出産の殻/Birthing Pod(MtG)

登録日:2012/06/08(金) 12:34:08
更新日:2022/05/16 Mon 23:29:20
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《出産の殻/Birthing Pod》は新たなるファイレクシアにて登場したカード。このカードを主軸としたアーキタイプは、英語名からポッドと呼ばれることが多い。



Birthing Pod / 出産の殻 (3)(緑/Φ)
アーティファクト

((緑/Φ)は(緑)でも2点のライフでも支払うことができる。)
(1)(緑/Φ),(T),クリーチャーを1体生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから、その生け贄に捧げたクリーチャーの点数で見たマナ・コストに1を足した値に等しい点数のマナ・コストを持つクリーチャー・カードを1枚探し、そのカードを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。


簡単に言うとクリーチャーを1マナ分強い別のクリーチャーに変身させる置物。
イメージとしては「一旦卵の殻のような物を被せ、もう一度出産させる」といったところだろうか?


さて、新たなるファイレクシアにて登場以降、このカードを使ったデッキは常にメタゲームの一角にいる。
以下にこのカードの強みを挙げていく。
  • ① CIP能力、PIG能力を活かせる
CIP能力は場に出た時に発動する能力、PIG能力は死んだ時に発動する能力を指すMtG用語。
出産の殻(以下殻)の効果処理は「クリーチャーを墓地に送りクリーチャーをデッキから出す」ことであるから自然とこれらの能力を持つクリーチャーがお呼びにかかる。
そして殻と同時期に存在するCIP持ちと言えばタイタンである。
悪斬の天使/BaneSlayer Angerl》を上回るコストパフォーマンスを持つ強さは言わずもがな。

  • ② 多色構築ができる
まず殻を設置、起動するのに必要な緑マナがΦマナ、つまりファイレクシアマナになっている為、緑マナが出せなくてもライフペイで済ませる事ができる。
更に殻で呼び出す際にかかるマナは(1)(緑/Φ)だけなのでどんなにマナ拘束のきついクリーチャーも呼べる。
ついでに言えば緑は土地ブーストの色なのでその場に応じた土地を呼び出すことに長けている。
結果殻デッキは最低2色、最高5色となっており、かなり多くのバリエーションが存在する。

  • ③ ハイランダー構築が可能
殻で呼ぶクリーチャーはマナコストさえ合っていれば何でもいい。
つまりその場に必要なクリーチャーを臨機応変に出せるということ。
結果様々なクリーチャーを少数入れる構築が定番となった。
おかげで財布に優しい。
(ちなみにこのデッキのように特定のデッキに効果的なカードをピンポイントで採用してサーチカードで使い分ける戦術を、吸血鬼を倒す銀の弾丸になぞらえてシルバーバレット戦略と呼んだりする。)

  • ④ 大型クリーチャーを採用可能
殻の種となるクリーチャーさえいれば安定して出せる。
また殻の起動はカウンターできないのでリークで^^とならない。
更にハイランダー構築なので複数枚積む必要もなく、事故が少ない。
あの子この子が使える。割とガチで。



逆に短所は、殻に依存するデッキ構造そのものである。
殻を出してからが本番のこのデッキでは初動が若干遅くなるのは仕方なく、手札に来ないとどうにもならない。そして、殻自体がアーティファクトなので破壊されやすいという欠点もある(特に新たなるファイレクシアでの登場当初は装備品を多用するCaw-Bladeの全盛期であり、アーティファクトは殊更割られやすかった)。

そのためポッドは殻が手札に来なくてもある程度回るように、デッキ全体をそれなりにコスト・パフォーマンスの良いクリーチャーで固めてビートダウン要素を入れておくのが普通である。

致命的に見える弱点も構築である程度カバーできることから、ポッドは公式大会でも複数の入賞経験を誇っている。



相性のいいクリーチャー

  • 《絡み根の霊/Strangleroot Geist》
元2/1、不死能力により種にしても3/2になって帰ってくる。速攻持ちなのも強み。

  • 《ヴィリジアンの密使/Viridian Emissary》
PIGで基本土地をデッキからタップインする能力を持つ。壁兼土地加速として、序盤の肝。

  • 《幻影の像/Phantasmal Image》
場のクリーチャーをコピーする。
その際にCIPもコピれる。
コストもコピるのでこいつを種にファッティを呼べる。

  • 《刃の接合者/Blade Splicer》
CIPで3/3のゴーレムトークンを出す
本体を種にしてもトークンは残るのが強み。

  • 《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》
出ても死んでも能力が発動するアドバンテージの塊。
インビテーショナルカードであり、言わずもがな殻との相性は最高。

  • 《強情なベイロス/Obstinate Baloth》
CIPでライフを4点回復する。ファイレクシアマナのライフペイもこれで補える。
ついでに手札破壊対策にもなる。

  • 《高原の狩りの達人/Huntmaster of the Fells》
狼男。CIPで2/2の狼トークンを出し2点回復、さらに変身後はCIPでプレイヤーとクリーチャー1体に2点ダメージ。
殻の起動は呪文を唱えることにはならないので変身もしやすい。スタン・モダンで活躍してた時期、裏面はマナコストが0だったのには注意が必要だった*1

  • 《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts》
CIPでパーマネント1つのコントロールを1ターン奪い、更にそれをアンタップし速攻をつける。自身も速攻持ち。
普通に使っても強いが奪ったクリーチャーを種にするなど嫌らしいプレイもできる。

項目参照。ただ☆つよ

  • 《太陽のタイタン/Sun Titan》
CIPで墓地のマナコスト3以下のパーマネントを場に戻すタイタンズの一人。
仮に墓地に4数の《幻影の像/Phantasmal Image》があるとすると
タイタンCIPで像蘇生→像でタイタンコピー→コピータイタンで像蘇生(ry
となり場に6/6が5体並ぶ。なにこれキモい。

自アップキープに墓地のクリーチャーをリアニメイトできる。
種にしたクリーチャーを戻してCIP/PIGを使ってまた種にして(ry
ぶっちゃけポッド位しか居場所がない。
沼渡り可愛い。


モダンでは

フォーマット制定当初からモダンでも活躍している。カードプールの広さにより多種多彩なクリーチャーを採用できるため、デッキバリエーションはスタンダード以上に多い。

モダンではクリーチャーをコンボパーツにした即死コンボが搭載されている場合が多い。殻でパーツを揃えることができるからである。
以下その例。

  • 《臓物の予見者/Viscera Seer》+《シルヴォクののけ者、メリーラ/Melira, Sylvok Outcast》+《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》or《残忍なレッドキャップ/Murderous Redcap》

無限頑強と呼ばれるコンボで、メリーラ・ポッドの名で呼ばれることが多い。
《シルヴォクののけ者、メリーラ/Melira, Sylvok Outcast》で頑強クリーチャーの-1/-1カウンターを相殺し、《臓物の予見者/Viscera Seer》で生贄に捧げることで頑強クリーチャーのCIP能力を無限に使いまわす。
ここでゴキブリなら無限ライフを得られ、レッドキャップなら無限ダメージを与えることができる。

元々頑強クリーチャーは殻と相性が良く(CIPを使った後二回種にできる)、《臓物の予見者/Viscera Seer》は他のPIG能力を誘発させたい時にも役立つのがメリット。初期はこのタイプが主流だった。

  • 《修復の天使/Restoration Angel》+《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, the Mirror Breaker》

アヴァシンの帰還後に登場したタイプ。キキジキ・ポッドと呼ばれる。

やっていることは欠片の双子コンボ(《欠片の双子/Splinter Twin》と《詐欺師の総督/Deceiver Exarch》のコンボデッキ)と同じで、両者で無限にトークンを生み出す。
殻と双子のハイブリッド(Twin Podと呼ばれる)はスタンダード当時から存在したが、このバージョンの利点はコンボパーツがいずれも単体で優秀なこと。《修復の天使/Restoration Angel》も《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, the Mirror Breaker》もいずれもCIPを使いまわす手段として非常に優秀。しかも、キキジキのきつい色拘束を殻で補えるという利点もある。


これらタイプはいずれもコンボ一辺倒ではなく、通常は殻を利用したビートダウンとして振る舞い、状況を見てコンボを決めるという動きをしていた。(このデッキように即死要素を織り交ぜたビートダウンをコンボ・ビートダウン、ないしクロック・コンボと呼ぶ。)

ただ、この頃はライフは削りまくるし挙動も遅く、他よりも健全ということでまだ許されていた。(親和(MtG)がメタの一角にある都合上、アーティファクト破壊の《古の遺恨/Ancient Grudge》とかが頻繁にサイドインされるのも逆風だった。)



…許されていたのだが。

《包囲サイ/Siege Rhino》を筆頭として理不尽な強クリーチャーが登場した後は、コンボ要素を外し、ジャンクポッド又はメリーラレスポッドとも呼ばれる、ただ単に強いクリーチャーを探す為のカードとして扱われるようになった。
殻を対処しても他が優秀なグッドスタッフなため、完全な対策とはなりえない。
しかもφマナなのでどの色でも使える為、ビートダウンであれば即4積みという状況に。
こうなるとビートダウンデッキがポッドデッキのみとなってしまったため、環境を掌握したとしてモダンの禁止カード(MtG)に指定された。


亜種

「クリーチャーを生贄にしてより大きなクリーチャーに進化させる」という効果のカードは出産の殻以降にもいくつか作られている。

Eldritch Evolution / 異界の進化(1)(緑)(緑)
ソーサリー

この呪文を唱えるための追加コストとして、クリーチャー1体を生け贄に捧げる。
あなたのライブラリーから点数で見たマナ・コストがX以下のクリーチャー・カード1枚を探す。Xは、その生け贄に捧げたクリーチャーの点数で見たマナ・コストに2を足した数に等しい。そのカードを戦場に出し、その後あなたのライブラリーを切り直す。異界の進化を追放する
《自然の秩序/Natural Order》と出産の殻を足して調整したようなソーサリー。自然の秩序は緑ならなんでもサーチできたがマナコストに制限が付いた。
この手のカードにしては珍しくマナコストがぴったり同じでなくても持ってこられる。

Prime Speaker Vannifar / 首席議長ヴァニファール (2)(緑)(青)
伝説のクリーチャー — エルフ(Elf) ウーズ(Ooze) ウィザード(Wizard)

(T),他のクリーチャー1体を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから、その生け贄に捧げたクリーチャーの点数で見たマナ・コストに1を足した値に等しい点数で見たマナ・コストを持つクリーチャー・カード1枚を探し、そのカードを戦場に出し、その後あなたのライブラリーを切り直す。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。
2/4
出産の殻を内蔵したクリーチャー。アーティファクトより除去されやすい上、召喚酔いにより場に出したターンには使えない。当時のスタンダードには2マナ4点火力の《溶岩コイル/Lava Coil》がよく採用されていたのも逆風。
起動にマナコストが不要なため、アンタップ手段さえ用意できればどんどん強力なクリーチャーを持ってこられる。

Neoform / 新生化 (緑)(青)
ソーサリー
この呪文を唱えるための追加コストとして、クリーチャー1体を生け贄に捧げる。
あなたのライブラリーから、その生け贄に捧げたクリーチャーの点数で見たマナ・コストに1を足した値に等しい点数で見たマナ・コストを持つクリーチャー・カード1枚を探し、そのカードを+1/+1カウンターが追加で1個置かれた状態で戦場に出し、その後あなたのライブラリーを切り直す。
ソーサリー版第2弾。多色とはいえ2マナと軽いことにより、異界の進化よりさらに使いやすくなった。
異界の進化と合わせて8枚体制で《アロサウルス乗り/Allosaurus Rider》*2から《グリセルブランド/Griselbrand》を出す【ネオブランド】、
《海門の嵐呼び/Sea Gate Stormcaller》*3を種にして《二重詠唱の魔道士/Dualcaster Mage》*4を出すことで新生化を大量にコピーして3マナクリーチャーを並べる【ネオストーム】など、様々なコンボデッキが構築されている。

Enigmatic Incarnation / 奇怪な具現 (2)(緑)(青)
エンチャント
あなたの終了ステップの開始時に、あなたは他のエンチャント1つを生け贄に捧げてもよい。そうしたなら、あなたのライブラリーから点数で見たマナ・コストがその生け贄に捧げられたエンチャントの点数で見たマナ・コストに1を足した値に等しいクリーチャー・カード1枚を探し、戦場に出し、その後あなたのライブラリーを切り直す。
エンチャントをクリーチャーに変化させる。カードタイプが変わるので毎ターン変化させていくのは難しい。
エンチャントクリーチャーでデッキを組めば出産の殻のようなことはできるがそれでも構築上の制限がきつい。
マナコストを踏み倒して戦場に出る力線などと相性が良い。

Pyre of Heroes / 英雄たちの送り火 (2)
アーティファクト
(2),(T),クリーチャー1体を生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから、その生け贄に捧げられたクリーチャーと共通のクリーチャー・タイプを持ち、そのクリーチャーの点数で見たマナ・コストに1を足した値に等しい点数で見たマナ・コストを持つクリーチャー・カード1枚を探し、戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。
部族デッキ特化することで軽量化&無色化。サイなどのマイナー種族ではそもそもデッキが組みにくいが、すべてのクリーチャータイプを兼ねる多相を使えば融通が利く。

Oswald Fiddlebender / オズワルド・フィドルベンダー (1)(白)
伝説のクリーチャー — ノーム(Gnome) 工匠(Artificer)
魔具化 ― (白),(T),アーティファクト1つを生け贄に捧げる:あなたのライブラリーから、マナ総量がその生け贄に捧げたアーティファクトのマナ総量に1を足した数であるアーティファクト・カード1枚を探し、戦場に出す。その後、ライブラリーを切り直す。起動はソーサリーとしてのみ行う。
2/2
主席議長ヴァフニールとかの極悪サーチ呪文《修繕/Tinker》を組み合わせたクリーチャー。制約上Moxなど0マナアーティファクトをサーチできず、逆に重たいアーティファクトも出しづらいが、それらの制約を差し引いても強力なサーチ能力であるのは変わりない。


Vivien on the Hunt / 狩りに出るビビアン (4)(緑)(緑)
伝説のプレインズウォーカー — ビビアン(Vivien)
[+2]:あなたはクリーチャー1体を生け贄に捧げてもよい。そうしたなら、あなたのライブラリーから、そのクリーチャーよりマナ総量が1大きいクリーチャー・カード1枚を探し、戦場に出し、その後ライブラリーを切り直す。
[+1]:カード5枚を切削し、その後これにより切削した望む枚数のクリーチャー・カードをあなたの手札に加える。
[-1]:緑の4/4のサイ(Rhino)・戦士(Warrior)クリーチャー・トークン1体を生成する。
初期忠誠度:4
+能力がまんま《出産の殻》のビビアン。6マナと激重だがプレインズウォーカー版《騙し討ち/Sneak Attack》能力を持つ《次元縛りの共謀者/Planebound Accomplice》を使うと最速4マナからキキジキ・コンボに繋げられる。
これを内蔵した【ビビアンポッド】というコンボデッキがモダンに登場した。



Aniwota Pod / アニヲタの殻 (3)(緑/Φ)
アーティファクト

((緑/Φ)は(緑)でも2分の時間でも支払うことができる。)
(1)(緑/Φ),(T),項目内の単語を生け贄に捧げる:あなたの脳内ライブラリーから、その生け贄に捧げた単語と同じタイプの単語を1つ2つ探し、追記・修正する。その後、項目を更新する。この能力は、あなたが暇なときにのみ起動できる。

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最終更新:2022年05月16日 23:29

*1 現在はルール改正によって表面のマナコストを参照するようになった。

*2 マナコストの代わりに緑のカードを2枚手札から追放しても唱えられる7マナクリーチャー

*3 戦場に出たとき次に唱えた2マナ以下のインスタントとソーサリーをコピーするクリーチャー

*4 戦場に出たときインスタントかソーサリーをコピーする瞬速もちクリーチャー