衛宮切嗣

登録日:2009/08/16(日) 13:06:16
更新日:2024/03/02 Sat 18:12:57
所要時間:約 36 分で読めます


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FGO Fate Fate主人公 GO TYPE-MOON Zero stay night ※主人公です まさに外道 やる事は外道 アサシン ケリィ サーヴァント スピンオフ主役 セイギノミカタ ダメ人間 ダメ親父 ダークヒーロー テロリスト プリズマ☆イリヤ マスター ロボットのふりをした人間 一級フラグ建築士 世界一優しい殺し屋 主人公 主人公の親 僕は肋骨が少ない 入野自由 前作主人公 加速装置 哀しき悪役 型月主人公 外道 小山力也 師匠殺し 悲しき主人公 悲劇の男 意外と子供舌 所要時間30分以上の項目 暗殺者 正義の味方 正義の味方になりたかった男 正義の味方の成れの果て 父親 目が死んでる 衛宮切嗣 親バカ 顔芸 養父 魔術使い 魔術師なら、冠位だって殺してみせる 魔術師殺し




Fate/stay night』及び『Fate/Zero』の登場人物。
CV.小山力也/年少期CV.入野自由


衛宮家5代目継承者。父は衛宮矩賢、養母はナタリア・カミンスキー
妻はアイリスフィール・フォン・アインツベルン(以降アイリ)で、その間にイリヤスフィール・フォン・アインツベルン(以降イリヤ)を儲けている。
養子に衛宮士郎をとっている。

SNでは故人であり、回想や言葉の中のみの登場。
Zeroでは主人公。
第四次聖杯戦争におけるセイバーのマスターだが、アイリを表向きのマスターにし、本人は単独行動を取る。

●目次



プロフィール

身長:175cm
体重:67kg
血液型:AB
誕生日:11月11日
イメージカラー:灰色
特技;射撃、つまらない落語(SN)、射撃、破壊工作(Zero)
好きなもの:ジャンクフード、冒険(SN)、効率(Zero)
苦手なもの:映画、読書(SN)、家族愛(Zero)
天敵:不明(SN)、セイバー(Zero)


【人物】

手段を選ばない殺し屋としての一面と子供っぽい一面を持った人物。
多くの殺し屋が数年がかりで身に付ける「指先を心と切り離したまま動かす」覚悟を最初から持ち合わせていた。
目的の為には手段を選ばないという言葉の体現者。
世界平和を願う夢想家でありながら、その実現においては冷酷非情のリアリスト。
あらゆる人間を愛し、あらゆる人間を殺す覚悟を決めた男。その心に葛藤はないが悲しみを捨てきれない。

聖杯戦争参加前はフリーランスの暗殺者として、世界各地で暗躍。
外道戦法を用い、狙撃や毒殺はもとより、公衆の面前での爆殺、対象の搭乗した旅客機ごと撃墜というものまで、手段を選ばない。

聖杯は願望成就の道具としか見ておらず、第三魔法「天の杯(ヘブンズフィール)」の成就に固執するアハト翁に対しては、
「1000年の彷徨の末に目的と手段を履き違えるまでになったか」とある種軽蔑の眼差しを向けながら、聖杯に「恒久的な平和」の奇跡を願うことを見出す。

魔術師であることに誇りを持っている様子はなく、『Zero』では魔術も銃火器も等しく「武器」として扱っており、
『stay night』で士郎の口から語られたところによると、士郎に魔術を教えてはいるものの、彼に乞われて仕方なく教えたようなもので、
教えている時にも「いつでも止めていい」と言っていたといい、それを聞いた遠坂凛はその切嗣のスタンスを「魔術師ではなく魔術使い」と批難している。
また、衛宮家に伝わる魔術刻印や固有の魔術も(士郎は養子故にそもそも体質的に合わなかった可能性もあるが)継承しておらず、後述する起源弾の存在も教えていない。
ちなみに、士郎の扱う『投影』の特異さには切嗣も気付いていた*1が、特異過ぎるが故にどう指導してよいのか分からなかったのか、
結局「『投影』は効率が悪いから『強化』にしなさい」と助言するに留まっており、士郎本人も凛に言われるまで自分の『投影』の特異性には気付いていなかった。
また、士郎は魔術鍛錬の際、本来は一度作ったものを使いまわす魔術回路を毎回作り直すという、効率が悪い上に命の危険も伴うことを切嗣の存命中からしていたが、
何故か切嗣はその危険性や「魔術回路は一度作ったものを使いまわすもの」という基本を教えることはなかった様子。

愛煙家だが、アインツベルンにいた9年間は禁煙していた。
吸い慣れた銘柄が現地では手に入らなかった、という理由もあるが、一番の理由は妻子への気遣い。
第四次聖杯戦争にて冬木に訪れた際にNarlboro(恐らく元ネタはMarlboro)という銘柄の煙草を吸っており、これが切嗣の吸い慣れた銘柄なのかもしれない。

好物はジャンクフードで、アインツベルンの宮廷料理もかくやという豪華な食事を9年間味わっておきながら、
聖杯戦争で再びハンバーガーを口にした際に「殺伐とした食感がむしろ心地良い」と述懐している。
ちなみに、ジャンクフードを好む理由として当人のモノローグで「他に何かをしながら食事を摂れる」ことを挙げているが、
仕事をしていない時にもハンバーグを所望したり、士郎と暮らすようになってからもジャンクフードを好むなど、切嗣の味覚が子供舌なのも要因と思われる。
衛宮士郎が料理、特に和食を得意とするのは、体が弱っているのにジャンクフードばかりの困った養父の健康のために練習した成果だったりするが、
子の心親知らずというべきか、切嗣は士郎が料理を作るようになり、ジャンクフードが遠ざけられたのを残念がっていた。

プロフィールにはないが、どら焼き、汁粉も好む。疲れた脳に糖分が効くからだそうな。
一方で養子の士郎は甘味が苦手だが、どら焼きだけはお茶請けとして買っていた。なんていい子なんだ。
イリヤにも汁粉の存在を教えており、彼女には甘過ぎて飲めないだろうと言っていたが、当人はどら焼きも鯛焼きもパクパク食べていたので杞憂だったかもしれない。
虚淵もZeroで拾えなかったことを惜しんでいたりする。あの雰囲気で缶入り汁粉とか出されても反応に困るが

苦手なものである映画だが、世間知らずのアイリに世情を教える時に活用している。苦手でも手段として割り切っていたのか、当時はそれほど苦手でもなかったのかは不明。


【能力】

魔術師としての属性は「火」と「土」の二重属性で、かなりレア。起源は「切断」と「結合」の複合属性。
衛宮家の魔術刻印も2割未満ながら受け継いでおり、戦闘用に調整を加えて用いる。
第四次聖杯戦争の最終盤に受けた呪詛で魔術回路の8割が使い物にならなくなった後でも、
時間をかけて魔法陣を描く儀式を行えばAランク魔術を発動出来る程度の腕前を養子の士郎に披露しており、魔術師としての実力も比較的高い方と言える。
手先は器用で技能も確かであり、銃器の操作や修理などは非常に素早く巧み。
ただし自身の起源の影響で、複雑難解な物事に触れて関わるほど「見た目だけは直ったように見えても不可逆に変質する」という事態が起こり、致命的に壊れていく。*2*3

マスターとしての適性はFate用語辞典によるとノーマル。
一方、『Fate/stay night』でセイバーが切嗣のマスター適性は高かったと話す場面も存在し、矛盾と指摘されることもあるが、
それを話した段階では彼女のマスターとなったのは切嗣と士郎だけと比較対象が少ないため、魔術師として未熟もいいところの士郎と比べての評価かもしれない。
また、兵法家としては超一流なので、それと魔術師としての力量も合わせ、総合的に見て「適性が高い」とした可能性もある。
セイバーはマスターの兵法・判断に左右される部分がとても大きいサーヴァントなので、切嗣の評価が高めになるのは当然ではあるだろう。

Fate用語辞典によれば、「“敵対する魔術師を殺す”という事に関しては折紙付き」。
魔術協会では「魔術師殺し」の異名を轟かせ、聖堂教会からも要注意人物として扱われていた。
「魔術師であれば魔術で勝負してくるはず」といった思い込みの裏をかき、魔術師が忌避する近代兵器も用いて多くの魔術師を葬ってきた。
逆に魔術師らしくない相手には嵌め殺しが効き辛い。特にライダーは戦上手で足取りを掴ませず、やっと掴めたと思えばそのマスターの幸運のせいで攻めあぐねることになった。
元々魔術師狩りに長けた相手に至っては切嗣の強みが無くなっており、最後には宝具の回復能力に任せたごり押しになっていた。
尤も、こうした苦戦は9年のブランクで切嗣の手口が甘くなっていたこともある。
冬木教会にタンクローリーをぶつける案も作中では却下していたが、採用していればまた話は違っていただろう。


【使用魔術・魔術礼装】

  • 固有時制御
衛宮家は時間操作の大魔術を家法として研究していたが、それを切嗣が戦闘用に大幅アレンジし、短時間での発動を可能にしたもの。
自身の身体を結界として*4時間経過速度を操作し、倍速化させることで高速移動を、停滞させることで生体反応消失を可能にする。
尤も、後述のリスクから基本的には切嗣は二倍速までしか使用しない(使用後も活動することを前提とするなら限界は三倍速とのこと)のだが、
元々暗殺者として訓練を積んできた人間がいきなり二倍の速さで動き出す時点で一般人には十分脅威であり、
劇中でも、兵士としての訓練などもちろん受けていないケイネスがこの魔術を目にした際、
「信じがたいほどのスピード」、「目にも留まらぬ勢い」、「常人が発揮しうる体術ではない」と評している。

しかし解除後は世界からの「修正力」を受け、身体に負担がかかってしまうというリスクがあり、
切嗣はそのリスクも加味して、特に加速については基本的に二倍速までに留めている。
ただし、使用後即座に身体を治癒・修復できるのならば、特に加速に関してはこのリスクを度外視することが可能で、
劇中ではどんな損傷も即死しない限りは即座に修復する『全て遠き理想郷』の加護下にあった切嗣が、
三倍速でも敵を攻め切れなかったことを考慮し、通常であれば自殺行為であるという四倍速まで使用している。
ただ、致命傷を負った際の苦痛までは『全て遠き理想郷』でも消せないため、
四倍速で長時間戦闘を行うのは、文字通り「死にながら蘇生し続ける」、致命傷を受け続けることと同義で、
四倍速を行った際には、切嗣は血反吐を吐きながら、致命傷を繰り返し受ける苦痛に苛まれながら戦うこととなった。


  • 起源弾
その起源は切断と結合。

多くのものを切り捨て、
より多くのものを繋ごうと足掻いてきた。

ひび割れた窓に映る残像よ。
どうか、あの美しい日々のままに。

『Fate/Grand Order』概念礼装「起源弾」フレーバーテキストより

切嗣の、対魔術師戦闘の切り札。
切嗣から取り出した肋骨に霊的処置を加えたものを心材とした、特別製の.30-06スプリングフィールド弾(7.62×63mm弾)。
これを愛銃であるコンテンダーカスタムに込め、魔力を流して放ったものが着弾すると、それを受けた敵の肉体に切嗣の起源である「切断」と「結合」を同時発現させるという効果がある*5
この弾丸が生身の肉体に当たった場合は「血が出ずに壊死した古傷のようになる」とのこと。
ライフル弾の威力で大怪我になるが、その怪我範囲が瞬時に「結合」されるため、見た目はつながったようになる(ただし、元通りではない)という事だという。
人間が生身で喰らえば、着弾点を中心にかなり広範囲に人体をもぎ取られるであろう.30-06弾をチョイスしているのは、
盾などで防御されてしまえば起源弾としての効力が発揮されないため、生半な防御なら貫通し得る威力を求めてのことである。

そしてこの魔弾の真の恐ろしい用法は、相手が魔術を使っている時に魔術に当てることで魔術回路をショートさせ自滅させることである。

敵が行使している魔術にこの魔弾をぶつけると、術を通して敵の魔術回路に起源の効果が届き、
敵の魔術回路を「切断」して「結合」する。
つまり、魔術が走りまくっている最中に魔術回路がメチャクチャに変質させてしまう。
結果、回路上を走っていた魔力が短絡(ショート)過負荷(オーバーロード)を引き起こし、魔術回路を焼き切ってしまうのだ。
魔術回路は体内の臓器などと密接な関係にあるため、大規模な魔術を使って全身の魔術回路を励起させた状態でこれを食らうと、
魔術回路が駄目になる上に暴走した魔力によって全身の臓器などに深刻なダメージを負う。
肉体の即死や魔術師として即時終了には至らないかもしれないが、来たるべき切嗣の追い打ちに反撃できる状態ではないだろう。

作中では配線で例えて、高圧の電気が流れている配線に、一滴の水を垂らすことで結果ショートを起こしてしまうというものとされている。 
特性上、より魔力を使う魔術ほど殺傷力が上がる。奈須きのこは「対象のMP分のダメージを与える」と例えている。
流れている電力が強ければ回路が乗っかっている「基板」すら焼け焦げてしまうが、低ければ基板は原型を保つかもしれないというわけだ。

この、魔術回路の変質による致命的なダメージを回避するためには、魔術ではなく物理的な防御をするか、回避するかしかないが、
高速で飛来する銃弾を回避するなど、それこそ何らかの武術・戦闘術を極めている、あるいは相当な修練を積んだ人間にしか不可能であり、
さりとて.30-06スプリングフィールド弾を停弾させるには、装甲車並みの物理防御力(作中に登場した礼装ならば月霊髄液以上)*6が必要と、
基本的にこれを撃たれた時点で一般的な魔術師なら少なくとも負傷は免れないという、まさに悪辣な代物である。

但し、最終決戦時の言峰のように本人由来でない魔力を通した礼装に当てても効果はない。39発目が不発となったのはこれが原因。
つまり、術者から完全に独立した「外部協力者」みたいな装甲装備なら防げるという事のようだ。

全部で66発作られ、第四次聖杯戦争までに37発が使用済み。これは切嗣が起源弾で始末した魔術師の数と一致しており、作中ではケイネスが38人目のキルマーク。
更に言峰に対して1発使用したが預託令呪の魔力を通した黒鍵に防がれ、この39発目が初めての「仕損じ」だった。
第四次聖杯戦争終了時点で最大27発が残っている筈だが処分したか隠したかしたらしく、
『Fate/stay night』のデッドエンドの1つで、士郎達が切嗣の武器を探してみたが見付からずじまいになっている。
後述の第五次聖杯戦争を阻む仕掛けを行う際に「手持ちの火薬をやりくりして~」との記述があるので、その時に弾薬や銃の部品を流用したのかもしれない。


【使用武器】

使用する銃器は以下の3種。

  • トンプソン・センター・コンテンダー・カスタム
起源弾用のハンドガン。実在の拳銃コンテンダーを.30-06スプリングフィールド弾仕様かつ起源弾用の魔術伝達経路を設ける魔改造を施したもの。

コンテンダーは弾倉(マガジン)も無ければ遊底(ボルト)も無い完全な単発銃。一発ごとに手で弾を込め、空薬莢は指でつまみ出すという潔さ。その分頑丈な銃で、ハンドガンでありながらカービン弾にも耐えられる強度を誇る。
が、さすがに市販のコンテンダーは.30-06弾を撃てるほどの変態銃ではない(後日、でっかい弾をハンドガンで撃ちたいアメリカン変態のために.30-06が撃てるコンテンダーの大型版も一般に発売された)。

個人携行の防具で物理的に食い止めるのが不可能な貫通力の弾を隠し持てる銃で撃つための選択で、起源弾の運用に沿った選択。

50or100発のヘリカルマガジンを使用可能。
切嗣は前者を採用。

オートマチック式狙撃銃。
スコープマウントを特注し、光学式暗視スコープと熱感知スコープを搭載している。重量は10キロを超えるキワモノ。

敢えて現実のミリオタ的な視点で言うと、実際に戦場で使うものとすればかなり非常識。
一概に言うなら「ゲテモノ」の銃ばかりを扱っている。
単にゲテモノというよりは「特定性能を過剰に求めている」銃ばかりで、いずれも癖が強い。
もっとも、作者自身「切嗣は銃の使い手としても異端であることを示す意図がある」という演出的な理由と「自身の趣味」を採用の理由として挙げており、現実性は重視していない。

その他聖杯戦争用に用意した武器は、サバイバルナイフ爆弾類等。およそ魔術師らしくない装備を揃えているが、別にこだわりが有っての事ではなく、単に使い勝手からの選択。
遠隔操作可能なタンクローリーを用意して、いざとなれば敵の拠点に突っ込ませることも考えていた辺り、手段だけを見れば完全にテロリストである。

ちなみに上記の聖杯戦争の為に用意した武器の費用はアインツベルン持ち。
伝統的な魔術師であるアインツベルンがよく我慢したなと思えなくもないが、流石に城に電話線と発電機を要求したときはアハト翁と一悶着あったとか。


【経歴】

幼少時は子どもらしく漠然と「正義の味方」に憧れる普通の少年で、父・衛宮矩賢と共に南海のアリマゴ島で暮らしていた。
島の人達とも仲良くなり、父の助手をしていた少女シャーレイに想いを寄せるなどささやかながらも幸せな生活をしていた。
しかし、ある時、矩賢の試薬を好奇心から飲んでしまったシャーレイが死徒化。

それを発見した切嗣は彼女に自分を殺すように懇願されるが、
想い人を殺すことが出来なかった切嗣が彼女を救おうと島の神父に助けを求めたことが原因で教会と協会の介入を招き、切嗣と矩賢を除いた島民は皆殺しにされる。
そのことを、矩賢を追ってやって来たフリーの封印指定の執行者ナタリア・カミンスキーに聞かされた切嗣は、
自分が愛する人を殺せなかったばかりに大量の犠牲を出したことを理解すると共に、
父が生きている限りこの惨劇が再び起こる可能性があることも理解して、愛する父親の矩賢を射殺する。
アニメ版ではこの辺りが大幅に変えられている。
  • 矩賢が残っていたのは研究成果の隠滅の為(原作では切嗣を待ち続けた為で、やっと帰って来た時には安堵の余り抱擁している)。
  • 切嗣はシャーレイの短剣で腹を刺してから射殺しており、まるで彼女の仇をとっているかの様な描写(原作では短剣は出て来ず、射殺の瞬間にも父との思い出ばかりが浮かんで来ている)。
  • 使用した銃は矩賢の所有物(原作ではナタリアが貸した物で、そのことを負い目に思ったのも切嗣を引き取った理由になっている)。
最後まで見ていれば、切嗣の行動原理は復讐ではなく、彼なりの社会奉仕と分かるのだが、絵面のインパクトのせいか誤解する人も未だに出ている。なぜ改変した

その後の数年、ナタリアの手伝いをしながら暮らしている内に、島で起きた悲劇など日常茶飯事で、矩賢を殺したことなど虚しいほどに些細な処置であったことを知る。
父を殺したことを意味のあるものにするには悲劇を起こす異端の魔術師を殺し続けることしか無いことを悟り、彼女と同じ魔術師を狩る道を志す。

暗殺術・追跡術・各種兵器の取り扱いや魔術について学び、彼女と共に「仕事」に奔走する。
そんな日々の中、切嗣とナタリアは信頼関係を深め、お互いを「家族」と思うようになっていった。
だが、「魔蜂使い」として知られるオッド・ボルザークを討伐する任務中、ナタリア以外の乗客全てがグール化する事態になる。
その時、切嗣が取った行動は愛するナタリアが万が一空港に着陸を成功させることでグールが放たれることを危惧し、ジャンボ機ごとブローパイプで撃墜することであった。*7
ナタリア1人の命より、彼女を殺さなければ失われるであろう無数の人々の命を優先したのである。

この行動は正しく愛情より被害を出さないことを優先した「正義」たる行動であったが、
切嗣は自身の行為で大勢の人間を救ったことを理解しつつも、愛する家族を殺してしまったことに絶望し、後悔した。
これが決定打となり、切嗣は「全てを救う正義の味方」などいないと確信し、
誰かを「正義」の名のもとに切り捨てながら賞賛される「正義の味方」という存在に絶望、憎悪し、人の命を奪う戦場こそ地獄であるという思いを抱く。
同時に、多くの人をその煌びやかな伝説と姿で惑わし、地獄である戦場へと誘い、命を落とさせる要因の一つである「英雄」という存在にも憎悪するようになる。

だがそこに至るまでの犠牲を無駄にしたくないという一心から「正義」、つまりより多くの人を助け、その為に人を殺すことを辞めるもできず、深みに嵌まっていった。
その後は魔術師殺しの傍ら、世界中の紛争地帯に戦況が最も激化した時期に出向き、紛争を殺戮で早期に沈静化させる傭兵のような事をしていた。

第四次聖杯戦争の9年前、その卓越した殺人技術を見込んだアインツベルンにマスターとして招かれ、傭兵としての活動を止める。
この時、生まれる前のアイリに引き合わされ、彼女の赤目に一目惚れしたが、
彼女が生まれた後、初めて対話した時は、彼女の自我の無さに苛立つなど険悪になった。
なんやかんやあって夫婦になり、イリヤを儲ける。……ん? 今、アイリの年齢を考えた?
9年間、愛しい存在に囲まれた生活を送っていたが、
アイリは第四次聖杯戦争で確実に命を落とす事が運命付けられ、
イリヤも生まれる前から改造され続けたことで、8歳になるという頃でも体重がワルサーWA2000より軽いなど成長に異状を見せており、
彼女達の境遇を嘆いてもいた。
第四次聖杯戦争で自分が死に、イリヤが1人になる可能性もあると分かっていたが、
イリヤが母とこれまで通りには会えないと知っていて、父の帰りを早くも待ち侘びているのを見て
「イリヤのことを待たせたりしない。父さんは必ず、すぐに帰ってくる」と彼女と約束する。*8

聖杯戦争中は、サーヴァントであるセイバーと相容れないと思いガン無視し、信頼関係を築かなかった。
彼にとって、戦争において華やかな存在として扱われる英雄という存在自体が嫌悪の対象に過ぎなかった。
それに加えてセイバーの場合、女性という身でありながら王という立場を受け入れた彼女とそれを押し付けた周囲への嫌悪感が彼の頑な態度へ後押ししてしまった
……とアイリは推測している。

聖杯戦争においてはケイネス・エルメロイ・アーチボルトを殺害する為にホテルを爆破したり、
彼の許嫁であるソラウ・ヌァザレ・ソフィアリを人質にし、自己強制証文(セルフギアス・スクロール)を用いた詐術でランサーを自害させた後、
無防備になったケイネスをソラウ共々部下の久宇舞弥に不意打ちで射殺させる……という、手段を選ばない外道っぷりを披露した。
自己強制証文には確かに「切嗣はケイネス・ソラウ両名に危害を及ぼさない」と記されていたが、「切嗣が他の人間にケイネス達を攻撃させる」場合には効力を発揮しないため、
魔術師のやり取りでは最大限の譲歩を意味するという自己強制証文を持ち出してケイネスを油断させ、証文そのものではなくその文言に陥穽を仕掛けるという、切嗣の悪辣さが分かる作戦である。

さらに、アインツベルン城におけるケイネスとの戦いでは、執拗に近代兵器の攻撃による挑発を重ねて彼を怒らせ、
自身の起源弾による一撃をケイネスが全力で展開した月霊髄液に防御させ、上述した起源弾の特性から彼の魔術回路を破壊したことで、
アーチボルト家の魔術刻印の大半をも破壊せしめ、後のケイネスの殺害と合わせてアーチボルト家に没落の危機に陥れるほどの損害を与えている。
もっとも、切嗣にすればケイネスを殺さなければ自分が殺される状況であり、アーチボルト家を傾けようという気もなかったので、その損害に関しては不可抗力と言えるだろうが。

一方で自身が「魔術師なら魔術で勝負を仕掛ける」という固定観念の裏を掻いてきたのと同様に、
ウェイバーに「魔術師ならば工房を拠点にする」という固定観念の裏を(無自覚ながら)掻かれ、彼に手出しできなかったという失態も犯している。

しかし、アイリとイリヤという「喪うもの」を得てしまった彼にとって、第四次聖杯戦争で昔の自分に徹するだけでも、相当の無理を強いられていた。
ホテルを爆破する前にケイネス達以外の宿泊客や従業員を避難させた自身の判断を以前より劣っていると焦りを覚えたり、
セイバーへの行き過ぎた態度を咎めようと声をかけたアイリを抱きすくめて弱音を吐いたりと、確実に切嗣の心は追い詰められつつあった。
セイバーを非合理的なまでに拒絶したのも、彼自身の心に余裕が無かった為。
自身を一個の「殺人機械」と定義し、それに徹しようとするも、一度取り戻した心を押し殺しはしても打ち消すことはできなかった。
これらのことからファンの間では、士郎を形容する「人間のふりをするロボット」になぞらえて、
切嗣をその対極・「ロボットのふりをする人間」と評されることも。

終盤はアイリに『全て遠き理想郷(アヴァロン)』を託され、最後に残ったマスター同士として言峰綺礼と一騎打ちをする。
言峰の預託令呪を使った魔術の特性上、起源弾が通用しない上に、執念と令呪によって強化もされた彼の圧倒的な体術に大苦戦。
一度は心臓を破壊されるという致命傷を与えられるも、『全て遠き理想郷』の加護で蘇生。
その驚異的な性能に勝機を見出した切嗣は禁忌としていた2倍速以上の倍速を活用することで盛り返し、相討ち直前まで持ち込む。

だが戦闘中に聖杯から溢れ出した泥を2人は浴び、切嗣は聖杯の内側でアイリの人格を被った『この世全ての悪』と対話、
聖杯の『殺戮を以て願いを叶える』という正体を知り、家族以外の全人類を殺す願いを求める聖杯を拒絶。破壊を決意する。
その対話の中ではアインツベルンの城に残して来たイリヤも姿を見せるが、聖杯の誘惑を拒絶するために、
そして(人類60億人)を救う為に(家族2人)を切り捨てる選択を取るために、(幻覚とはいえ)彼女達を手に掛けた。

拒絶したことが功を奏したのか、切嗣の方が言峰より先に意識を取り戻し、「私に譲れ!」と乞う言峰の心臓を撃ち抜く。
そしてセイバーに令呪で聖杯を破壊させたが、既に形成され始めていた「孔」が溶解し呪いとなって、冬木市の一角に大火災を巻き起こす。
切嗣はその火災により、平穏に暮らしていた人々が一転して地獄に叩き落とされて死んでいく様を、何もできずに見届けることしかできなかった。

しかし切嗣はどうにかしてその火災の中を生き延び、生存者を求めて焼け跡を駆けずり回った。
そして、危うく息を引き取りかけていた少年を発見し、『全て遠き理想郷』を彼に埋め込むことで命を助けることが出来た切嗣は、
目に涙を溜めて、彼が生きていてくれたことに感謝し、笑顔を浮かべた。
この少年こそ、後に彼が養子とする衛宮士郎であった。


第四次聖杯戦争終結後、切嗣は士郎を養子に迎え、
生前のアイリと最期の会話を交わして舞弥を看取った場所であり、拠点として用意していた武家屋敷をどうにか暮らせるくらいに手直しし、そこで暮らし始めた。
それからの暮らしは、切嗣がそれまで手に入れられなかった、平和で穏やかな日々であったという。
藤村大河の影響でつまらない落語が特技になり、彼女に外国語を教えて英語教師の道を志すきっかけともなった。

その一方で、アインツベルンの所領に残してきた愛娘のイリヤとは最期まで会うことは許されなかった。
士郎に旅行と偽って何度かアインツベルン領に足を運んだが、聖杯の呪いで衰弱した切嗣には結界を破ることは叶わず、
当然アインツベルンも彼を城に招き入れることもなかったため、切嗣は凍死寸前まで冬の森を彷徨う羽目になった。
イリヤはこの事を知らず、切嗣は自分を捨てて士郎の所に居たと思い込み、士郎に見当外れの復讐をしようとするのであった。全部アインツベルンのせい。

元々呪いに蝕まれたことで縮まっていた切嗣の寿命はこれによってさらに縮まり、
晩年には目も掠れ、切嗣は自らの死期を間近に感じつつ、家にこもって思い出に浸りながら、自身の人生の意味を考え続けたという。
養子の士郎はまだアラサーの切嗣を「爺さん」と呼んでいたが、それもそのはず。
士郎を養子に迎えてからの衛宮家での切嗣の生活や性格はまさしく、老人のようなものであったのだ。
肝心の士郎は切嗣をお父さんよりお兄さんが似合う外見と思っていたが、気付けば「爺さん」呼びにしていた。本能で察したんだろうか?


そして第四次聖杯戦争から5年後の冬、ある月の綺麗な夜。
切嗣は士郎と共に、ぼんやりと月を眺めながら、口を開いた。




「子供の頃、僕は正義の味方に憧れてた」




その言葉に反発する士郎に、切嗣は苦笑を返して言葉を続けながら、内心悲痛な思いを抱えていた。
切嗣に「歪んでいる」と言っていいまでの過剰な憧憬を向け、「正義の味方」を目指す士郎は、いずれ自分と同じ轍を踏むのではないかと。




「うん、しょうがないから俺が代わりになってやるよ」




しかし、士郎がまるで自分に誓うかのように言ったこの言葉に、切嗣は希望を見出した。


自分はかつてシャーレイに問われた時、はっきりと言葉にして「正義の味方になる」とは言えなかった。だから迷い、諦め、絶望した。
しかし士郎は違う。おそらく大事に思ってくれているであろう自分に、「正義の味方になる」と言った。

こんな綺麗な月の下で誓ったのであれば、士郎はきっとこのことを忘れない。
この思い出がある限り、士郎がいずれ傷つき、迷っても、自分の原点に立ち戻ることができる。
「正義の味方」となることを志した、この時に。


それは自分には望むべくもなかった救済だと確信した切嗣は、心が癒されていくような感覚に包まれながら、静かに目を閉じた。




「ああ――――安心した」




そうして、衛宮切嗣はその夜、士郎に看取られて眠るように衰弱死した。享年34。
葬儀は大河の父が執り行い、遺体は柳桐寺の裏の墓地に埋葬された。
士郎はまだ未熟の身だからと墓参りしておらず、代わりに大河が度々訪っている。


なお、第五次聖杯戦争を阻止する為の手段として、大聖杯が鎮座する地下空洞に爆弾を設置。
周囲を地脈から徐々にマナを吸い、数十年後には自動で爆発する仕掛けを施した。
しかし、彼の思惑とは違い僅か10年で再び聖杯戦争が開催した為に阻止する事は叶わなかった。


その後ろ向きな在り方から、“赤い外套の騎士”と比べて「正義の味方」としての格は大きく劣ると語られている。
また、もう少し悪のカリスマ的ラスボス属性があれば大成したかもしれないが、平和な安らぎの中で家族と過ごしていた場面こそが本当の素顔とも言われている。
だが、この語らいが士郎が「正義の味方」に憧れる要因となり、無限地獄に陥る可能性にも直結してしまった。
しかし、その地獄に陥って自身の目指したものに迷いを抱いた彼に「間違いじゃない」という答えを導かせた一因になったのも、あの日切嗣と交わした月下の誓いでもある。
記憶が摩耗して薄れゆく思い出の中で、たった1つ鮮明に覚えていたのも、この月下の誓いだった。
士郎にとって、命の恩人であり、正義の味方を目指すキッカケを与え、挫折した彼に立ち直るキッカケにもなった切嗣は、やはり大きな影響をもたらした人物である。

余談ではあるが、アニメ版Zeroにおいてシャーレイを亡くし父を射殺した回の放送日は「こどもの日」、
ナタリアをジャンボ機ごと撃墜・殺害した回の放送日は「母の日」、
そしてアイリとイリヤの皮を被った『この世全ての悪』を射殺した回の放送日は「父の日」だった。
アニメ版Zero全編において、重要なファクターとなるものが含まれる話の放送日は何かしらの記念日と重なる場合がある*9が、
切嗣の場合は全てが洒落にも出来ない日と重なっていた。
別名、「母の日スティンガー」「父の日コンテンダー」



『Fate/stay night』でセイバーは士郎の過去に出て来る切嗣が立派な人物であることに驚き、
自身の知っている彼は典型的な魔術師だったと語っている。
つまり目的以外に関心を見せず、邪魔物は全て排除、人間らしい感情が見当たらない人物。
セイバーも自分も道具と見做し、彼女に話し掛けたのは令呪の三度だけだった。
しかし『Fate/Zero』でセイバーは彼が娘と仲睦まじくしたり感情を露わにしている様子を見ている筈で、
この点も両作の矛盾として挙げられ、荒れる原因になることもある。
まあ曲がりなりにも聖杯を求めている姿勢は一貫していたのが、いきなり破壊しようとするのだから訳の分からない奴と認識していた……のかもしれない。

【本編以外での登場】

フェイト/タイガーころしあむ アッパー

虎聖杯によって妻と共に平行世界の冬木に召喚されて騒動に巻き込まれる。
本編時空のイリヤにキリツグ殺す宣言されて「娘に反抗期が来ちまった!」とショックを受け、
士郎や大河に「大きくなったなぁ」と親戚のおじさんのような反応を見せるが、もう一人は安定のガン無視。
彼の個別ルートのラストでは、嫁と娘と息子と居候と共に和気藹々と食卓を囲む。まさに全て遠き理想郷……
まあ「職場にコネでゴリ押しされた派遣の女の子が若いし態度気に入らないしで苛めて解雇にしたら息子の彼女になって家で同棲してたでゴザルの巻」というパパの修羅場でもあるが。いや擁護できねえなこれ。

プリズマ☆イリヤ

夫婦共に存命。
ただし仕事で海外を飛び回っているらしく、愛娘であるイリヤとの絡みはほとんどなく、そもそも登場しても顔が描かれないという不遇っぷり。
極めつけに現在連載中の3期ではイリヤが並行世界に行ってしまっているので絡むのは絶望的。
せっかくなんのしがらみもなくイリヤを可愛がれる世界なのにこの仕打ちである。切嗣は泣いていい。

…………と思っていたら、アニメ1期DVD/BDの初回特典ドラマCDでようやく登場。家族とも絡めたよ! やったね!!

だが、家の中では妙な方向にはっちゃけた変人と化してしまっている。
具体的には

  • イリヤが幸せになるためなら、自分の居場所が家庭から無くなっても良いなどと言い出す。
    イリヤが学校の宿題で母親を題材に作文を書こうという話になっていたのだが、
    会話が悪乗りして士郎が「自分とセラがイリヤの両親だ」とのたまったところでタイミング悪く帰宅し、
    「ほとんど家にいない自分より良いかもしれない」と本気で受けてしまったため。イリヤのフォローにより回復。

  • 食卓について夕食(おでん)を食べ始めたかと思うと、唐突に嗚咽を漏らし始める
    暖かい家庭の食事を囲んでいることに感動したため。
    士郎が「やれやれ、またか」、イリヤが「いつも変なタイミングで泣き出す」と呟いており、散発的にやらかしている模様。
    アイリにも「泣き虫さん」「ちょっとしたことですぐ感極まっちゃう」と評された。

  • イリヤにもらった餅巾着を、「イリヤが成人するまで大切にとっておこう」と言い出す。
  • あまりのダメさ加減にイリヤが「今すぐ(餅巾着を)食べないと、これからお父さんのことをキリツグって呼ぶからね」と宣告
    餅巾着を丸呑みしようとして熱さにのたうち回った。
    さすがに無茶だと士郎が止めようとしたのだが、「この熱さと痛みが僕を父親にしてくれる」などと訳の分からない理論をぶち上げ、
    しかも士郎も士郎でそれを聞いて「これが本物の父性……!」と感動していた。

  • 翌日の朝に外国へ戻ったのだが、家を出る際「焦げ跡だらけの大変アバンギャルドなシャツ(セラ談)」を着ていた。
    たまには母親らしいことをしたいとアイリがアイロンがけした結果で、夫として文句一つ言わずに着ていった模様。

————と、以上のように『stay night』や『Zero』から想像もつかないような変貌っぷりである。
ちなみに別のドラマCD「プリズマアイリ」にて、イリヤから「メンタルが弱い」と見抜かれていることも判明した。


家庭内ではこんなダメ親父と化した切嗣であるが、そもそもこのように平和な家庭を作れたのは完全に切嗣のおかげである。
というのも『プリズマ☆イリヤ』の世界は切嗣が聖杯戦争にてもしも「正義の味方になる」という理想ではなく最愛の家族と共に生きることを選んだら、という世界である。
この為、アインツベルンを出奔すると同時にイリヤに「普通の女の子」になってもらうために聖杯としての機能や魔術師になるための要素(=後にクロエになる部分)を封印している。

この顛末を全て知っているクロは、『ドライ!!』にて「世界と美遊のどちらを選ぶのか」とアンジェリカに問われたが「美遊」と即答した際のやりとりで、
「同じような問題に直面して、正義(世界)ではなくたった一人を選んだ先人」として切嗣を例に出している。

『Fate/Zero』では妻子の為に禁煙していた切嗣だが、同作ではアイリの前で喫煙している。絵面が映えるからね、しょうがないね


『プリズマ☆イリヤ ドライ!!』

続編の「ドライ!!」では美遊が元々いた世界(イリヤたちから見れば平行世界)の切嗣も登場した。

こちらの世界では聖杯戦争には関わってないようだが、それゆえに士郎を災害から助けて養子として引き取った後も自身の理想を諦めておらず、士郎と共に世界中を巡っている。
世界を救済する手段を模索する旅で拾った為か、士郎との関係は養子というよりも舞弥と同じ助手のような扱い。

マナの枯渇によって滅亡の危機に瀕している世界を救済する手段を求めた末、冬木市にてそれを可能とする神稚児・朔月美遊を発見したが、
「願いを叶える道具が手に入ったのにその使い方がわからない」という問題にぶち当たり、父の矩賢の様に、力を使うための研究を続ける途中で病死。
月の無い夜空の下で、士郎に正義と理想を託して亡くなった。

こちらの世界ではアイリと出会うことはなく、また世界の方も滅亡まで秒読みにかかってるようなヤバい状況である為、その精神はある意味Zeroよりも悪化している。
Zeroの時間軸では外道であったものの家族に対しては優しかった切嗣だが、こちらの切嗣は曲がりなりにも養女として引き取った美遊を道具としてしか見ておらず、士郎との関係もZero~SN時の様な穏やかなものではない。
正直、イリヤの世界の切嗣と美遊が会っていたら士郎以上に大変な事になっていた可能性が高い

スペックはZero時と同様であり、魔術師殺しとして有名だった模様。起源弾も用いていたようであり、後に士郎はこれをクロに託している。


スピンオフ作品では大体このようなダメ親父扱いな一方、本編ではありえなかった一家団欒も多い。
幸せそうな姿に(色んな意味で)涙が出てくる。



Fate/Grand Order


また汚れ仕事か……まぁいい。いつものことさ

2016年4月27日、『Fate/Zero』とのコラボイベントに関連するピックアップ召喚より、アサシンクラスサーヴァントとしてまさかの恒常参戦。
レアリティは☆4(SR)。

ステータスは以下の通り。
筋力 耐久 敏捷 魔力 幸運 宝具
D C A+ C E(EX) B++


【クラススキル】
気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。


【保有スキル】
魔術:B
魔術を習得している。
翻って、魔術を知るが故に魔術師を殺す術に長けている。
本スキルのランクは、本来であればキャスターとの戦闘時には各種判定のボーナスとして働く。

聖杯の寵愛:A+
何処かの時代の大聖杯に、彼は深く愛されている。
その愛は世界最高の呪いにも等しい。
本スキルの存在によって、彼の幸運ランクは跳ね上げられている。特定の条件なくしては突破できない敵サーヴァントの能力さえ突破可能。
ただしこの幸運は、他者の幸福を無慈悲に奪う。
彼自身は本スキルの存在に気付いていないし、時折聖杯から囁きかけられる「声」も耳にしてはいない。

スケープゴート:C
戦場を生き抜く狡猾なテクニックの集合。


宝具
時のある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:1人

カードを切ろう

―――さあ、付いてこれるか

時は流れ、今日には微笑む花も明日には枯れ果てる。
自身の時間流を操作する能力。
生前の彼が有していた能力「固有時制御(タイムアルター)」を基礎としている。
時間流の加速によって高速攻撃や移動を行い、減速によってバイオリズムを停滞させて隠行を行うのが「固有時制御」の運用方法である。
宝具として昇華されたこの力により、彼は対人戦において無敵とも呼べる超連続攻撃を可能とする。

彼の魔術「固有時制御」を用い、文字通り目にも止まらぬスピードでナイフの連続攻撃を加え、トドメはトンプソンコンテンダーで背後からヘッドショットを見舞う。
因みに宝具名の由来になった詩は、むしろ早い結婚を促す内容だったりする。

神秘轢断(ファンタズム・パニッシュメント)
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:0~2 最大補足:1人

自身の起源である「切断」「結合」の二重属性が込められたナイフ
魔術回路ないし魔術刻印、或いはそれに似たモノを体内に有する相手に対して致命的なダメージを与える。
通常時攻撃に使われているナイフと同一。
真名開放によって真の能力が発動するが、『FateGO』では基本的に使用されない。
簡単に言ってしまえば起源弾のナイフ版。
一撃一撃に起源弾と同様の効果が内包されているうえ、弾切れもないナイフによる攻撃が、
『固有時制御』による超速度で襲ってくるという初見殺しにもほどがある恐ろしい宝具である。



ifの切嗣が英霊化したもの。
実装発表時には赤いフードと包帯で顔を隠した姿と真名「エミヤ(アサシン)」しか明らかにされず、
声優や正体は実際に引いてからのお楽しみの為、アーチャーの別クラスではと思う人が出ていた。
一方でZeroのコラボイベなのに切嗣関係の礼装が無いとか、CMで映し出される目元がアーチャーとは違うとか、最初から怪しむ人も見られた。
第三段階まで霊基再臨するとアーチャーのように白髪と色黒になった切嗣の顔が現れる。最終再臨すると、彼に愛を注ぐ聖杯が寄り添う。

守護者となった経緯は同名の英霊と同じく、世界との契約を果たして死後守護者になったという。
但しあちらと違い、正しい人類史では存在しない「英霊もどき」。
『Fate/Zero material』で「正義の味方としての“格"は同名の英霊に遥かに劣る」とされていたので妥当ではある。
FGOの世界におけるアイリスフィールも彼のことを「遠い世界の異聞、有り得ない世界の、有り得ない可能性の欠片」
「信じた道を走り抜けて消えてしまった、名前さえ棄てた人物の最後の記憶」と称した。
このようなifが存在し得るのは、人類史の危機というグランドオーダー案件のみとされる。
要は緊急事態なので間口を広げて本来なら採用されないような存在まで臨時職員として雇っている感じか。
完全なifの存在故かアイリスフィールやアーチャーといった自分に関係のあるサーヴァント達との面識は無いに等しいが、
何故かアイリスフィールには視線が引き寄せられ、アーチャーとイリヤスフィールが傍にいると複雑な感情を抱くらしい。
同時にジャガーマンとアルトリアには不思議そうに見られているとのこと。
ディルムッドへはジャガーマンやアルトリアと比べ「あんたはわかり易い」と口にしている。幕間の物語では普通に対応されていたが、どう分かり易かったのだろう?

精神は青年期の切嗣と近く、徹底して最小限の犠牲を払って「正義」を行ってきた暗殺者。
アイリスフィールや士郎といった、平行世界の自分が持った人とのつながりを持たなかったため、心は完全に冷え切っている。
『Fate/Grand Order material Ⅲ』によると、『Zero』の回想にてナタリアを殺害した直後に近い精神状態であるとのこと。
「たとえその結末が自分の否定であったとしても、貴方の戦いが正しいものだったと肯定する」と語りかけたアイリスフィールに対しても、
「時々、違う国の言葉で話しているのではと思うほどに君の話はよく分からない」と突き放している。
だがそれでも、彼女が嘘を言っていないことだけは分かると発言しており、
冠位時間神殿ソロモンにおいて「君(アイリ)があの怪物たちと戦うというのなら戦う理由が出来る」と、
何のために戦うかも分からないままに銃把を握ることからアイリに対して何か考えることがあるのだろう。

曰く「僕の仕事はせいぜい、少しだけ罪のある人間を、独断のもと排除するだけ」で先述したように、
名前さえ棄てて走り抜けて消えてしまった―小を切り捨て大を救う事に徹底したifの突き当りが、この彼なのだろう。
彼を愛したどこかの聖杯から加護を受けているが、彼自身はそれに気付いていない。
この加護により、本来ただの暗殺者である彼も名だたる英霊と戦えるようになっているらしいが、幸運を周囲から吸い取るという悪質さも持つ。


マイルームでは主人公の事をどこか突き放しており、
「世界を救うという甘い考えはさっさと捨てた方が身のためだ」「綺麗事で世の中を救えるなんて、甘ったれたことを抜かす奴には虫唾が走る」と人理救済に関して否定的。
絆レベルを上げると少しずつ主人公に心を開いていき、自分の過去をうっすら語りながら自分が成し得なかった何かは主人公なら成せると希望を託す。
聖杯については「碌なものじゃないとだけ言っておく」と否定的。並行世界の自分にも言ってやってください
好物は甘いもので、たまに食べたくなるとか。


バトルでは、ナイフや銃火器といった近代兵器で攻撃する。並行世界の存在なのに、使用銃器がZeroで調達した物と同じなのは突っ込んじゃダメですか
短機関銃などもある為、Arts属性以外の攻撃のHit数が多く、スター獲得率が群を抜いて高い。
宝具『時のある間に薔薇を摘め』はArts属性のために自前の『魔術』スキルで強化できる。
幕間の物語をクリアすると宝具に防御無視が追加され、エミヤ族とお揃いになる。

保有スキルはどれも使い勝手が良く、『聖杯の寵愛』は自身に貫通付与とクリティカル威力アップを与える。
しかし「幸運を吸い取る」という性質故か、自分を除く味方全員の弱体耐性を下げるデメリット効果も。
『スケープゴート』は「敵のターゲット集中」を味方の誰かに付与するという異例のスキルであり、彼の外道さをなんとなく垣間見れるが、
それはさておきマシュクーフーリンなどの無敵・回避スキルを持つサーヴァントと相性が良い。
ランサーが死んだ!
自分にも付与できるため、特にライダーばかりの時、味方のキャスターやバーサーカーを守る囮役もこなせる。
なお、アーラシュに『スケープゴート』をかけた状態で宝具による自爆特攻でターンを終えると、
相手の攻撃をスキップさせるという裏技染みたテクニックもあったが、仕様外のバグだったらしく16/5/31に修正された。
暫くユニークスキル扱いだったのだが、陳宮の登場でアサシンエミヤの出番は減った。ま、まあクラスとか付属効果とか違うし……

欠点はNP効率の絶望的な悪さ。
Artsから始動するAQQのブレイブチェインであればヒット数の多さからNP効率はある程度確保出来るものの、Arts単体で見るならば全サーヴァントでもワーストクラス。
補強用の礼装として自身の絆礼装である「陽の差さぬ此処へ」やArtsのNP回収効率を上げる礼装を装備させたいところ。
また、凶骨・英雄の証・虚影の塵という枯渇しやすい素材3点セットを再臨素材として大量に要求される事もネックか。
暗殺者を自負するアサシンエミヤの再臨素材に英雄の証を要求されるという皮肉。ホムンクルスベビーもあるよ

起源弾も☆5の恒常礼装として実装されている。
効果は無敵貫通とキャスター特攻。
無敵貫通は1発につき確実に1人仕留めた点から、キャスター特攻は「魔術師」に対して絶大な効果を発揮する点から付いたのだろう。
貴重な(恒常では唯一)無敵貫通礼装なのでかなり便利だが、当のエミヤ自身に持たせる場合は本人が既に無敵貫通を持っている上にクラス相性が悪いためにイマイチ噛み合わない。
ちなみに、無敵を持ったキャスターは何の因果なのか最愛の嫁実子である。
さらにその最愛の娘はstay night時空がベースのシトナイ、プリヤ時空から来たプリズマイリヤ共に無敵持ちという徹底ぶり。
余談だがその魔法少女になったイリヤはマイルーム会話で彼に対応した台詞がない。水着版も同様。

なお、「終局特異点 冠位時間神殿ソロモン」において戦うグランドキャスターは回避スキルを乱打してくる強敵だが、
起源弾の効果は無敵貫通とキャスター特攻なので、グランドキャスターに対して見事なまでに突き刺さる
人理救済を賭けた最終決戦という大一番で、正義の味方になりたかった男の礼装が文字通り世界を救った事に、誰かが呟いた。

「魔術師なら、冠位だって殺してみせる」






追記・修正は正義の味方に憧れた方にお願いします。































ケリィはさ、どんな大人になりたいの?

僕はね―――











































――僕はね、正義の味方になりたいんだ

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  • 型月主人公
  • 哀しき悪役

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最終更新:2024年03月02日 18:12

*1 これに関連して、士郎がモノに魔術を行使する際の前段階である物質の構造把握に異様なまでに長けていることに気付いて「なんて無駄な才能だ」と漏らしている。

*2 アニメ版で幼少期の切嗣が銃の組み立てに苦労しているのは、この起源の説明の為だが、簡単な修理なら可能という設定と衝突している。漫画版では容易く銃を組み立てている。

*3 「人間の人生」という難しい案件に携わった事例が少なくとも3つあり、その3件の対象は結果的に全て致命的に破損している。

*4 型月世界において、人間の体は世界から独立したひとつの別宇宙として認識され、異常な法則を適用しやすいのだという。あのネロ・カオスはその極致である。

*5 後述通り物理的に止まると無効化される事、この弾が命中しても魔術の効果自体は変化がなかった事から、「切断と結合」の効果は人間の肉体にのみ現れるらしい。

*6 魔術師が、鉄板やセラミック防弾板の入ったガチガチ装甲服を着るか?という話である。

*7 アニメ版ではブローパイプではなくスティンガーだが、時代設定を考えるとおかしい。

*8 TV放映版ではカットされた。なんでさ。BD版ではめでたく復活した。

*9 例えばケイネス陣営脱落回は夫婦の日、イスカンダル脱落回は史実に於けるイスカンダルの命日、『この世全ての悪』や龍之介による神様語りの日は聖夜である