この世全ての悪(Fate)

登録日: 2011/05/02(月) 22:31:27
更新日:2023/07/19 Wed 14:04:59
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この世全ての悪(アンリマユ)




Fate/stay night』に登場する用語。

本来「アンリマユ」とは、拝火教、ゾロアスター教における悪魔のこと。
しかし『Fate』におけるこれは、第三次聖杯戦争に召喚された『復讐者』のサーヴァントアヴェンジャーを指し、本来の拝火教のものとは違う。

というのも、第三次聖杯戦争で「アンリマユ」として召喚されたこのサーヴァントは拝火教の悪魔ではなく、
拝火教を信仰するどこかの部族において、災厄の全ての根源、つまり『この世全ての悪』として忌まれる役割を押し付けられた青年であり、
他の部族から災厄の元凶として忌み、苛まれたことで結果的に他の争いを収め、英雄として奉られた人間であった。
その生い立ちから分かるように、生前は強力な悪魔どころかただの平凡な人間であり、サーヴァントとして召喚されたところで何の力も異能もないため、
第三次聖杯戦争では、アインツベルンのマスターのルール違反によって第八のサーヴァントとして召喚されたものの、そのスペックは自称通り「最弱のサーヴァント」であり、
召喚するためにルール違反までしたアインツベルンには気の毒なことに、他のサーヴァントに敵うべくもなく、あえなく4日で敗退したという。




※以下ネタバレを含む

















『Fate/stay night』では、聖杯の正体としてもその名前と存在が語られている。
泥の形をもった純粋かつ圧倒的な呪いであり、触れるだけで人間はおろかサーヴァントさえも侵してしまう。
寧ろ霊体であるサーヴァントの方が危険性は高く、触れるのはおろか近づくだけでも悪影響を受ける。
これはアンリマユが強力だからと言うよりも、大聖杯を依代にした契約に英霊の側が応じて主従関係が成立し、大聖杯からサーヴァントとしての仮の肉体を与えられている制約の影響が大きい。

反英雄としての面を持つ英霊(アーチャー真アサシン等)ならば真っ当な英霊よりも悪影響は少ないようだが、それでも通常よりマシ程度。
最強の英霊ギルガメッシュさえも、あの泥の相手は我でも手こずると認めており、
ランサーもルーンを総動員した結界で防ごうとしたが、上級宝具の一撃を凌ぐ結界さえ瞬く間に侵食・突破されて、結局呑まれてしまった。

第四次聖杯戦争の後、衛宮切嗣が急激に衰弱し、35歳という若さで亡くなったのも、
聖杯を破壊した際に聖杯の泥に触れ、心身共にその呪いに蝕まれたのが原因。
しかし、ギルガメッシュは圧倒的なまでの魂の輝きとこの世全てを背負った器の大きさをもって呪いに耐え、逆に飲み干すことで受肉を果たした。
HFルートで黒桜に不意を突かれてあっさりやられたが、それでも黒化は出来なかった上に消化不良の為、『この世全ての悪』は腹痛を起こしたとか。
ただこれはあくまで彼が破格なまでの自我を持っていたから可能だっただけであり、セイバーの見立てでは『彼以外にこの泥を浴びて平気な英霊はいない』という。
Fateルートでも衛宮士郎言峰綺礼が放った呪いの奔流をモロに浴びてしまうが、『全て遠き理想郷』を投影し呪いを全て跳ね除けたため事なきを得た。

この呪いの影響を受ける前の本来の冬木の聖杯は、確かに願望器としての機能を持っていたのだが、
この呪いによって、受け入れた願いを他者の不幸によって叶えるモノに変貌してしまい、第四次聖杯戦争においては大火災を引き起こした。

なぜ聖杯がこのような代物になったかというと、先のアヴェンジャーが聖杯に還ったことが原因。

実はアヴェンジャーは「この世全ての悪であれ」と望まれた(あるいは呪われた)際に人間としての名前を呪術的な力で剥奪されたため、
その存在自体が「この世全ての悪であれ」という祈りと同化してしまっており、その祈り(願い)を聖杯が受け入れたことで、汚染されてしまったのである。
本来は召喚されなかった「悪を為すことで結果的に何かを救った」反英雄が召喚されるようになったのも、この現象によって聖杯の性質が変わってしまったため。

変質してしまった聖杯は、願いを叶える機能そのものは残っているものの、
それを達成する方法が『誰かをおとしめる(殺す)、何かを破壊することで願いを叶える』というものに固定されてしまった。

例えば「大金持ちになりたい」と願えばことごとくその願いをした人物の周囲の人間を殺しその保険金等によって当人に富を与え、
「地位が欲しい」と願えば上に立つ人間やライバルを殺して当人の地位を上げるという風になる。
その有り様を危険視したからこそ、切嗣と士郎は親子二代に渡って聖杯を壊そうとしたのである。

但し、例外としてキャスター程の魔術師ならば何の問題なく願いを叶える事が出来る他、
これらの性質は裏を返せば「極めて効率的に多くの人間を殺すことのできる兵器」として見ることもできる。
ギルガメッシュと織田信長はこの点に着目し、それぞれ「自身の意に沿った人間を選別する道具」「敵国の全てを吹き飛ばす大量破壊兵器」として運用しようとした。



Fate(セイバー)ルートでは説明中に名前は出ていないが、マーボーが泥の奔流を繰り出した際に、技名のように名乗っている。
また格ゲーではその通り超必殺技とされている。

イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが聖杯となったFateルート、間桐慎二が聖杯となったUBW(凛)ルートにおいては、
その持ち主の意図により聖杯の泥(呪い)を溢れさせられようとしたが、唯一間桐桜が聖杯となるHF(桜)ルートでは、
聖杯の依り代にされた桜自身が『この世全ての悪』と融和し、文字通り『この世全ての悪』を為す能力を持つサーヴァントが生まれようとしていた。


また作中では、BGMタイトルにも『この世全ての悪』が採用されている。
「丘の上の教会」のアレンジバージョンだが、禍々しい感じの曲で絶望感たっぷり。
Fate/hollow ataraxia』では多くの曲が新規で収録されている中、士郎と慎二が桜の部屋に侵入したエピソードで、桜の登場と共に再び流れた。


『Fate/hollow ataraxia』では、物語の鍵を握るサーヴァント、「アヴェンジャー」として「アンリマユ」が登場している。
クラスや真名で察せられると思うが、第三次聖杯戦争で「アンリマユ」として召喚されたアヴェンジャーと同一人物であり*1
本作以外でも、このアヴェンジャーが登場する際にはキャラ、ファン問わず「アンリ」と呼称されることが多い。


Carnival Phantasm』では聖杯くん(CV.下屋則子)として登場。登場人物の悩みを血飛沫舞う方法で解決させようとする素敵キャラになった。
秘密道具が全部同じ? それは『ダマリタクナールー!……死人に口はないんだぜ?』



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最終更新:2023年07月19日 14:04

*1 ただし、設定上「アンリマユ」本人には自我らしい自我が存在せず、『hollow』での彼の言動は「殻」として被った別のキャラクターの人格が反映されているため、第三次聖杯戦争でのアヴェンジャーがどのような性格・言動だったのかは不明である。

*2 (( ;゚Д゚