ティターンモデル(蒼穹のファフナー)

登録日:2012/09/28 Fri 01:10:05
更新日:2024/01/11 Thu 23:26:48
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ファフナー ティターンモデル(Fafner Titan-model)とは、TVアニメ蒼穹のファフナーRIGHT OF LEFT(以下RoL)に登場する人型兵器「ファフナー」のモデル名。

「ティターン」はギリシア及びローマ神話に登場する神々の兄弟姉妹の総称。某地球連邦のエリート組織ではない。


●概要
竜宮島製ファフナーの第2世代モデル(第1世代はエーギルモデル)。型式番号はTSX-001~004。全部で4機製造された。
その存在はL計画参加パイロットの子供達と島の大人たち、そして皆城総士と蔵前果林しか知らない。
HAEにおいてL計画の存在が後輩達に開示された事から、彼ら以外もこの機体の存在を知ったと思われる。
ノートゥングモデルと異なり、胸部にあたる部分にコックピットブロックがある。位置の関係上、頭部を損失してもハッチを解放して有視界での戦闘継続が可能(ノートゥングモデルは位置的にもコックピットの構造的にも不可能)。
脱出装置があったどうかは不明。
あっても役に立ったかどうかもまた、不明。

RoL当時、まだ「フェストゥムは代謝できずに結晶化するため海中での活動が出来ない」とされていたので、海中へ逃げる事を想定したサイレーンド装備が背面にあり海中での活動が可能。投入されたL計画が逃亡そのものが不可能の計画だったため、使われたのはラストシーンのみ。

開発者は日野洋治とミツヒロ・バートランド。
この後、設計思想に置いて道を違える2人で開発した最後の機体で、両者ともにそれぞれザルヴァートルモデルマークザインマークニヒトを開発することになる。
最古参の技術者の西尾行美の理論とフェストゥムの特性を融合させており、前身に当たるエーギルモデル(通称ゼロファフナー)より全高は半分になっているが、ジークフリードシステムを丸ごと積んでいるのでやっぱりデカい(ゼロファフナーはエンジン等の関係で100m、ティターンモデルは50m)。
機体の出力そのものはノートゥングモデルを上回るらしい(後から開発されたドライツェン以降のノートゥングモデルを上回るかは不明)。

武装は第3世代のノートゥングモデルに比べて貧弱で、全機統一の腕部前方のミサイル&バルカン内蔵ウエポンベイと試作型ガンドレイク(放送当時は名称不明であり、試作型のルガーランスなどとも呼ばれていた)の2つだけ。
まだフェストゥムに対する対抗策があまりなかった劇中ではフェストゥムの持つ読心能力・同化能力・空間歪曲能力(ワームスフィアー)全てに対抗出来る唯一の兵器だった。
前述のとおりジークフリードシステムを機体内部に搭載し、基本的にパイロット間のクロッシングで読心能力を防ぐために戦闘はツーマンセルのツインドッグで行うが、RoL劇中ではスリーマンセルのトリプルドッグでの戦闘が行われている描写がある。


全機がL計画中にロストしており、それぞれコックピットブロックスレスレから上を吹き飛ばされて使用不能、胸部内蔵型のコックピットブロックをパイロットごと抉るように破壊され使用不能というより大破、最後の2機はマリンスノーが祝福する中片方がフェンリルで自爆、パイロットが"いなくなった"もう片方も自爆に巻き込まれてロストした。
海底でロストしなかった2機に関しても、Lボートの自爆によってロストしたと思われる。
だがその交戦データは竜宮島にとって貴重なデータであり、回収されたブラックボックス内に残されたデータは後輩世代へ受け継がれた。






以下、壮大な鬱とネタバレ注意









●代償
ジークフリードシステムを搭載し、クロッシングによりフェストゥムの読心能力を防ぐ事自体は成功した。




が、その代償はあまりにも多く、そして大き過ぎた。




ジークフリードシステムの内蔵によりパイロットへの負荷が激増し、同化現象の進行が爆発的に早まってしまった。
パイロットへの負荷を考慮すると、どんなに同化耐久率が高くても最大搭乗時間は15分という欠陥を抱えている。
ノートゥングモデルは蒼穹作戦でフォーマンセルのクロスドック前提でジークフリードシステムを4分割し尚且つミョルニアからの助言もあり、
同化速度はそれほどでもなかったが、ティターンモデルは1機につきシステムを丸ごと搭載した為に起きた欠陥だった(この欠点を解消する為にノートゥングモデルでは、ジークフリードシステムが内蔵式ではなくなった)。

ならばジークフリードシステムを最初から搭載しなければいいじゃないか、なんでL計画に総士と据え置き型のジークフリードシステムを投入しなかったのかと思うかも知れないが、時期的には「本編のジークフリードシステム」投入は不可能に近かった。
まず据え置き型ジークフリードシステムは接続されているファフナー(パイロット)全機と同時にクロッシングするという特性上、適性者が極端に限られているという弱点を有している。
続編も含めて総士と、当時まだ何も知らなかった近藤剣司や幼かった鏑木彗の3人しか適性者が現れておらず、L計画中に担当者が総士に決まるまでは空座だった以上当時の「卒業生(L計画参加者)」にはシステム適性者が居なかった事が分かる。
その総士自体も当初は島の戦士として開発中のファフナー「マークアイン」に乗る事を前提に調整していたので、作戦への参加は不可能だったのである。
また、据え置き型のジークフリード・システムは竜宮島の専守防衛を目的として開発されたものなので島外へ持ち出すことは想定されておらず(これは『DA』本編でも言及されている)、有効範囲が竜宮島全域が精々なので、遠く離れたLボートのファフナー隊を把握するのは土台無理な話である。*1
そしてファフナーはフェストゥムの読心をある程度防いで戦えるが、ジークフリードシステム無しでは読心を防ぐ力が弱まる上に連携が不可能となってしまう。
つまるところ、本編における据え置き型ジークフリードシステムが割とイレギュラーな運用方法であり、「機体にシステムを内蔵して機体間で連携して戦う」のがそれまでの定石でありその運用を採らざるを得なかった、という事である。
搭乗限界時間の「15分」も戦闘中に判明した訳ではなく当初からそういう想定だったので、4機全部を同時に投入するクロスドッグではなくツーマンセルの交代制、かつパイロットを機体数以上に用意する方式が採用されたのである。

制限時間以内に交代しなかった場合、同化現象が取り返しがつかないほどに進行、急速に結晶化する(このため活動限界時間までのタイマーがコックピットについている)。
逆に言えば「15分」未満で戦闘を終わらせるor交代すれば問題がない………という前提で計画されたのがL計画なのだが、実際にはそんなうまく事は運ばなかった。
当時の竜宮島ではファフナーへの連続(休憩を挟みながらでも)搭乗におけるパイロットの肉体への負荷がどうなるかというデータが絶対的に不足しており、実際は15分以内で交代したとしても乗れば乗るほど同化現象の進行度は本編を遥かに超える速度で蓄積されていった。
本編で真壁一騎が同化現象の深刻化によって「常時瞳がファフナー搭乗時と同じ赤に染まる」という症状を起こしているが、L計画のパイロット達はそれを非常に早い時点で全員発症している。*2
そして2日に一度のペースで襲来するフェストゥムに対し、4機のファフナーを8人で回し乗りしていったため、同化現象はどんどん深刻化していく。

その蓄積速度の速さたるや、あらかじめ選抜されたシナジェティック・コード形成値が高いパイロット8人全員が生存していたL計画序盤、しかも15分の限界時間を守り5分以内の交代を守ってですら、最速でたった6度目の戦闘(計画開始からたった2週間、累計戦闘時間約50分)で初期症状を引き起こして倒れ、昏睡状態に陥った。
更にはファフナーも1機大破して3機になったため搭乗のサイクルは短くなっていく。
これも影響したのか(直接的な時間超過の描写はないが)L計画に選抜された8人のパイロットの1人船橋幸弘が僚の目の前で結晶化して砕け散り、動けなくなったパイロット達も次から次へと砕け散っていく。
結果的には8人中生駒を含めて5人が同化現象で"いなくなった"。つまり戦闘で死んだ数より自分の武器であるファフナーに殺された人数が圧倒的に多い。
この当時は同化現象の初期症状で倒れると回復の手立てはなく、ただただ医務班も医務室のベッドで結晶化し砕け散り幼馴染であり仲間が"いなくなる"のを見守るしかないというどうあがいても絶望するしかない、子供達にとっては辛く重すぎる代償だった。
僚をして「敵ではなく味方であるはずのファフナーが怖い」と吐露するほど。
しかも囮作戦である以上計画そのものを中止出来るはずもなく、ファフナーに乗らなければ島が危機に陥ってしまう。そもそもパイロット8人は、本編の剣司のように一時的であってもファフナーから逃げることも出来ないのだ。

結果的に最終日に生き残っていたパイロットは僚と生駒、そして負傷していた立木惇のみという惨状になった原因は、ティターンモデルの同化現象の速度と影響が想定よりも重すぎた事にも大きな一因があるだろう。
また、この活動限界を13分以上超過して搭乗した生駒祐未は昏睡という段階を経ることなく結晶化し"いなくなった"。


そもそもティターンモデル……というか竜宮島のファフナーはこれまで一度たりともまともな実戦を行っていない事も、この惨状を招いた理由と言える。
いわゆる「ゼロファフナー」こと初代ファフナーであるエーギルモデルは起動実験に失敗しており戦闘は行ったことがなく、
島が「人類とフェストゥムの双方から逃げ続ける」スタンスを取っていたためフェストゥムとの実戦における交戦データが慢性的かつ絶対的に不足しており、全方位に渡って手探り状態だった。
交戦経験豊富な人類軍とは相互不干渉の立場を取っていた事から交戦データの提供を要請することも出来なかったのか、
或いは日本消滅の引き金を最後に引いた新国連への反感が根強かったのか…それは定かで無いが、全て0からのスタートだったが故にフェストゥムに対し不明瞭な部分が多かったのだ。
しかも実戦データもクソもない状況故に、僚達が再三行った実戦シミュレーションも「多分フェストゥムってこう動くんじゃね?」「こういう行動取るんじゃね?」という推測で成り立っていた事から、実戦シミュレーションもクソもなかったのである。
L計画と同時期に建造されたマークアイン・ツヴァイより後に建造されたマークドライ以降に防御性能特化型や飛行可能型があるのは、
一重に早乙女や僚、祐未達の決死の想いがあったからこそ、そして重要な交戦データが遺されたからかもしれない。


なおL計画が立案されたのは、フェストゥムが島の位置を特定しつつあったためである。
当然ながらろくに実戦を行っていない島にフェストゥムが襲来し島内での戦闘になれば激甚な犠牲は避けられない。
それなら、フェストゥムの攻撃を凌ぎきれる可能性が現状最も高い4機のティターンモデルに、その二倍となるパイロットと厳選したスタッフを配備して厳しい搭乗制限時間を設けて60日間囮として耐え抜くのが島と作戦参加者を両方守る唯一の希望だったのだ。
実際、ティターンモデル自体は2機大破したものの残り2機は60日間最後までフェストゥムと戦い抜いており、切羽詰まった状況で切られたカードとは言え最善を尽くしたと言えるだろう。
せめてもう少しデータが充実していれば……


●余談

ティターンモデルそのものの同化進行速度はノートゥングモデルを上回るものだが、同化耐久率に優れた僚と総士は2時間程耐える事が出来るらしい(実際僚は2時間近く耐えた)。

本編22話にて剣司の母の近藤彩乃が「無茶よ!何のためにその二つを分けたと思ってるの!?」と声を荒げるシーンがあるが、これにはティターンモデルが深く関わっている。
この「2つ」とは機体とジークフリードシステムを指し、L計画後回収されたブラックボックス内の僚の遺言とも言える音声記録を聞いた彼女の発案によって、後継機であるノートゥングモデルはジークフリードシステム搭載が見送られたという一幕があった。*3
8人の犠牲によって救われたのは島だけでなく、後輩たちの生命そのものも含まれていたのかもしれない…

実はティターンモデルはかなり昔に建造された機体であり、紅い棺桶という渾名を頂いてもおかしくない曰くつきの機体である。
というのも、ミツヒロはこの機体の建造が完了したあとティターンモデルで無理な訓練を強行しており、結果的にフェストゥム因子移植開始世代が道生・弓子・狩谷を残して壊滅。
それ以前にも因子の同化進行によって搭乗以前に死亡したケースが多々あり、この訓練で止めを刺す形になってしまった。
しかも訓練で同化が進行したということは、一騎達のようにシミュレーターを使わずに実機に搭乗して訓練を行っていたという事の証左とも取れる。
また、搭乗試験で殆どのパイロット候補が死亡してしまい、当時唯一のパイロット候補と想定できる道生が父と共に島を出てしまったので、「15分乗り続けていたら死ぬ」ぐらいしかデータがなく、
複数回搭乗にかかる負荷が殆ど考慮されていなかった理由とも考えられる。つまり大体ミツヒロのせい。

これらを考えると、ティターンモデルそのものは何らかの理由から(おそらく10年近く)ブルグで埃をかぶっていた機体であり、フェストゥム襲来の兆しからそれらを引っ張り出して戦っていたのである。
大方、ミツヒロが島から出て行った後に「こんな機体危なすぎて使えるか」というツッコミが大人達から入り封印していたが、
L計画発動に際してノートゥングモデルが建造もテストも終わっていない(全機の建造、そしてそれを運用する子供達に「真実を教える」のには到底時間が足りなかった)為、文字通り泣く泣く引っ張り出して使わざるを得なかったのかも知れない…



追記・修正は、壁の落書きを上書きして希望の言葉ごと消してしまってからお願いします。



「勝利」
「生き残る」
「お願い 早く」
「早く!早く!早く!」
「お父さん お母さん」
「早く帰りたい」
「 俺たちはここにいる 」



「 ど う せ み ん な い な く な る 」


父さん…褒めてくれるかな…?
雪…?
マリンスノー…みんなが、俺たちを褒めてくれてるんだよ…きっと

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最終更新:2024年01月11日 23:26

*1 これについては本編から作中時間で約8~10年後の「THE BEYOND」でようやく実現しているが、この頃になると1島の専守防衛どころではなくなった事が理由だろう。

*2 ちなみに蔵前果林は数回の搭乗試験で眼が赤くなっているが本人はこれを「初期症状」と言っている。おそらくはこれが同化現象がかなり深刻化した際に生じるものだというデータ自体が竜宮島には無かったと思われる

*3 無論RoL放送前の話だが、この時点で既に「L計画」とその末路は設定されていたのだろう。ちなみに本編ではLボートも存在していない描写があったりする。