クマムシ

登録日:2012/01/13 Fri 20:44:01
更新日:2023/10/02 Mon 00:48:51
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※本項では「生物」としてのクマムシについて記述します。





クマムシとは緩歩動物の一種で、緩歩動物門に属する生物。
名前の由来は四対八脚の体でずんぐりしていて、ゆっくりと動く様から。英名は(water bears)といい、日本ではまた、長命虫とも呼ばれる。
理由は後述する。






名前のクマムシから察するにカブトムシの幼虫くらいありそうだが、実際は物凄く小さい。体長は50マイクロメートルから1.7ミリメートル程度。
最大サイズですら"見えるかどうか"である。

活動範囲は広く、熱帯、極地、超深海底、高山、あげく温泉にまで広く分布する。
生命維持には有機物の液体や動植物の体液を用いる。ちなみに種類も多く、約750種類ほど。
そのうち150程度が海などの水環境で活動する。
体節制(体節という、繰り返し機構のある構造)は不明確だが、頭部一、胴体四の環節が一般的で、キチン質のクチクラ(キューティクル)で厚く覆われている。
また脚に関節はなく、先端に四十程度の爪、もしくは粘着性の円盤がついている。

体腔(体の中の隙間。内臓が入る場所)は生殖線まわりだけであり、精巣、卵巣は腸の背側に不対で存在するのみである。
ちなみに雌雄異体なのだが、雌が圧倒的に多い。


幼生期はなく、脱皮を繰り返して成長する。呼吸器系、循環器系もなく、酸素と二酸化炭素の交換は透過性のクチクラにより体表面で行う。
消化器系は口から胃、直腸のみで、排泄物は粒状に蓄積され、脱皮とともに棄てる。
神経系ははしご状に、腹部に存在する。対の眼点、脳、二本の縦走神経がそれである。



さて、「最強」と名高いこの生命体だが、それには以下の理由がある。

まず乾眠状態と呼ばれる、いわゆる冬眠に近い状態を維持することである。この状態では無代謝で、休眠していることになる。
またこのとき、クマムシは樽状になっている。

このときクマムシは、体重の85パーセントほどを占める水分を0.05パーセントまで下げている。
水分が少なすぎるのでマイクロ波加熱ができず、電子レンジでチンしても全く効果がない。
さらに151度Cから0.0075K(ほぼ絶対零度)までの温度変化に耐える。
X線放射も57万レントゲン(人間の致死量は500レントゲン)まで耐え、真空から75000気圧まで克服している。
挙句の果てに宇宙空間に生身で放り出しても問題なく生存、地球に帰還後何事もなかったかのように繁殖した。

これが可能なのは乾眠状態のとき、体内のグルコースをトレハロースへ変換しているためで、
水分をトレハロースに変換していくと体内の水分はマクロに見ると粘性が増すのだが、ミクロに見るときちんと流動している。
さらに余分な水分は排出するが、炭水化物を破壊することなく必要最低限の水分は残しておく。

こうすることで極限状況に耐えるのである。











と、まあいいところだけとってみたが、無論、不死身ではない。むしろ弱い。
乾眠するためには乾燥しなければならないのだが、時間を十数時間かけなければすぐに死んでしまう。
早い話、ドライヤーで煽るとすぐに死ぬ。さらに乾眠できる種、できない種があり、それを間違えてもすぐに死ぬ。指で潰せばもちろん死ぬ。

それに保存環境にも左右され、冷凍したり無酸素状態であればある程度は長く保存できるようだ。



とは言えその状態は長らく不思議の海であった。「死んでいるように見えるだけ」なのか?「蘇生する」のか?

結果は、「かなり本格的な死んだフリ」であり、「クリプトビオシス(cryptobiosis)」、隠された生命活動というもの。
同じ状態になるものが、線虫、ワムシ、アルテミア(シーモンキー)、ネムリユスリカなどに見られる。
また120年前のクマムシが蘇生したという話もあるが明確な文献はなく、
似た話では120年前のクマムシに水をかけたら12日後に「脚の伸縮が見られた」というものがある。
これで蘇生したとは言い切れない。

ついでに言うと、通常状態の寿命は約半年。

これら一連の生態は『トリビアの泉』で紹介され、広く知られることとなる。


◆補足

陸上のクマムシはその多くが苔の中に存在する。家の近くの山などに行き苔をとってきて顕微鏡を覗けば意外にも簡単に見つけられるかもしれない。
海中のクマムシは水草などに「しがみついている」。
なぜか?「泳げないから」である。ならなんで海中にいるんだよ、なんてのは野暮というものだ。


またクマムシは種類も多いが分類も多く、まさか、と思うほど異形のクマムシもいる。




ついでに、放射線に関しては単純生物だとその多くが生き延びることができる。人間のように複雑な体の仕組みが放射線に弱すぎるだけである。
"銀玉鉄砲とMP5にそれぞれ泥水をぶっかけてまともに動くかどうか"と言えばわかりやすいだろうか。





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最終更新:2023年10月02日 00:48