四八(仮)

登録日:2011/11/27 Sun 08:24:55
更新日:2024/02/07 Wed 22:19:00
所要時間:約 6 分で読めます





   四/
  <仮    四八マン、参上!
   八 





『四八(仮)』とは、2007年11月22日に発売されたプレイステーション2ソフトのこと。
発売元はバンプレスト、開発元はアルカディア・プロジェクト。株式会社シャノンも開発に携わっている。
シナリオライターは「学校であった怖い話」シリーズでその手の愛好家の間では有名な飯島多紀哉氏。


概要

本作は所謂ホラーゲームで、47都道府県にまつわる怖い話や都市伝説を読み進めてゆく。
制作サイド曰く「ネットでなんでも調べられる時代だからこそ地元を徹底取材して土着の話に拘った」とのこと。
それらの他に「あなたシナリオ」という、シナリオを一定数読み進めると自動的に発生する主人公を題材としたシナリオがある。
「あなたシナリオ」は12個に分かれており、全てを読み終えるとエンディング。
「契力(シナリオを読む際や住人の状態回復などに用いられる、言わばお金のようなもの)」、
「住人移動」などといった斬新なシステムが多く組み込まれているのも特徴。


これだけ見ると普通のホラーゲームだが、
このゲームは「ホラーゲーム」ではなく「伝説のクソゲー」として名を馳せている。
ホラーゲームにとって重要な要素であるシナリオ・システム・デバッグその他もろもろ、どれもダメというどうしようもないゲーム。
たけしの挑戦状及びデスクリムゾンと並んで「10年に一つのクソゲー」と呼ばれるが、たけ挑は狙って理不尽なゲームとして作られており、
デス様は(実を結んだかは別として)少なくとも制作サイドの前のめりなチャレンジ精神は読み取れたことから、両方ともバカゲーとして楽しむ余地はあったが、本作にはそんなものは一切ない。
ただひたすら手抜きと技術不足とユーザー軽視だけがこもった典型的な負のクソゲーである。


問題のあるシナリオ


  • 大阪シナリオ:「大阪トンネル巡り」
大阪には色々な食べ物があって良いよね!→でも有名なトンネルも多いんだ→このトンネルにはこんな伝承が~→トンネル探索もおススメだよっ!


タイトルから溢れる地雷臭、そして終始地元ガイド。内容もかなりペラペラ。
なお、ただひたすら地元ガイドを行う県は他にもある。島根、静岡、愛知など。
シナリオ開始直後に声が聞こえてきたらそれは観光案内である覚悟はしておいた方が良い。


  • 沖縄シナリオ:「花見」「家族旅行」
家族で遊んでいたら幽霊が……。
話はまあ聞けないこともないが語りが変。

「ブロッサムをシーイング」
「ガールがストップしてたのさ」
「暇をマッシュしてたら」

所謂「ルー語」。驚かせるシーンでも語りは変わらないので緊張感が削がれる。
そもそも県関係ない。
そしてこのシナリオの語り手を務める「黒井クララ」という娘、なんと00歳
これは他のシナリオで、100歳以上の魔女っ子として登場するため。


  • 神奈川シナリオ:「奇声」
神奈川に引っ越してきたぞ→何か変な声が聞こえる、ここ出るのかよ→こいつら何か言ってるぞ? 当ててみよう→「る」「あ」「ば」「い」「と」「五文字です」

県無関係の謎ミニゲーム。岩手などもこの類。
謎の声が文字を1つずつ読みあげてゆく、聞こえた文字を上手く繋ぎ合わせて1つの名詞にする。
↑の答は「アルバイト」。聞こえた文字をそのまま繋げるだけでは不正解。順番を前後させる必要がある。
全問正解したら契力9000もらえる。

消費する契力は1シナリオ読むのに多くて100ほど、県を解放(県シナリオを読める状態にすること)するのに150ほど。
それでいてシナリオを読み終えた後にも契力を入手できるため、9000あったらそのまま最後まで行ける。
ゲームを進めるのに面倒な契力関連の問題を一気に解決してくれるので早い段階でプレイしておくといいだろう。

  • 岩手シナリオ:「生き埋め」
いきなり真っ黒な画面から始まってノーヒントで前後左右に移動し続けるだけのミニゲーム。
回数制限つきで制限回数以内に脱出できなかった場合終始画面が真っ黒なだけで終わる。
マッピング作業をすることになるがそこまでして見たい結末が待ってるのかと言われると……。
東北のシナリオの出来は全体的に悪く全滅気味である。


  • 宮城シナリオ:「ダンボール」
語り手の家に謎のダンボールが届く。
そのダンボールには12時になるまで開けるなという謎の警告が……。

分岐は9つもあるため充実しているように見えるが、
①12時を回ったから開けてみる→中から謎の手が……→完
②12時を回ったが電話などでもたついてなかなか開けない→ダンボールが勝手に開いた→背後から謎の手が……→完
③語り手が怪しがって捨てたダンボールを別の人(中村大吉)が拾う→中から謎の手が……→完

結末はこの3つのみ。必ず誰かが行方不明になって終了。
そして結局最後までダンボールの中身も送り主も謎のまま。謎を解明するシナリオがなく9個ある分岐の無駄遣いである。
しかも選択肢による分岐ではなくランダム分岐なので、非常に面倒。


  • 広島シナリオ:「ヒバゴン」
この写真見てよ、変なものが写るんだ→山姥やら蛇やら猿やらが一瞬写る→また見てね〜


全シナリオの中でもトップクラスのクソさ。もはやシナリオなのかも怪しい。
猿や蛇が出たならまだマシ。場合によってはヒバゴンと全く関係ないオッサンが出てきて終了する。
しかも○ボタンを押すと何も写らず叱られる。
連打で読み飛ばす者への真面目に見ろという仕掛けだと思われるがそんなとこに力を入れるくらいなら(ry
四八のエンディングは話の種類に関係なく、見た回数で決まるので、短くボタン連打してるだけで終わるためRTAをするにはもってこいのシナリオ。終了時の獲得契力が消費契力を上回るので途中で詰みになることもない。通称「こっえーボクの」*1
やる人がいるかは知らん。いました。
あまりにも飾り気も見所もなさすぎて解説動画ではこれを枠外に追いやって他エピソードの紹介が挟まれるほど。
後に某クソアニメでこのRTAのネタが扱われた。

  • あなたシナリオ
都道府県の話を何回か読んでいくと突然挿入される全12話のメインストーリー。
このゲームの設定が「試作品の四八というゲームのテストプレイヤーに選ばれて四八をプレイする」という内容のためその四八に関わることに巻き込まれていく。
しかしシナリオ中にプレイヤーの分身である主人公が四八を絶賛してたり、続編の制作や映画化が決定したりとプレイヤーの感情と真逆の事が起こるため全く感情移入できない。
更にメインライターの飯島氏にネットアンチの事に関して愚痴られる。
ついでにシナリオのオチも酷い。


とはいえネタや突っ込みどころがあるシナリオならまだいい方で、
単純に出来が悪く読んでてつまらない上に長い話や、観光案内ばかりに当たるとかなり苦痛になる。
そのためビバゴンやダンボールは「短いだけまだマシ」と言われることも。

そもそも都道府県の都市伝説を題材としたゲームなのだがその地域に関係ない話しかないというコンセプトを無視してしまっている都道府県が多数ある。
この手の話ならもってこいの京都はタクシーに乗せた客が消えるというテンプレホラー話が1話のみしかない。
こんな有様のため各地に取材にしに行ったとは言っているが遊びに行ってただけじゃないかと言われてしまっている。




バグ

それでも頑張って読み進めようとすると、今度はバグが邪魔をする。

特に有名なバグに、「白枠バグ」というものがある。
ロード時、ときどき画面に豆腐のようなものが出現することがある。
豆腐の大きさはランダムで、運が悪いと画面のほとんどが埋まる。
発生条件は不明で、しかも発症したらそのセーブデータはリセットしようが一生直らない。
セーブデータを複製しておくしか回避法がない、非常に厄介なバグ。
「豆腐バグ」「都豆腐県」などと呼ばれることもある。


またフリーズが頻発するため、セーブはこまめにしておきましょう。
→セーブ画面から戻るため×ボタンを押すとときどきフリーズ
仕方なく電源を入れなおした→豆腐バグ。

と、どこをどう進んでもバグの可能性があるというバグ尽くし。
なお、フリーズに関するメーカー側の回答は「メモカを抜き差しすれば直る」。実際にそんな真似をしたらどうなるかは言うまでもない。

これはゲームのシナリオではなくシステムにホラー感を植え付けることにより、ゲーム中いつ起こるかわからないバグにビクビクしながらゲームを続けるという全く新しいホラーゲームのジャンルを確立しようとしたのではないかという意見も上がっている。


その他

シナリオとバグの酷さに持っていかれがちだが、
基本部分の出来もかなり酷く、プレイしていて苦痛になる配慮のない作りになっている。

  • シナリオを読んだり住民を復活させるのに必要な契力の存在。話を読むのにかなり足を引っ張ってくれるので面倒。
    前述の神奈川県のミニゲームをクリアすると一気に空気と化すが。

  • 本作の特徴とも言える「住人移動システム」だが、上手く活かされておらず面倒なだけのシステムとなっている。
    多くのシナリオにキャラ制約があり、読むためには1人ずつチマチマ移動させ県に連れてくる必要があるため、非常にめんどっちい。
    • シナリオの結果次第では住民が行方不明になったり、死亡したりするがこの状態が活かされることはかなり少なく、
      大半の場合シナリオを読み返すために契力を使って復活させる作業になる。
    • 当然シナリオを選んだらそのシナリオに必要な住民を移動させたり復活させてくれるという配慮は無い。
    • しかも住民には状態と言う物もあり死んだりしたら契力を使い復活させなければ再読できないので余計に面倒。

  • バックログやスキップ機能など便利な機能がほとんど無く、プレイし辛さに拍車をかける。

  • その上にランダム分岐があるためシナリオのコンプリートを目指すのはかなり面倒。

  • 富沢7姉妹が出てくるシナリオは総じてダメ。愛知、大阪、岡山、静岡、広島、三重、山口県。広島はヒバゴン、それ以外は全て観光案内。
    2022年にこのゲームをプレイした陣内智則曰く「終わり〜!?(広島)」「案件やないか!(静岡・三重)」
    この7姉妹は条件を満たすと千葉シナリオで集結する。

  • EDのBGMがへなへな。見事最後までクソを貫き通した。BGM「飯島の屁」などとネタにされている。

  • 全ての話の分岐を読み切った県は緑色になるのだが、なぜか東京のみどうしても1つのシナリオが完了扱いにできず緑色にならない。公式曰く「次のシナリオに分岐するためのシナリオだから」*2だそうだが完全なフラグミスである。

  • あなたシナリオが全て完了するとエンディングになるのだが、その後2周目に突入するか続きをプレイするか選べるが2周目は契力のみを引き継いで他の情報が全てリセットされる弱くてニューゲーム状態。しかも2周目の追加要素や特典もないため存在意味自体がほぼない。


評価点

  • 主人公の設定を変えることが出来る。名前や性別はおろか、家族構成まで変更可能
    夫と妻がいる設定に出来たりと自由自在。もっとも本編には全く関係ないため、小ネタに過ぎないのだが。

  • オープニングは出来が良い。このゲームで最も怖い部分とも。

  • 全てのシナリオが酷いという訳ではなく東京・岐阜・新潟、長崎あたりのシナリオは分岐も充実しておりそこそこ面白い。ただ長崎シナリオには盗作の疑いがある
    分岐はないがゲスト作家の筒井康隆氏による長野もよく出来ており、語りや起承転結がまとまっていて普通に本を出せるレベル……なのだが、怖いことは怖いのだけれど、本来プレイヤーが求めているのはそういう怖さではない。他のシナリオがまともに怖い話なら、完成度の高い異色シナリオとして成立したのだろうし、筒井氏もそのような前提で執筆したのかもしれないが*3

  • 稲川淳二氏、水木しげる氏ら、有名ゲストが多数出演している。稲川氏に至ってはムービーで出演している。完全に無駄遣いである。
    長野の話を含めてこういうゲストが出演したり脚本担当をしているエピソードは割と良く出来ている為、完全に他の話や豆腐バグが総評で足を引っ張っていることが分かる。

  • 東京シナリオ「オンラインゲームの悪夢」に登場するキャラクター「忍」が可愛い。そっち発売しろよと言いたくなる。
    ヤンデレ? 吉池マリア? 知らん

  • 各都道府県の怪談話という題材自体は面白い。殆ど活かされてないのだが。

  • 住民の状態や現在地によってシナリオが変わるシステムの発想自体は悪くない。現実はただ入れただけで面倒なものになっており邪魔なだけのシステムになってしまっているが。



余談

1項目では収まり切らないほど、問題点だらけ。
当時大賞確定と言われていた『エルヴァンディアストーリー』を容易く蹴落とし、クソゲーオブザイヤー2007大賞を受賞した。
総評の結句では、「で、製品版のタイトルはいつ決まるんすか?」とストレートに皮肉られている*4
それだけでなく以後ノミネート作の基準が跳ね上がる現象、ヨンパチショックを引き起こした。
その結果、『ダメジャー』や『ジャンライン』、『バグ姫』、『スベリオン』等の新時代を担うクソゲーが発掘されるに至る。
とはいえヨンパチを超えるクソゲーは当分の間現れないだろうと言われていたが、結果はやアジノコにつながっていく…。

ファミ通レビューでの点数はなんと26点大奥記(13点)やデスクリムゾン(13点)、プロゴルファー猿(12点)の2倍という、誰がどうみてもありえない点数である。
ゲーム内でファミ通が取り上げられているため、低得点は付けられなかったのだろう。
が、一見高いこの点数も、わりと採点が甘いファミ通基準ではお世辞にも高いとは言えない。
ましてやタイアップまでしている作品が40どころか30も満たないと考えると実は滅茶苦茶低い(ファミ通レビューにおいておよそ25点前後またはそれ以下の作品はクソゲー率が高いとされる)。ファミ通も遠まわしながら酷評していたと思われる。

またKOTYスレで、タイトル文字を並び替えただけの「四八マン」というキャラが誕生した。
またKOTY2011年据置部門次点の『code_18』からも、「C18マン」という弟分が生み出された。

シナリオライターの飯島氏は2019年3月に自身のブログにて「『四八』の真実」と題した記事を投稿し、その中で四八の制作に関する話と本当にゲーム内で浮き彫りにしたかったこと、及び(仮)の付かない完全版と称する精神的続編『アパシー学校であった怖い話 極(旧タイトル:学怖inヨンパチ 極)』の宣伝を行った。
残念ながら『極』はゲーム機用ではなくPC用DLソフトであり、実質的は同人ゲームとなる。
この記事の中で、四八が未だ叩かれる理由として「稚拙なシナリオやバグではなく、ネットユーザーを否定的に捉え攻撃していたこと*5が一番の要因」という見解を述べた。

お笑い芸人の陣内智則氏はファイナルソード等をはじめとしたクソゲー実況を自身のYouTubeチャンネルにあげる企画を行なっているが、2022年に本作をプレイ。
元々の陣内のコントのスタイルとヨンパチの話の理不尽な終わり方から初手ヒバゴンを筆頭に視聴者の予想通りの反応を連発。
結果、本作をもとにした新作コントを制作・投稿した。詳細は当該項目も参照。






\追記・修正お願いします/

(仮)

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 本当にはなかったし別に怖くもない話
  • ゲーム
  • PS2
  • ホラー
  • 四八(仮)
  • クソゲー
  • クソゲーオブザイヤー
  • KOTY
  • ヨンパチショック
  • 伝説のクソゲー
  • 四八マン
  • ヒバゴン
  • ルー語
  • 飯島多紀哉
  • 四八(笑)
  • このゲームの存在がホラー
  • バンプレスト
  • ファミ通
  • 10年に一つのクソゲー
  • 筒井康隆
  • インフレの元凶
  • だいたいこいつのせい
  • 年末の魔物
  • YouTubeで陣内がやったゲーム
  • 問題点しか見当たらない
  • ツッコミ教材
  • 陣内智則にツッコまれる事で初めて完成するなんか
  • 検索してはいけない
  • 検索してはいけない言葉

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年02月07日 22:19

*1 ボタンを最速で連打した場合のボイスが繋がってこうなることに由来。

*2 恐らく「アルバイト 男の事情」のエピソードのことと思われる。選択肢次第で県を跨ぐ。

*3 ネタバレに配慮して内容を一言で言えばオチが汚い。下ネタじゃないが、そういう話に耐性のない人は閲覧注意。

*4 このゲームは試作品という設定であり、タイトルの(仮)というのもそれを示しているのだが、本当に試作品レベルのモノになってしまったということ

*5 「あなたシナリオ」のことと思われる。実際作中で「発売された四八が自分のやっている四八(仮)と内容が酷似している」と開発陣に確認したら一方的に原作者を名乗る不審人物だのハッキングして情報を抜き取っただの言われ、最後に「ネットで主人公が四八の原作者だという書き込みやそれに賛同する意見がある、お前がやったんだろう」と身に覚えのないいちゃもんをつけられるというシーンがある