毒キノコ

登録日:2010/09/26 Sun 23:58:01
更新日:2024/04/19 Fri 04:45:37
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秋も深まりつつあるが、アニヲタの諸君はいかがお過ごしだろうか。

家ばかりに引き込もっていないで、たまには紅葉が始まりつつある山にでも行こうではないか。

そこでやることは決まってる。

秋の山といえば、そう


キノコ狩りだ!!


日本に限らず世界各地に古くからキノコを食用とする文化がある。
日本では現在でもナメコやエリンギの養殖が盛んに行われ、マツタケといえば秋の味覚の最高峰として名高い。
中でも自分で山にわけいり、採取した天然キノコなどのうまさは格別である。

……が、一つ気をつけねばならないことがある。
それは、毒キノコの存在である。


【概要】

その強さには一本食べただけで致命的なものから、軽い食あたりですむものまで多種多様。
食べた量・体質・体調によっては当たったり当たらなかったり、同じ場所に似たキノコが混ざっていたり、特徴となるものが何かの拍子に失われていたりと厄介。
そもそもきのこがなぜを持っているのか完全には解明されていない
植物毒は即効性があるのに対し、きのこの毒は遅効性が多く、食べた動物が毒に反応するのに時間を要するため、捕食を回避するのには全く適していない。
そもそも種類によっては美味しい(厳密に言えば「美味しいと感じる成分」そのものが人間にとって毒性がある)毒きのこが存在したり、アルコールと併用すると中毒が発生するきのこもあったりする。


余談だが某ヒゲのゲームに出てくるスーパーキノコを摂取すると体が大きくなるが…大きい状態で被弾or毒キノコ摂取で小さく……解毒してない?これ?
小さい状態では即死するので毒であることには変わりないが。

日本に自生するキノコは確定しているもので2500種ほど、未確認のものはその二倍とも三倍ともいわれているが、有名な毒を持つものはその内200種ほどとされている。
10%を少ないと見るか多いと見るかは人それぞれだが、毎年それなりの件数で中毒事故が発生している(つまり誰でもアタリを引き当ててしまう可能性がある)事は頭に入れておきたい。



昔から毒キノコの見分け方として

  • 柄が縦に綺麗に裂けない
  • カサが縦に綺麗に裂ける
  • 銀のスプーンをキノコを茹でた湯につけ、黒く変色する
  • 虫などが食べない、家畜に食べさせても大丈夫
  • 派手な色や形

など多数あげられているが全て迷信…というよりも色々な種類のキノコがあるために当てにならないと言った方がより正しいだろう。
これらに科学的な根拠はなく、明確に否定されている。

  • 欠片を口に含み、吐き出す
…については既知の類似種を見分けるための最終手段であり、これそのもので有毒かどうかは判別できない。
せいぜい茹でこぼししたもので試して、味や食感が食に向いているかどうかが分かる程度にしかならない。絶対に飲み込まないこと。
今のところこれで死んだという報告は聞かないが、猛烈な苦み、口内麻痺、爛れや激痛(カエンタケ)、誤飲、未知の毒などの恐れがあるのでやらないように。
前述の通り「美味しい」毒キノコがあるのでその点でも判別には使えない。

  • 日本においてはイグチ科に毒キノコなし
昔の俗説であり、テンプレ的なザ・キノコな形をしていて実際に採集初心者向けではあるのだが、日本でも有毒種が複数存在している。
また、俗説が広く信じられている時にも既に有毒種が見つかっていた(新種認定が遅くなってしまった)。
素人はちゃんと鑑定してもらおう。
また、イグチはかさの裏がスポンジ状で縦に綺麗に裂けないものが多いため、上述の『縦に綺麗に裂けないキノコは大丈夫という迷信』の原因となっている。

  • 毒抜き(熱処理・塩漬けして水洗い・乾燥など)すれば大丈夫
ほとんどの毒キノコで効果がありません。効果があったらはそもそも可食扱いされている
誰が言い出したのかは不明だが、ナスと一緒に料理してももちろん効果無し。


ただ、野生種で真っ赤や真っ白な派手な色や形の種については、
猛毒キノコが多く混ざっていたり、そもそも食べようとする気が起きないために、基本的に論外であり、最初から見向きもせずに済むという目安ぐらいにはなる。
これらの中にも食べられる種はあるのだが、野生種でそれを判別するのは至難…というよりも経験で完全に判別できる人が少なく、更に有毒種だったら大抵が取り返しの付かないことも理由である。
実際に、中毒事故を起こしたキノコの多くは「地味で如何にも食えそうな見た目をしている」ものが多い。
だからと言って「派手だから毒はない」という訳でも勿論ない(知名度の高いベニテングダケはくっそ派手な見た目をしている)が。


キノコ狩りを楽しく、自分で採取したキノコをおいしくいただくには、一つ一つの毒キノコの性質、発生土壌を覚え、
少しでも怪しかったり判断しかねるキノコには手をつけないことが重要である。

図鑑だけに頼ることも禁物。そのキノコの状態などによって別物に見える例が多いためにアテにならないから。
生育状況が同じ程度でも環境が変われば特徴も異なっているなんて場合も珍しくない。
当然古い図鑑だとデータの更新が為されていなかったりすることも問題。
また、細かくチェックすると適当なことが書かれていたり、同年代の図鑑でも内容が異なる場合があるが、これはデータ不足なので仕方ない。
何せ、毒キノコかどうかは中毒事件をきっかけに発覚するのが基本なので。
「調べればいいじゃん」と思うかもしれないが、完全な成分分析は容易ではなく、
毒キノコ一つとっても毒素が複雑なものが多かったり、人体との反応も調べていかないといけないため、よく分からないことが多いというのが実情。
現代の食糧事情を鑑みるとわざわざ未知のキノコを「喰ってみた」するのは相当な命知らずか物好きしかいないので猶更である。
逆に、これまで無毒種(食用)だと思われていて栽培も真剣に検討されていたが実はよーーく調べたら毒キノコだったスギヒラタケのケースもある。
スギヒラタケが毒キノコと断定されたのは2004年以降であり、それ以前の図鑑では「食べられるキノコ」とされているのである。

有毒種と類似している種も多いため、その地域に詳しい有識者からキノコについて一つ一つ教わることが基本となる。
素人は迂闊に手を出さないことは当然として、
キノコに詳しい人でも、見知らぬ山に赴き、独断でキノコを判別する行為は危険とされているほどであり、注意するに越したことは無い。


【主なキノコ中毒の症状】

※現在のところ、大半の毒キノコにおいて解毒剤は無いと考えて良い。

消化器系

キノコ中毒で一番多く、代表的。
多くは食後30分~10時間以内に胸焼け、胃の違和感、吐き気、下痢がおきはじめ、酷い場合はコレラのような症状が起き死亡する。
軽い症状でも脱水症状などには注意。
対処方法としては胃の内容物の自主的な嘔吐、胃洗浄がある。が、これも必要な段階では中毒症状が出ないので気づいた時にはもう手遅れというケースも。
中毒を起こすキノコ→ドクツルタケ、ツキヨタケ、ドクヤマドリなど

精神系

交感神経や中枢神経、脳に作用し、精神を錯乱、興奮させたり、汗や震えが止まらなくなる症状。
だがこの症状は長くとも一日か二日で治ることが大半で、致死的な毒の強さではない。
新手の麻薬「マジックマッシュルーム」もこの手の毒キノコ。
ちなみに、この部類のキノコには「麻薬取締法」で所持、栽培が禁止されている種がいくつかあり、
もしもその種のキノコが生えていたらすぐに保健所に連絡し、除去を依頼しなくてはならない。

あなたの家にそのキノコが生えていることを通報された場合、ヘタすると麻薬取締法違反で逮捕される恐れがある
まったく、ひとんちの庭にまでケチつけるとは世も末…
規制対象かどうかは別としてこの系統も珍しくはないので、そこかしこに生えている。キノコを見たらとりあえず採取するという人は注意。

主な種(★印は麻薬取締法対象)→オオワライタケ、★ワライタケ、★センボンサイギョウガサ、オオキヌハダトマヤタケなどのアセタケ科のキノコ

・その他

その他にも様々な症状があり、皮膚がただれたり、失明につながったり、重大な後遺症につながるものも多いので、以下に特に注意が必要なものをあげておく。
代表的な毒ではないだけで、発見が困難とは限らない。

テングタケ科

ドクツルタケ
日本国内でおそらく一番有名で一番致死率の高いキノコ。
その姿はまるで真っ白な羽を広げた天使であるが、ひとたび食べてしまうとコレラのような胃の不快感、嘔吐、下痢が起こる。
この症状は2日で回復するが、毒性分は体内に残って徐々に中毒者の体を蝕み、

約一週間後、中毒者は腎臓や肝臓がスポンジ状になるまで破壊され息絶える

英語では「Destroying Angel(死の天使)」だなんて呼ばれているがその名に偽りはない。
テングタケ科のキノコはそのほとんどが有毒かつ致命的なものが多いので十分に注意を要する。
例によって解毒剤は存在しない……が、海外では中毒者が多い毒キノコなので解毒薬の研究自体は精力的であり、効果が期待できるかもしれないというレベルのものがないわけではない。

ちなみにこのキノコに含まれる毒性分はちょうど一本分で人間が死ぬ量である。
…計画通り

ベニテングタケ
真っ赤な傘に白い斑点をつけた日本毒キノコ界のいわば、ょぅι゛ょ
よくおとぎ話や童話に描かれるキノコといえばだいたいイメージはわくのではないだろうか。
山や林という地味な色彩の空間で見つける彼女らの姿は、まるで味気ない日常にふいに現れた我々の心を癒すょぅι゛ょである。

彼女らは、まれに「菌輪」と呼ばれる発生体系をとることがある。
これは成長した菌糸が地面に円状になるように伸び、そこからキノコが発生することによってキノコも円になって生えるのだ。
まるで踊っているようである。

赤いし、イボイボがついてて気持ち悪い?それもごもっとも。

このキノコ毒成分がうまい
これは彼女の主要含有毒成分「イボテン酸」が人間がうまみを感じる「グルタミン酸」に非常によく似た構造をしていることに起因しており、
しかも度合いはイボテン酸のほうがグルタミン酸の約16倍も強い。
一本で死ぬほどの毒ではないが、微量ながらドクツルタケと同じテングタケではお馴染みの毒素を持っていたり、
毒が変質して幻覚系の毒素まで持ち合わせたりなど、決して油断は出来ない。
もちろん、多食したり長期間食べ続けると致命的な事態に繋がりかねない。
しかしながらその美味さにホイホイされて試食を試みるチャレンジャーが後を絶たないとか…

ニクザキン科

カエンタケ
日本の中どころか世界の中でも最強に近い猛毒を秘めたキノコ。
食べた人の身体を徹底的に破壊しつくし、死に至らしめるために生まれてきたような天然化学兵器。
姿は名の通り、真っ赤な焔がうねるようなおどろおどろしい形をしている。
もっと言うなら、さながら地面から這い出た亡者の手といった感じ。
毒成分はなんとベトナム戦争当時、米軍が散布した枯葉剤と同じもの。
一口齧るだけで皮膚は爛れ、粘膜は溶け、毛は抜け落ちた状態になる。
更に血液の機能を止め、腎臓を始めとする内臓を徹底的に破壊し尽くし、果てには小脳を委縮させて言語能力や運動機能に甚大な障害を残していく。
ドクツルタケが死の天使(Destroying Angel)だとするならば、このキノコは死(Destroying)そのものである。

ちなみに触るだけでも中毒症状が出る(皮膚が爛れる)とされるキノコは日本で確認されているのはコイツぐらいである。
その一目見て「ヤバい」と分かる見た目なのでよっぽどの事が無い限りは食おうなんて思わない……が、よりによって薬用キノコのサナギタケや食用のベニナギナタタケとよく似ているので偶に中毒者が出る。

キシメジ科

ツキヨタケ
名前の由来は夜になるとヒダが蛍光緑色に発光することから。
形状がシイタケ、ムキタケ、ヒラタケなどの優良な食用キノコに似ているため、毎年のように多くの中毒者が発生している。
厚労省の統計では、ほぼ毎年20件以上、100人弱が被害に遭っている。

中毒症状は典型的な消化器系中毒が起こり、ついで全身の身体の痺れに襲われる。

だが、真ん中から縦に裂くと黒いシミがあるという比較的簡単な見分け方があるので覚えておいて損はない。
同じ木にツキヨタケとムキタケが混生していたり、シミがないものもごく少数あったりで絶対に安心とは言えないが…。

ドクササコ
地味な見た目とキノコにしては比較的清潔そうな場所に生えるため、つい食べられてしまいがちだが、
小柄な体型に備えられた毒性は恐ろしい力を秘めている。

その中毒症状は、
手足や鼻、ティ○コなど体の先端部が腫れ、焼けた鉄を押しつけられたような激痛が昼夜問わず一カ月以上続く

という拷問としか思えないようなものであり、「先端紅痛症」と呼ばれている。

さらに恐ろしいことに、
この症状は末期ガンの疼痛を抑制するのに使われるモルヒネすら効かない
いまのところ完全な対処法はなく、血液透析や局所麻酔を打ち続けてやっと軽減できるレベルである。

毒そのものが死に繋がる訳ではないのだが、長きに渡る苦しさから特に子供や老人を中心に死者が多く、自殺者を出す程である。
ただし、死亡例のほとんどは水に浸す対処療法を続けて感染症を併発したものとされており、現代日本においては死亡率自体は高い訳ではない。
衰弱死する例があったり、長く苦しむ事には変わりないので軽視はできないが。

スギヒラタケ
食べても腹痛などは起こさない上に美味。
それも東北などの寒冷地でも平気で群生する。
群生場所も倒木や古株で、周囲の環境や木の状態にもよるが明らかにばっちいわけでもない。

しかしこのキノコ、急性脳症を誘発する疑いが濃厚である。
それも約一週間後(長い場合で一ヶ月?)に発症するなど、中毒の内容も発症までの期間も食中毒としてはかなり異例なもの。

そしてこれらの要因が重なっていたために、
可食菌として扱われていて、東北を中心に家庭の味でもあった。2004年までは。
SARSなどで急性脳症が注目されたのをきっかけとして、ようやく本当に可食菌なのかどうか注目されるようになり、
農林水産省から「スギヒラタケは食べないで!」という勧告が出続けている現在に至っている。

モエギタケ科

・ニガクリタケ
年がら年中群生し、道路脇なんかでもよく見かける。
一般的な消化器官系に来る毒だが毒性が強く、死者が出ることも珍しくない。
放射性物質を濃縮しやすいとも言われるが、より正確に言うと、キノコ類は放射性物質を比較的貯め込みやすい*1ので特別なことではない。

その名の通り可食菌のクリタケと非常に似ているが、やはりその名の通り猛烈に苦いので味見で判別は可能。

年中群生しているが、上記のクリタケが秋ごろ取れるために秋ごろになるとよく中毒者が出る。
自爆だけでなく、即売所やイベントでちょくちょくクリタケと間違って販売されるという事件を引き起こしている問題児。

イッポンシメジ科

・クサウラベニタケ

ツキヨタケほどではないが、キノコ中毒の代表選手。だいたい年数件。多い年で10件ほど。
食用のウラベニホテイシメジに似ているため誤食による中毒がよく発生する。つうか双子かと思えるほど似ている。

参考にウラベニホテイシメジの画像

そっくりさんってレベルじゃねえぞっ!
しかも同じような時期に同じような環境で同じ場所に混生している。

東北地方ではこのキノコのことをメイジンナカセと呼ぶほどに間違いやすい。
中毒症状も消化器系の激しい症状にみまわれる。死に至る事例もないではないが、それほど強毒ではないのが救い。

因みにこのキノコ中毒になる原因はほとんど先述の「ウラベニホテイシメジ」との誤食だが、
実をいうとウラベニホテイシメジは歯ごたえこそいいものの味はクセがありお世辞にも美味しいとはいえないので、
リスクを背負ってまで食べるほどの価値はない…あれ?こんな時間に誰だろ…


【余談】

天然キノコの生食は絶対に止めるように。
生食出来ると確認されているものは極めて少ないため、食用キノコであっても生食すると大抵は中毒を引き起こし、場合によっては死に至る。

食用キノコは加熱することで毒素が消えるので食用として扱われているだけである。
また、天然のキノコには虫が入り込んでいることも多いため(特にイグチ)、塩水に10分程度浸してから水洗いするなどの虫抜きも要する。
熱処理すれば入ったままでも基本問題ないと思うが、例え大丈夫だったとしても嫌な人の方が多いだろう。

ベア・グリルス曰く「食用でも栄養は僅か(低カロリー)なので自分の知らない物はたとえサバイバル時でも食べないほうがいい」。



以上キノコ狩りを楽しむ前の毒キノコ講座であったが、ここまで見てくれた諸兄ならもうわかったはずである。

スーパーで売ってんの買って喰えばいいんだぜ

と(もしキノコを狩りたいなら必ずプロといくか、採取した後に全部*2鑑定してもらえ)。

独断での採取はガチで知識を蓄えてからにしよう。検定を合格する事が最低限
物が飽和したこの世界では、無理に「異世界ごっこ」だの「サバイバルごっこ」をしたら誰も手を差し伸べられず、迷惑なヤツだと思われるだけである。


毒キノコを食すリスクを背負ってまでキノコ狩りをするキノコ好きな方は追記・修正をお願いします

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最終更新:2024年04月19日 04:45
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*1 ただし特別吸収しやすいというよりは生態の都合と、口にする物が混ざっていてチェックされやすいことが重なっているからだとも思われる。何がどこまで影響するのかまだまだ明らかになっていないこともあり、実際のところは不明点も多い。

*2 近くでも毒キノコが混ざっていたり、可食菌を取った場所からそれと似た毒キノコが生えてくることがあるため