ダレン・シャン(小説)

登録日:2010/06/11 Fri 08:00:39
更新日:2024/01/29 Mon 21:02:29
所要時間:約 7 分で読めます




「ダレン・シャン」(The Saga of Darren Shan)はダレン・シャン著のファンタジー児童小説。
本編12巻、外伝1巻の全13巻。
なおタイトル及び主人公と作者が同名であるため、以下本項では主人公の少年を「ダレン」、原作者を「シャン」と表記する。

2006年から2009年にかけて週刊少年サンデーにて漫画版が連載された。作画担当は新井隆広。
……え?実写映画にもなったって?あれは名前が一緒なだけの別物だ




以下、ネタバレ注意!




世界観

バンパイアなどの異形が存在する以外は現実とほぼ同じ。


あらすじ

シルク・ド・フリークを見に行った少年ダレン・シャンは、そこで見た毒グモに惹かれ、盗んでしまう。
親友のスティーブ・レナードにそれを見せびらかしていると、スティーブが毒グモに咬まれてしまう。
スティーブの命を助ける為、毒グモの持ち主である謎のバンパイア、ラーテン・クレプスリーと取引をし、自身がバンパイアとなる契約を結ぶ。




登場人物


ダレン・シャン(Darren Shan)

主人公。
クモが大好きな普通の少年であったが、スティーブを救うためにクレプスリーと取引をし、半バンパイア(半分人間)となる。
クレプスリーと旅をする中で、バンパイアとしても人間としても成長する。

スティーブ・レナード(Steve Leonard)

ダレンの親友。豹と引っ掛けてスティーブ・レパードとも呼ばれる。
バンパイアに憧れており、クレプスリーに手下にしてもらうよう頼むも「血が悪い」と拒絶される。
その後マダム・オクタによって噛まれて意識不明になるも、ダレンによって救われる。
しかし、当の本人はダレンがバンパイアの座を横取りしたと思い込み、ダレンとクレプスリーを強く恨むようになる。
バンパニーズ大王の正体。

ラーテン・クレプスリー(Larten Crepsley)

ダレンに自分の血液を流し込み、半バンパイアにした完全なるバンパイア。
蜘蛛を操るのが得意で、シルク・ド・フリークではそれを芸にしている。
少しだけ残ったオレンジの髪に頬に傷のある痩せ型のオッサン。そしてツンデレ。
バンパイア元帥の候補に選ばれた程のバンパイアである。

ハーキャット・マルズ(Harkat Mulds)

リトル・ピープルの一人。
リトル・ピープルでは珍しく喋る事ができる。
当初は片言だったが、訓練によりかなり流暢に話せるようになった。
小柄な体に似合わぬ怪力の持ち主。
生前はカーダ・スモルト。ハーキャット・マルズはカーダ・スモルトのアナグラム。

バンチャ・マーチ(Vancha March)

バンパイア元帥の一人。
野性味あふれる戦士。
かつては半バンパニーズだった。
バンパイアでありながら、自ら太陽光を浴びる変わった人。別に太陽に強いわけではない。

ガブナー・パール (Gavner Purl)

バンパイア将軍。
ダレンがクレプスリーの次に出会ったバンパイアでクレプスリーの旧友。
気さくだがいびきがうるさい。
嘗ては人間の恋人がおり、クレプスリー伝説ではクレプスリーとはある種親子とも言える関係だったと明かされた。
カーダとともに力量の試練に失敗したダレンをバンパイア・マウンテンから逃がそうとする途中にバンパニーズと戦闘になり、計画の失敗を恐れたカーダに殺される。

カーダ・スモルト(Kurda Smahlt)

バンパイア将軍の一人。
数少ないバンパニーズと親しいバンパイアで、バンパイアにしては珍しい平和主義者でダレンと親しくなる。
頭が切れ、また身体能力も意外と高い。
次期バンパイア元帥候補。
外伝クレプスリー伝説4巻では「繊細な顔立ちをしている」
と描写された作者公認のイケメンキャラ(作中では唯一)
バンパイアを裏切りバンパニーズを侵入させた張本人。しかし、それはバンパニーズ大王の誕生を防ぐための行動であった。

エブラ・フォン(Evra Von)

シルク・ド・フリークの一員。
蛇少年。ダレンが半バンパイアになって初めての友達。
蛇のような鱗を持ち、脱皮もする。
マーロックに誘拐されたり、息子を殺されたりろくな目に遭わない。

デビー・ヘムロック(Debbie Hemloc)

本作のヒロイン。
マーロック退治にやってきたダレンと知り合う。
後に教師となる。その後戦に巻き込まれバンピライツのリーダーとなる。

アリス・バージェス(Alice Burgess)

クレプスリーの故郷の街の警部。
街で起こる連続殺人事件の捜査に熱心である。
報復の間での戦いでバンパニーズの存在を知ってからはデビーとともにバンピライツのリーダーとなる。

レジー・ベジー (Reggie Veggie)

通称R.V.。動物愛護団体に所属するサーカス好きな気さくな男。
本名は不明で「レジー・ベジー」は野菜好きであることにちなんで名付けられた渾名。
ウルフマンがつながれていることに怒りを覚え、ウルフマンを解き放つも腕を食いちぎられてしまう。後に半バンパニーズとなり、両手にフックを付けダレンたちの前に立ちはだかる。肉を好むようになっており、「V」の意味もバンパニーズのVだと語り、残虐な男に変貌した。

ダリウス(Darius)

ダレンの故郷でシルク・ド・フリークに忍び込もうとした子供。
生意気で好奇心旺盛。母親が若いシングルマザーで、そのために周囲から偏見を受けて育ったものの、母親想いの子。
本名はダリウス・シャン。その正体はアニー・シャンとスティーブ・レナードの子供。つまりダレンにとっては甥に当たる。
12巻のラストで彼の正体が明かされるが、彼の存在が最終巻のタイトル運命の息子のミスリードを誘う。

ハイバーニアス・トール (Hibernius Tall)

シルク・ド・フリークのオーナー。名前のとおりとても背が高い。クレプスリーの親友でもある。
様々な能力を持つ人物。
タイニーの2人の息子の1人。

レディー・エバンナ (Lady Evanna)

カエルの育成が趣味の魔女。タイニーの娘でもある。
体中にロープを身につけており、普段は醜いが姿を自由に変えられる。
バンパイア、バンパニーズの子供を産むことができるが本人は拒否している。
ダレンの死後、両方の血を引く子を作りタイニーの目論見を破る。
また、タイニーが本嫌いであることを利用し、過去へ向かうダレンにダレンの日記を託す。

デズモント・タイニー (Desmond Tiny)

ごくたまにシルク・ド・フリークにやって来る人物。エバンナとハイバーニアスの実の父。
一見普通のおじさんといった男だが、子供の血を美味いを言うなど残忍な性格。
足には水かきがついている。
謎の多い人物である。
傷ある者の戦を仕向けた張本人で本作の黒幕。ダレンとスティーブの実の父でもある。

用語

バンパイア

老化速度が人間の10分の1(半バンパイアは5分の1)である生き物。
生命力は高いが不死ではなく、生殖能力を持たない。
手の指10本に傷をつけ、相手に自分の血を注ぎ込むことで仲間を増やす。噛まれただけではバンパイアにはならない。
人間の血を飲むが、ある程度加減して飲むため殺すことはない。相手の血を飲み干した場合は、その魂の一部を自身に取り込むことができる。
テレパシー、フリット(高速移動)、催眠術、唾液による止血、吐息による睡眠ガスなど様々な能力がある。
掟を重視し、自分達とは異なる掟を持つバンパニーズとは不仲。
一族を統率する「元帥」や「将軍」という地位のバンパイアが存在する。

バンパニーズ

700年前にバンパイアの掟に不満を抱いたバンパイア達が独立した種族(本質的には同じ存在の為、厳密に言えば派閥と呼んだ方が正しい)。
能力はバンパイアと同等だが、バンパイアと違い、人間の血を飲む時は必ず全て飲み干す(=必ず殺す)。その影響で、紫の肌と赤い瞳を持つ。
しかしこれは残虐な性質というわけではなく、「相手の血を飲み干して魂を取り入れる行為が崇高である」という考えのもと。(700年以上前はバンパイアはみな人間を餌食にしていたが、この点に倫理を求めて掟を制定、その結果、それに反する者たちが離脱し独立したのがバンパニーズである)。
また、バンパイアよりも規律に厳しい。バンパイアと違い、首魁を立てないという独自の決まりを持っているが、そんな彼らが唯一絶対的に従うべき「バンパニーズ大王」という存在が現れるとデズモント・タイニーから予言を受けている。


バンペット

バンパニーズに従う人間。
バンパニーズの基礎を詰め込まれているが、バンパニーズではない。
そのためバンパイアとバンパニーズの掟では禁止されている飛び道具を使える。
コメカミにVの刺青を入れて目の周りを赤く塗りたくっているのが特徴。

バンピライツ

バンペットに対抗して生まれたバンパイアに協力する組織。
殆どがホームレスで構成される。
人間なので、バンペットと同じく飛び道具が使える。

シルク・ド・フリーク

巡業サーカス。
奇形や異形の者が集まったサーカス。

リトルピープル

サーカスで働く醜い小柄な人型生物。
食べれるものならなんでも食べることができる。


派生作品と原作の相違点

漫画版

概要に記した通り、新井隆広氏が週刊少年サンデーで手掛けた漫画版。
原作はご都合主義やイキな展開などは少なく、必要なそれについても道理の通った説明がなされている「イギリス文学」らしい小説だが
漫画版は一部を熱い展開・緊迫感のある描写に変更されている箇所がある。主人公たちのビジュアルもかっこよく・かわいらしく変更されているなど「日本の少年誌らしい」漫画になっている。
ただし、ストーリーの改変はほとんどなされておらず、原作に忠実な描写が多い。最終巻巻末にはシャン直々のメッセージが添えられるなど、原作者も公認である模様。
以下、変更点の子細の一部。
  • 貨幣の単位がポンドからユーロに
  • クレプスリーが若く、髪がひとふさだった原作とは違いふさふさ。
  • クレプスリーが1巻で使用する超能力的技術と種明かしの件は全てオミット。能力の説明は2巻目から入る。
  • 醜いハーキャットがかわいいショタキャラに。まぶたもちゃんと付いてる。
  • カーダは長髪のイケメンに。作者はかなり気を遣いながらデザインしたらしい。
  • デビーは原作では浅黒い肌だったのが白い肌に変更。
  • アニーは原作では大人になって太ったが、漫画ではスタイルに変化はない。
  • トミーは大人になるとトム・ジョーンズという選手名を名乗っていたが漫画では本名に。
  • ダレンのダリウス殺害を思いとどまらせたのがハーキャットではなくデビー。内容も日本人好みな展開に。
  • 原作の最終巻ではフリーク芸人のアレクサンダー・リブスが殺害されたが、漫画版では最後まで生存した姿が確認できる。
  • エバンナがスティーブを生き返らせなかった理由。
  • 原作よりダレンとスティーブの友情、因縁が深く描写されている。
  • ラストシーンが原作とはやや違う。人によるが原作よりも感動するとの事。
  • ある程度仕方がないが原作と比べ(特に1巻2巻)端折られてる部分もある。但し3巻以降は端折られた部分が少なくなった。

映画版

2009年にユニバーサル配給で公開された。
設定の改変やオリジナル要素がかなり多く、2時間足らずの本編に1巻から3巻の内容を詰め込んだため、
原作ファンからは黒歴史扱いされる程に評判は悪く、映画としても高い評価を得られなかった。

以下、変更点の子細の一部。
  • ストーリーや設定は全く別物に。ぶっちゃけまだ3巻時点だというのにこのWikiに書かれていることの半分以上は改変されている
  • デズモント・タイニーはバンパイア・バンパニーズに対し中立の立場をとっていたが、映画ではバンパニーズ側に。シルクドフリークに対しても攻撃的な態度をとっている。ついでに原作でダレンと対峙するバンパニーズのマーロックがタイニーの手下に。
  • 大幅な改変に伴う、主要登場人物の変更。三巻の時点で鍵となる登場人物のサム・グレスト、レジー・ベジーなどは未登場となった。なんと、ヒロインのデビー・ヘムロックさえ登場しない。代わりに、猿のような尻尾を持つフリークのレベッカが登場。
続編に期待が出来ない今となっては、監督が思い描いた終着点は闇の中だが、少なくとも原作の設定を考えれば「落としどころが見当たらない」状態になっている。制作側からすればシリーズ化を狙っていたかもしれないが、仮に続編が製作されていたら、何作で、どのように完結させるつもりだったのだろうか。


追記・修正はバンパイアの血を流し込まれてからお願いします。

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  • 涙腺崩壊
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  • 新井隆広
  • 鬱展開の嵐
  • 小学館

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