怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath (MTG)

登録日:2010/09/13 Mon 15:03:55
更新日:2023/03/28 Tue 19:36:18
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「休息も慈悲も与えぬ。何があってもだ。」



概要

怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrathはマジックザギャザリングのレギオンに収録された伝説のクリーチャー。
レアリティはレア。

解説

怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath (5)(白)(白)(白)
伝説のクリーチャー-天使(Angel)
飛行、先制攻撃、警戒、トランプル、速攻、プロテクション(黒と赤)
6/6

テキストを読んだ瞬間、「本当に白のクリーチャー?」と誰しも目を疑った。
それだけこのクリーチャーの能力は当時、マジックの常識を逸脱していた。

とにかく強い。サイズが6/6とドラゴン並み。かつ飛行があり、トランプルと先制攻撃があるので相手のブロックによる防御を潰しダメージを与えやすい。速攻があるため奇襲も可能。
除去するにしても大半の除去呪文を保有する黒と赤に対するプロテクションがあるため、呪文による破壊が非常に困難。 
相手次第ではこれ一体でゲームを終わらせる事ができる。実に厄介極まりないクリーチャーである。

ただしマナコストも相応に重い。トリプルシンボル3つを含む8マナは重く、普通のデッキに投入される機会はかなり少ない。
なので、リアニメイトやオースのようなマナコストを踏み倒して戦場に出すデッキや、このクリーチャーが収録されたオンスロートブロックにて流行った白コントロールのように低速かつマナを安定して確保できるデッキによく採用された。

イラストは美麗な女性の天使。初登場時のレギオンだと険しい顔だが、スカージ*1の直前のブロックということもあり今のMTGにはない独特の味がある。
その後もデュエルデッキをはじめイラスト違いのカードが何枚も収録されている。「紫がかった黒髪の、険しい顔の美人」として描かれており、萌えイラストが忌まれやすかった時期にもアクローマを購入する人もいた。


登場当時は強烈な能力なだけにトーナメントシーンでも出番が多く、同じビッグクリーチャーである夜のスピリットと席を争った事もあった。
だが、アクローマ自体がそうであったように、この頃から拍車がかかってきたクリーチャーインフレは後年さらに進み、次第にアクローマの評価も下がっていった。
それでもカード人気は衰えず、時のらせん期における人気投票でも上位入賞を果たす。時のらせんにてタイムシフトとして再録されたのももしかしたらそのためかもしれない。
その後もリメイク版のカードが数枚作られており、アクローマ人気は今なお続いている。

現在ではまっとうなクリーチャーとしては使われず、キーワード能力の多さを参照するカードとの相性を見越した採用が多い。
キーワード能力を7つも持っているため、これを参照するカード、たとえば《石塚の放浪者》《魂剥ぎ》との相性が良い。現在ではこういった大味なデッキで参照先としての仕事をもらうことが多い。
時のらせんタイムシフトとして収録されているため地味にモダンリーガルで、カジュアルモダンが大盛況だったころはよく《信仰無き物あさり》などで墓地に落とされていたものである。
一方「統率者戦」では、統率者に指定すると「白単!重い!遅い!」という三重苦を背負うことになる。
同じ重さでリセットカードとの相性が良い《希望の天使アヴァシン》あたりの方が使いやすいため、統率者に指定されることはほとんどなかった。しかも最近では軽くて強力な天使も増えてきたため、なおのこと指定されなくなってきている。

現在もコレクションからデュエルまで幅広く愛されているカード。
「雑に強い能力を大量に乗せたカード」のことを開発部用語で「流し台型デザイン*2」と呼ぶのだが、これの代表格がアクローマ。
そして開発部用語は別に公式のルール用語というわけではないため、ぶっちゃけwikiやマローの記事まで熱心に読んでいるような層以外には「流し台?台所の嫌がらせ屋か何か?」と間違った印象を与えやすい。そういった層、特に古参層には「アクローマ系」と呼んだ方が通りが良いのである。最近はキーワード能力とか開発部用語がやたら増えているからなおのこと。
流し台型の代表的な例としては《悪斬の天使》《原初の夜明け、ゼタルパ》《黎明をもたらす者ライラ》、色は変わるが《鋼の風のスフィンクス》(白青黒)など。白のフィニッシャーやファッティ枠はどうしてもこの流し台型デザインになりやすく、ここからの脱却が求められている。


当時はまだルールに対する不備に対しては今以上に厳しい時代。当時の白としては珍しい能力が雑に詰め込まれているせいで非常に見落としが発生しやすく、特に「トランプル」絡みは非常によく揉めたものである。
中には「使用者がトランプルを忘れていたことを対戦相手が申告し、使用者側がゲームロス」なんてこともあったようで、これ自体はのちのリメイク《憤怒の天使アクローマ》でも起きている。


余談だが、このクリーチャーは登場前に名前のみ発表されていた。その際にガセ情報が流れ、正式発表までは以下のようなクリーチャーと思われていた。
怒りの天使アクローマ/Akroma, Angel of Wrath (3)(白)(白)
伝説のクリーチャー-天使(Angel)
飛行、警戒
(3)(白)(白)、怒りの天使アクローマを追放する:全てのクリーチャーを追放する。
4/4(3/3と表記してある場合もあった)

たぶんWrathという言葉が「神の怒り」を想起させたので、こういうテキストではないかという憶測に尾ひれがついて広まっていったのだろう。当時のインターネットはまだ「まとめサイト」のようなものもなかったし。
セラの天使を強化した感じだが、この能力通りでも普通に強い……というか、もしこの能力で登場していたらコントロールデッキには重宝されていただろう。
意外にも似たようなテキストを持つカードは存在せず、ウルザズ・デスティニーの《まやかしの預言者》や、神河物語の《浄火明神》、時のらせんの《円盤の大魔術師》あたりが比較的近い。
これらと比較しても相当なハイスペックであり、クリーチャーしか収録されなかったエキスパンションであるレギオンの他カードの存在意義が完全否定されてしまうのは想像に難くない。
実際は《星の嵐》とか《めった切り》とかあったせいで……。

また同時期の「カードを作るのは君だ!」でも、アクローマのように強い能力をたくさん詰め込んだクリーチャーを提案する人が多かったようである。
特にアクローマが見向きもしなかった青を殺すための能力が好まれたようだ。今の感覚だと雑なデザインに見えるだろうが、当時の人々にはそれだけ魅力的なクリーチャーとして見えていたのである。



関連カード

Akroma's Memorial / アクローマの記念碑 (7)
伝説のアーティファクト
あなたがコントロールするクリーチャーは飛行、先制攻撃、警戒、トランプル、速攻、プロテクション(黒)とプロテクション(赤)を持つ。
未来予知で登場した、アクローマと同等のキーワード能力を付与するアーティファクト。
コスト・パフォーマンスだけで言えば破格であり攻守両面を強化できるが、P/Tへの修整が無いため打点には繋がらないことが難点。

クリーチャーではないので踏み倒す手段が少ないこと、たとえ踏み倒せてもクリーチャーを強化すること以外何もしないのに7マナとやたら重いことなどから噛み合うデッキが非常に少なく、
そのくせ伝説のアーティファクト(当時は対消滅ルール)ということもあってそれはもう尋常でないほどに使いにくい。
しかしこんなカードでも抜け道は意外とあるもので、たとえば《アクローマの記念碑》自体をクリーチャー化すれば、クリーチャーを別途用意しなければならないという点をたやすく解消できる。
ただ基本的には本当に使いづらいカードであり、カジュアル勢が「フィニッシャー枠」として入れる以外ではあまり使われていなかった。だいたい使うと、試合後に「それ別のカードにした方がいいよ」と感想戦という名の説教が始まる。


憤怒の天使アクローマ/Akroma, Angel of Fury (5)(赤)(赤)(赤)
伝説のクリーチャー — 天使(Angel)
この呪文は打ち消されない。
飛行、トランプル、プロテクション(白)、プロテクション(青)
(赤):憤怒の天使アクローマはターン終了時まで+1/+0の修整を受ける。
変異(3)(赤)(赤)(赤)(あなたはこのカードを、(3)で2/2クリーチャーとして裏向きに唱えてもよい。これの変異コストで、これをいつでも表向きにしてもよい。)
6/6
次元の混乱で登場した、別の歴史をたどったアクローマ。
キーワード能力が減った代わり、変異によって素早く出すことが可能になった。変異で出して《一瞬の輝き》で明滅させるとかなり強力で、こういったコンボやマナ加速を利用するデッキではしばしば採用された。
統率者戦では、ドローソースが少なかった苦行色時代の赤単の定番統率者だった。自分の能力でパワーを上げられるため、統率者ダメージでの勝利を狙いやすいのだ。
一方で本家アクローマと異なり、リアニメイトで使われることは皆無。変異とパンプアップ能力が腐ってしまうため、事実上「6/6 飛行、トランプル、プロテクション(白と青)」のクリーチャーに成り下がるため。
それなら他にもっといい選択肢がいくらでもある。たとえば当時のスタンダードなら本家アクローマがいたわけだし。


イクシドールの理想、アクローマ/Akroma, Vision of Ixidor (5)(白)(白)
伝説のクリーチャー — 天使(Angel)
飛行、先制攻撃、警戒、トランプル
各戦闘の開始時に、ターン終了時まで、他の、あなたがコントロールしているクリーチャーはそれぞれ飛行、先制攻撃、二段攻撃、接死、速攻、呪禁、破壊不能、絆魂、威迫、プロテクション、到達、トランプル、警戒、共闘のうち、自身が持つ能力1種類につき+1/+1の修整を受ける。
共闘
6/6
統率者レジェンズでリメイクされたアクローマ。プロテクションと速攻を失い、代わりに他のクリーチャーを支援する能力を得た。
単騎での攻撃力が落ちたのは無視できないが、共闘を持つため先制攻撃、威迫、トランプルを持つ《ロフガフフの息子、ログラクフ》のようなキーワード能力持ちの共闘と組み合わせると強力。
ほかにも《一枚岩の努力》《月皇の司令官、オドリック》《血に呪われた者、オドリック》など、キーワード能力の多さを参照するようなカードをデッキに入れてもいい。
以前の単騎駆けでさっさと相手を制圧するアクローマと異なり、デッキの幅を想像させるためのカードである。問題はアクローマ自身の7マナという重さとどう向き合うかだ。



ストーリー


オンスロート・ブロックで登場。幻影魔道士イクシドール(《現実を彫る者イクシドール》。ただし現実を彫る能力に目覚めるのはもう少し後)が生み出した恋人の似姿の天使。
イクシドールは元々、恋人ニヴィアとともに新天地を目指して陰謀団の闘技場で戦っていた。ニヴィアのことをとても大切にしていたが、《触れられざる者フェイジ》に彼女を殺されてしまう。
さらに賭け金が払えずに砂漠に追放されてしまい、そこで狂気に侵される日を送る。彼はある日「フェイジに襲われて右腕を失うが、ニヴィアにそっくりな天使が助けに来てくれる」という夢を見た。
目覚めるとイクシドールの右腕は失われており、ニヴィアにそっくりな天使「アクローマ」が立っていた。彼はアクローマにフェイジ殺害を命じ、アクローマは言われるがままにフェイジを殺しにいく。
そしてイクシドールは、アクローマを作り上げた「自分の夢を現実にする能力」をもって悪夢の国トポスを作り上げ、フェイジと陰謀団への復讐にとりつかれていくのだった。

フェイジはイクシドールにとっては恋人の仇でも、《陰謀団の総帥》にとっては最終兵器にして恋人であり、《クローサの拳カマール》にとってはたった一人の妹(ジェスカ)である。
カマールはフェイジがジェスカとしての意識を取り戻してくれることを願って説得しながら戦うが、アクローマはそこに乱入してフェイジを殺そうとする。
アクローマは怒り狂ったカマールによって妨害され、フェイジに足を触られたことで苦痛に嘆きながら敗走する。帰るころにはすっかり足がダメになっていたアクローマに対し、イクシドールはより強靭な脚として豹のものを与えた。

アクローマの介入は、総帥とカマール両者にとって邪魔である。対イクシドール・アクローマのために総帥とカマールは一時的な同盟を組み、イクシドールの作り上げた悪夢の国との戦争へ向かう。
一方イクシドールも作れる限りの存在を作り上げ、2人が率いる陰謀団とクローサ軍を返り討ちにしようとする。アクローマはこの同盟軍を返り討ちにする軍の指揮をとることになる。
その戦争の際にイクシドールはフェイジから噴き出した巨大な死のワームに飲まれてしまい、行方不明扱いとなった。
イクシドールを失ったことでイクシドールの持つ責任を負うこととなったアクローマは、フェイジを殺せという命令を遂行するべく宗教を作って発展させたり、謎めいた街「Sanctum*3」へ行ったりそのSanctumでフェイジと対峙したり政治的な影響力を確保するべくパーティーを開いたりと忙しい日々を送る。
そんなパーティーの席でアクローマは偶然、イクシドールを飲み込んだワームにつながるポータルを発見。イクシドールを助けるべく巨大ワームの口の中に入っていった。消化されてダメージを負いがらついにイクシドールを見つけたアクローマは彼を助けようとするが、そのイクシドールの傍らにはニヴィアの似姿があった。
イクシドールは会話することすら拒絶し、たとえ死ぬとしても恋人の幻影とともに過ごしたいと願う。創造主の命令に従うしかない人工物のアクローマは、それに従って引き下がるしかなかった。

数ヶ月後、アクローマは部下からSanctumで奇妙な出来事が起きているという報告を受ける。そしてなんやかんやあってその街でフェイジと対峙、激しい戦闘になる。戦闘の途中でカマールが介入、フェイジ(と偶然近くにいたザゴルカ)とほとんど同時に殺されてしまう。最期にフェイジの死を目の前で見たアクローマは、自らの使命を果たせたことで怒りを捨てて安らかな気持ちで死を遂げた……のだが、不思議なことが起こって三者は融合、《邪神カローナ》となったのだった。
アクローマとしての存在の物語はここで終焉を迎える。つまり出番自体は結構短いキャラだったりする。

……のだが、実はオンスロート・ブロックの小説というのはほかのブロックと様々な点に不整合が存在し、しかも細々した部分がそれはもう多いので非常にヴォーソス泣かせ*4。そもそもオンスロートはカード化されていない重要シーンがやたら多いことに加え、「神霊/Numena」というこのブロックにしか登場していない高位存在が出てきたりとMTGの物語としても結構浮いているせいで非常に説明が難しく、しかもかつてのストーリーを解説する公式記事でもその辺がバッサリ切り捨てられていたりするので本当に難しい。
マニアックなヴォーソスを3人連れてきて語らせると絶対に食い違いが発生する。MTG wikiも気が付くと表記がガラッと変わっていたりするし、若月繭子女史の「あなたの隣のプレインズウォーカー」でもアクローマのことはほとんど触れられていない。「なんやかんや」「不思議なことが」と表記したが本当にそうとしか言えないというか、物語の都合でこうなったんかなぁというか……*5
そのため分かりやすい情報源が存在しておらず、「フェイジがオンスロート・ブロックの物語の途中でジェスカに戻っている」とする資料などもあり本当に混迷としている。たぶんこの部分のあらすじ説明を見て「俺の知ってるのと違う!」と思った人もいるだろう。
そんな物語の主要人物なので当然その性格の説明のされ方も人によって異なってくるし、アニヲタwikiに限らずオタク界隈というのは分かりやすければ事実より話題性の方が重要視されるような世界。そんな中で伝言ゲームが繰り広げられ、ますますわけのわからないことになっていくという始末*6
そのくせ妙に人気が高いという非常に奇妙なキャラである。キャラがよく分かってないけど妙な人気があるっていう意味では《カテラン組合の首領》とか《黒き剣の継承者コーラシュ》とかいるんだけどさ……。

そんな彼女の性格は、カード名やフレーバー・テキストではポケモンのオコリザルみたいに怒ってばかりいるような印象が強いが、実際はそうでもない。イクシドールが無意識の中で恋人に似せた創造物ということもあってか、《回復期》などのイラストでは相応な慈悲を見せているし、上述の通り献身的・政略的な一面も併せ持つ。
ただし自分に敵対する存在にはカード名通り激しい怒りを覚えるようである。日本語では「休息も慈悲も与えぬ、何があってもだ。」と印象深く訳されているものは、英語だと「No rest. No mercy. No matter what.」。否定の三連発という、日本語以上に過酷な性格が表現されている。


イラストはレギオンの目玉となるもう一人の女性レジェンド、《触れられざる者フェイジ》と対になっている。もともと1枚の絵を2つに分割したもののようである。
この2人はイラスト以外でも様々な点で対になっており、
ストーリーでは「恐ろしい存在になってしまったが大切な人から愛されているフェイジと、美しい女性の姿でありながら決して大切な人から愛されなかったアクローマ
ゲーム上では「黒のカードで事実上踏み倒すことができないフェイジと、白のカードで踏み倒し前提のようなデザインのアクローマ
という形で、当時としてはかなりストーリー面に力を入れて作られたカードだということが分かる。
そのうち「兄弟戦争」のように、カード化していない主要人物のカード化やストーリーの整頓を兼ねてオンスロートに戻ることもあるかもしれない。



「修正されるべき記事に対する追記は悪ではない。」


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最終更新:2023年03月28日 19:36

*1 レベッカ・ゲイ女史の「追放」が起きたとされる時期で、イラストの雰囲気の刷新・統一が図られた時期とされている。詳しくはリンク先の《Persecute Artist》の説明文でもどうぞ。

*2 Kitchen-sink design。Kitchen-sink自体は英語の慣用句で「何でもかんでも詰め込む」ことを意味する。

*3 本来の意味は「聖域」。カローナのつなぎとして名前が有名なザゴルカがリーダーを務める、陰謀団から追われた人が集まる街

*4 インベイジョン時代に日本の雑誌に書かれた《ウルザの罪》前後のストーリー解説と実際のストーリーがまったく異なる、オンスロート・ブロックの「レギオン」では人気種族であるスリヴァーが復活したがその復活エピソードも「公式サイトの中で」食い違った記事があるなど、当時のヴォーソスは存在が軽んじられていたところがあった。最近も兄弟戦争と昔の日本語版コミックスの描写がまったく異なっていて、「カイラとウルザって夫婦仲最初から冷え切ってたんだ……」とたいへんショックを受けるオールドヴォーソスの姿があった。「ラヴニカへの回帰」のころにようやくこの姿勢が改まってくることになる。いい時代になりましたね、ほんとに……。

*5 元々カローナは「Karoma」という名前で登場していた。Akromaの露骨すぎるアナグラムなので、当初の設定に何らかの変更があったという推測がある。……つまりこんな話が出てきてしまうほど、設定がそりゃもうこんがらがっていたのである。最近のストーリーが単純明快ですっきりしていて分かりやすいのは、ひとえにこの時期の反省があるからだろう。

*6 たとえば「スケベおじさん」として有名なジョー・カディーンは、もともとはミラディン人が子孫作って繁栄できたらいいね、というような趣旨の説明を黒スレ民が非常に恣意的に翻訳したものが、当時の黒スレ人気、島田紳助コピペブーム、「新たなるファイレクシア」におけるあまりのカスレアっぷり、そして当時雨後の筍のように出ていたお遊びwiki(ニコニコ大百科やピクシブ百科事典、アニヲタの集いなど)の波に乗っかって広まってしまったもの。ほかにも「すべてウルザが悪い」あたりも、ウルザの難しいキャラ評価を単純化してくれるので好まれやすいし、筆者は知らなかったが「ギデオンがゼンディカーを見捨ててエルドラージから逃げた」という噂もあったんだそうな。単純化したネタはお遊びwikiや匿名掲示板との相性が非常にいいため、都合のいい部分ばかりが広まるうちに「実情からかけ離れたものが事実として定着する」という悪循環を起こしてしまう。これは現在はWikipediaなどでも「循環報告」という問題になっている。