イリス(怪獣)

登録日:2010/03/12 Fri 01:51:58
更新日:2023/12/24 Sun 14:53:06
所要時間:約 5 分で読めます







天地否、それ滅びなん。




イリスとは、映画『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』に登場する怪獣である。
『イリスのアトリエ』や虹の女神、遺跡板に宿るAIとは全く関係ないが、名前の元ネタは同じ。


【諸設定】

別名:邪神柳星張
体長:99m
体重:199t
翼長(展開時):199.9m
触手最大到達距離:1,999m
最高飛行速度:マッハ9
武器:超音波メス、テンタクラーロッド、オーバーブースト・プラズマ(偽プラズマ火球)
※成体時の数値

やたら「9」が揃った数値は、映画公開年である1999年に合わせたと言われている。



【概要】

太古の昔、現代の南明日香村の山奥にある祠に封印された生命体。

両肩から左右二対計四本生えている鋭い鏃状の先端を持った伸縮自在な触手、鋭利な槍状になった両腕、発光する胴体、四枚の翼状の突起を持つ背中等が特徴。
頭部は骨のようなもので覆われ、隙間から単眼(と言うより眼かどうかすらよく分からない光球)がのぞいているが、表情などは全く見られない。
作中では成長・進化に伴い複数の形態を見せているが、成体では一応人型のシルエットをとっている。

触手の先端からは超高出力の超音波メスを放つ。
また鞭の様にしならせて 『2』のレギオンと戦った時よりも遥かに強力に、凶悪に進化したガメラのプラズマ火球(数発で京都中心部数キロ圏内に大規模の爆発を起こし大炎上させるほど)すらも払い除けてしまう。
腕は槍のようになり、その威力はガメラの腹を甲羅ごと貫くほどである。
触手や腕を他の生物に突き刺す事で体液を吸い取って自己の活動エネルギーを補給するが、同時にその生物が持つ遺伝子情報を読み取る事ができ、解析した情報を自分のDNAに組み込む事で染色体すら書き換え無限に自己進化していく。

また、黒い勾玉を介する事で二作目までのガメラ同様人間の精神と交感しその力を高めていく事が出来る。

一般的にイメージされる「怪獣」と言うよりも『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する「使徒」などに近いイメージの奇怪な存在といえる。


その正体はギャオスが突然変異を起こし、更に進化した変異体である。
作中におけるサンプルの調査結果によると、封印されていた卵の染色体はギャオスのものと一致していたが、繭の粘液から調べた染色体構造は変化していることが発覚した。
イリスの卵を産んだのはギャオスだということは確からしい。



出自については不明な点が多いが、劇中では倉田真也が以下のように考察している。

  • 突然変異か、あるいは人工的に生み出されたのかは不明。
  • しかしガメラと同じく人間と交信する事によって強化に成功したギャオス。
  • 打倒ガメラの為にギャオスを妄信する一派が古代日本に流れ着き、イリスと交信する巫女の血を絶やさずに守ってきた。
  • その末裔が朝倉美都だが、イリスは純粋な憎しみを持つ綾奈を選んだ。

なお、企画書では「古代人がガメラを倒す為に作ったカウンターウェポン」というコンセプトである。

柳星張」の名で太古から祠の奥に亀型の石の力で卵の状態のまま封印されており、「もし復活したならばこの世が滅ぶ」と言い伝えられていた。
そしてこの卵を監視する為、守部の一族が代々封印の管理番となっていた。
封印の石はかつてどんな力持ちが運び出そうとしてもびくともしなかったものであったと伝えられているのだが、綾奈は少々重そうでこそあったものの普通に運び出しており、イリスが綾奈を「選んだ」ことを匂わせる場面である。本作ではマナの減少により地球に異変が起きているのではと推測されておりその最中に封印が解けていることから、封印が影響を受けた、ひいては推測が事実であることを匂わせる場面との見方もできる。

なお、「柳・星・張」とは古代中国で使われていた二十八宿において南(うみへび座の方角)を意味し、四神獣の「朱雀」を示すものである。
仮に「朱雀」がギャオスを表した物であれば、対極する存在「玄武」はガメラという事になる。


しかし四神繋がりとすると「青竜と白虎はどこ行った?」という事にもなってしまう。
外伝漫画ではバルゴンが登場していて、仮にこれを青竜に比定しても、同作にはジャイガーとジグラもいた事が示唆される為、残る白虎には頭数からして当てはまらない。
仮に「中央:麒麟or黄龍」を加えて、白虎をジャイガー、麒麟or黄龍をジグラにしても、同作ではイリスは「ギャオス変異体」ではなく、最初からあの姿として作られた、「ギャオスと同じ遺伝子工学で作られた別製品」として描かれている為、今度はギャオスが枠からあぶれてしまう。

ガメラとギャオス・イリスを作ったのは滅亡した超古代文明であり、四神発祥の中国文明ではない。
たまたま亀と鳥(っぽいなにか*1)だったというだけの事である。
オマケに考古学研究によると、四神は古代、青竜・白虎・朱雀だけが存在し、玄武は後付け、ということなので、超古代文明が中国文明に影響を残した、という線もなさそうである。


【劇中の活躍】

□邪神覚醒

ガメラの戦いで両親を失い、遠縁の親戚に引き取られ南明日香村にやってきた中学生・比良坂綾奈。
学校でイジメにあっていた彼女は洞窟の祠の中から石をとってくるよう要求され、彼女が祠にあった亀型の封印の石を動かしてしまった事で封印が解かれてしまう。
それから間もなく渋谷に現れたガメラとギャオスの戦いに反応して卵が孵化し、現代にその産声を上げる。

最初は1メートルぐらいのカタツムリのような(見ようによっては)かわいい姿になっており、発見した綾奈が以前飼っていた猫の名前から「イリス」と名付けられる。
幼体という事もあって体は小さいが、その心は邪悪そのもので、ガメラへの憎悪に満ちている綾奈の心に共鳴。
ガメラを超える為にかつてのガメラと同じように人間との交感を試み、彼女の庇護下で育てられることとなる。
しかし触手から刃物のようなものを出して缶詰をぶち抜いて中身を吸い上げる様子には、居合わせた守部龍成だけでなく、当の綾奈もドン引きしていた。


□進化するイリス

しばらくは定期的に祠にやってくる綾奈から餌を与えられていたが、彼女との交感を欲して祠を抜け出し、森の中で野生動物を惨殺して回る。
そして自分を探しにきた綾奈の前で更なる進化を遂げると同時に、彼女とより深く結びつく為に文字通り合体を試み、野外触手プレイを敢行。
邪魔の入らないよう洞窟の奥で巨大な繭を形成し、その中で綾奈と神経系から融合しようとしたが、綾奈を探して洞窟にやってきた龍成が守部一族に伝わる封印の剣で繭を切り裂き綾奈を救い出し、融合は失敗してしまう。

しかし、不完全ながらも取り込んだ綾奈のDNAから自身の染色体構造を変え、人型へ自己進化を遂げる。
さらに村人を大勢襲って触手で体液を吸い取り、ミイラ化させて殺害。判明した限りで27名、南明日香村の半分を壊滅させた。
ちなみに綾奈の親戚やイジメっ子等、綾奈が蟠りを抱いていた相手を襲っていた…と勘違いされることが多い*2が、別に「綾奈の憎む相手だけを選んでいた」等ということはまったくなく、彼女に対してそれなりに打ち解けていた従兄のように無関係・善良な人間も殺戮されている上、逆にイジメっ子等が標的になったという描写は全くなく、その生死すら謎のままである。
その中には奈良県の山中でキャンプに来ていた人もおり、キャンプを楽しんでいたカップルを襲撃し、その際に当時新人だった仲間由紀恵をミイラにした。

大量の人命を奪ったイリスは、遂に100m級の成体へと進化を果たす。
この一件の為か、奈良の山中で通報を受け偵察に来た陸上自衛隊の一個小隊と交戦するも、攻撃を全く受け付けず全滅に追い込んだ。
映画版では単に飛び去るに際して爆風で吹き飛ばしただけで、自衛隊を気にさえしていない様子だったが、漫画版では彼らも全員ミイラにしている。 


□邪神降臨

綾奈との再度の融合を果たす為、触手の間に虹色に輝く皮膜を広げ奈良の山中を飛び立ち、綾奈の居る京都を目指し飛翔する。
その途上で航空自衛隊に捕捉されガメラ哨戒に当たっていたF-15J二機と接触し、交戦。
イリスは凄まじい機動性でF-15に肉迫し圧倒する。むしろ撃墜されずガメラ乱入と同時に戦場離脱に成功したパイロットが凄い

しかし、駿河湾に潜伏していたガメラが突如駆けつけ、互角の空中戦を展開。
ガメラにダメージを負わせるもその猛攻に圧され一時は京都から紀伊水道方面に追いやられるが、空自高射隊が放ったペトリオットミサイルが命中しガメラは一時失速。体勢を立て直して追撃に移ったときにはイリスはガメラを振り切っていた。
その隙にイリスは大型台風が迫る古都・京都に接近し、遂に台風通過中の京都市上空に出現。猛烈な台風の上に人口密集地であることから、自衛隊はイリスに手出しできなくなった。

東寺付近に降り立ったイリスは、すぐさま追撃して来たガメラの火球三連射を触手で弾き、京都の古き街並みを焼き払った。



□ガメラ VS イリス

そのまま同じく市内に降り立ったガメラと激突。
二体の格闘は綾奈たちがいる京都駅にまで雪崩れ込み、途中綾奈から勾玉を奪った朝倉美都がガメラに加勢した事で圧されるがそれも押し切り、腕の槍でガメラの腹に風穴を開けて昏倒させる。そしてその隙に綾奈を体内に取り込み、再びの融合を図った。
その直後。

再び立ち上がったガメラに、綾奈を吸収した腹部を抉るように手を突っ込まれた事で事態は一転。
またも融合を邪魔され怒り狂ったイリスはガメラの右手を串刺しにして身動きを封じ、同時に吸収したガメラの体液の遺伝子情報からプラズマ火球の能力をコピーし、触手の切っ先から放ってガメラにトドメを刺そうとする。


だが「炎をエネルギーに変える」ガメラの特性を知らず、「相手が持つ最大威力の炎技でトドメを刺そうとした」イリスの判断が勝敗を分けた。

なんとガメラは串刺しにされた右手を自ら火球で吹き飛ばし、強引に拘束から脱出。さらにイリスが放った火球を千切れた右腕で受け止める。
するとその火球のエネルギーはガメラの腕を象り、焔の腕「バニシング・フィスト」に変化。
まさに「肉を切らせて骨を断つ」戦法。ガメラは間髪入れず先ほど綾奈を抉り出したイリスの傷口にその火炎の塊をぶち込み、イリスは腹をグチャグチャにされると同時に体内から白熱化し、京都駅構内を巻き込み大爆発を起こした。

その後、砕け散った肉片もガメラによって踏み潰され、イリスは完全に息絶えた。
自らの進化の為に大勢の動物や人間、自分を育てた少女、さらには敵であるガメラすら利用した邪神は、ある意味「自滅」とも言える最期を迎えたのであった。



【話題】

  • 空中戦
劇中後半にある奈良~京都間での空中戦は、実写とCGを組み合わせた美麗かつスピーディーな演出から高い人気を誇る。
特にF-15との空戦は一見の価値あり。空自のバッジシステムを織り交ぜた空中戦はむちゃくちゃかっこいい。とにかくかっこいい。
なお、撮影協力上の約束である「自衛隊機を撃墜しない」もしっかり守っている。

  • 京都駅での戦い
特撮史上初の巨大怪獣同士の屋内戦を演じているが、精巧に出来た京都駅の模型が豪快に破壊される様はまさに圧巻。
今でも特撮ファンにとって聖地の一つとなっており、『らき☆すた』では京都駅に来たこなたが「ここにイリスが入ったのか……」と呟いている。

なお、劇中ではイリスとガメラの二体は京都駅内で空間的に余裕のある立ち回りをしているが 二体の設定身長は実際の京都駅より高い *3*4



【余談】

  • 怪獣というより怪人に近い美しさすら感じる人型体型のイリスであるが、実際に映画に出てくる撮影用スーツはよくよく観察すると胴長短足。(デザイン画や雛型フィギュアはちゃんと均整の取れた体格をしている。)
    ボリュームのある上半身や触手を、高下駄で爪先立ちをしている様なデザインの足では体重を支えるどころか歩く事すら出来ない為、撮影ではゴム長靴を履いて演技を行なっている。
    劇中でイリスの全身が映るシーンはほぼCGによるものであり、「着ぐるみでのイリスの全身が映るシーン」はほとんど存在しない。

  • 綾奈役の前田愛氏はイリス幼体をかわいいと思えず、操られていると解釈して演技をしていたらしい。

  • 「相手の体液を吸収してDNAを奪い取り、自らの肉体に反映させて、無限に自己進化を遂げる」という点は、本作の3年前にゴジラ戦った完全生命体・デストロイアと非常に類似している。
    その他にもラスボス同士故か、以下のように類似点が多い。
    • 「劇中で急速に姿を変える」
    • 「人間大から怪獣サイズまで大きさの変化が著しい」
    • 「人間を直接襲うシーンがある」
    • 「主役怪獣の最後にして最大の敵」
    • 「主役怪獣のルーツに由来する出生を持つ(デストロイアは初代ゴジラの、イリスはガメラの過去に由来する)」






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最終更新:2023年12月24日 14:53

*1 一作目でも絶叫されているが、ギャオスは鳥の要素を持っていない。「羽毛がなく牙がある、あんな鳥はいません!」。生態的にはコウモリに近い。また、この世界観には「亀」という生物は現存していないということになっている(第1作でしれっとカメの置物が登場してしまっていることはさておき)。

*2 事実本wikiでも長らくそのような記述であった

*3 ガメラの身長は80m、イリスの身長は成体の場合99mであるが、一方二体が対決した京都駅ビルの吹き抜けの高さは約50m、京都駅ビル自体の高さは60mである

*4 なお、京都市は景観重視の為に建物に高さ制限を掛けているが、京都駅周辺は「高さ120mまでの建物の建設が可能」という特例措置が適用されており、京都駅ビルの設計コンペでは実際に高さ120mの案も出ていた。なので、その気になれば現実のデザインのまま120mにスケールアップして建設することも可能であり、平成ガメラの世界ではそのように建設されたのかもしれない