ゲド戦記(小説)

登録日 :2011/07/17(日) 05:51:36
更新日 : 2016/08/31 Wed 10:05:13
所要時間 :約 5 分で読めます




アーシュラ・K・ル=グウィン作の小説のシリーズ。全6巻。
異世界アースシーを舞台に大魔法使いゲドの半生と、
彼を取り巻く人々や出来事を描いたファンタジーである。

邦訳では『ゲド戦記』だが、タイトルになっているゲドは、
2巻以降どちらかと言うと主役よりもサポート的な役回りが多い。
また『戦記』という割には、派手な戦闘や敵を倒して解決といった展開はほとんど無く、
自分自身の内面での葛藤や成長がテーマであることが多い。

しばしば『指輪物語』『ナルニア国物語』と共に、
世界三大ファンタジーとして挙げられるが、これら2つと毛色は異なるかもしれない。



2006年に3巻を中心にした内容でスタジオジブリによってアニメ映画化されたが……うん……。
原作者が苦言を呈するぐらいに別物(というより、もはや黒歴史)なので、
興味ある人はぜひ原作読んでみて下さい。いやマジで。



◆1巻『影との戦い』
辺境の島ゴントに生まれたヤギ飼いの少年ゲドは、
その魔法の才能を見出した呪い師の叔母に鍛えられ、後に魔法使いオジオンに師事する。
その後入学したロークの魔法学院でその才を開花させたゲドだが、
ささいなきっかけから禁断の術を使用、「影」を解き放ってしまう……。


◆2巻『こわれた腕輪』
カルガド帝国の信仰の中心部、アチュアン神殿。
先代の生まれ変わりとして神殿で育てられた巫女の少女アルハは、ある日神殿の地下墓所で侵入者を発見する。
太古の神の力が満ち迷路のように複雑な墓所で衰弱していた浅黒い肌の男は、
ある腕輪のかけらを探しにやってきたのだと言うが……。


◆3巻『さいはての島へ』
大賢人となったゲドの下に、エンラッドの王子アレンが訪れる。
均衡が崩れ魔法が力を失いつつある世界の秩序を取り戻すため、ゲドはアレンを伴い旅に出る。


◆4巻『帰還』(ゲド戦記最後の書)
世界の均衡を崩し竜を滅ぼそうとすらしていた魔法使いクモは倒れ、
死の世界との境の扉は再び閉じられたが代償にゲドは全ての力を失った。
故郷ゴントで暮らすテナーとテルーの下で体を癒やすゲドだったが、彼らの平穏も長くは続かなかった……。

3巻から20年近く経ってからの出版。
作者のフェミニズム思想が色濃く出て、雰囲気が大幅に変わっていると言われる。
当初はこれで終わりにする予定で副題にも最後の書とあったが、約10年後に更に二冊出ることになる。


◆5巻『アースシーの風』
世界の均衡は守られたものの、その秩序の形は以前と異なる物になりつつあった。
アーキペラゴの人々とカルガドの異教徒、そして竜。
新しい時代に彼らはどう生きてゆくのだろうか……。


◆6巻『ドラゴンフライ』(ゲド戦記外伝)
5つの短編が収録された外伝と、設定などの解説。
アースシーの歴史や人物についての内容で、
特にオーム・アイリアンが主役の『ドラゴンフライ(トンボ)』は5巻との関係が深い。




●世界観
  • アースシー
大海と島々でできた本作の舞台。
中央部は特に多島世界(アーキペラゴ)と呼ばれる。
作者の人種に関する考えを反映して有色人種が多くを占め、島によって様々な文化や習慣が伝わる。

  • ローク
アースシーの中心付近に存在する島。
長らく空位のハブナーの王に代わり、アーキペラゴに強い影響力を持つ。
大賢人と9人の長が管理している学院があり、
ここを卒業しないと「魔法使い」を名乗れない。ちなみに男子校

  • カルガド帝国
アースシー辺境にある白い肌の異教徒たちの国。
魔法を信じず使えず、独自の文化と信仰を持ち言葉も異なる。

  • 真の名
アースシーの全てのものには太古の神聖文字で表される真の名前が存在する。
真の名を知ることは魔法を掛けるのにも必要で、
そのものの本質を支配し、操り、あるいは変質させることに繋がる。
そのため人々は普段「呼び名」という仮の名前を名乗り、真の名は特別に親しい者にしか明かさない。

ファンタジーの例に漏れず強い力を持つ生物。
太古の言葉を操り、強靭な肉体で空を自在に飛び回る。
元々はヒトと同じ存在だったが、求めるものの違いから別の種族に分かれた。
今でも稀に両者の境を越える者が現れることがあるという。



●登場人物
  • ハイタカ(ゲド)
(特に1巻の)主人公。
才能に溢れる傲慢な青年だったが、
その傲慢さから呼び出してしまった「影」との対峙を通し、成長して丸くなる。
中年~壮年になり大賢人となるが、最果ての島で魔法の力を失ってからは自信をなくした普通のオッサンになる。
5巻で幼き日と同じく山羊飼いとして余生を過ごしている。

  • オジオン(アイハル)
ゲドの師匠、名付け親。後にテナーの後見人。
大賢人に推薦される程の魔法使いだが、本人は故郷のゴントで静かに暮らすことを選んだ。
ゲドやテナーに様々な影響を与えた人物。

  • アルハ(テナー)
2、4巻の主役。
カルガド帝国のアチュアン神殿の大巫女。
外と隔絶した神殿で祭り上げられながら育てられたため最初は頑なだったが、ゲドとの触れ合いを通して心を開いていく。
ゲドと助け合いアチュアンを脱出、彼と共に平和の象徴(正確には違うが)エレス・アクベの腕輪をハブナーに届ける。
その後はオジオンに預けられ、普通の女性として生きることを選ぶ。4巻時点では未亡人。
真の名を隠さないのはカルガドの文化の特徴で、アルハは巫女としての名前。

  • アレン(レバンネン)
3、5巻の主役。
アーキペラゴで最も由緒正しい王家の一つ、エンラッドの王子。
旅の途中ゲドに不信感を抱くこともあったが彼を尊敬し、
最果ての島では力を失ったゲドを支え無事生還。帰還した後に空位が続いていたハブナーの王になる。
王位についてからは、変わり行くアースシーを治めるべく苦悩する日々を送る。

  • テルー(テハヌー)
4、5巻の主役。
テナーの養女。親の虐待が原因で顔の半分と、
片腕を酷く火傷していて、人前に出るのを避け喋ることもほとんど無い。

  • トンボ(オーム・アイリアン)
テルーと同じく、人に生まれながら竜である存在。
自分が何者かを探す途中、例外的に迎え入れられた女人禁制のローク学院にて、竜として覚醒する。

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