かたわ少女

登録日:2012/01/25(水) 23:37:11
更新日:2024/02/10 Sat 19:49:57
所要時間:約 7 分で読めます




同人サークル「Four Leaf Studios」が製作した恋愛アドベンチャーゲーム。フリーゲーム。体験版は15禁、完成版は18禁。
ただし、本作が18禁ソフトであることを明記しているページは意外と少ない。
公式でもそれを明記しているのはブログの中ぐらいで、ダウンロードページには何も書かれていない。
繰り返すが、本作は18歳未満ダウンロード・プレイ禁止のアダルトゲームである。
ボイスはついていない。


概要

タイトルの「かたわ」は「障害者」という意味で、その名の通り障害者の通う学園を舞台とした異色のADVである。

製作当初は「障害者がヒロインのギャルゲー」であるうえ、「かたわ」という日本では差別的であるとされる放送禁止用語が
タイトルに採用されたこともあって、マスコミからもネット住民からもスキャンダラスに取り上げられた。
しかし、制作スタッフの大半は日本語圏外の人物であり、悪意はなかったとしてスタッフが謝罪し、現在ではバッシングも少なくなっている。
ただし、開発当初のタイトルは現在まで受け継がれている。
(アルファベットを使う言語圏のタイトルはすべて『Katawa Shoujo』で統一されている。
それ以外では、中国語で『片轮少女』(简体)『片輪少女』(繁體)、韓国語で『장애소녀는』となっている)
ちなみに、タイトルやヒロインの外見、抱える障害に関しては、原案である同人誌の時点で既に固まっていた。

内容は典型的なギャルゲーのテンプレートを踏襲しつつ、「障害との向き合い」をテーマに据えた作品で、ギャルゲーだからと馬鹿にはできない。
(これには、日本とは比べ物にならないぐらいにマイノリティへの考え方・政策が進んでいる国のスタッフが多いことも影響している)
また、多言語への対応により世界中の人に知って欲しいという心遣いもある。
ほかに多言語対応のフリーゲームの代表的なADVとしては、日本のステージななが制作した『narcissu』などがある。
実際、『日刊サイゾー』のインタビューでは、制作陣が参考にした作品として『ToHeart2』『narcissu』の2作品が挙げられている。
イラストでは前者の、シナリオでは後者の要素に影響を受けているとのこと。
キャラデザはアクアプラスの原画家・甘露樹氏の絵柄をもとに作成されている。

ちなみにタイトルや舞台、そしてキャラクターは日本そのものだが、それとは裏腹に日本人はほとんど製作に関わっていない。
そのため、登場人物の名前が汎用性の高いものや当て字的な漢字があてがわれたものがちらほら存在する。
また、セリフの言い回しや、(日本人にとって)やや違和感を覚える日常生活など、外国チックな要素がそこそこ見受けられる。


歴史

2000年に「4chan」に転載された、同人サークル「絶対少女」の同人誌『Schuppen Harnische』収録のイラストが発端となっている。
わずか1ページ分のイラストだったが、4chanねらー達は大いに盛り上がり、ゲーム化への機運が高まった。
そんな4chanねらーの中でもモチベーションの高い者達が「Four Leaf Studios」を立ち上げ、開発がスタートする。
しかし、ライターがいても絵を描ける人がまったくいないという状況に陥り、2007年に開発が一時停滞、
紆余曲折の後、同年夏にはイラストレーターが加わり、本格的な開発がスタートした。
2012年1月4日、企画開始から12年を経て完成、英語版のDL頒布が開始された(Version1.0)。
その後、各国のスタッフによる翻訳作業が進められ、フランス語版・スペイン語版に次いで、
2015年4月1日日本語版のDL頒布が開始された(Version1.3)。
現在も、各国語への翻訳作業が行われている。


スタッフ

以下には開発終了時(2012年1月4日時点)のスタッフのみ表記する。
主要スタッフの国籍はオーストラリア、アメリカ、フィンランド、イギリス、イタリア、ドイツ、カナダ、インドネシアとなっている。
以下の人物以外にも多くの人物がこの作品に関与しているので、詳細は各自検索のこと。

Aura:シナリオリーダー・ゲームデザイナー・シナリオ(琳)
delta:プログラムリーダー・UIデザイナー
Suriko:プロデューサー・シナリオ(リリー)
cpl_crud:元プロデューサー・シナリオ(華子)
TheHivemind:シナリオ(笑美)
Anonymous22:シナリオ(静音)
Kagami:編集
Losstarot:編集
Silentcook:編集・翻訳
Pimmy:作画(笑美)
raemz:作画(華子)
Raide:作画(リリー)
Kamifish:作画(琳・ミーシャ)
moekki:作画(静音)
Doomfest:作画
gebyy-terar:作画
yujovi:背景写真
NicolArmarfi:音楽
Mike Inel:アニメーション(オープニング・Act.2導入部)


ストーリー

主人公・中井久夫は、同じ学校の生徒である岩魚子(いわなこ)から告白された際、胸に苦しみを覚えて倒れ、入院することになってしまう。
医師から告げられた病名は「不整脈」。一生付き合っていかなければならない障害だった。
クラスメートや岩魚子との交流もなくなり、失意のなかで過ごす久夫に、医師は「山久(やまく)学園」への転校を勧める。
日本のどこかにある架空の障害児学校「山久学園」。
将来を見据えた医師や親の勧めもあり、なかば投げやりのように久夫はそれを受け入れる。

こうして転校した久夫は、5人の少女たちと知り合う。

足を失った元気なスポーツ少女の茨崎笑美。
半身に火傷を負い、人目を怖がるようにして学校に通う池沢華子。
隣りのクラスの委員長で、クラスから慕われる盲目の砂藤リリー。
両腕がなく、足で絵を描き続ける手塚琳。
耳が聞こえないが、久夫のクラスの学級委員として接近してくる羽加道静音。

始めは環境の違い、他の障害者への対応に戸惑う久夫だったが、その「障害」と向き合いながら、友達――そして恋人を見つけていく。


キャラクター

主人公

  • 中井久夫 -Nakai Hisao-
障害:先天性心疾患(慢性不整脈・心筋欠損症)

主人公。平凡な生活を送るごく普通の学生だった。
岩魚子からの告白によって先天性の心臓疾患が発症し、入院生活を余儀なくされる(本人も両親も先天性疾患があるとは知らなかった)
入院生活の中で打ちひしがれるが、医師や両親からの強い説得もあり、急遽「山久学園」に転校し、寮生活をすることになる。

元々の趣味はサッカーだったが、転校後はサッカーを含めて激しい運動を禁じられている。
現在の趣味は、長い入院生活のなかで暇つぶしに始めた読書。
周囲とのコミュニケーションに苦慮しつつも、さまざまな人物と関わる中で、自分自身やヒロインのことについて考えを深めていくことになる。
なお、自分の障害と向き合わず、ヒロインを突き放すような選択肢を選ぶと、救いようのない鬱Badを迎えることになるので要注意。

ちなみに、日本の統合失調症・PTSD研究の第一人者であり、翻訳家・エッセイスト・精神科医の「中井久夫」と同姓同名だが、ただの偶然。

ヒロイン

  • 茨崎笑美 -Ibarazaki Emi-
障害:膝下切断
誕生日:3月14日
身長/体重:151cm/41kg
3サイズ:70/51/74
テーマ:独り立ち、できる?

足を失う障害を持ち義足を着用している。
障害をも受け止め、寧ろプラスとして受け入れている超ポジティブシンキング娘。
陸上部に所属し、「障害」を最大限に生かしている。
部屋が向かい合っている琳とは仲が良く、互いのできないことを補い合っている。
ところかまわず走りまくっているために廊下での衝突事故を頻発させており、リリーや静音からは目をつけられている。
これは、障害者が多いゆえに廊下での衝突事故の意味が重い山久学園としての事情も絡んでいる。
いろいろと「小さい」ことを気にしている今作のロリ体系枠である。

  • 池沢華子 -Ikezawa Hanako-
障害:重度の火傷
誕生日:7月10日
身長/体重:164cm/52kg
3サイズ:86/56/84
テーマ:自分の恐れに向き合える?

久夫のクラスメート。
幼少時の事故で、両親と家を失い右半身に消えない大きな火傷を負い、その時から重度の人見知りとなった。
初めて出会った時から自分を守ってくれたリリーは、唯一信頼出来る親友。
これには、「リリーには火傷の痕を見られない」という事情も関連している。
クラスメートと接点を持つこともほとんどなく、しばしば授業をさぼって図書館に引きこもっている。
趣味は読書で、チェスなどのボードゲームが得意。

彼女のルートは途中に詰みの選択肢があり、ここを間違えると後の選択肢でプレイヤーの選択を振り切り強制的にバッドエンドになってしまう。
また本作と同様にR18同人ゲームの奴隷との生活 -Teaching Feeling-では、同じく火傷跡のあるヒロインということでシルヴィの衣装に華子の私服がモチーフのものがある。

  • 砂藤リリー -Satou Lilly-
障害:盲目
誕生日:2月7日/6月27日
身長/体重:171cm/59kg
3サイズ:89/61/89
テーマ:私が見ているもの、あなたにも見える?

生まれつき目が見えないが、責任感が強くて優しい、親しみやすい少女。
普段の物腰は柔らかく上品だが、いわゆる「怒らせると怖い」タイプ。
お昼や放課後には空き教室で紅茶を嗜んでいる。
外国人とのハーフで、本作の金髪枠かつ最胸・最長身ヒロイン。
華子は親友であり最高のパートナー。
視覚障害の生徒が多い3年2組のクラス委員を務めており、クラスメイトから頼りにされている。
静音とは考え方の違いに加え、コミュニケーションの壁(静音が意思疎通に使う手話を見られず、表情も窺えないためミーシャの通訳を信じるしかない)もあって、そりが合わない。
実は妹キャラで、男装の麗人といってもいいような姉がいる。

彼女の誕生日はゲーム本編や日本語以外の公式サイト表記では2月7日、公式サイトの日本語版では6月27日、となっている。
誤訳か意図的な修正かは不明であるが、実は2月だろうが6月だろうが(作中世界が現代日本であるなら)どちらの場合でも物語に矛盾が生じてしまう。

  • 手塚琳 -Tezuka Rin-
障害:短腕
誕生日:3月13日
身長/体重:161cm/50kg
3サイズ:83/54/78
テーマ:今を楽しんでる?

重度の先天性障害と手術により、短腕となる。
短腕のため、足を手の様に動かせるが、男子用の制服しか着れない。
芸術活動も行い、学園祭用の巨大壁画を一人で描いており、美術部顧問の野宮紳一からも一目置かれている。
周りを振り回しがちで、特に他人の障害にズケズケと踏み入るフリーダムな人物であり、他人に弱みを悟らせない。
それゆえリリーでさえも距離を置いた付き合いをせざるを得ないようになっている。
竹を割ったような性格の静音やミーシャも、リリーとは違った意味で正反対の性格の彼女とは相性が悪い。
その思想は哲学的で、彼女のルートではそれを存分に味わえる。

名前の由来は某漫画の神様から。

  • 羽加道静音 -Hakamichi Shizune-
障害:聾唖
誕生日:5月6日
身長/体重:158cm/53kg
3サイズ:88/52/85
テーマ:あなたの考え、教えてくれる?

久夫のクラスメートで、学級委員でもある。耳が聞こえないため、意思疎通は手話。
生徒会長を務め、生徒会役員であるミーシャとは常に行動を共にしている。
意志が強く行動力もあり、リーダーとして非常に優秀。そして重度の負けず嫌い。実はイタズラ好き。
ただしリリーや、おどおどしていてクラスに溶け込もうとしない華子との関係はよくない。
人手不足の生徒会に久夫を引きこもうと、ミーシャとともにあれこれ策略している。
いわゆる「男の娘」な感じの弟と帯刀している父がいるなど、ヒロインのなかでは特にギャルゲーっぽい設定のキャラ。
そして今作随一の「ボンキュッボン」なスタイルの持ち主でもある(ウエストが笑美+1cm、バストがリリー-1cm)。脱いだらすごい。

  • 御門「ミーシャ」椎名 -Mikado “Misha” Shiina-
誕生日:11月1日
身長/体重:158cm/57kg
3サイズ:85/58/84

静音の手話通訳担当。生徒会のメンバー。「ミーシャ」は愛称で、本名は「御門椎名(みかど・しいな)」
とにかく明るく、本心を隠さない性格で、周りをグイグイ引っ張るが、たまに行き過ぎてウザくなる。
手話の先生になるのが夢で、そのために山久学園に入学した。
入学時に偶然静音と席が隣り合ったことで仲良くなり、後に静音に誘われて生徒会入りしている。
歴戦のエロゲプレイヤーのなかには別のエロゲーとあるキャラを連想した諸兄も多いのではないだろうか。
彼女の名前は以前長らく「椎名「ミーシャ」御門」と表記されていた。
そのため、「御門」「椎名」のどちらが名前なのか混乱するファンもいるとか。

原案の同人誌には居なかったキャラクター。
静音ルートの序盤はミーシャルートなのではないかと勘違いするほどに彼女との関わりが多いが、残念ながら…。
その物語上の意味の大きさ故に彼女の正規ルートを求める声は絶えない。

サブキャラクター

  • 瀬藤健二 -Setou Kenji-
障害:弱視
ギャルゲー定番の悪友ポジション……ではなく、引きこもり予備軍でメガネで若干電波の痛い人。
フェミニストの陰謀を信じていて、その活動に恐怖しながら日々を過ごしている。何という俺ら
久夫のことは好奇心半分と疑い半分で見ているが、それ以上に反フェミニストとして共闘できる友達ができたと喜んでいる。

  • ナース -Nurse-
※男です
保健スタッフのチーフで主人公のフォローをしている。
常に笑顔で陽気に振る舞うが、自分の仕事を誇りに思い情熱的で真剣に取り込む。
ギャルゲーの常識から外れた「男性看護師」という名前は、日本では体験版公開前からいろいろとネタにされていた。
当然のことであるが、英語のnurseは看護「婦」だけを表すものではない。

  • 武藤昭夫 -Mutou Akio-
主人公のクラス担任で科学の教師。
初対面で転校生の久夫の名前を間違えるというだらしない姿を見せ、やる気のない生徒たちにうんざりしている。
しかし教師という職への責任感と誇りはあり、どのルートでも久夫を助け、味方となる。

  • 白川優子 -Yuuko Shirakawa-
山久学園の司書と、居酒屋のような和食屋のような喫茶店「上海」のウエイトレスをアルバイトで掛け持ちする眼鏡のお姉さん。
ヨーロッパの古代史に興味があり、空き時間に本を読みつつ大学の学費を貯めるための労働に勤しんでいる。
見ている側が不安になるほどのドジっ子であるが、武藤先生よりは近い立場の年長者として、彼女もまた久夫に助言をくれる。

  • 岩魚子 -Iwanako-
この作品の物語の元凶…というにはさすがに酷か。あくまできっかけに過ぎないし。
高校2年生の1月~2月頃、久夫は彼女から愛の告白を受けて動揺した際に意識不明となり、慢性不整脈と先天性の心筋欠損が判明した。
入院が数ヶ月に及ぶ中でも最後まで見舞いに通った一人だが、1ヶ月半が過ぎるとやがて彼女も来なくなってしまった。
久夫が山久学園に慣れ始め、新たに見つけた恋人と距離を縮めようとしていた頃、忘れようとしていた過去の象徴である岩魚子から手紙が届く。
外見は告白時のイラストで肩まで伸ばした黒髪の後ろ姿が映るのみ。

日本人の感覚としては妙な「いわなこ(Iwanako)」というこの名前、元ネタはポーランドの女性名をもじったものだそうで。

舞台

  • 山久高校(やまくこうこう)
障害者向けの私立学校。医療設備が充実しており、必要な生徒のために寮もある。
現代日本のいわゆる特別支援学校ではなく、高校卒業資格を得られるカリキュラムがある。
日本が舞台のはずであるが、学園や街中のガヤとして聞こえるのは英語ばかり

立地イメージは仙台城跡。岩魚子からの手紙に映る学園の住所と仙台城跡の住所を見比べるとよく分かる。
物語中の背景として仙台駅周辺の風景も使われている。
また学園周りの風景は岐阜県の白川郷周辺の風景から。制作中心人物の中にひぐらしシリーズの翻訳に挑戦していた者がいたことが縁。
ちなみに「やまく」という名前もひぐらし用語の漢字の誤読から生まれたもの。


ゲームシステム

本作は選択肢によってその後の展開が変化するオーソドックスなADVである。
テキストは場面に応じてADV形式とビジュアルノベル形式が使い分けられている。
シナリオは4部構成。第1部が共通ルートとなっており、第2部開始時に、ルート入りしたヒロインのOPアニメが見られる。
以降にも選択肢があり、EDに影響するものも多い。
一度でも見たチャプターやCG・音楽は、ルートEDを見なくても「おまけ」から閲覧が可能。
達成率が表示されるようになっているので、すべてのチャプターを見るための軽いやり込みもできる。

豊富なCG差分やOPアニメ、30曲以上のBGMなど、フリーゲームとしては演出にかなりの気合が入っている。
ED数も多く、すべてを遊びつくそうとすればかなりのボリュームになる。
また、長い開発期間をかけたためか、ユーザーインターフェイスも必要なものが揃っており、バグもない。
エロシーンは、環境設定画面の「成人向けコンテンツ無効」を選択することで自動スキップできるので、性描写に抵抗のある大人でも安心。
ただし、テキスト進行の際にENTERキーが効かない(スペースキーならOK)のと、
ロード・セーブやスキップをするには逐一右クリックでメニューを呼び出さなければならないというのは、若干ストレスがたまるかもしれない。

それでも、並の商業ゲーを蹴散らしてしまうようなクオリティなので、興味を持ったならば迷わずダウンロードしてみよう。



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最終更新:2024年02月10日 19:49