大魔神カノン

登録日:2012/03/17(土) 22:06:16
更新日:2024/04/03 Wed 13:19:03
所要時間:約 5 分で読めます





大魔神カノン』は、本作は2010年にテレビ東京で放送された、角川書店制作の深夜特撮テレビドラマ。
仮面ライダー響鬼』を途中降板し、角川書店に移籍した高寺重徳プロデューサーが久々に手懸けた作品でもあり、『クウガ』・『響鬼』の文芸担当で『響鬼』前半の脚本家でもあった大石真司がメイン脚本家だった。

制作費10億円という深夜特撮としては異例の高予算が投入され、この点も放送前には大々的に宣伝された。

なお、タイトルこそ往年の大映特撮時代劇映画『大魔神』の名を冠してはいるが、舞台設定が現代であることや『オンバケ』 『イパダタ』など元の映画に無い要素も多いことから、実質的に別物になっている。
角川書店では過去にも所有する大映版権を使って映画『妖怪大戦争』・『小さき勇者たち~ガメラ~』と往年の大映特撮映画のリブート作品を制作しており、その系譜の三発目とも言える。



【あらすじ】


古くから人間に大切にされてきた物に魂が宿った存在『オンバケ』。
彼らは人間の邪心の塊『イパダダ』と長年に渡って戦い続けてきた。

田舎育ちの少女・カノンは進学後に上京して一人暮らしを始めるが、都会の環境に馴染めず自分を見失っていた。
しかし、都会に生きるオンバケ達と出会ったカノンは、彼らとの交流を経て心を癒していく。

やがてカノンは、自分の故郷にかつて巨大なイパダダを倒した石像のオンバケ『大魔神』が眠っていること、そして大魔神を目覚めさせる鍵が自分にあることを知る…



【評価】


はっきり言って悪い。


「『響鬼』の前期プロデューサーが久々に手がけた作品」という前情報から、『響鬼』前半の作風が好きなファンの多くが
「予算が多くあるし深夜枠だから制約も緩い!こりゃきっと傑作になるぞ!」
…と、期待していたのだが、その数多くのファン達でさえも微妙な評価を下している。
実際、「『響鬼』前半は好きだが『カノン』はちょっと…」という意見が多く見られている他、『響鬼』のファンである漫画家の吉田戦車も放送前にはこの番組に期待していたものの、全話視聴後にはツイッターに微妙な感想だったことがうかがえるコメントを残した。

また、ニコニコ動画で番組の配信を行った際も無料配信期間があったにもかかわらず、他の番組と比較するまでもない、ぶっちぎりで低い売上を記録した
無料配信から8年以上経った現在では第一話の再生数も4万5000程度とそこそこの数字に落ち着いている。
とはいえ、二話は再生数が二万にも満たず、三話以降からどんどん右肩下がりになって最終的には1000にすら届かなくなっていることに変わりは無い。

おかげで今では「良い所が少なすぎて探すのが難しい」とまで言われている。



作品の問題点を簡単に挙げると、


▲物語の進行がゆっくり過ぎて間延びした感じがする

 ↓

▲さらに、特殊効果やアクションなど、特撮作品の命である「エンターテイメント性のある映像」を作り出す要素も足りない

 ↓

▲結果、映像面での迫力や物語面での盛り上がりに欠け、作品全体に退屈な雰囲気が漂う


という感じになるだろう。


この点は『響鬼』前期の作風に特に見られたことではあるが*1、『響鬼』は仮にも特撮ヒーロー番組であるがゆえに

「戦闘などで描かれるヒーローや怪人のアクションシーン」

「武器・変身グッズやディスクアニマルなどの玩具連携アイテム」

などの要素が製作で必須であったため、結果として賛否両論となりながらも見所があったのだが、


『大魔神カノン』の場合は、

▲深夜番組なので『響鬼』のように玩具の宣伝などヒーロー番組としての制約に縛られる必要がなく、予算もタップリある

 ↓

▲細部の作り込みにこだわる癖がある高寺プロデューサーが労力・予算・時間を好きなように注ぎ込み、自分の趣味を追求した

 ↓

▲結果、『響鬼』前半で賛否が特に大きかった明日夢パートを中心としたような構成になり、特撮技術が必須となるオンバケ達が活躍するパートは僅少と化
全体的にNHKの『朝の連続テレビ小説』のような作品、酷くいえば「特撮パートがなくても話が成立する、というかそもそも特撮番組である必要がない」作品に仕上がってしまった


という状態なのだ。
作風に関しても「『クウガ』『響鬼』に見られた説教臭さが余計に推し出されている」「キャラクターがあまりにもピュア過ぎる」という指摘も多い。
また「大魔神が物語の最後に参上する」という原典映画(約2時間)のクライマックス展開を2クールドラマの最終回に持ち込んでおり、「大魔神登場」を本作の目玉として期待したファンも流石に待ちくたびれた…かも知れない。

結果的に本作の存在そのものが『仮面ライダー響鬼』の路線変更によるファン同士の対立をある程度収束させた=プロデューサー交代は必要だった事を認知させたという皮肉な評価となってしまっている。
また、本作の評価が響いたのか高寺プロデューサーは以後映像作品の制作に携わっていない。

一応、主人公カノンの成長などの物語的要素はきちんと描かれているので、特撮番組として見なければ案外そこそこいける…かもしれない。
フォローになってないかもしれないけど…。
あとOP・EDソングは普通に良い曲なので必聴。
ちなみにEDの歌い手は前期・後期共に多数のアニソンを歌う事となるLiAが担当。


【メディアミックス】

角川書店から漫画版が出ているが、話を追うならコレを読んだ方が早い。今なら電子書籍版も配信されている。
さらにドラマ版の不満点の一部が改善されているとしてこちらのほうが好評価でもある。
ちなみに乳首券もあるよ!!


【登場人物】


■巫崎カノン
主人公。『響鬼』で言う「ヒーローとの触れ合いで成長する若者」と、明日夢ポジションにあたる。祈りの歌の歌い手だが、あらすじに書いてある通り、物語前半は色々とあり非常に暗い性格で一時他人を信じることを止めようとする程だった。しかしオンバケ達との出会いにより徐々に明るさを取り戻していく。
笑顔が可愛い。兄貴はオダギリジョー。


■タイヘイ
兜のオンバケ。『響鬼』で言うヒビキポジション。
純粋バカな正義漢。
物語後半では他のオンバケたちがイパダタを追うため別行動を取る中、タイヘイはカノンの傍にいる事となったため、必然的に戦わなくなる
確かに一般人で守るべき存在であるカノンを戦いに巻き込ませないという意味では正しいのだが…。


■オンバケたち
イパダダと戦う正義の妖怪たち。基本的に全員が善人。

金魚のイケチヨやのトモスケ、埴輪のブチンコなどがいる。登場が数話だけのオンバケも多い。
『響鬼』は怪人っぽいと言われつつも、まだヒーロー然としたデザインだったが、こちらは完全に怪人なデザインである。

余談だが、演じた役者に柴田理恵やブレイク前の鈴木福がいたりとかなり豪華。


■ブジンサマ
別名オオマヒト。見ればわかるように大魔神である。
その昔、人々の為に尽力を尽くしたが、ある事件により迫害を受けてしまい、以降引きこもりとなってしまった。
存在そのものは序盤から明示されているが、本人が動きだすのは何と最終回だけである。
確かに映画の大魔神も最後の最後でようやく動き出すけど…。
一応、回想において動く場面も散見されてはいる。


■後根幸太郎
カノンの元カレでバンド「0℃(レイドシー)」のリーダー。
カノンの性格を暗くさせた元凶にしてどうしようもないクズ
高寺特撮によくある分かり会えない敵役ポジションにして何の擁護も出来ないクズ
物語途中でイパダダに憑依されるが、その事を本人含めて知る者は誰一人いなかった。活かせよ…。
漫画版だと一応改心する。


■イパダダ
オンバケたちの宿敵にしてラスボスというか、こいつ以外に敵が登場しない。おかげで序盤から登場しておきながら、終盤まで追いかけっこが続いていく。
恨みを残して死んだ人間の成れの果てであり、別個体のイパダダも存在していた事が示唆されている。『響鬼』で言う魔化魍のポジション。


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最終更新:2024年04月03日 13:19

*1 『クウガ』にも見られていたと指摘する声も多い。