魔界転生(石川版)

登録日 :2010/06/06(日) 01:03:23
更新日 : 2017/04/18 Tue 13:57:08
所要時間 :約 4 分で読めます




バジリスク』の原作『甲賀忍法帳』などで有名な山田風太郎の小説、『魔界転生』。
映画にもなった有名な作品だが、そんな魔界転生をあの石川賢がコミカライズしたという事は一般にはあまり知られていない。

イシカワ時代劇漫画特有の「それ時代違うんじゃね?」と「一体何がどうなったらそうなるんだ?」がたくさん詰まった、イシカワイズム全開のハートフル愉快漫画。
石川賢はゲッターロボを描いて不真面目になったが、石川賢が壊れてより一層アレになったのはこの作品から。

石川版『魔界転生』は原作を読んでなくても楽しめるようにと様々な原作ブレイクが仕込まれている。
なので原作と全然違う。でも凄く面白いという誉めていいんだか呆れたらいいんだか分からん困った作品となっている。

『魔界転生』の大雑把なあらすじは、島原の老軍師・森宗意軒の「忍法・魔界転生」で宮本武蔵や天草四郎、荒木又右衛門といったすでにこの世にいないハズの者どもが蘇り、主人公である柳生十兵衛と戦うという話。
いわばスーパー剣豪大戦みたいなモン。

あらすじ

島原の乱にて年老いた宮本武蔵が目撃したものは、天草四郎のおぞましき復活であった。
それを機に次々と現れる宝蔵院胤栄、荒木又右衛門ら、死したハズの剣豪たち。
忍法・魔界転生によりて魔人と化して蘇った魔界衆らを率い、幕府転覆を目論む天草四郎。
これに立ち向かうは史上最強の剣豪、 柳生十兵衛
欲望から魂を売り渡し、おぞましき魔物と化した剣豪を次々と相手取り、
柳生最新鋭の武具に身を固め、異形の忍者たちと協力し、
十兵衛はこの世の地獄と化した紀州へと乗り込んでいく!!

この忍法・魔界転生はスゴい術。
簡単に説明すると、術をかけた女性とセックスをし、女の体を媒体としてこの世に復活するという忍法。
しかし、ただ者じゃ転生できない。強固な意思と体力の持ち主でなければならない。
作中でも「死期が迫ってるのにんな事できる奴はただ者じゃねーな」とか言われている。
スケベだから転生できるとかそういうわけではないのであしからず。

転生した剣豪達は生前より腕が冴えて強くなる。これは原作と同じだが、石川版はそれに加えて 魔物を宿して 転生する。
なので宮本武蔵は体から光弾を撃ち出す化け物に、天草四郎は髪の毛で肉体を両断する超人に、宝蔵院胤舜は刀が通らない岩石生物になる……というフリーダムっぷりを見せつける。
こんな風に原作ブレイクっぷりをいちいち挙げてたらきりがないが、少し紹介しよう。



以下、ネタバレ注意



例えば根本的な設定の、なぜ剣豪達が転生させられたか?という理由からして違う。
原作ではその力で江戸幕府を転覆させるのが目的だが、石川版では……

以下、転生した柳生但馬守のセリフ。

「魔界に入ってはじめて理解できた!人間とはなんだったのか、宇宙とは!!わしがなんだったのか――!!」
「わしは…いや…わしらは!!」
「あの方を! 大魔神王(サタン)をこの宇宙に呼び戻すための道具なのじゃ!!

……なにやらありえん単語が出てきたが、そういう事である。
魔界転生した者はサタニストとなり、魔界をこの世に広げるための存在と化すのだ。
天草四郎が西洋の日付で6月6日6時に生まれた悪魔の子で、島原の乱もサタン降臨のための儀式の一つという設定も。

だがこんなものは石川賢の前ではちゃちな原作ブレイクに過ぎない。
なぜなら……敵役が敵役なら、主人公も主人公だから。

主人公の柳生十兵衛は剣豪、すなわち剣の達人。これは原作・漫画共に共通している(当たり前だけど)。

だが石川版魔界転生の十兵衛は、 剣豪なのに刀をほとんど使わない

じゃあどういう戦いをするかと言うと、時代を先取りしたフルアーマー柳生十兵衛となって、鋼鉄のハンマーでぶっ叩いたりするなんてのは序の口、 ショットガン をぶっ放したり、 ガトリングガン を乱射したりする。

※これは江戸時代のお話です


武士の魂であるはずの刀も十兵衛の手にかかっては包丁と同じくらいの扱いで、適当に投擲される。
古今東西、柳生十兵衛と名の付くキャラがここまで刀を使わないのは石川版魔界転生くらいのモンだろう。
ラストなんてパンチしか使わないしね、刀?なにそれ


そしてまだまだ原作ブレイクは続く、その極めつけは……















実は柳生十兵衛は堕天使ルシフェルの化身だった

……いったい全体何を言っているのか分からないと思うが、これは石川版魔界転生において紛れもない事実。

曰く、「はるか昔、光がぶつかり合い、時が逆行し、いくつもの宇宙が破壊した!!」

そんな邪悪なエネルギーと、もっと巨大なエネルギー(あるいは空間)の戦いの中で、邪悪なエネルギーが戦う形をとったモノが魔物である。
いくら肉体を滅ぼしても精神体となり、いずれ再び肉体を得て転生してくる魔物達との殺し合いの果て、彼らを魔界という空間に封じ込めたのが魔界にありながら別の空間と称される光のエネルギー「ルシュ・ファル」。
そして魔物達が魔界を解き放とうと動けば、それに歯止めをかけるためルシュ・ファルも自身の空間に化身を形作り魔界転生させる。それが柳生十兵衛である。
なお、過去に幾度も同様の事が起こっており、 イエス・キリストも魔界転生したルシュ・ファルの化身の一人
天使の形の宇宙空間を展開するという空間支配能力のような事もやってのける。

ここまで来ると、渇いた笑いしか出てこない人もいるのではないだろうか。
やはり石川先生はいろんな意味で傑物。




と、なんやかんや書いたが間違いなく傑作なので、もし書店で見つけたら読んでみる事をオススメする。
漫画単体で楽しむも良し、原作を買ってギャップに驚くも良しである。


では、最後に最大のネタバレをしておこう。















「十兵衛、宇宙の果てに飛ばしてやろうかあ!!」

「それとも地獄の炎の中にたたきこんでやろうかあ!!」

「やってみろ!!天草四郎!!」






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