蒼龍に惚れている。
ちなみにミドルネームがあり、フルネームは「鳴神・アタリ・流華」。

○牧原宗士
ミッタンの友人の神社神官。通称・マッキー。
かつては彼と肩を並べるツッパリだった。
骨董品集めが趣味で、その骨董品が事件の原因になることもしばしば。

○如月麻子
上院小の保険医。
能天気で親しみやすい性格。手が早く一言多いのが残念な美人。

○ゴールデン・アイズ
伝説の大魔術師。この名は通り名だが、本人は蒼龍そっくりの黒髪黒目。
仕草や物腰がおやじそっくりであり、てつしはおやじがこの世界に来たゴールデン・アイズの仮の姿、あるいは成れの果てではないかと疑っている。


≪敵≫

○死神ギー
第一部のラスボス。本来は死者の魂を冥界へ導き案内する天使の一人だったが、その役目をはずれ魂狩りに手を染めた。
仮にも上位存在の一人である上に集めた魂を吸収しているため、術師として未熟な三人悪は元より、本物の魔女である流華、ベテランの蒼龍が加勢しても全く歯が立たない。
さまざまに姿を変えて人の心に取り付き、魂をかり集めていた。その中には吐き気を催すほど外道なものもある(ワルガキと地獄のドライブ)。
最終目的は征将を憑き代に顕現した邪神レヴィアタンをのっとり、世界の支配者となることだったが、蒼龍の行った儀式で現れたゴールデン・アイズに妨害され、彼が征将を器に大天使ルシフェルを召喚したことで頓挫。全ての力を奪われ、元同僚の死神たちによって地獄へと幽閉された。
ちなみにこの名はリョーチンによるもので、蒼龍が「死神の名は人間では発音できず、強引に表すならギーとかガーとかいう音が近い」と説明したのが理由。

◯首斬り鬼
風魔とも呼ばれる、風のように飛ぶあるいは風を操る妖怪の一種。大きな金色の目玉と毛深い身体の獣のような姿をしている。
人間の女の精気を糧とし、主に十代の少女の血肉を好んで食らう。
ある女人禁制の寺に封印されていたが、時代の変化によって女性が立ち入るようになってしまったため、力を蓄えて脱走した。
人質を取って優位な状況を作っていたとはいえ、蒼龍と真正面から戦って重症を負わせるほどの力を持つ。
蒼龍を退けた後に上院町で女狩りをしていたが、再び合間見えた蒼龍(と三人悪)の手で退治された。

○暁
第二部のボス的存在。死神ギーと違って明確な敵対行動はとっていない。
現在のところ、たまに三人悪の前に現れてはちょっかいを出し、てつしやリョーチンと口喧嘩をしては負けて逃げていく、というパターンに終始。
三人悪は一応妖怪と認識しているが真相は不明。また、蒼龍とは過去に因縁があるらしい。

◯バルドイード
ヴァチカンの非公式対悪魔妖怪退魔組織「オーグレス」によって90年前に討伐されたはずだったが、現代まで生き延びていた最強の吸血鬼
完全なる不死に近い肉体を持ち、全身を吹っ飛ばされたくらいでは死なない。
優秀な人材を選別して眷属を増やし続け、蒼龍を配下に加えるするために彼を狙っている。
数年前にヴェレットやオーグレスから受けた傷を癒すため、フランスの田舎に潜伏していたが、オーグレスとの凄まじい戦いの末に聖なる炎に焼き尽くされた。

◯ファルゴール
バルドイードの眷属の吸血鬼。
元は二十代半ばの白人男性で、過激な白人至上主義を掲げる差別主義者だった。
蒼龍の魂を匿っているヴェレットを追って来日し、日本人のチンピラを作り変えて生み出した大量の起死鬼を従えて三人悪と仲間たちに挑む。
最後はミッタン(てつし)が放った指弾に胸を貫かれ、ヴェレットの追撃で聖なる弾丸を全身に受けて焼き尽くされた。

◯古田神父
2年前に条西の教会に着任した若い神父。品行方正で話の上手い洒落た人物なので、近隣の人々からの評判も良い。
だがその本性は女子中高生を狙う連続殺人鬼
少女を人気の無い完成前のマンションの地下へ拉致し、身体の中身を供物のように扱う残忍で猟奇的な方法で殺害していた。
更に死体は自身が神父を務める教会の壁に埋め、埋めるスペースが無くなると死体を人目につく場所に放置して世間の反応を見てほくそ笑む真正のサイコパス。
自分を嗅ぎ回っている三人悪とミッタンを絶体絶命の状況に追い込むが、死を覚悟したてつしが使用した業魔の石によって魂を地獄に引きずり落とされた。

◯鉄鼠
大きなネズミの姿をした化け物。
元は狂信的に自然を愛し、自然保護の活動をしていた一般男性だったが、彼に工事を妨害された建設業者の謀略で殺害されてしまう。
死の間際に暁の介入で復讐の鬼と化し、自身を殺した建設業者の関係者のみならず、自然を穢す人間そのものへと恨みを募らせる。
鉄鼠の騒ぎを聞きつけた三人悪たちと対峙し、怒りを爆発させたてつしが気合で呼んだ雷を喰らって消滅した。

◯幸福
どこから来たのか、なぜ来たのか誰にも分からない謎のエネルギー体のようなもの。
男には少女の姿、女には少年の姿に見える。そして悪意を持たず、純粋に人々へ幸福を与えようという使命感を持つ。
だがこの幸福に触れると、無意識のうちに自分が望む夢を見始め、肉体が衰弱死するまで永遠にその夢を見続けてしまう。
早い話が、接近されただけで気づかないうちに強制的に無限月読をくらうようなもの。
異世界では、その世界の人々が全員幸福によって眠り、滅びてしまったという事例がある。



追記・修正は地獄堂に駆け込んでからお願いします。

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最終更新:2022年12月20日 21:20