じゃじゃ馬グルーミン★UP!

登録日:2010/04/01 Thu 12:53:54
更新日:2024/04/14 Sun 15:58:38
所要時間:約 3 分で読めます




『じゃじゃ馬グルーミン☆UP!』とは週刊少年サンデーにて連載されていた。

単行版:全26巻
文庫版:全14巻

【概要】

ゆうきまさみ作の恋愛と競馬のハイブリッドなマンガ。
華やかなレースを描くのではなく、馬を育てる牧場の人々の様子や目線から競馬模様を綴る、競馬ものとしては珍しい作風で、馬初心者の主人公を通じて競馬の裏側や馬の育成事情を学べる入門編的面も持つ。
だが、少々地味な分野を扱った作品であり、しかもサンデー内では少年探偵団天才野球少年等話題作が他に多数あり、
競馬ものとしても当時他雑誌で『優駿の門』(チャンピオン)・『蒼き神話マルス』(マガジン)・『みどりのマキバオー』(ジャンプ、アニメ化)と競馬の表舞台な競走馬と騎手達をメインにした作品が馬だけに対抗馬となり比較的目立たなかった。
実際に読んでみると考えこまれたストーリー、徹底された裏設定、生々しい人間の描き方など、作品としてのとてつもない完度の高さに驚く。
作者の前々作「究極超人あ~る」の学園ギャグコメディ、前作「機動警察パトレイバー」や本作でも作中作としてカメオ登場し数年後からリブート連載される事になる「鉄腕バーディー」のシリアスな作風から打って変わり、アットホームな牧歌的な作品に仕上がっている。
ゆうきまさみにはまいど良い意味で裏切られております。(ただしじゃじゃ馬グルーミンまで)
ちなみにゆうきの連載作品としては「同一タイトルでの最長連載」となっている(トータルだと初期版・リメイク版→『EVOLUTION』と続いた『鉄腕バーディー』)。

余談だが2010年代にサンデーで連載された農業高校&畜産もの『銀の匙 Silver Spoon』(荒川弘)では本作で扱わなかった馬術競技・ばんえい競馬の様子をサブで描いているため、両方読むと色々と面白いかも知れない。


【ストーリー】

普通、滅多に目を向けられることの無かった競走馬の生産牧場の厳しい現実を書き、そこで働く人々の汗と涙のヒューマンドラマ。
極寒の地の北海道の馬牧場に東京の進学校に通う高校生の久世駿平が勤めることに。厳しい現実に真っ向から立ち向かう人々の生きざまを見よ!


…というのはサブストーリー。競馬マンガなのに。

実際は主人公の駿平がひょんな事から、北海道の馬牧場で働くことになった。そこの牧場には美人4姉妹がおり、駿平は二女のひびきに恋をする、というのがメインストーリー。
まさにギャルゲ。


【主要登場人物】

  • 久世(くぜ) 駿平(しゅんぺい)
長髪をうしろに束ね、馬のシッポみたいな髪型が特徴の本作品の主人公。
競馬の知識ゼロ、また馬の知識でさえゼロに近い状態で牧場に勤めることになった挑戦者。その中で祐騎との会話から「渡会牧場からダービー勝利馬を輩出する*1」という夢を抱く様になる。
性格は良くも悪くも今時の若者という感じで直情的な面が目立つが、馬に関しても一般的愛護精神で対するため、愛着はありつつ「商売品」という視点で馬を扱うひびきら馬産関係者達に違和感を感じる事も多々あり、
最終巻では「もし再び双子の馬が生まれたらどうするのか」というひびきの問いに出来るだけ生かしたい迷いを見せ、彼女から(時に命の間引きも強いられる馬産に)向いてないと呆れられていた。
途中から牧場に勤めるため高校を中退したが、終盤では獣医になるため大検取得へと向かうことに。
ひびきに恋してる。早漏。一撃必中。
+ ネタバレ
終盤ではひびきとの初体験で彼女が妊娠してしまい、結局出来ちゃった結婚しつつ大学進学を目指し勉強する日々に。
一応戸籍的にはひびきの方が久世家に嫁入りした扱いだが、駿平も渡会家に居候しつつ牧場で働く生活はそのままなため暮らし自体はさほど変わっていなかったり。
なお作中では結局大学進学し獣医になれたかは謎なのだが、エンディングでたづな・ひづめがそれぞれ牧場の外で仕事を見つけ、あぶみの夫は新規に牧場を立ち上げているため、多分獣医になれなくても牧場は継げそうである。
ちなみに最初に妊娠を知らされたのは、実家系列のオタワホースパークを駿平とともに訪れていた彼女を案内役の兄嫁から頼まれて病院に送った醍醐悟だったため、
結果的に最悪の形で恋に止めを刺された彼に遅れて駆け付けた駿平はぶん殴られた。

駿平の勤め先である渡会牧場の二女。
見た目はちょいとボーイッシュ。なにより馬を愛してる*2
双子の弟がいる。
ツンデレ。ツンデレ。いや、ツンツンツンツンツンデレくらいかも知れない。

  • 醍醐(だいご) (さとる)
お邪魔キャラその1。
渡会牧場とは比べ物にならないくらいデカイさの醍醐ファームの御曹司(四男)で、北海道大学の獣医学部に通う大学生。
ひびきに好意を寄せており何かと理由を付けては渡会牧場に遊びに来る。
テレビアニメ『鉄腕バーディー』のバーディーのモデルだったりする。

余談だが各種描写*3や作者が「社台ファーム」に取材した事から、2021年のコンビニコミック版掲載解説等では醍醐ファームのモデルは日本最大馬産「社台グループ」説が有力視されている。

  • 渡会(わたらい) たづな
お邪魔キャラその2。渡会家の三女。
お菓子作りが趣味の乙女。
駿平に恋をしている。またたまに勉強も教わっているが、終盤では視力の悪さを指摘され眼鏡をかけるように。

  • 渡会(わたらい) あぶみ
渡会家長女。酒豪。
おっとりとした雰囲気とは違い悪女。悪女。後半では馬産大手の御曹司猪口繁行との婚約計画が周囲で進む一方、悟ともフラグが立ち、最後に彼女が選んだのは…。

  • 渡会(わたらい) ひづめ
渡会家四女。
ゲームが大好きです。

  • 渡会(わたらい) 健吾(けんご)(ケンちゃん)
北海道は日高にある渡会牧場社長。おっとりとしたいい人だが、いい人過ぎて時々嫁と娘が牧場の行く末を真面目に案じてしまうくらい。
元は東京出身で、旅の途中一人で海を眺めていたところ、自殺志願者と勘違いした千草に拾われ渡会牧場で働くようになったという過去を持つ。
千草と恋仲になるも牧場の現実についていけず一度は東京に戻るが、千草は「ケンちゃんと一緒に東京に行く」と言い出したため結果的に駆け落ち。
翌年あぶみが産まれたため、最終的には千草の父親が折れて千草と共に北海道に戻り、渡会家の婿養子になった。


  • 渡会(わたらい) 千草(ちぐさ)(チーちゃん)
ケンちゃんの奥さん。とにかく、渡会夫婦は仲が良い。
渡会牧場の副社長を務めており、経営者としては人が良すぎる夫に代わって実質的に渡会牧場を切り盛りしている。
しかし、健吾が決めたことは「お父さんが決めたこと」として従うなど社長である夫を立てるところはしっかりと立てている。
一見クールに見えるが若い頃は牧場の跡取り娘でありながら健吾と東京に駆け落ちするなど根は情熱的で、ここら辺の性格は娘たちにも受け継がれている。


  • 渡会(わたらい) 祐騎
渡会家長男でひびきの双子の弟。強気で攻撃的でかつ現実的な性格で、姉そっくりな顔だが髪色と長さが微妙に違う。お邪魔キャラその3。
騎手になるためいつもは騎手学校におり(そのせいで自室が知らぬ間に駿平に貸し出された)、騎手デビュー後は美浦トレセンの芹沢厩舎に所属している。


  • 梅ちゃん
本名、年齢不明。
エロ本、エロビデオなどエッチなものならなんでも好き。
作中から、大阪で詐欺をして北海道に逃げて来たことがうかがえる。
大の馬券下手だが、馬券が当たってしまうと、話が悪い方向へ向かってしまう。

  • 竹岡竜二
芹沢厩舎に所属するベテラン騎手であだ名は「竜さん」。妻(芹沢調教師の娘)に先立たれた後騎手になった息子一人と中学生の娘わかばと3人暮らしをしており、番外編では竹岡家の様子が描かれた。
人気より義理や馬の調子を考慮して騎乗するため戦績自体はそこそこレベルだが(一応G1ジョッキーではある)、それが結果的に人気が薄い馬の上位入賞に繋がる事から「人気薄の魔術師」なる異名で知られている。
駿平達とは最初駿平から誰それとか言われてたがストライクイーグルに乗った縁で知りあい、後半では一人共々祐騎の騎手としての先輩にもなった。
ちなみに最終巻では52歳になっても現役なのを芹沢師の息子に揶揄されたが(エンディングによると流石に60代では解説者に転身したそうな)、後にリアルでは54歳G1勝利騎手や55歳重賞勝利騎手が登場することになる。


【主な登場馬】

リアルよりなので馬が喋ったりはしないが、効果音代わりに「馬の気持ち」を表す台詞が使われたりする。

  • ストライクイーグル
一応渡会牧場の看板馬なG1勝利競走馬。ちなみに母は渡会牧場の馬だが父は醍醐ファームの馬「ダイゴアンバー」(予算的に手ごろだった2・3番人気の馬)だったり。なおバトルホークなる半弟がいる。
所属は美浦トレセンの野々村厩舎だが、作中最強クラスの騎手弓削匠で菊花賞を取った後別厩舎の竹岡竜二も乗る等微妙に上が安定しておらず、ラスト一年は変人騎手板東聖二(セイジ)が主戦騎手となった。
マイペースでスロースターターな面があり、しかも気性難かつ馬っ気抜群ということで、毎度騎手や相手含めた周囲をやきもきさせ、皐月賞・ダービーを怪我で棒に振る等故障も多めだがステイヤーの才はあり、最後は有馬記念勝利で無事引退・種牡馬入りした。

なお名前の語感や最後の騎手セイジのキャラから、一部では変幻自在の脚質馬を連想してセイジのその後の素行を案じたファンも多いとか。

  • ダイゴアルテミス
桜花賞や毎日王冠を勝ち。秋の天皇賞でも二着した名マイラー。
初仔は未出走だったが、その後二年連続でアルデバラン、プロキオンというG1馬を産んだ名牝。
幼名は「ひびき」。
仔馬の頃は悟が世話をしていたため、悟はこの馬の産駒に対して強い思い入れを持っている。

  • アルデバラン
ストライクイーグルと同期の醍醐ファーム産優良血統馬で、悟が仔馬の時から様子を見て来て愛着がある皐月賞馬。
距離適性の違い等からイーグルとの直接対決自体は殆ど無かったものの、ある意味ではバックにいる悟も含め渡会牧場の馬を推す駿平と対をなす存在でもある。
なお、ダービーは竹岡家の一人君が騎乗して親子対決したが、穴馬センコーラリアット(一人の前騎乗馬にして竜二がかつて皐月賞に勝った時の馬の産駒。その後宝塚記念を制している)がかっさらった。
文句なく世代最強と言える馬なのだが、いい意味でも悪い意味でも母に似ており、距離適性的には2000mが限界。
順調に戦績をあげイーグルより先に引退したが、ラストランの有馬記念では無念の惜敗というまさかの事態となった。
ちなみに兄馬もいたそうだが、悟曰く「腰に欠陥があるせいでデビュー出来ず、いつのまにか『いなくなっていた』(意訳)」という…。

  • ヤシロハイネス
こっちもストライクイーグルと同期の馬で、アルデバラン引退後にイーグルと競ったライバル的存在ハイネス側から見るとイーグルが微妙に疫病神的に見えるとか見えないとか
兄2頭が制したオープン戦を征した後古馬期から頭角を現し、天皇賞春秋制覇(春は2連覇)と好調だったものの、引退を伸ばして出走した3回目の天皇賞(秋)直後(距離的に微妙だったイーグルより上位だったが)屈腱炎で引退。駿平が馬をケアするため獣医を目指す事を決める切っ掛けとなった。

  • タケル/ベルエキップ
駿平が物語の冒頭で行き倒れていた時偶然出会った仔馬。そのせいで最初、勝手に外に出たタケルを探して駿平も見つけたひびきの名前が「タケル」と勘違いされた。
その後新米調教師保科正武の元に預けられ「ベルエキップ」の名でレースデビューしたが、菊花賞出走時駿平と渡会家にそれどころでない事件が…。

  • ヒメ/ドルチェヴィータ・ヒコ/アダタラヨイチ
牧場の繁殖牝馬「ヒルデガード」(ヒルダ)が長年に渡る不受胎を乗り越え初めて産んだ仔で牝牡の双子。タケルの1歳下にあたり、父馬は醍醐ファームの馬「ベイルート」。
「双子の競走馬はひ弱で走らない」という過去の実例から中絶されかけたり*4、懊悩の末出産が決まり何とか無事誕生するも母馬の負担からヒメのみ仔を喪った馬が親代わりになったり、
双子ゆえに中々売れない上ヒコの方が成長が遅くひ弱なためヒメの方に先に馬主(悟の兄)が付く等各種問題はあったものの、駿平にとっては初めて幼子の頃から面倒を見かつ「馬の現実」をも実感した愛着のある馬となる。
最終的には馬主が違うせいで名前に統一感が存在しないが先例通り戦績こそぱっとせずヒメは故障で早期の繁殖入りを余儀なくされたものの、双子両方がデビューしかつ一応勝利も出来た珍しい競争馬に。
+ 以下、最終回のネタバレに付き注意
最終回ではヒコが日本ダービーに出走…したのだが、所属する芹沢厩舎側の内情は「馬主さんが出したいと言ってるし、出れなかったら諦めがつくだろうし…(意訳)」と消極的なもの。
(折り悪く芹沢師が入院中で、馬主の無謀な意向を制する説得力の持ち主が不在だったことも大きい)
出走自体もひ弱な身体に鞭打って連戦し、ダービーでは皐月賞馬に乗る弓削匠で勝ちを稼いでも出走確定に届かず故障馬発生による抽選でギリギリ滑り込めただけで、ダービー本番時には騎乗した竹岡竜二も馬の状態等からどうしようかと悩む始末。
結局ヒコはシンガリに沈み、終わった直後ヒコの元へと駆け寄った駿平は、竹岡との会話後近くにいた祐騎に(駿平の馬への姿勢も含め)なじられる羽目に。
さらに駿平が北海道に戻ると妻ひびき出産の知らせが伝わり、病院で待つ妻子の元へ帰った駿平は何とも言えない泣き笑いの様な感慨を告白、本編は幕を閉じるのであった…。
その後イーグルやタケル、ヒコ(及び梅ちゃん)がどうなったかは不明だが、エンディングで描かれた15年後ではヒメの孫が登場している。


【その他登場人物】

謎の刑事(笑)。登場のたびにスポーツ新聞を読んでいて、部下が何か報告してくる。

主人公がジュースを買うために立ち寄った酒屋の娘。



【余談】

作者は本作執筆のため社台ファームへと取材に行った際、「今度デビューする(父)カーリアンの良い奴ダービー行けるよ(意訳)」なんてお得情報を関係者から聞いたが、
残念なことにその事をころっと忘れてしまい、本作初期の1996年にその「カーリアンの仔」ことフサイチコンコルドがダービー馬となった際やっと思い出し、馬券を買わなかった事を後悔したそうな*5

本作に登場した馬の内、「ストライクイーグル」「アルデバラン」「ベルエキップ」「ドルチェヴィータ」は現実でも同名の馬が存在。只し時期的に本作由来ではないと思われるが*6
ちなみにリアルのストライクイーグルは2013年生まれで(父キンシャサノキセキ)、2015年デビュー後ダートで奮闘。中央から大井競馬場に移籍後2020年に地方重賞「大井記念」を勝っている。



ひびき「・・・きだから」

駿平 (ピタ)

ひびき「アニヲタwikiのことが好きだから--」
「追記・編集してもらわないと淋しくて困るべさ!」

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最終更新:2024年04月14日 15:58

*1 ちなみに昔の渡会牧場でも一頭ダービー馬「スピットファイア」を輩出しており、各種タイトル馬がいながらダービー馬だけが中々出ない醍醐ファームから少し嫉妬されていたりする。

*2 ただ渡会家全員に言えることだが物心ついた頃から馬の死や「経済動物としてのサラブレッド」の現実をも見て来たため、一般人の駿平から見ると馬に対してのシビアな観点をも有している。

*3 所有著名種牡馬がノーザンダンサーの仔「オタワ」(ストライクイーグルの祖父でヒメ・ヒコの母父)で系列施設が「オタワホースパーク」、所在地が千歳の近く等。

*4 完全中絶案の他に(リアルでの1999年ダービー馬アドマイヤベガの様に)片方だけ受精卵をつぶす」案もあったが、そっちは受精卵の癒着の強さからより困難だったため先に放棄されている。

*5 余談だがフサイチコンコルドは体調不良等のせいで新馬→特別からすぐダービーに直行していたため(ダービー馬では2例目)、ダービーまで作者が名前を聞かなかったのも無理はないと思われる。

*6 しかもアルデバランに関しては2001年生まれ(父ジェニュイン、地方競馬)と1998年にアメリカで生まれ引退後日本で種牡馬活動している通称「アルデバランII」の2頭いたりする。