11人いる!

登録日:2012/03/12(月) 23:05:44
更新日:2023/04/06 Thu 08:42:15
所要時間:約 6 分で読めます




『11人いる!』とは、萩尾望都による中編SF漫画である。SF漫画、中編漫画の名作として名高い。


あらすじ

舞台は近未来。
宇宙旅行が驚異的に促進されており、地球は3大国に分かれ、その他小惑星などから多くの星々へと進出した。
異星の知的生命体とのファーストコンタクトを経て、地球人は統合政府「テラ」を称するようになる。
名門・宇宙大学入試、最終テストは実技。漂流中を演出し外界から隔絶された宇宙船・白号船内に53日間滞在する、協調性の有無と程度を測定する試験だった。
一チームにつき10名編成。一人でも脱落者が出た場合は連帯責任により当該チーム全員が不合格となるが、白号には参加者が11人いた。
何故11人いるのか、何の陰謀か、11人目は誰か。
猜疑心に満ちた孤立した宇宙船の中、様々なトラブルが11人を襲う。


登場人物


  • タダトス・レーン
愛称タダ。
テラ系シベリース出身で、両親はすでに他界しており長老に育てられた。
星の特性から直感力("狂わない勘"と例えられるテレパシーにも似た能力)の持ち主で、自己紹介のとき、誰が11人目か手を触れて探るなど力を見せた。
落ち着いた性格で、頭がよく判断力もある。
初めて乗るという白号について妙に詳しいが、本人も何故詳しいのかわからなかった。
仲間が感電・負傷した際、的確に執刀した。凄い。

以下、ネタバレのため反転
実は、幼少期白号に乗り合わせており、デル赤斑病の船内蔓延をワクチン接種によって乗り切った人物。両親も白号に乗り合わせており、病気の犠牲になった。
彼にそのときの記憶がなかったのは、長老に封じられていたためと思われる。

  • フロルベリチェリ・フロル
愛称フロル。無所属の辺境星ヴェネ出身。
小柄かつ美しい容姿と豊かな金髪巻き毛で、女性ではないかと他のメンバーを驚かせた。女性扱いされることを嫌い、そのような扱いを受けると激怒する。
加えて、見た目にはそぐわない方言(星間言語だが江戸弁が入っているように聞こえる伝法な口調)、直情的でさっぱりとした性格で皆を更に驚かせる。


以下、ネタバレのため反転
男でも女でもなく両性体。
全てのヴェネ人は幼少時は両性体であり、第二次性徴を迎えると初めて性別が分かれる。
ヴェネは一夫多妻制、しかも長子だけが男になれるという決まりがあり、末子であるフロルは宇宙大学に合格すれば男になる許可が出るらしく、そのために受験していた。
男になりたがったのは長兄の成人式の様子を見て感動したため。
ちなみに、不合格の場合は18歳年上で既に妻が8人いる隣の領主と結婚させられることになっている。

  • マヤ王バセスカ
サバ系アリトスカ・レ出身でその国王。そのためメンバーからは王さまと呼ばれる。
宇宙大学受験は力試しのためであり、合格しても入学はせず国に帰り統治しなければならないという。
王の資質からか、11人の中でも自然にリーダーシップをとるが、自分の価値観に偏りがちな面がある。
目立つ行動の多いタダを11人目と疑っている。
何かと感情的に怒っていることが多いので、なんだか親しみが持てる。悪い人ではない。
発言によれば、サバ系には他にサゼという惑星もあるらしい。
母国に兄がいる(続編で登場)が、この人には王たるべき証しが現れず、本人に現れたので王位に就いた。

  • ソルダム四世ドリカス
愛称四世(フォース)。サバ系アリトスカ・ラ出身。
出身がとなりの星である王さまと、いち早く意気投合する。
基本的に王さまと行動や意見を共にすることが多い。
彼もタダが11人目ではないかと疑っている。イケメン。
テラ系への対抗心が強いのか、サバ系は美形が多いからブサ面は他の星の出だと決めつけたりもした。

  • アマゾン・カーナイス
愛称アマゾン。テラ系シュシュ出身。
糸目で高身長。身体中に傷痕があるが、これはシュシュの主要産業である狩猟によって負ったもの(本人曰く「まだ少ない方」らしい)。
反応がウブっぽい。フロルの裸(半裸と全裸)を2回目撃して取り乱した。

  • ヴィドメニール・ヌーム
愛称ヌー。フロル同様、辺境・無所属の惑星ヴィヌドー出身で、同星からの初めての受験者。
常に落ち着いた柔らかい物腰で、争いごとには参加しない。
皮膚は固いウロコで覆われ、長身で身体能力も高い。また占星術の心得がある。
フロルを"メニール"と呼び、きゃしゃでやわらかいと気遣う素振りを見せる。

以下、ネタバレのため反転
彼も両性体であり、初めからフロルが男でも女でもないと気づいていた。
「メニール」とは彼の星で性的に未分化状態を指し、銀河標準語で意味が近いのは「天使」。
ヌーの種族は季節により性別が分化するが、彼は変化しなかったため両性体のままヴィドメニール(僧)となった。

  • ガニガス・ガグトス
愛称ガンガ。サバ系トレドレーガ出身。
争いを好まず、周りのストッパーになることが多い。
また、タダや石頭と共にコンピューターや船内の修理をする機会が多く工学に長けているようである。
皮膚や体内、血液に至るまで体の全てが緑色。

以下、ネタバレのため反転
緑色である理由は、故郷の風土病を克服して寿命を伸ばすための実験体であるため。
本人によれば「トレドレーガ型青緑色クロレラ栽培法による一種のサイボーグ」だとか。

  • グレン・グロフ
愛称石頭。セグル系灰白色星出身。
呼び名の通り岩石のような見た目をしている。(フロル曰く「まるで岩石人間じゃんか!」)
口数が少ないが、ここぞというときに重要な点を指摘する。
「君は僕らの中で一人だけ黒髪だが僕は試験会場のエアロックに集まった際、君の姿を見た憶えがない」この発言でタダの11人目容疑が深まる(ちなみにエアロックに集められた際には全員が既に宇宙遊泳のための完全装備だったのでそんなものは分からない)。

以下、ネタバレのため反転
正体は地球統合政府の大佐で宇宙大学教官。受験者たちの生命を守ることと、満期までに何としても脱落者を出させることが任務だった“本当の11人目”。
「宇宙は常に変化しまた驚きに満ちており、常識が通用しない世界でもある、常に異端の11人目がいるようなもの」と平然と語る。


  • チャコ・カカ
テラ系クエス出身。
色黒でアフロっぽい髪型。
自己紹介のときだけ関西弁を話す。
ほぼモブ。

  • ドルフ・タスタ
愛称赤鼻。テラ系ペロマ出身。
大きな体で、呼び名通り赤っ鼻が特徴。
気弱そうな印象を受ける。
ほぼモブだが、誤ってタダを射つという活躍をする。

  • トト・二
サバ系ミス出身。
体が小さく、何かのマスコットっぽい。
植物が専門で、野菜栽培を担当している。
ハーレムの話のとき、顔を赤らめていた。
ほぼモブであるが、コマを探せば割りと登場率が高い。


用語


  • 宇宙船・白号
11人の最終試験会場。
恒星間旅行用客船で定員2万人。
いたるところに電導ツタがはびこっている。
エンジンと熱量タンク(熱交換器)が壊れていて、自力航行は不可能。惑星“黒”の衛星と化している。公転周期は53日(つまりテスト満期と同じ)。すぐ近くに恒星“青”がある。
コンピューターも一部壊れているが、受験生達の尽力で修復出来た。

以下、ネタバレのため反転
実は、かつて機関の故障が原因で伝染病・デル赤斑病が蔓延し、乗客の9割が死亡して以来放置されていた、半ば幽霊船に近い代物だった。
ワクチンは2千人分もなく、5歳以下の子供たちにだけ与えられた。
当時5歳のタダも乗り合わせており、数少ない生還者のひとりであった。
ワクチン投与を受けられなかった者達の腹いせで、エアロックが閉じられてから10秒後に順次爆発する時限爆弾がそこら中に仕掛けられ、この為に放棄されたが、タダにより全て無力化された。

  • 宇宙大学
銀河系宇宙最高の名門大学。四大政府が合同で300年前にある惑星に設置。管理者はテラ政府。
他国の武力行使を平然と撥ね退けられる高度な科学力を持つ。
2年半に一度行われる入試の合格率は一次0.1%、二次10%、最終テスト70%の0.007%というとんでもない難関。最終テストは二次試験を突破した700人が10人一組にされて課されるので、1期当たりの志願者総数は4億人を超えることになる。

  • 最終テストの結果
以下、ネタバレのため反転
デル赤斑病の発症者が出たため49日目でギブアップしたが、他のグループ全部がそれ以前に棄権していたため首席合格となった。


『続・11人いる!東の地平西の永遠』

続編。
宇宙大学に合格したタダとフロルが王さまに招かれてアリトスカ・レ(東の国)へと遊びに行くことから始まる。
王さまは心から歓迎してくれるが、迷惑そうな側近(握手した際にタダがテレパシーで気づく)、外部からの船が着いた宇宙港ターミナルに石を投げ込む国民など穏やかな雰囲気ではなかった。
急進派と古典派の確執、また王さまの国であるアリトスカ・レ(東の国)と四世の国であるアリトスカ・ラ(西の国)の両国間の紛争に2人は巻き込まれていく。

前作に登場した人物の多くが引き続き登場する。


今作初出の登場人物


  • バパ大臣
王さまに信頼されているが急進派で戦争に積極的。
5年間先王に代わって摂政として国政を行っていた。

  • トマノ
王さまの兄。
アホの子。

  • アマン伯
王さまに忠誠を誓っている。
娘が可愛い。

  • オーセ
法司長。
暗殺されてしまう。

  • オナ
オーセの養女。
美しい娘で、法司次長の資格を持っている。
彼女の美しさにフロルのテンションがかなり上がった。
殺された父親を見てショックのあまり昏睡状態に陥った。

以下、ネタバレのため反転
昏睡から覚めた後、全ての陰謀の内容を暴露し、事態を解決に導く。

  • チュチュ
四世の妹。
勝ち気だがかわいい。家族想いなのを利用されて騙されるかわいそうな娘。

  • ローン
四世とチュチュのおじ。
西の和平使節として東の国へ訪れるが行方がわからなくなってしまう。
以下、ネタバレのため反転
殺されかけたが猟師によって救われており、無事任務を果たす。

  • 火消しの赤毛
銀河連邦の情報部員コンビ「火種と火消し」の片方。騒ぎを起こすのが「火種」、鎮めるのが「火消し」。
アリトスカの騒動鎮圧に尽力する。

  • ゾンブル
悪い人。
以下、ネタバレのため反転
商人を装っているが、実は大国ドゥーズの秘密情報部長官で全ての事件の黒幕。

宇宙大学の先輩。黒髪の長髪、いつも眼鏡をかけている。ノリが軽い。

  • アテナイ
宇宙大学超能力開発コースの美人教師。タダの能力を開花させるため、超能力開発コースの受講を勧める。潜在的能力者でテレパシー(精神感応)しか使えなかったタダが、アリトスカ・レでテレキネシス(念動力、しかも物体を宙で静止させる)まで発現させたことを知らされ驚く。



ネタバレになるため反転するが、とにかくタダとフロルが終始イチャイチャしている。
喧嘩することもあるがイチャイチャ、危険な状況に置かれてもイチャイチャ。
これも見所のひとつである。


『タダとフロルのスペースストリート』

大学生活を中心としたコメディ短編集。
また2人がイチャイチャしているが、周りにとっては日常茶飯事。


余談

  • ドラマ・アニメ・舞台化されている。

  • 『11人いる!』というシンプルな作品タイトルと名作ゆえの知名度から、後世の創作作品でたびたびタイトルだけパロディにされることが多い。
宮藤官九郎脚本・神木隆之介主演ドラマ『11人もいる!』もそのひとつ。



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最終更新:2023年04月06日 08:42