尼寺に潜む怪物

登録日 : 2013/07/02 Tue 00:00:02
更新日 : 2016/07/03 Sun 01:32:41
所要時間 :約 12 分で読めます





――手を伸ばせば、ある――



――そこにある――



――昂る肉をつつむその柔肌が――

――ここにある――


あっ――ん。


――それは偶さかな事なのだと――


紫苑さま……っ。


――その身に降り落ちた――

――幸運だったのだと――



――ほら――


……あっ、ん……。


――今夜もまた――


んんっ。


――鬼が泣いている――


あっ 紫苑さま…………。





『尼寺に潜む怪物』とは、江戸を舞台とした時代劇漫画であり、推理漫画(?)でもある当て屋の椿の長編エピソードである。
単行本2巻終わりあたりから3巻の半分以上に渡って掲載されている。



◆あらすじ◆


揺れる舟の上で春画を描いていたら、ダウンしてしまった鳳仙。      
女医・竜胆のもとへ運ばれた鳳仙はそこで椿と遭遇する。         

なんやかんやで酒を飲み始めた彼らに、竜胆が酒の肴にと奇妙な話をし始める。



一人の女がおる。

女は男に肌を触れさせたこともなく、
それどころか男の手を握った事も、
口をきいた事もない。

そんな女が 妊娠していた



話を聞いた椿と鳳仙は、その女がいる、
という尼寺「白泉寺」へと赴いた。  




――女だけの場所――

――戒律の結界――

――女だけの密園の中――



――人の理を破りしは――



―― か――

―― か――




どんな理屈が咲くのか、

楽しみだねェ……。




◆主な登場人物◆


◆椿
主人公。「何でも」探す当て屋を営むピッチぴちの、
美女もとい アネゴ エロ可愛い

竜胆の話に興味を持った彼女は、白泉寺が駆込寺(妻が夫と離縁したい時に駆け込む寺)であることを利用して、鳳仙を利用して潜入した。

仏教について詳しく、厳しい戒律が多いことついても、尼寺についても知っている。
(といっても、椿は変人故に幅広い事柄を網羅している。)
そんな閉ざされた環境の中での特別である「御仏の子」を宿した女のことは心配らしい。
これも白泉寺に赴いた理由の一つのようだ。

椿が白泉寺に入ってすぐに黄梅が殺されたことで捕らわれそうになるも、
紫苑によって院主しか知らない地下室に匿わる……という形で幽閉された。

二話目の 無防備な寝顔 は破壊力抜群。これがギャップというものか。


◆鳳仙
もう一人の主人公。一流のフニャチン春画師。

頭に生乳プレスされるわ、美女にキスされるわ、
可愛い女医とイチャイチャするわ、
とにかく羨ましすぎる目にあっている。そこ代われ

(話を聞いて気になったからなのか)椿と共に白泉寺へおもむくも、
門に着いた途端に椿に 強烈なビンタ をくらい、


もう嫌ァーーーーー。

助けてぇ~~~~~~~~。

と椿にフラれ(たフリに巻き込まれ)、椿が寺に入るために利用された。
(まあ、どっちにせよ男である鳳仙が尼寺に入ることはできなかったのだが。)
仕方ないからその後は竜胆の所で彼女とイチャイチャしたり、胡蝶のオメデタを聞いたり、胡蝶の腹の子の名付け親になったりした。


◆竜胆
椿の友人の女医。この作品の例に漏れず巨乳で尻の形まる分かりの着物を着ている。 可愛い

面倒見が良く明るい美女。やわい上方訛で鳳仙曰く「鈴の音のような声が耳に心地良い」。ただしキレると豹変する。
ちなみに、口蓋垂のことは「のどちんぽ」と言う人。

笹百合のことは白泉寺に彼女の診察のために呼びつけられたことで知った。

笹百合のことが心配になった竜胆は、わざと椿に話をして彼女が白泉寺に乗り込むよう仕組んだ。
曰く 「災いには災いぶつけな!!」 どかーんて

処女である。


◆日輪
竜胆の助手の大男。彼女のボディーガードも務める。無口。
竜胆に近づく男はもれなく彼から威圧を受けることになる。

ちなみに、竜胆とは姉弟である。


胡蝶(こちょう)
岡場所(今で言うデリヘル)で働く美(少?)女。
物語冒頭で鳳仙の春画のモデルになっていた。そして、鳳仙に生乳プレスをくらわせた。

鳳仙の春画のモデルになったことで評判が上がったらしく、それがきっかけで身請けされることになった。
ちなみに、妊娠3ヵ月。腹の子の父親は身請けをしてくれた男である。


白泉寺(と僧寺)の人々

白泉寺は女しかいない尼寺ということで、悪い変態から守るために僧寺に付属している。

白泉寺内に男は出入りできず、白泉寺側が僧寺と面会する際は尼寺側から人をよこしている。
また、門の守りは鉄壁で、白泉寺と僧寺を繋ぐ廊下には轟音をたてて開く扉があるため、人知れず白泉寺に入ることは不可能。

そういった事情のためか、白泉寺の内情は外部から知ることはできず、僧寺側も白泉寺で何が起こっているか把握しきれていない様子。

山の頂にある関係で年中冷えており、白泉寺だけ雪が積もりやすい不思議な現象が起きている。

ちなみに、白泉寺内の至るところに般若の面が飾られている。
般若は女の苦しみを表す異相の女面という意味合いの他に、仏教では道理を見抜く知慧の意があるそうな。


笹百合(ささゆり)
「御仏の子」を宿した女。白泉寺に潜入した椿の世話役になる。

幼い頃に捨てられていたのを白泉寺に拾われて以降、尼寺から出たことがない。
そのため、外の世界を知らないし、男に触れる機会も無い筈なのだが……、

性格は人懐っこく、明るい子。 はふっ
椿曰く「嘘がつける女ではなさそうだ」
年齢不詳だが、外見からして十代後半~二十代初めくらいか。

次期白泉寺院主とされる紫苑と 百合ん百合ん の関係。夜な夜な行為に耽っている。
(昔の仏教で同性同士で行為に及ぶことは結構あったそうな。落ち着かせるためだとかなんとか)
笹百合ちゃんたら木製ディ〇ドなんて持ち込んじゃって……。

尼僧の身で妊娠してしまったことで、紫苑以外の周囲からは恐れや嫉妬、嫌悪の目を向けられている。
椿も腹の子が災いを呼ぶとし、笹百合を心配している。


紫苑(しおん)
白泉寺次期院主と目される女。黒髪長髪ストレートの巨乳美女。笹百合と恐らく同年代。

笹百合とは百合(ry
その時に攻めるのは紫苑の方。
ちなみに、第一話では素っ裸で行為に及んでいたが、以降は着衣したままで及んでいる。

泰平の世にも関わらず、生まれてすぐに高貴な武家から出家させられた身であり、そのためか現院主である黄梅より権力は上。

笹百合が可愛いのに対し、こっちは エロい


黄梅(おうばい)
白泉寺現院主の老女。しわくちゃくちゃ。
腹に一物抱えてそうな人。

……と思ったら初登場話でいきなり殺されちゃいました。
死体は まるで虫をちぎったかのようにバラバラ になっていた。


華鬘(けまん)
僧寺の主の老人。面倒くさがり。
黄梅は嫌い。


縷紅(るこう)
よく騒ぐ僧侶。
僧寺内では華鬘に次ぐ地位にあるっぽい。
華鬘の後釜を狙っており、連翹と対立している。

笹百合の妊娠を警戒している。


連翹(れんぎょう)
豪快なオッサン。
縷紅と同じく、僧寺内では華鬘に次ぐ地位にあるっぽい。

白泉寺の次期院主に笹百合を推しており、縷紅とは対立している。




※以降は物語の核心事項を含みます※














◆あらすじ(part2)◆


「御仏の子」を宿した笹百合を支持する連翹のことと、
次期院主候補となりつつある笹百合のことも気に食わない縷紅は、
部下を使って笹百合の子を堕ろそうと企む。
そして、竜胆の診療所から出てきた胡蝶の持っていた薬を、
堕胎薬と勘違いしたその部下は、争いの末に胡蝶を殺してしまう。                 



――「ねえ、先生」――

――「早くこの子の名前」――

――「呼んでやらないと、まっかでまっかで」――

――「はぐれちまうよ」――



胡蝶が身請けされるという朗報を聞き、
更に彼女の子の名付け親となっていた鳳仙。
彼女の突然の死に悲痛な面持ちを浮かべる。

現場に落ちていた数珠が白泉寺の付属する僧寺のものと知った鳳仙達は、
その僧寺へと赴く。             



一方、幽閉されていた椿は白泉寺の寺史と紫苑のことを調べていた。

そうして、全てを悟った椿は、鍵をこじ開け地下室から脱け出した。      



生まれてまもなくこの尼寺へ来た。
武家の娘、紫苑。

この泰平の世に武家から赤子を、
出家されたりするだろうか?

美しい姫君。
用途はあっても害はない。

そして 院主しか知らぬ という。
地下室(ここ)だ。



ちっ あの糞婆ァ。

せっせとここで、
何を育てて やがった。




場面は変わり紫苑の方へ。

尼寺院主として僧寺に渡った彼女は華鬘と対面していた。

しかし、華鬘は紫苑を見た途端苦しみだし、                  


そう……そうか。

そうか。そうであったか。


紫苑の頭に手を置いた後に倒れてしまう。

対面が終わり、顔色がすぐれない紫苑。
それを狙ってか、尼寺へ戻る途中に縷紅が襲いかかる。
だが、彼が紫苑の足を開いて見たら、  



うあ、あ?
おっ、お前、お前は――――?



……どう  



お相手つかまつろう。

縷紅殿。



「それ」を見られた「紫苑」は自身の髪を縷紅の首に巻きつかせ、

その結果……、  


あまりの力で彼の首が飛んだ。



縷紅を殺し、尼寺に逃げた「紫苑」の前に椿が立ちはだかる。

まるで「紫苑」の事を何でも知っているような言い方をする椿に「紫苑」は ――




――はがれてゆく――

――吾にはりつく――

――昏くドロリとした淀みが――

――はがされてゆく――


――淀みに隠れていたのは――





吾の名は 鬼の醜草。





醜草(しこぐさ)
紫苑に成り代わっていた人物であり、笹百合の腹の子の父親。黄梅を殺したのも彼。
紫苑の 四つ子の兄 であり、顔は紫苑とそっくり。
尚、他の兄弟は産まれてすぐに死んだ。

江戸時代では多児産は畜生腹と蔑まれ、忌み嫌って間引く悪習があった。
彼が産まれて初めて見た光景は、四つ子に驚愕し恐怖する母親含む親族達の姿だった。
そんな中で唯一産声を上げてしまった醜草は 発狂した母親に焼けた灰をぶちまけられ、一命はとりとめたものの全身が焼け爛れてしまった
その後、紫苑は武家から出家した名も無き赤子として、醜草は人に非ずものとして山寺に捨てられた。
この山寺は白泉寺擁する僧寺である。

拾われた二人は華鬘に名前を付けられ、醜草は黄梅に地下室で「飼われ」始め、乳も出ない乾いた乳房を与えられる。
時が経つにつれ火傷跡は消えていき、そしてその体が男となった時、「ままごと」を止めて 発情した黄梅に襲われ始めた

毎晩のように黄梅に強要され続け、全てに疲れていた醜草だったが、ある夜に黄梅の隙をついて地下室から外へ出る。
そして、黄梅に言われた般若の面に仕掛けられたのぞき穴から、紫苑と笹百合の行為を見てその美しさに感動。

それを紫苑に見つかり逃げようとするも、尼寺に男がいる訳もないと思っていた彼女に「人に非ず者」「鬼の仔」と蔑まれ逆上。
彼女を襲う中、「女に捨てられ」、「女に飼われ」、今また「女に蔑まれる」彼は 「女を喰らう鬼」 となることを決心。
その後、彼が彼女と同じ顔を見せ兄であることを明かしたことで彼女は発狂。
山中を走り回り、最期は崖から飛び降りて死亡する。

紫苑が死んだことで、醜草の成り代わりが始まった。
それに伴い、彼女と笹百合の関係を引き継ぎ、笹百合は彼の子を妊娠した。

「女を喰らう鬼」となることを決心した醜草だったが、笹百合に対しては何度も関わる内に次第に心に惹かれていったようだ。
黄梅を殺したのも笹百合を守るためだったようで、黄梅は笹百合の妊娠を良くは思っていおらず、
憎んですらいた様子だったことが、後に華鬘から語られた。

火傷跡は消えてはいるが、体温が上がりすぎると体が蒸発するという、
某包帯まみれの人みたいな体質になってしまっている(あっちは発火だが)。
また、その代償なのか凄まじい力を持つ。

「鬼の醜草」という名は紫苑の花の別名で、紫苑は台風に倒されてもいち早く戻る強い花である。
「醜」という字には「強い」や「頑丈」という意味もあり、
華鬘は「 今にも死にそうな赤子に強く生きよ 」ということで、彼にこの名を与えた。




※以下、最後のネタバレ※













◆あらすじ(part3)◆


対峙する椿と醜草の前に、陣痛で倒れ悲鳴を上げる笹百合。
その悲鳴が自身が産まれた直後に聞いた母親の「拒絶の叫び」に聞こえてしまった醜草の中で、
その時の「地獄」が蘇り暴れ始めてしまう。
その際、消えていた全身の火傷跡も蘇る。

かつて自身が受けた地獄を作り出そうとするかの如く暴れる醜草。
怪力で寺の屋根を支える梁を壊し、雪崩を起こして白泉寺を崩壊させる。
しかし、               


――地獄に君臨して――
――お前は何を求める――

――醜草?――


そして微笑む笹百合の顔が蘇る――



――吾が、求めたのは――



同じ頃、縷紅が殺されたことにより、
僧寺の者達が白泉寺の門を封鎖し、椿は笹百合を連れ出せなくなる。       

そんな中、遂に鳳仙達が登場。
中の人達を助けるべく、念仏を唱える僧侶達の合間を縫って、
尼寺の門に張り付けられた板を剥がそうとする鳳仙。
だが、尼寺の門を押し開けることは戒律を破るとして、
僧兵の槍が彼の手を貫くしかし、それで退く鳳仙ではなく、   


何が戒律だ。

俺は幕府ご禁制の春画師だぞ。
なめんなよっ!!


あっちなんか堕胎医だぞ!!
ちゃうわ!!



穴の空いた手で板を剥がし続ける。  
念仏を唱え続けるだけの僧侶に対しても、


手を合わせてるヒマがあるなら、
その手で誰かの手を掴んで来たらどうだ。


と訴え、彼らを動揺させる。
それでも邪魔する彼らであったが、
竜胆の命令を受けた日輪によって、ことごとくぶっ飛ばされたのであった。      


そして、遂に白泉寺の門を開けた鳳仙。
椿も笹百合も、崩壊で怪我を負った人達も解放された所に、
縷紅の部下であり、胡蝶を殺した男が現れる。      
全てを笹百合のせいにして彼女を刺し殺そうとするも、
飛び込んで来た醜草に阻まれ、彼によって、地面に叩き伏せられた。
刺された醜草はそのまま笹百合に抱き付き、                



――吾は、人として在りたい――




しかし、醜草の体は尼寺が崩壊したことにより、
火傷跡を抑えていた冷気が散ってしまい、蒸発寸前になっていた。   



花びらが舞う。

花見だ笹百合。




雪が花びらに見えたのか、最期に醜草は笹百合に花見を告げ、
それを聞いた彼女は彼に花見をしたいと告げた時のことを思い出す。



――紫苑様は……花がお嫌いで――
――私の話など聞いてはいなくて……――

――あの時――

――うれしそうに笑って――
――話を聞いてくれていたのは――

――貴方だった――



しこぐさ。




笹百合の言葉の後、限界を迎えた彼の体は蒸発した。    




――それは誰も見た事がない――
――壮絶な末路だったが――

――誰も恐れず――
――誰も動かず――
――誰も叫ばず――

――笹百合の咽び泣く声と――
――悼む経だけが山に響いた――



――醜草が人で在ったからだ――





後日、笹百合は少し小さめの赤子を出んだ。
そして、連翹が笹百合の父親だったことが明かされた。
修行のために尼寺に笹百合を捨てた張本人である。
でも、本人は近くで見守っていたらしい。 ダメ親父。


華鬘によると白泉寺に雪が積もるようになったのは、醜草が来てかららしい。
まるで灼けた醜草の傷を癒すかのように 。



……椿。
お前は笑うかもしれないけど、

俺は――御仏は居ると思う。



そりゃあ、

居るに越した事はないさ。




追記・修正よろしくお願いします。

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