クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦

登録日 :2010/06/01(火) 21:19:22
更新日 : 2017/07/19 Wed 21:13:16
所要時間 :約 9 分で読めます





歴史を変えるおバカ参上!


2002年に放映された『クレヨンしんちゃん』のオリジナル映画第10作目であり、映画化10周年記念作品。
また、劇場版としては最後のセル画制作作品でもある。
キャッチフレーズは「歴史を変えるおバカ参上!」。


アニメーション映画でありながら戦国時代の風景や生活が丁寧に描かれ、
合戦でも単なる火縄銃の連発や刀のチャンバラではなく、総合的な組討術や弓矢や投石を使った火縄銃の援護など、
実写の時代劇でも詳しく描かれない描写もされている。
また、敵軍が進軍の妨げになる或いは、兵糧になると思われる収穫間近の稲を刈るという、農民への被害がアニメ映画で明確に描かれるのも珍しい。
そのため専門家からも「合戦の映像資料としては最も正確な物」と高い評価を得た。

クレヨンしんちゃんならではのギャグの要素は控えめで、又兵衛と廉姫の身分違いの恋の方が主題となっているため、本格的時代劇としての色合いが強く、
全体的にシリアスな雰囲気が漂っている。
また、作中で明確な「死」が描かれ、結末も今までのクレヨンしんちゃんとは違い、純粋なハッピーエンドではない。

クレヨンしんちゃんの映画の中でも特に評価が高く、『オトナ帝国の逆襲』と並んで2大感動名作と呼ばれている。

また、評価の高さからか、『BALLAD 名もなき恋のうた』というタイトルでクレヨンしんちゃん初の実写映画化を果たすが、
重要なシーンが多々カットされたことや全体的に雰囲気が軽くなってしまったことなどから、ファンからの実写版の評価は低い。

ちなみに『雲黒斎の野望』とは舞台となる時代がかぶっているはずであるが、そちらとはパラレルワールドなのか、描写は異なっている。


なお、この映画が受賞した賞は下記の通り。一連の劇場版シリーズでも初めての公式受賞でもある。

◇2002年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞
◇2002年度日本インターネット映画大賞・日本映画作品賞
◇2002年第7回アニメーション神戸個人賞
◇第57回毎日映画コンクール・アニメーション映画賞
◇東京国際アニメフェア2003・劇場部門優秀作品賞
◇東京国際アニメフェア2003・個人賞部門監督賞
◇第22回藤本賞



■あらすじ
ある日、野原一家全員が泉に佇むお姫様の夢を見た。
しんのすけが幼稚園から帰るとシロが庭に大きな穴を掘っていた。しんのすけはみさえに庭の修復を言い渡されるが、逆にシロと一緒に更に掘り進める。
掘っていくうちに、しんのすけは汚い字とぶりぶりざえもんの絵が書いてある手紙が入った小さな箱を見つけた。
手紙に書いてある「お姫様」という言葉で夢で見たお姫様を思いだしたしんのすけがお姫様に会いたいと願うと、彼はいつの間にか夢の中でお姫様を見た場所にいた。
辺りを探索する中でしんのすけは井尻又兵衛由敏という名の侍と知り合い、さらに又兵衛の案内で夢で見たお姫様「廉姫」に出会う。

一方、春日部でしんのすけの行方を追っていたひろしは、手紙の「天正2年」を手掛かりに調べた結果、
しんのすけは過去にタイムスリップし、自分たちも過去に行くことになると予測。野原一家もしんのすけを連れ戻す為に動き始める。



■登場人物

野原しんのすけ[声:矢島晶子
歴史を変える我等がおバカな5歳児。
戦国時代にタイムスリップし、又兵衛と廉姫に出会う。
今回は対応や行動も真面目なのが多くギャグは控えめ。
別れ際に又兵衛から馬手差を託される。
今回の一件はなんと現代の歴史史料に掲載されており、そこでの漢字表記は「野原信之介」。

野原ひろし[声:藤原啓治
お馴染みしんのすけの父親。みさえ、ひまわり、シロを連れて車で戦国時代に突入する。
戦場を愛車の日産パルサーセダンで駆け回ったりボディーブレードで敵の大将を怯ませたりと活躍する。

◆野原みさえ[声:ならはしみき]
しんのすけの母親。ひろし、ひまわり、シロと共に車で戦国時代に突入する。
鞘付きの刀で敵の刀を防いだ。

◆野原ひまわり[声:こおろぎさとみ]
ひろし達に連れられて戦国時代にやって来る。シロと共に車の中で観戦する。

◆シロ[声:真柴摩利]
ひろし達に連れられて戦国時代にやって来る。
タイムスリップする前に小屋の屋根を傷付けられた。
また、自分が掘った穴を埋めようとしたしんのすけにクロスチョップを見舞う。


井尻又兵衛由俊(いじり またべえ よしとし)[声:屋良有作]
戦国時代に来たしんのすけが出会った侍。
春日家の家臣で廉とは幼なじみ。空を見上げるのが好きで「青空侍」と呼ばれている。
戦場では鬼井尻と恐れられているが女性には弱い。廉姫に想いを寄せているが身分の差に苦しんでいる。
終盤に大蔵井家との戦に赴く。
しんのすけからは「おまたのおじさん」と呼ばれた。

◆春日廉(かすが れん)[声:小林愛]
野原一家の夢に出てきたお姫様で春日城の姫。又兵衛の幼なじみで彼に想いを寄せている。
しんのすけが最初に現れた泉が好きでよく出入りをしている。終盤に又兵衛を心配して戦場へ走る。
しんのすけからは「廉ちゃん」と呼ばれた。
「おーい、青空侍!」

◆春日和泉守康綱(かすが いずみのかみ やすつな)[声:羽佐間道夫]
春日城の主で廉の父親。
温厚な性格の好人物でしんのすけが未来から来た話も信じていた。
ひろしの話を聞き、戦になることを覚悟に大蔵井家からの婚姻話を断る。

◆犬居兵庫助頼久(いぬい ひょうごのすけ よりひさ)[声:大塚周夫
春日家に使える老将。康綱に絶対の忠誠心を持っている。
終盤に動揺する家臣たちに覚悟を説く。
しんのすけの話を聞いた際にカレーを興味を持つ。

◆堀川新八郎忠継(ほりかわ しんぱちろう ただつぐ)[声:納谷六朗]
春日家の家老。実直な性格で隼人の失踪に怒りを見せていた。
カレーを食べて辛いと漏らす。

◆榊隼人佐晶忠(さかき はやとのすけ あきただ)[声:玄田哲章
春日家の家老。序盤に又兵衛と共に合戦の指揮をしていた。
終盤の大蔵井家との戦いを前に失踪する。

◆仁右衛門(にえもん)[声:緒方賢一
井尻家の足軽頭。又兵衛の父親の代から仕えている。
又兵衛を「若」と呼び、普段は軽口を叩いているが本心では慕っており、無二の信頼を置いている。

◆彦蔵[声:宮迫博之]
又兵衛が撃退した野伏せり。元大蔵井家の足軽。
見逃してもらった又兵衛の強さと懐の深さに敬意を持ち家来になる。
顔に大きな傷があり、長い太刀を持っている。

◆儀助[声:蛍原徹]
彦蔵と共に又兵衛の家来になった野伏せり。大柄で金棒を持っている。

◆吉乃[声:山本圭子]
廉に使える老女。礼儀に厳しいが廉には愛情を持って使えている。わりと子供好き。

◆お里[声:上村典子]
仁右衛門の妻。戦で息子を亡くしている。勝気な性格で夫を尻に敷いている。


◆かずま[声:真柴摩利]
風間くんのご先祖。
弱気な性格だが切羽詰まると現代の風間くんのように饒舌になる。

◆おおまさ[声:一龍斎貞友]
マサオくんのご先祖。
強気な性格でリーダー格かと思われたがそんなことはなかった。

◆ねね[声:林玉緒]
ネネちゃんのご先祖。
大人しい性格だがブチ切れるとネネちゃんそっくりになる。

◆ぼーしち[ 声:佐藤智恵]
ボーちゃんのご先祖。
ノリから性格までボーちゃんとそっくり。


◆大蔵井高虎(おおくらい たかとら)[声:山路和弘]
廉の婚約者だった大名。婚姻破棄を口実に春日領へ攻め込む。
権謀に長け、戦国の世で力を伸ばして行くタイプの人物として描かれている。

終盤の春日家との戦で追い詰められて逃亡を謀り、立ちふさがったしんのすけに斬りかかるがみさえに止められ、
ひろしのボディーブレードの一撃としんのすけの頭突きで倒される。


◆真柄太郎佐衛門直高 (まがら たろうざえもん なおたか)[声:立木文彦
大蔵井家馬廻衆。君主に忠実な武勇の侍。又兵衛と互角に戦う実力の持ち主。
敵方でも勇敢に戦ったしんのすけや又兵衛に敬意を表した。武器は長巻。
モデルは恐らく朝倉家家臣・真柄直隆。
五尺三寸の大太刀を用いて数々の武功を立て、最期は姉川の戦いにて12段構えの徳川陣を単騎で8段まで突き破り果てたと伝わる豪傑である。


作中に登場する道具・用語

  • 鉄砲
伝来地から「種子島」で有名な火縄銃。「雲黒斎の野望」にも登場している。原始的な銃であり、銃口から弾丸と火薬を込めるため、銃弾装填に時間がかかる。作中では装填時間中に石つぶてでの補助攻撃を行う様子がある。

  • 攻め櫓
春日合戦の際、大蔵位が用いた攻城兵器。櫓に車輪をつけて移動できるようにし、高い位置からの攻撃を可能としたもの。城壁を超えて矢や焙烙火矢(当時の手榴弾のようなもの)の攻撃が可能なため、春日軍は一時劣勢に立たされたが、又兵衛が焙烙火矢を持った足軽の腕を矢で射抜き、それを櫓に落とさせて爆発させて破壊した。

  • 母衣
大蔵井軍で城内一番乗りを果たした佐久間権兵衛がつけていた風船のようなもの。「ほろ」または「ぼろ」と読む。侍の背部を大きく膨らませ、自身を目立たせる細工。甲冑の補助武具で、兜や鎧の背に巾広の布つけて膨らませ、流れ矢や石などを避けるために使われたとされる。

  • 南蛮胴
織田信長が着用していたことで有名な鎧。ヨーロッパからもたらされた西洋甲冑(全身鎧)を日本人でも着用できるように調整したもの。作中では大蔵位高虎が着用している。

  • 馬廻衆
武将の信頼篤く、武芸に長けた者達で構成される総大将の親衛隊。その任務は文字通り総大将の周囲を守ることであり、防衛のために彼らが武器をとる(本陣まで敵が攻めてくる)ことは敗北寸前であることを意味する。

  • 長巻
馬廻衆の一人である真柄太郎左衛門直高が使用している武器。1メートルほどの刀身と、同じほどの長さの柄を持つ。
薙刀が「長い棒の先に刃をつけた」ような形状なのに対し、こちらは「日本刀の刀身と柄をそれぞれ1メートルほどに伸ばした」ような形状である。
全体的に重く腕力が必要だが、その大きさのため振り回すだけで骨を砕き四肢を斬り落とす威力があり、武芸の心得の少ない農民兵などでも扱えるため戦国時代前半まではよく戦に用いられた。
しかし時を経るにつれ集団戦法が確立し、周りを巻き添えにしかねない長巻は廃れ槍や刀が戦場の主力武器となっていった。
姉川の戦いを描いた屏風には、真柄太郎左衛門直高のモデルとなったと思われる真柄直隆が「太郎太刀」という大太刀を振るって奮戦する姿が描かれている。

「もとどり」と読む。チョンマゲの「マゲ」の部分。もとは兜をかぶった時に蒸れないよう隙間を作るための髪型。これがないと兜がかぶれない(戦ができない)という考え方から「武士の魂」とも考えられ、髻を切られた(魂を失った)武士は武士を辞めねばならなかった。作中では大蔵位高虎が首の代わりに井尻又兵衛に髻を取られるが、これは武将にとって討ち取られるよりも屈辱的な行為(生き恥を晒す)である。

  • 金丁
作中でしんのすけと又兵衛が行った。近世の頃に誓いの印として金属製の物を打ち合わせたる行為。武士は刀の刃または鍔 (つば) 、女子は鏡などを打ち合わせた。

追記、修正お願いします。

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