四季崎記紀の完成形変体刀一覧

登録日:2010/02/24(水) 17:43:50
更新日:2024/01/11 Thu 23:11:45
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四季崎記紀の完成形変体刀とは大河ノベル『刀語』に登場する刀にして、作中の重要アイテム。

概要

完成形変体刀。それは本編から150年前の戦国時代に存在した伝説的刀鍛冶、四季崎記紀が作った全12本の刀。
強力かつ貴重で、主人公である虚刀流七代目・鑢七花奇策士とがめ。ならびに二人と敵対する真庭忍軍が収集を目的とする。

なお、この完成形変体刀自体がストーリーの根幹に大きく関わるため、ここではその意味合いや二人の旅の行方。また変体刀と完了系変体刀についても解説する。
当然物語の核心や終盤の展開にも触れるのでネタバレ注意。




変体刀と完成形変体刀

四季崎により作られた刀は1000本。
その全てが異端の刀であり、その中でも特に完成度の高い12本を完成形変体刀と呼ぶ。
残り988本は変体刀と呼ばれ、完成形変体刀十二本のための叩き台、試金石、習作だとされる。

完成形変体刀と変体刀。そのどちらも名前は『○刀・△』で統一。△は金偏の漢字一文字。
(例)
  • 千刀・鎩(鍔のある刀剣で『つるぎ』)
  • 悪刀・鐚(品質の悪い銭こと『びた』)
  • 絶刀・鉋(大工道具の『かんな』)


刀としての特性

全てが何らかの特異性を備えるが、その技術は明らかに時代を超越しており*1、完全なオーパーツ。
挙げ句、その中には鎧や人形等どう見ても刀でないものも混ざっている。刀とは一体……

完成形変体刀にはそれぞれに特性を生かした必殺技ともいうべき『限定奥義』が存在しており、自身の技術と生き様をそこに反映する所有者こそがそれに相応しいと言える。*2

また刀には使い手に作用してしまう「毒」がある。
これは使い手の精神を惹き付けてしまう一種の魅力と、人を斬ってみたくなるという攻撃性を引き上げるもの。
前者は一流の剣士であればあるほど逃れられず、日本最強であり名誉のために動く剣士錆白兵はあっさり幕府を裏切ってしまうほどであった。
後者は深刻な精神汚染に聞こえるが、刀によってその毒の濃さは違うようだし、長く使用しなければ冒されない模様。何より持ち手がそれ相応の技量や精神性を持ち合わせていれば十分に克服できると言えるものであり、『11巻 毒刀『鍍』』の話になるまでその辺りの事はあまり扱われなかった。

  • その価値と意味合い
当然そんなオーパーツのため、一本一本が国一つを買えるほどの芸術的価値がある。
泰平の世で里が困窮していた真庭忍軍はその価値に目をつけ一発逆転しようと幕府から忍軍丸ごと抜け忍になったほど。*3

戦国の時代では四季崎の刀を持つ数が多い国ほど戦闘を有利に進めた。
旧将軍はこれらの刀を収集しようと刀狩令を発令。その末に変体刀988本を集めたが、この完成形変体十二本だけは最後まで手に入らなかった。
その特異性とそれを使いこなす所有者により幕軍が返り討ちにされたため。又は見付けたところでそれとは到底気づけない代物であったためか。

そんな旧将軍家でも集められなかった完成形変体刀と、20年前に奥州の顔役飛騨鷹比等に反乱を起こされた記憶も新しい現将軍家的に、もし次に現れた反乱分子が四季崎の刀を持っていたら……という不安要素を絶つため、幕府は軍所総監督のとがめに完成形変体刀十二本の蒐集を命じたのだった。*4
全ては、尾張幕府1000年の繁栄を磐石にするために。


しかし本編開始前に錆白兵と真庭蝙蝠(真庭忍軍)に裏切られたとがめにはあとがない状況。
そのため是が非でも完成形変体刀集めを完遂しなければならないとがめが抜擢したのが虚刀流であった。
素手で戦う無刀の流派故に刀は要らず、刀の毒が効かない。
先の大乱のあと諸事情あり島流しとなったため世俗に興味が薄く金にもつられない。
そんな虚刀流は最適解であり、物語は奇策士とがめと虚刀流七代目当主・鑢七花が出会うところから始まる。


そして刀集めの旅に出た二人が完成形変体刀とその所有者を探し求めるのがこの物語である。

なおコンプリートが目当てのため完成形変体刀を破損させないことが大前提であり、また七花自身もとがめからダメージを受けないよう命じられているため、なかなかの縛りプレイ。
幕府内部では注目の話題であるが、とがめが提出してる報告書は嘘とやらせが盛られてる模様。


完成形変体刀一覧

絶刀『(かんな)

  • 『世界の何よりも固き、折れず曲がらぬ絶対の刀』
「頑丈さ」に主眼が置かれた刀で、いくら乱暴に扱おうと折れず曲がらず毀れない。
そのあまりの固さに武器破壊技である虚刀流『菊』もまったく効果がなかった。*5
ちなみに後述するなんでも切れる刀の斬刀『鈍』で切ろうとした場合、「単純に完成度が低い方が壊れるだろう」「後から作られた『鈍』の方が完成度が高いはず」ととがめは推察している。

反りのない切刃造、片刃の直刀。鍔や鞘はなし。
柄はフックのような独特の形状で、梅の枝や花のデザインが散りばめられているのが特徴。
刀身の方は二筋樋(二本の溝)が彫られた綾杉肌。長さは五尺(1.5mほど)ほど。

所有者は真庭蝙蝠。
元は美濃の涙磊落という人物が所有しており、本編前にとがめと真庭蝙蝠によって奪取される。そして裏切った真庭蝙蝠に持ってかれた。
鞘がないため持ち歩くのに不便だが、真庭蝙蝠は自分が得意とする忍術と体質を利用してその体の中に飲み込んで収納していた。当然よだれまみれ。

限定奥義は『報復絶刀』
折れない頑丈さを生かして思いのまま叩きつけ、突く技。
通常の刀でこんな乱暴な使い方は到底できないわけであり、例えば戦場など多人数相手の乱戦時などでは極めて使い勝手が良いだろう。

睦月。丹後(現在の京都北部)の不承島にて、真庭蝙蝠を倒し蒐集。


斬刀『(なまくら)

  • 『ありとあらゆる存在を一刀両断にできる、鋭利な刀』
「切れ味」に主眼が置かれた刀。
特異性はそのまま何でも斬れること。
しかし刀に切断力があるのは当たり前の話であり、そう考えると完成形変体刀十二本の中では一番普通に使える刀なのかもしれない。*6
のちに語られたところ、刃にふれた物体の分子結合を切断するという原理であるとのことで、硬さに一切左右されず切断可能らしい。
欠点は切れ味がありすぎるため何を切っても手応えがなく、斬撃を避けられたと察しづらいこと。

鍔と柄には三角模様が散りばめられ、色は全体的に黒い、というか暗い印象。
居合斬りに使われてきたので刀身はほとんど見えなかったが、のちに再会した時の七花曰く「なんか普通」とのこと。

所有者は因幡砂漠の下克城城主宇練銀閣
その前の所有者は先祖である宇練金閣で、代々受け継いだようだ。

限定奥義は『斬刀狩り』
斬刀の鞘に血を溜めて湿らせることで摩擦係数が減り、それによって抜刀速度が更に加速する。つまり人を斬れば斬るほど刀が血に濡れ早くなる。
居合を得意とする宇練金閣が生み出し、刀を狙った幕府の兵を切り続け、一万人切りを達成したという。

如月。因幡(現在の鳥取県の東半部)の下克城にて、宇練銀閣を倒し蒐集。


千刀『(つるぎ)

  • 『いくらでも替えが利く、恐るべき消耗品としての刀』
「多さ」に主眼が置かれた刀。
製造された150年前の戦国時代。当時のもの作りは職人による手作業で、一つのものを同じように作っても現代の工業製品ほど正確に作れないはず。
しかしこの刀は材質、重さ、長さ、切れ味の何から何まで全く同じ刀が1000本存在する。それだと四季崎の作った完成形変体刀が1011本になるんじゃ……と七花はつっこもうとしたが野暮なこと
そのため剣士が使い馴れた刀から別の刀に取り替えても手に馴染むまで時間がかかるという弱化期間、慣らしの時間も皆無となる。
絶刀『鉋』は折れず、曲がらず、歯こぼれせずが主題の刀だったが、千刀『鎩』は折れようが、曲がろうが、歯こぼれしようが大量の同一予備品が存在する、至高にして絶対の消耗品なのだ。
ただその多さ以外は際立った特徴もなく、そもそも消耗品であることは刀として本分。故に『鎩』というそのまんまな銘が打たれている*7

見た目は普通の日本刀で鞘と柄は橙色。鞘には白い三本線が入っている。
刃渡りは二尺四寸(約70cmほど)。
反った鎬造、棟は三ヶ棟、刃紋は小乱。

所有者は出雲の三途神社の長であり元山賊の敦賀迷彩。ならびにその三途神社の黒巫女たち1000人。
元々は出雲の山賊衆の頭目に代々受け継がれていた。
それからこの山賊集団に参入した敦賀迷彩がある心境の変化により山賊団を皆殺しにして自身のものとした。
現在はその刀の毒を以て精神に傷を負った黒巫女たちの心を補強している。

限定奥義は『千刀巡り』
本編では地形効果と題されており、戦闘を行う場のあちこちに隠した千刀を用いて戦う。
敦賀迷彩は戦場に落ちている刀を用いて戦う奪刀術『千刀流』の使い手であったため極めて相性が良く、七花との戦いでは事前に三途神社の敷地一帯や周辺の森に仕掛けられた。
そもそもこの刀自体が『千刀流』という流派の者が使うことを前提として作られた可能性もあるととがめは推察している。

弥生。出雲(現在の島根県東部)の三途神社にて、敦賀迷彩を倒し蒐集。


薄刀『(はり)

  • 『羽毛のように軽く、硝子細工のように脆い、美しき刀』
「薄さ」や「軽さ」。或いは「脆弱さ」に主眼が置かれた刀。
剣筋をずらさず完全な軌跡で振らなければひび割れて折れてしまうほどに刀身が薄く、非常にデリケートな刀である。よく今まで残ってたな
薄く脆い。故に儚くも美しいのだ。
その刀身の薄さたるや硝子のように向こう側が透けて見えるほど。

柄、鍔、鞘。それら全体に雪輪の紋様が散りばめられられている。
デザインモチーフは錆白兵と同じ雪。

所有者は日本最強の剣士錆白兵
精細なこの薄刀を壊さず完全に使いこなせる剣聖であり堕剣士。
本編前には傷木浅慮という人物が所持していたが、とがめと組んだ錆白兵によって奪取され、その後裏切った彼と共に行方を眩ませた。

限定奥義は『薄刀開眼』
薄刀でのみ使用可能な奥義らしく、錆白兵と戦った七花曰く「脆いだけだと思っていた刀にあんな利点があったとは」とのこと。
ただ戦闘シーンそのものがカットされたため詳細不明。

卯月。周防(現在の山口県東部)の巌流島にて、錆白兵を倒し蒐集。


賊刀『(よろい)

  • 『守りに重きを置いた、巨大な防御力を有する、甲冑を模した刀』
「防御力」に主眼が置かれた刀……という体だが、実際は全身を覆う日本刀っぽいデザインの西洋甲冑そのもの。
絶刀『鉋』が『固い』のに対し、こちらは『守りが堅い』のが特徴。
金属として丈夫でもあるが、受けた衝撃を地面に受け流す特性を持つ。このため外部を傷つけず内部にのみダメージを与える鎧通しの技も全く効かない。
また外側からは開けられないため鉄壁の堅牢さを誇る。
欠点はかなり大柄な人物でなければ身につけることはできないこと*8。というか人が装着してること自体が弱点。
  • 水中に落とされたらその重みで泳げず溺死
  • 金属故に熱されたら中の人間は熱死
  • 外側からのダメージは全て受け流すが、高所から叩きつけられるなど激しく揺らされた場合、装着者は鎧の内部に体を激しく打ち付けられてダメージを負う

デザインモチーフは日本刀+西洋甲冑+クジラや貝などの海の生き物。
大きさは先述したように七尺ほど。つまり2m以上ある。

所有者は薩摩の濁音港を根城とする鎧海賊団船長校倉必
元は前の世代の鎧海賊団に伝わるもので、当時雑用だった校倉必がその海賊団を全滅させ奪った。

限定奥義は『刀賊鴎』
突進技……なのだが校倉必が使用した技全てが突進技であったため、この技と他の突進技がどう違うのか分からないままであった。
アニメでは肩のドリルのようなパーツを向け、殺傷力を強化、さらに気迫を高めて突進する様子であった。

皐月。薩摩(現在の鹿児島県西側)の濁音港にて、校倉必を打ち負かし蒐集。


双刀『(かなづち)

  • 『すさまじい質量のかたまりであり、持ち上げることさえ満足に敵わない刀』
「重さ」に主眼が置かれた刀。
その重量たるや、落とすと自重で堅い洞窟内の地面にめり込み、賊刀『鎧』を着た校倉必を担ぎ上げた七花ですら持ち上げられなかった。

見た目は鞘も鍔もない無骨な石刀で、刃渡りは二尺三寸(約70cm)ほど。
しかしその形は上下の区別がつかない曖昧な形をしている。
デザインモチーフはアイヌ民族の弦楽器『トンコリ』。

所有者は怪力の特性を持つが故にこの刀を軽々と扱える凍空一族の幼子凍空こなゆき
蝦夷の踊山に暮らす凍空一族は150年前、四季崎記紀からこの刀を託され、それ以来一族をあげて守っていた。*9
本編ではある脅威によって壊滅した凍空一族の村の跡地に埋もれており、唯一の生き残りである凍空こなゆきが掘り起こして七花との戦い(遊び)で使用。
その後、真庭狂犬の忍術によりこなゆきの肉体ごと奪われたが……

限定奥義は『双刀之犬』
上下曖昧な形を活かし、柄でも刃でもお構いなしに殴りかかる技。それ故の『双』。
その重さとそれを操る怪力で大打撃を与える。

水無月。蝦夷*10の踊山にて、凍空こなゆきから譲り受け蒐集。*11


悪刀『(びた)

  • 『所有者の死さえ許さず、無理矢理に人を生かし続ける凶悪な刀』
「活性力」に主眼が置かれた刀。
柄が持ちにくそうな苦無。常に雷を帯びており、身体に差し込むことで使い手の生命力を活性、不死化させる。
デザインイメージは雷光+稲光+神仏的なもの。

所有者は七花の姉で病弱と最強が同居した怪物鑢七実
元は陸奥の木一本生えぬ死の山「死霊山」に祀られ、その特性を以て山の命脈を保っていたが、刀集めに参戦してきた鑢七実によって奪われる。*12
その後病魔に冒された彼女の身体を活性化する。
清涼院護剣寺での七花との対決時に抜き取られるが……

限定奥義は『悪刀七実』
七実が自身の肉体に悪刀を突き刺し、強制的に体を活性化させた状態。
七実以前にこのような使い方を想定できた者がいたのかは不明。

文月。土佐(現在の高知県)の清涼院護剣寺にて、鑢七実を倒し蒐集。


微刀『(かんざし)

  • 『武器でありながら人である、恋する殺人人形とも言える刀』
「人間らしさ」に主眼が置かれた刀。
不要湖を徘徊する殺人からくり人形こと日和号そのもの。
詳細は日和号にて。

葉月。江戸(現在の東京都)の不要湖にて蒐集。


王刀『(のこぎり)

  • 『人を正し、心を正す、精神的王道を歩ます、教導的な解毒の刀』
「毒気のなさ」に主眼が置かれた刀……とは言ったものの、実態は特徴もへったくれもない普通の木刀。*13
しいて言うなら中央に梔子の紋様が刻まれていて、長さは三尺未満(約90cm)といったところ。
その特性は刀の毒がないどころか所有者から毒気を抜いてしまう『解毒』。

所有者は出羽の天童将棋村に心王一鞘流の道場を構える汽口慚愧
経緯不明ながら心王一鞘流の八代目がどこかから持ち帰り、以後心王一鞘流で代々受け継がれていたらしい(尚、この流派は虚刀流と違い血族で受け継ぐものではない)。
それ以前の旧将軍による刀狩令の時は不明。

限定奥義は『王刀楽土』
王刀により毒気を抜かれ、精神的に王道を歩んでいる状態。
奥義どころか基本特性でしかない。
歴代心王一鞘流の当主たちは受け継いだ際、身が引き締まり生まれ変わったような気分になったとのこと。

長月。出羽(現在の山形県)の天童将棋村にて、汽口慚愧から譲り受け蒐集。


誠刀『(はかり)

  • 『人間の姿勢を天秤にかけるように、人によって受け取り方さえ違う曖昧な刀』
「誠実さ」に主眼が置かれた刀。
全体的にキンモクセイがあしらわれたデザインだが、一番の特徴はなんと刀身が存在しないこと。
王刀と同じ様に精神面に作用する刀で、その刀の毒は「己自身を斬る」というもの。
刀身もないのにどうやって?と頭をひねるが、この刀の刀身は使い手そのものであり、己を斬り、己自身と向き合わせ、その価値を測るという哲学的な刀である。
また所有者とならずとも近くにいるだけで何らかの影響を受ける模様。

所有者は奥州の百刑場にいた仙人彼我木輪廻
所有者とは言ったものの、150年前に四季崎記紀本人から直々に受け取った彼我木輪廻はどうして良いか分からず地面に埋めてしまう。
さらにその後、誠刀を埋めた場所に城が建ってしまったのだが、その城こそ先の大乱を起こした飛騨鷹比等の飛騨城で、誠刀は地中に埋まりながらも彼の謀反を起こすきっかけとなった。
また相手に己と向き合わせ測る特性を利用し、彼我木輪廻は各地の争いを収めたという。
本編中ではとがめが発掘した。
その際、彼我木輪廻によると誠刀はかなり最終期に作られたこと、完成形変体刀十二本は完了形変体刀・虚刀『鑢』を作るための習作であることが明かされる。

限定奥義は『誠刀防衛』
…といっても実際にはこの刀による奥義ではなく、彼我木輪廻がこの刀の名前になぞらえてつけた戦闘スタイル。
己の持てる力全てを防御と回避へ充てるため、攻撃と防御に力を割り振った七花の攻撃全てをかわした。というか戦いですらなかった。

神無月。奥州(現在の岩手県南部)の百刑場にて、彼我木輪廻のいた場所から拾い上げ蒐集。


毒刀『(めっき)

  • 『所有すると人が斬りたくなる、刀の毒がもっとも強く内包された刀』
「毒気の強さ」に主眼が置かれた刀。
完成形変体刀十二本の中で『人を斬りたくなる刀の毒』が最も強く、抜刀したが最後、刀の毒に侵され殺人鬼になり果ててしまう危険極まりない刀。
また四季崎記紀の残留思念も強く宿っていて、一般人は刀の毒と合わさり意識混濁とした状態に陥る。
鞘に収まっている状態なら影響は出にくく、持ち運びは可能。

見た目は鍔のない刀で刃が波打っている、というか歪んでる。
大きく沿った刀身の長さは五尺未満(約1.5m未満)ほど。
全体的に黒く毒々しい印象。
そんなこの刀のデザインイメージはトリカブト。

所有者は真庭鳳凰
富士山麓付近の風穴に封印されていたものを真庭鳳凰が発見し所持。
その後、幕府の内部監察所総監督の否定姫が腹心、左右田右衛門左衛門に挑まれた真庭鳳凰が鞘から抜けたこの刀を握ってしまうのだが……
よりにもよって物に宿る記憶を読み取る『真庭忍法・記録辿り』の力を持った腕で掴んでしまったため、毒刀の影響をもろに受けてしまい、殺人鬼となっただけでなく人格が四季崎記紀に乗っ取られてしまった。

限定奥義は『猛毒刀与』
刀の毒気に所有者が侵され凶暴化した状態。王刀と同じく基本特性そのもの。
真庭鳳凰はさらに四季崎記紀の人格に乗っ取られた。

霜月。伊賀(現在の三重県北西部)の新・真庭の里にて、真庭鳳凰を倒し蒐集。


炎刀『(じゅう)

所在・及び詳細不明の刀。
























以下、『第11巻 毒刀『鍍』』のネタバレ





































さらに最終話の『第12巻 炎刀『銃』』のネタバレ




















とがめを殺され目的を失い、壮大な自殺のため尾張城へ乗り込んで来た七花。
先の大乱の記憶が蘇り狼狽える将軍に「虚刀流を返り討ちにすれば家鳴将軍家1000年の繁栄が訪れる」、「四季崎家の目論みが達成する」という言葉をおくった否定姫は、
最後の総仕上げとして炎刀『銃』以外の完成形変体刀を「家鳴将軍家御側人十一人衆」へ配り一人一人に迎え撃たせる。要はボスラッシュ

  • 絶刀『鉋』:般若丸
  • 斬刀『鈍』:鬼宿不埒
  • 千刀『鎩』:巴暁
  • 薄刀『針』:浮義待秋
  • 賊刀『鎧』:伊賀甲斐路
  • 双刀『鎚』:真庭孑孑(ぼうふら)
  • 悪刀『鐚』:胡乱
  • 微刀『釵』:灰賀欧
  • 王刀『鋸』:隅ヶ丘黒母
  • 誠刀『銓』:皿場工舎
  • 毒刀『鍍』:呂桐番外

しかし様々な要因が重なった結果、七花によって全員が瞬殺され、11本の完成形変体刀は破壊された。
(その詳細は家鳴将軍家御側人十一人衆の項目にて)


以下、11本の刀の最後
  • 絶刀『鉋』
旅を経て成長した七花の虚刀流『菊』を受け、ぽきんと圧し折れた。

  • 斬刀『鈍』
何でも斬れる刃を持つが刀身の側面にまで切断能力があるわけでないため、白刃取りされた末に力ずくでふたつに折られた。

  • 千刀『鎩』
大広間中に突き刺され、いつでも千刀巡りが発動できるように仕掛けられていた。
そこから虚刀流最速の技『鏡花水月』を巴暁がくらった際に彼女が持っていた二本がぶつかりあってヒビが入る。
これにより『取り替えはきいても、取り返しがつかなくなる』ということで、芸術品としての千刀『鎩』はおしまいとなる(あと998本は残ってたが)。

ちなみにアニメ版だと七花が巴暁まで全力で突撃した際の衝撃波で1000本全てが破砕される。グッバイ。

  • 薄刀『針』
剣筋をずらさず、完全な軌跡を描いて振らなければ砕けてしまうことを逆手に取り、こちらの身体の筋をずらすことで自壊させた。
アニメ版だと完全な軌跡を描く途中を指で摘ままれて砕け散る。

  • 賊刀『鎧』
衝撃が逃げる先のない空中に浮かされた状態で虚刀流四の奥義『柳緑花紅』をくらい、装着者の伊賀甲斐路は死亡。
同時に、一度着込むと中からしか開けれない構造のためもはや『鎧』は使い物にならなくなる。
アニメ版ではくらった衝撃が強すぎて鎧が内側からボコボコ波打っていたほど。

  • 双刀『鎚』
真庭孑々の忍法により重さを無くされるが、その最大の強みを無くしたせいで彼もろとも虚刀流一の奥義『鏡花水月』をくらい、石ころ同然に破壊される。

  • 悪刀『鐚』
胡乱に不死身を与えるも、七花が胡乱に放った272回もの致命撃により、内包された雷を使いきって胡乱から抜け落ちる。
アニメでは床に落ちた際に砕けてる。

  • 微刀『釵』
プログラム(?)を改変され灰賀欧とともに七花に襲いかかるが、灰賀が邪魔だったため虚刀流最終奥義『七花八裂』の応用編により奥義4つを受けて破壊される(残り3つは灰賀欧がくらった)。

  • 王刀『鋸』
王刀楽土により隅ヶ丘黒母を人格者に変えるが、彼と一緒に虚刀流六の奥義『錦上添花』をくらって木刀だけに木っ端微塵になった。

  • 誠刀『銓』
使い方を考えあぐねていた皿場工舎により七花へ投げつけられるも、足で天井まで蹴り上げられ簡単に破壊される。
アニメ版だと天井ではなく皿場工舎のおでこへ蹴り返され、その時の衝撃で分解してる。

  • 毒刀『鍍』
猛毒刀与で正気を失った呂桐番外と一緒に虚刀流七の奥義『落花狼藉』を受けて破壊される。






そして……






炎刀『(じゅう)

  • 『遠距離からの連続精密攻撃を可能にした、飛び道具としての刀』
巻の冒頭で解説・考察役のとがめが死亡するため、何が主眼とされたか等の説明が本編で書かれないが、
おそらく(刀という武器に対しての)「優位性」に主眼が置かれた、この世で最も有利な刀と推察される。
火縄銃と違い、即射・連射・精射性に優れており、刀で「太刀打ち」など到底しようもない。これ即ち、刀を否定せし刀というわけである。

二振りあり、その実態は名前そのままの銃、二丁拳銃である。
現在でいう所のオートマチックとリボルバーで、オートマチックの方の装弾数は11発。対してリボルバーの総弾数は6発。しかしアニメでは作劇の都合からほぼ無視されていた。

全体的に金色や赤色であしらわれた炎の意匠が各所に散りばめられられており、特にグリップ部分の装飾が目を引くデザイン。
また飾り紐ととんぼ玉のような飾りが銃杷から垂れ下がってる。

天守閣へと向かう最後の部屋にて左右田右衛門左衛門によって使用されたが、刀の破壊及び自ら傷つくことを許された七花の捨て身の突進によってその優位性を強引に潰され、一介の刀として戦うことを強いられることになる。

限定奥義は『断罪炎刀』
左右田右衛門左衛門が自らの最強の技『不忍法(しのばずほう) 不生不殺(いかさずころさず)』とこの刀を併用した際の技。
本編では詳細の分からない技であったが、アニメでは炎刀の先端に炎を灯した状態で高速連続攻撃を仕掛ける技と表現された。
七花に大ダメージを与えるも、左右田右衛門左衛門とともに虚刀流最終奥義『七花八裂・改』を受け、二丁とも破壊される。


完了形変体刀

虚刀『鑢』(やすり)

本人の技量にすら寄らず敵を斬るもの、すなわち虚刀流の技を修めた鑢一族、そして鑢七花そのもの。
所有者は奇策士とがめ

数千年前の時点で滅びの未来を予知した四季崎家は歴史改竄の末に徳川幕府成立を阻止するも、歴史の修正作用として似たような尾張幕府が成立してしまう。
虚刀『鑢』。『鑢』。『削って修正する鑢』。
つまり、虚刀『鑢』が作られたのは海外に目を向けず鎖国体制を敷き続け日本を滅亡へと導く家鳴匡綱を討たせ尾張幕府体制を崩し『歴史修正』をさせるためである。
また完成形変体刀十二本の役割は家鳴匡綱を護衛する家鳴将軍家御側人十一人衆を無力化させること。
当然、否定姫が言った「七花を迎え撃てば家鳴将軍家1000年の繁栄が訪れる」なんてのはである。


結局、左右田右衛門左衛門との死闘にも生き残ってしまった七花はしめしをつけるため家鳴匡綱に迫る。

「そ、そうじゃ!そのほうに天下をやろう!そのほう、天下が欲しくないか!」

「いるかぁ、そんなもん!」

虚刀流の最終奥義『七花八裂・改』。
それは虚刀流にある七つの奥義を同時に、最速の組み合わせで発動させる技。


「ちぇりおーっっっ!」


果たして。虚刀『鑢』によって家鳴匡綱は暗殺された。
それによって歴史がどうなったかは皆様方に確認していただきたい。
なお、尾張城に保管されていた変体刀988本は否定姫が塩水をぶっかけたため錆びて使い物にならなくなった。



何故虚刀流が素手でなければならなかったのか。完了形変体刀に虚刀流が選ばれた理由。
それらは、全てが終わった後に四季崎の計画を読み解くと推し量ることが出来る

まず前提として、日本を壊滅へと誘う幕府を支える最大の防壁は家鳴将軍家御側人十一人衆であるたて続けの瞬殺劇で到底そうは見えないが
そして1000本の変体刀の存在意義はあくまでも、彼らに癖の強い珍妙な刀を押し付け弱体化させることにあった。

警戒心を抱くであろう彼ら十一人衆にそれらの刀を使わせる為には、剣士であれば必ず魅了されてしまうだけの刀の毒が必要になる。
ここで肝心なのは、
弱体化した十一人衆諸共幕府を打ち倒す人間、すなわち完了形変体刀となる者には、
「刀の毒の影響を特に強く受ける、柄を握り刀を振る機会そのものが無い」もしくは「刀の毒を制することが出来る」という条件が求められる。
変体刀に魅了され、刀の維持に固執して当人が使命を放棄することがあれば、その時点で計画は破綻しかねない。

この条件の下では、完了形変体刀の候補は二つに絞られる。
武具を全く扱えない素手縛りの武芸者か、道端の棒切れであれ武器ではない何物を使っても剣技を振るえて刀を必要としない者か、である。
前者は、戦力的にかなり不安定になる代わりに、刀を振ることすらままならないが故に、刀の毒に中てられる心配が無くなる。
後者は、戦力的にも安定しており、変体刀の柄を握る機会を減らしてリスク回避を狙える。よしんば変体刀を抜き放ってしまっても、その特性上技と精神を極め易いため、刀の毒を克服することも望める。

結果としては既に知れている通り。
刀を誇りとする武士が統べる幕府を破壊する役割は、刀を腐食させてガラクタに変える『錆』ではなく、刀を刃引きして飾りに変える『鑢』に託された。



その他変体刀

全刀『錆』(さび)

錆白兵やその一族のことである。
所有者は錆白兵とおそらく彼の母らしきロリババア「錆黒鍵」。
虚刀『鑢』を作る過程で完了形変体刀候補だった。
そのため厳密には完了系変体刀ではない。
特性は先述の通り、『手にした棒状の物ならなんでも刀として扱える』というもの。

剣技を極められるが故に刀の毒をより強く受け易くなってしまい、四季崎の目的を果たせない恐れが強いと判断されたからか、完了形変体刀には選ばれなかった。

限定奥義(?)は『完全刀一』。
詳細は不明。


透刀『鉄』(てつ)

クロスオーバー作品『混物語』の『第刀話 ひていクリア』にて、否定姫が阿良々木暦に見せた変体刀。
直方体のガラスの中に封じ込められていた刀であり、あらゆるものをすり抜けて切りたいものだけを斬れる。
しかし、ガラスの中からの取り出し方を間違えると自動的に消滅する。
作中では暦はガラスを破壊して取り出そうとしたが、正しい取り出し方ではなかったため、消滅した。
羽川翼によれば、本物の透刀は別に存在しており、暦が見せられたのは、本物によってガラスの中に描かれた絵とのこと。


???

嫉刀『咎』(とが)

  • 『するどい観察眼と発想をもたらす刀』
「思考力」に主眼が置かれた刀。
攻撃力はないに等しいが持ち主に類い希なる思考力をもたらす。
王刀『鋸』や誠刀『銓』と同じく所持しているだけで効果がある。
しかしこの刀の毒は『使い続けると自分含めた全てを駒として扱ってしまうほど冷徹に成り果てる』というもの。
ましてや復讐心を宿して使うと破滅街道まっしぐらな危険極まりない刀である。
薄刀『針』といい勝負ができそうなほど強度が弱く、その強度は障子紙やウサギ並みと例えられた。
しかし本編では七花に踏み台代わりにされたりもした。
振る時は「ちぇりお!!」と叫ぶ必要がある。
薩摩方面での気合を入れる時の掛け声「チェスト!!」に似てるが……?

真っ白い刀身は先の大乱時に品質劣化したもので、本来の色は黒。また刀身の左側に十字紋があるのが特徴。
鎺(はばき)の部分には蛇の紋様があり、白い刀身と合わせて白蛇を連想させる。
柄の色は黒と紫と赤紫で、それに加えて金刺繍がほどこされている。
全体的に絢爛豪華な見た目ではあるが、ともすればゴチャゴチャして自己主張の強い見栄っ張りなデザイン。

元は奥州の刀。先の大乱の折に一度行方不明になり、紆余曲折あって現在は尾張幕府管理のもと、各地を転々とする。




















……というのは嘘。
単に『第9巻 王刀『鋸』』で汽口と七花の関係に嫉妬しまくりのとがめのこと。




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最終更新:2024年01月11日 23:11

*1 作中の時代は江戸時代に相当

*2 登場したのはいずれも所有者が考案したものであり、素の変体刀にもあるかは不明。

*3 もっとも高価すぎて買い手がなかなか見つからず、海外に買い手を求めたが。

*4 なお旧将軍家が集めきった変体刀988本は現将軍家の尾張幕府が引き継いでおり、尾張城に保管されている。

*5 この時まだ刀を壊してはならないという命令を七花は知らなかった。簡単には壊れない『鉋』だったから良かったが……。

*6 実際つばぜり合いなんて出来っこない虚刀流にとって刀の切れ味は関係ない、という理由で二番目の収集相手に選ばれた。

*7 ちなみに間違えやすいが『鎩』の字は『殺』の『木』に点が乗っかってる

*8 大きさは七尺以上はある

*9 現在では村長や本家筋以外の人間は由来を知らされていなかった。また村長の長男は狩りに使っていた。

*10 現在の北海道より渡島半島以外を除いた土地

*11 蒐集とは言ったものの彼女以外持ち上げられないので、こなゆきに尾張行きの大船に乗ってもらいこの刀を運んでもらった。アニメ版では双刀を持った彼女が乗り込んだ際『船が若干軋んでいた』。

*12 この時、山と悪刀を守護していた神衛隊は七実によって壊滅している。

*13 木刀のくせして『鋸』なんて切られる側だろと七花はつっこんでいた。

*14 斬刀『鈍』に至っては400年先の技術。