ヒルカワ(ウルトラマンメビウス)

登録日:2012/03/16 Fri 22:00:50
更新日:2024/04/09 Tue 08:10:17
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ヒルカワとは、特撮作品『ウルトラマンメビウス』の登場人物。
演:加藤厚成

▽目次

【概要】

本名は蛭川光彦(ヒルカワ ミツヒコ)。

ストーリー展開も明るめで、歴代ウルトラマン共演などの娯楽性を重視した『メビウス』だが、このヒルカワはその作風からかなり浮いたキャラである。

そう、悪い意味で。


劇中で度々登場する週刊誌の記者だが、その実態はゴシップ記事や捏造、偏向報道は当たり前という悪徳ジャーナリスト。
通常は慇懃無礼な敬語で話すが、予想外の事態などに直面したりすると本来の乱暴な口調に変わる。

ゴシップネタ収集のためにハイエナのごとく暗躍し、劇中では防衛隊CREW GUYS」を格好の獲物としており、その社会的面目を失墜させようと暗躍。
同時に、ウルトラマンを怪獣・侵略者と同等に考え、偏見の目を向けているため、メビウスの事も否定的。
そのため、CREW GUYS側からもジョージが「ハイエナ野郎」、マリナが「人間のクズ」と唾棄する程に忌み嫌われている。

GUYSが防衛隊という立場上、一般市民には手は出せない事を盾にして、彼らを好き放題に挑発するなど、
民間人の「弱さ」とジャーナリストの「報道の自由」を武器に防衛チームやウルトラマンを苦しめる、ウルトラシリーズでも例を見ないタイプの悪役である。

また、『防衛チームに対して懐疑心を抱き、その動向を独自に探ろうとする民間の報道関係者』というキャラは平成に入って以降、『ウルトラマンダイナ』のハスミ・カオルや、『ウルトラマンガイア』の田端健二、『ウルトラマンネクサス』の根来甚蔵など、度々登場してきたものの、いずれも彼らなりの正義感やマスメディアを扱う者としての矜持を掲げた上で、防衛チームの挙動を探ろうしていたのに対し、ヒルカワの場合はそういった『報道関係者としてのプライドや作法』といった良識を一切見せる事はなく、終始自分の名誉や私情でGUYS、メビウスを貶める事だけを考えていた。
ウルトラシリーズの中でも、マスメディアの忌むべき一面だけが強調された報道関係者は後にも先にもヒルカワだけである。


【劇中での活躍】


◆28話「コノミの宝物」

「楽しみにしてたんですよ。GUYSには個人的に興味がありましてね……(笑)」

ヒルカワ初登場回。元サッカー選手であるジョージも捏造記事を書かれた経験があり、この頃から既に業界ではかなり悪名高い人物である事が窺える。
GUYSのゴシップ記事入手を狙い、コノミの友人である俳優スザキ・ジュンと結託(実際は傷害事件を起こして芸能界から干され気味になっていた彼を芸能界復権という甘言で唆して、利用していた)。
スザキの「友人」という名目でコノミに接触し、彼女からGUYSの裏事情をすっぱ抜こうとする。

しかし、前述した因縁によりいち早くその正体に気づいたジョージを中心としたGUYSメンバー達から詰問され、同時にスザキがコノミに接触してきた本当の目的も顕になる。
だがヒルカワ自身はそれに動じる事なく、自分の正体とその目的を知って怒りに駆られたGUYS隊員達が詰め寄る姿をカメラで盗撮して、それを“一般市民へ暴行する瞬間”として捏造しようという次の作戦を実行した。
そして、コノミを騙したと激怒してスザキを殴ろうとしたミライ(メビウス)の姿をまんまと盗撮すると、騒動に紛れてそそくさと退散。
慌ててリュウ達はヒルカワを追いかけようとするも、直後に円盤生物ノーバ出現の一報が入った事でやむなく断念したが、
その後のノーバとの戦いを通して考えを改めたスザキに盗撮した写真をデータの入ったディスクごと盗まれ、それをコノミに引き渡されてしまった事で、最終的にゴシップ記事捏造は失敗に終わった。
無論、スザキは今後一切ヒルカワとの縁を切る事をコノミに約束した。



◆43話「脅威のメビウスキラー」

「ああ俺だ。面白そうなネタ見つけた……原稿料はいつもの倍額で頼むぜ」

ヒルカワ再登場回。
ミライとアヤのデートを目撃し、28話の時の逆恨みも兼ねてミライのスキャンダルをスッパ抜く為に二人を嗅ぎ回った。
ヤプールの差し向けた強敵メビウスキラーに辛うじて勝利し、倒れたミライの前に再び登場。
メビウスが戦っている間にGUYSは寝ていたのかと厭味を込めて追求するが、その時3人まとめてヤプールの異次元に引きずり込まれてしまう。



◆44話「エースの願い」

「俺は見たぞ……お前の正体を……!」

ヒルカワ最クズ回。
荒廃した都市(※異次元)を見て絶望し、発狂。
自分を心配するミライに逆上して殴りかかり、止めに入ったアヤを突き飛ばして足蹴にし唾を吐きかける。
さらに姿を現したヤプールに人質にとられ、ミライに助けられておきながら「あの男(ミライ)を殺せば、助けてやる」というヤプールの誘惑に我が身可愛さでまんまと乗り、提供された光線銃をミライに発砲。
それを防ぐべく人間態のままバリアーを張った彼に驚愕し、「触るな! 化け物!」と吐き捨てた。
この一言にはさすがのミライもショックを隠せず、人間に対する失望感を抱いた程であった。

これらはヒルカワの人間性を利用して地球人そのものに失望させ、メビウスを味方に加えようとするヤプールの策であった。
しかし、これだけの事をされてなお人間を信じ続けるメビウスの健気さや、彼を信じようとするアヤの励ましによって失敗に終わることとなった。
ちなみに、ヒルカワの一連の言動は彼自身の人間性によるもので、ヤプールは(誘惑以外は)何もしておらず、
利用した張本人とはいえあまりの性根の悪さに、ヤプールは思わず顔を顰めて「下等な人間」と唾棄していた。
意外なことだがヤプールは人間を種族として見下し、皮肉ることはこれまで沢山あったものの、このように個の存在を蔑視したことはほとんどない。
個人を指して嘲笑、侮蔑の言葉を投げつけさせたのはヒルカワくらいである

メビウスがヤプールを撃破したことでヒルカワも元の世界へと戻れたが、ミライの正体を知った彼は、礼を述べるどころか上記の台詞を吐き捨てる。
そして「黙ってるつもりはないからな」と不敵な笑みを浮かべたまま、その場を立ち去っていくのだった……。

一連の経緯を経て、初めて人間の心の汚い一面に触れ、人間の誰もがウルトラマンを友好的に受け入れてくれるわけではない事を身をもって知ったメビウスに対し、
ウルトラマンエースは彼の人間愛が揺らがないよう、直々にあの言葉を伝える。


優しさを失わないでくれ
弱い者をいたわり、お互いを助け
どこの国の人とも友達になろうとする気持ちを忘れないでくれ
例え、その気持ちが何百回裏切られようとも

それが私の変わらぬ願いだ


だがこの次の回で、メビウスの人間に対する失望の念がさらに増長する出来事が起きる事となる…



◆48話「皇帝の降臨」

「GUYSクルー、ヒビノミライです! ……もちろんGUYSの連中もグルですよ。奴の正体を知りながらずっと隠してたんです!」

ヒルカワ最終回。
救われた恩を仇で返すかのごとく、週刊誌にメビウスがGUYSの中にいることを記事にしてしまった。
さらに「メビウスの地球追放」を提唱するエンペラ星人の脅威が迫る中、44話で知ったミライ=メビウスの事実を報道陣の前で暴露してしまう。

世界中の人々に不安が過り、日本政府もミライの身柄を取り押さえ、エンペラ星人側に引き渡そうとする動きを見せる中、
GUYS総監として公の場に姿を見せたサコミズ・シンゴの演説が始まってからも、
勝ち誇った様なふてぶてしい態度で彼の話す言葉を真っ向から否定し、嘲笑するなど、本人はGUYSの首を取ったかの如く余裕の表情を浮かべていた。


「最後まで希望を失わず、ウルトラマンを声援する……それだけでも彼らと共に戦っていると言えるのです! 彼らに力を与えることができるのです!」

「ハッ! 声援して勝てれば苦労しないぜ!」


しかしこの演説が、ヒルカワの意図せぬ方向に繋がる形となってしまう。
サコミズの演説を受けて、人々はミライの正体を知っても尚も「メビウスを守る」という方向で結束を固めることになり、一気に世界中がメビウスやウルトラマン、そしてGUYSの擁護派へと転ずる。

これには流石のヒルカワも動揺を隠しきれず、最後は周囲の人間が一様にメビウス応援ムードに沸き立つ中、一人完全に蚊帳の外へと追いやられ、この現状が信じられないと言わんばかりに愕然と立ち尽くすのだった……。
結局、GUYSやウルトラマンの社会的信用失墜を狙った筈の攻撃は、皮肉にも全世界の人間をGUYS、そしてメビウスの味方に回し、逆に自分自身の面目を地に堕とし、大恥を晒してしまうという本末転倒な形で大失敗に終わった。

この場面を最後にヒルカワは完全に物語からフェードアウトし、彼のその後の顛末は一切不明である。


【余談】

ヒルカワ役の加藤厚成は『ウルトラマンネクサス』にて元凶のダークザギ=石堀光彦隊員を演じていた。
ヒルカワの名前の「光彦」もこのキャラを意識したもの。
こちらも空気隊員のフリをしながら、陰で全てを操っていた外道であるが、正体が魔人=破壊神であるが故、ヒルカワと違って最後はきっちりウルトラマンに倒される形で断罪された。

演者である加藤氏もヒルカワの事を話題にあげ、「役者として演じる上ではインパクトの強かった役」としながらも、
やはりその悪辣ぶりは相当不愉快に思っていたらしく、メビウスの放映終了後、自身のブログで一連の行動について「人間の風上にも置けない」、人物像に至っては「最低野郎」と痛烈に批判している。

また、加藤氏は後年『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』にてペダン星人のレイオニクスハンター・ダイル役で出演。
こちらも当初は地球人を皮肉めいた目で過小評価していたが、ZAP SPACYとの交戦の中で彼らの評価を改め、最終的に和解し、主人公のレイたちを守るために命懸けで戦った末に命を散らした紛れも無い漢であり、
姑息で陰湿だったヒルカワとは真逆なキャラを演じた。


なお、ヒルカワは間違いなく悪党で、擁護する余地のない人物ではあるが、44話にてミライに銃を向けたのは、命の危機を前にパニックから起こる強迫観念も少なからず影響していたともいえる。
特別な修羅場を経験した事もない一般市民が、何の前触れもなく急に絶望的な状況下に放り込まれたり、追い詰められている中で甘い誘惑を示される等すれば、
冷静な思慮を失って暴走したり、他人を顧みる事ができず、「自分だけでも助かりたい」という歪んだ希望を抱いてしまう事も無理からぬところがあり、ヒルカワの人間性が特別異常であるとも言い切れない。


また、彼のウルトラマンに対する偏見的な考え=「ウルトラマンが地球にいる事自体、怪獣や宇宙人に地球が狙われてしまう原因」は、傍目から見れば明らかに“筋違い”“身勝手な責任転嫁”としか言い様がないが、
彼の様にウルトラマンに対して面と向かって拒絶の言葉を吐いた地球人こそ前例はないものの、ウルトラマンを快く思っていない地球人自体はこれまでのシリーズにおいても皆無だったというわけではない。

事実、GUYSメンバーのリュウも最初期の頃はメビウスに対して不信感を抱いていた上、
ウルトラシリーズの他作品を見ても『ウルトラマンレオ』の美山いずみ、『ウルトラマンネクサス』初期のナイトレイダー隊員達(孤門を除く)、
『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』のアトウ、『ウルトラマンギンガS』の神山長官、『ウルトラマンオーブ』のビートル隊や『ウルトラマンジード』の当初の一般市民など、
ウルトラマン(またはレイオニクス)に対して猜疑心や敵愾心を抱いた者や『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンタイガ』など、宇宙人に対する過剰な恐怖や猜疑心から、非情な行動に走ってしまう地球人の残酷な一面が描写される事はシリーズ全体を見ても意外に少なくない。
だが、彼らはそれぞれそう考えざるを得ない時勢や状況(頻発する怪獣災害や実際にその被害を被る、等)からそう言わしめたものであり、決してヒルカワのような的外れな私怨、偏見だけでウルトラマンを嫌悪・敵視していたわけではない。
ナイトレイダーのように即攻撃対象にするのはともかく、ウルトラマンをあっさり味方と信じて共同戦線を張ろうとする過去作の防衛チームの方が無防備だったとさえいえる。実際、メビウスの作中でも、終盤に日本政府国家安全保障局のシキ査察官が「ウルトラマンといえども宇宙人です。未知なる存在に地球防衛の一翼を任せることに疑問は感じなかったのですか?」と、メビウスの正体を知りながらも引き続き仲間として共闘し続けていたGUYSの危機管理意識の低さを詰問する場面がある。

そういった「異能の力を持つ者に対する恐怖や疑心暗鬼」、「危機的状況における生への執着心」という、人間なら必ずしも抱くであろう2つの自己防衛的心理を同時に突く形で利用したヤプールが狡猾だったということであり、
ましてや事態の黒幕であるヤプールに「下等」と蔑む資格はない。

また、彼がどうしてそれ程までにGUYSやウルトラマンに対し否定的であり続けたのか、その理由を考察させる場面が描かれる事は一切なかったが中には

「彼にも宇宙人や怪獣にまつわる哀しい過去があったのではないか?」
「怪獣頻出期の後の世代の人間故に、怪獣・宇宙人と戦っているウルトラマンや地球防衛隊の苦労を知らず、怪獣も出現しなかったにもかかわらずそのブランド名のみで人々から賞賛されている彼らが職務怠慢的に見えた為に反感を抱いたのではないか?」
「かつては真っ当な信念を持ったジャーナリストであったが、人間社会の理不尽さや闇に翻弄されていく中で、自らもそれに毒されてしまい、正義や絆といった綺麗事を信じられなくなったのではないか?」
「元よりウルトラマンや防衛チームに対して、ある種の“羨望”や“嫉妬心”を抱いていたのが、何らかの要因でそれが負の方向に増長し、一方的な怨恨へと変わってしまったのではないか?」

と考察する者もある。


更に言えば、ヒルカワのような「人々を守る為の組織の暗部を暴こうとする*1者」は必要な存在である。
現実でも、本来は非常事態に国民を守る為のものである国家緊急権を悪用し、国民に対し暴政を行った国家は数多く存在し、
ウルトラシリーズ作中でも、防衛チームがスキャンダル隠しの為に一人の宇宙飛行士を宇宙怪獣として消した事例や、
外宇宙への見せしめの為に罪も無い惑星の生命を滅ぼした事例が存在し、これらの事例はメビウス作中でも隠蔽されている
この二例は小説版での記述のため、それとはパラレルであるテレビシリーズにおいては無視は可能であろう。
だが、それでも力を持つ組織というのは常に「もしもあの力がこちらに向けられたら……」という警戒心を一般市民に持たれ易いものである。
こちらも小説版での記述であるが、のちのウルトラシリーズで環境保護団体の名を語って世論や権力を盾に一般市民を虐殺して被害を拡大させた組織が登場している。

GUYSが組織の身の潔白を証明し続ける為には、「ヒルカワのような存在」に痛くもない(本当に痛くなければ良いが……)腹を探られ続ける必要がどうしても出てくる。
そして、ヒルカワがそうした報道の対価として金銭を受け取ることも、非難されるようなことではない。
ヒルカワにも生活がかかっているし、暗部を暴くような深い所まで取材するなら、取材の資金だって必要である。

「正義に対する批判的な視点」も、ジャーナリストという職業を考慮すれば非難されるべきことではない。
報道の自由が存在する民主国家において、ジャーナリストに期待される社会的機能は「政治を左右する国民に、これからどうするべきかを考える判断材料を与える」ことである。
その為には、ジャーナリストは現体制が主張する正義に対し「それが本当に正しいのか」という疑問を国民が抱くように仕向け、
国民が「本当に正しい」「間違っている」と判断する余地が出来るようにしなければならない。
GUYSも公的機関である以上、彼らの正義は「現体制が主張する正義」であり、健全なジャーナリストであれば「体制の正義」について考え、時には自身の支持・不支持の考えも交えつつ、
「本当にGUYSは正しいのか」と社会に問いかけ、国民に考えさせる記事を書かなければならないのである。
これが出来ないジャーナリストとその記事は「現体制は正しい、疑問を抱く余地などない」と宣伝する「体制のプロバガンダ用品」でしかない。
そして、社会に問いかけていくためには、辛口などと言う言葉も生ぬるい徹底的な批判を行うことが必要になることもあるだろう。

それらの報道理念をウルトラシリーズにおいて正しく体現したとも呼べる存在が、「ガイア」に登場した吉井玲子、田端健二、井上倫文ら、TV局『KCB』の報道班スタッフ達である。
彼らは人類にとって脅威となる怪獣や、侵略者達の対策組織ながら、機密保持の為に市民には必要最低限の情報しか明かそうとしないG.U.A.R.D.に不信感を抱き、
「事実を正しく報道する」という信条に基きながら、組織の全容や彼らの知りうる情報を追求しようとしていた。
そして、最終的にはヒルカワの様にウルトラマン(ガイア、アグル)の正体を知るも、彼らはガイア達を擁護する立場をとり、最終決戦時にはガイアやXIGを信じるよう市民に呼びかけも行っている。
彼らの様な社会的機能を目的とした報道というものは、例え徹底的な批判をする場合であれ、その記事が防衛チームやウルトラマンの良きあり方を模索するのに役立つ記事でなければならない。
そして、そのような記事を書くには防衛チームやウルトラマンの仕事・立場への理解や最低限の敬意を欠いてはならないのである(敬意を持つ、というのは相手を無批判に受け入れることを意味するものではない)。
自身の栄誉や怨恨が動機で、GUYSを良くすることに関心もなくただ邪魔をするばかりのヒルカワの行動は、ジャーナリストという職業であることやその仕事であることを考えても正当化されない。
必要なのは「ジャーナリストとしてあるべき姿を備えたヒルカワのような存在」であり、「ジャーナリストとしてあるべき姿を備えていないヒルカワ」ではないのである。


ヒルカワがいわゆる「きれいなヒルカワ」だったら、ドキュメント・フォビドゥンに隠された防衛チームやウルトラマン達の罪を暴こうとし、
『ウルトラマンメビウス』という作品のカラーが変わり、平成ウルトラセブンばりの重い話になっていたかもしれない。
ジャミラ事件を暴き、「防衛チームは、国家権力に都合の悪い人間を抹殺することがある。事実、このような前例があったのだ」と発表すれば、GUYS(及び将来現れるであろう後継者たち)に対する市民の信頼は大幅に損なわれるであろうし、
仮にノンマルト問題など暴いた日には、それこそ地球全体を揺るがすとんでもない事態になったであろう。
もっとも、「先輩達が犯した罪」「これから自分らが犯すであろう罪」と向き合い、悩むことで、メビウスやGUYSメンバーが正義の味方として一皮剥けるというのも熱い展開ではある。
そして、きれいなヒルカワがそういった役割を担うために、例えば地球人の自立のために地球人や防衛チームはウルトラマンに頼るべきではない、というような確固とした視点を持ち、
主張し続けそれにふさわしい記事を書いていたならば、『ダイナ』に登場したゴンドウ参謀や、後年の作品『ギンガS』に登場した神山長官のように『憎まれ役』になることはあっても演者からも嫌われるようなクズとしては扱われなかった*2はずである。


上記に記した数々の悪行を犯したにもかかわらず、ヒルカワが第48話以降どうなったのかが描かれなかったことは、
「悪事を働いた者はそれ相応の報いを受けるべき」と考えるファンからしばしば批判され、放送当時は一部の視聴者から「スッキリしない」とクレームが寄せられたという。
これについては、

「単に尺が足りなかった」
「この後彼がどうなったかは各視聴者の想像に任せるという意図だった」
「ウルトラマンメビウスという作品がテレビドラマ=マスメディア上で発表する作品である以上、悪者とはいえマスコミ関係者をひどい目にあわせるわけにはいかなかった」

等諸説存在する。

ちなみに前述した『大怪獣バトル NEO』において加藤氏が演じたダイルが戦死した際には、上述の一件に鬱憤を抱えていたごく一部の心ないファンから「ヒルカワ」呼ばわりされたり、「メビウスを虐めた天罰」「やっと死んでくれた」などと当てつけるかのような感想が上がるなどの風評被害も起きていた。ファンのみならず、親族や友人からも皮肉を言われたり、メビウスをリアルタイムで視聴していた甥に嫌われて機嫌を取るのに四苦八苦したことも明かしている。
また、ダイルは当初の脚本では悪役のまま退場する予定であったが、演者に選出された加藤氏がヒルカワを演じて以降、「出演する度にウルトラマンと防衛チームを苦しめている疫病神」と言われるほどファンから激しく嫌悪され、心象がかなり悪くなっている事を考慮した制作スタッフが、加藤氏のイメージ改善の為に、最終的に改心するキャラに設定を変更したといわれ、実際に公式サイトや加藤氏のブログには、前述した当てつけ感想だけでなく、「加藤さんを見る印象が変わった」「中の人がヒルカワとは思えないくらい良い役だった」と好意的な感想も多数寄せられており、イメージ改善に成功している。その一方で「演者が加藤のせいで感動が半減した」という厳しい声も見られている。

このように作中のみならず、視聴者や演者自身からも批判され続けているヒルカワであるが、その一方で彼の立ち位置についてはメビウスの成長を促す上で必要な存在であったと評価する声も少数ながら存在する。

ヤプールとの決着戦となった43、44話や、それに続く形で行われたデスレムとの一戦を描いた45話は、“地球人の持つ美しさと醜さ”という、メビウスにとって大きな教訓を得る試練の機会となり、
自ら目の当たりにした事や、それに対するエースやジャックからの助言とを合わせて、地球、そして人間を守る事の意味を再認識していく事になった。
故にヒルカワは、ある意味ではメビウスにとっては『敵怪獣・宇宙人以上の難敵ともいえる人類の“負”の一面を学ぶ』為の反面教師的な存在となったともいえる。


最後に蛇足にはなるが、GUYSのスキャンダルを嗅ぎ回っていた彼も、
GUYSの高官が危険物の処理に失敗した上に隊員に隠蔽工作を行わせ、さらに不手際で怪獣を出現させてしまったマジモンの不祥事は完全にノーマークであった。
彼の取材能力は、案外お粗末なのかもしれない。



そして後年。ヒルカワが嘯いた「ウルトラマンがいるから地球が怪獣や侵略者に狙われる」という屁理屈を実際に体現したウルトラマンが現れようとは、ヒルカワ自身はもとより、ミライ、そして当時メビウスを視聴していた者も誰も想像つかなかったであろう……




ヤプール「命が惜しいか? だったらチャンスをやろう。この項目を追記、修正しろ! そうしたらお前の命だけは助けてやろう」

ヒルカワ「ほ…ほんとですか?」

ヤプール「約束しよう。ハハハハハ!」


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最終更新:2024年04月09日 08:10

*1 特に日本では、旧日本軍のクーデターによるファシズム化という実体験が存在するため、その傾向が強い。

*2 ゴンドウ、神山は、それぞれウルトラマンを否定するタカ派な言動や、過剰防衛といえる超兵器(ゴンドウの場合はネオマキシマ砲、神山の場合はビクトリウム・キャノン)を巡って独断専行ともいえる言動をとった事で事態を悪化させるなどして、それぞれ防衛チーム(スーパーGUTSやUPG)にとって憎まれ役となったが、それらの行動の根本は決して私利私欲が目的ではなく、特にゴンドウは自分の行いが最悪の事態を招いてしまったと知るや、自分が犯した過ちに対する贖罪としてウルトラマンを救う為の自己犠牲に投じ、曲がりなりにも人類を守ろうとしていた事が最終的に認められ、「非情な行動や、裏目に出た判断がいくつかあったにせよ人類を守ろうとした漢」という評価が主流になっており、神山もまた、最終的に自分の思想や行いが間違っていた事を悟り、悔やむ節を見せていた事から、ゴンドウほど好意的ではなくとも、ウルトラシリーズにおけるこの手の憎まれ役の中ではまだ良識がある方と評する意見も少なくない。