千の魔剣と盾の乙女

登録日 :2012/03/17 (土) 10:32:59
更新日 : 2016/01/30 Sat 23:13:48
所要時間 :約 9 分で読めます





「――行くぞ、相棒」             

             『任せろ、相棒』



『千の魔剣と盾の乙女(サウザンドとイージス)』

レーベル:一迅社文庫
著者:川口士
イラスト:アシオ

第1巻は2011年に刊行。
2015年1月発売の15巻で完結。



【概要】
人がかつての生活圏を魔物に奪われ、陸地ごと切り離した数個の海上都市で生きるようになった世界を舞台に、魔物を束ねる魔王の打倒を志す『魔剣使い』の少年ロックと仲間の冒険を描いたファンタジーライトノベル

別レーベルの魔弾の王と戦姫が軍団規模の戦争を扱う戦記物なのに対し、こちらは一つ一つの戦いをパーティーバトルに置き換えて地道に進行するRPGチックな作品に仕上がっている。
作者もしばしば打ち合わせでドラクエを例に出しているとか。

様々な地域・ダンジョンに足を伸ばしながら、凶悪な魔物を相手取っての命がけの冒険が本作では描かれる。
若干あざと過ぎる程のハーレム要素を含むものの、作者お得意の細部にまで拘った世界観描写もあり、緊迫感や臨場感が伴った 泥臭いファンタジー は本作でも健在。




【ストーリー】
突如現れた魔王バロールと魔王率いる魔物たちに対し、人類は通常武器の効かない魔物を倒すための魔剣を生み出し対抗した。

それから150年が経った、魔物たちとの戦いが続く世界。
使っている魔剣がすぐに折れてしまう悩みを抱える剣士ロックは、仲間であるエリシア、フィルと共に魔剣の材料を求めて魔物が跋扈する大陸を冒険していた。

そして、ある時に発見する一振りの魔剣・ホルプ。
人語を解し意思を持つそれとの出会いをきっかけに、ロックの新たな戦いと冒険の幕が上がる。




【世界観】
○魔剣
鉄の剣などといった普通の武器の攻撃を受け付けない魔物に対抗するため、人が試行錯誤の末に生み出した武器。後述する『魔鉱』から『錬成術』により造られ、物によっては炎や冷気などの特性を宿す。
製法が確立したのは人が大陸を追われる直前(そのため、当時は大陸での劣勢を巻き返すには至らなかった)のことだが、そうした人造魔剣とは別に神話・伝説級の“人の手によらない逸品”も存在する。
魔剣を振るい対魔物戦を生業にする者は、俗に『魔剣使い』と呼ばれる。


○錬成術
作中世界に存在する火水土風の精霊の力を借り、様々な現象を起こす術。
他作品でいうところの魔法のようなもので、編み出されたのは魔剣の製法とほぼ同時期。
戦い以外にも海水からの真水の抽出などにも役立てられ、海上都市の生活を支えている。
先天的な素質を持つ『錬成師』でなければ扱えず、また使用には少なからず体力を消耗する。


○大陸と都市
約150年前、『魔王』と共に現れた『魔物』により、人はかつての生活圏である大陸を瞬く間に奪われていった。
それからさしたる間をおかず、人は海沿いの六つの都市を錬成術で大陸から切り離し、海に浮かべたそこへ逃げ延びることを決定。以降は大陸の周りを回遊するそこや小さな島々でしか暮らせなくなってしまう。
魔物は海水を致命的な弱点としているので都市は安全……と思いきや、各都市には年に一、二回、僅かな時間だけ大陸に接触する時期がある。
その時期を覚えた魔物がこぞって襲来するため、その度に魔剣使いや錬成師らはこれを撃退する必要に迫られる。
数十年前に都市の一つ『ガーリャ』が陥落し、健在の都市は五つになってしまった。


○魔物と魔鉱
倒された魔物は黒い瘴気となって爆散した後、魔剣の素材となる『魔鉱』を残す。
魔鉱は他の用途にも役立つため、魔剣使いは時おり船で大陸に出向いて魔物を狩り、手に入れた魔鉱を売るなり魔剣の材料にするなりしている。
ちなみに、一定量の瘴気を浴びた魔鉱は卵のように割れ、そこから新たな複数体の魔物を生み出してしまう。放っておくと危険なため、魔物を倒した後は魔鉱を早めに回収し、瘴気に触れないようにしておくのが定石。


○首環(トルク)
人の文化を真似て、魔物が強さの格付けを表すため着けるようになった首飾り。
強さや賢さの程度が低い順に、首環なし、青銅、銀、黄金と区別される。青銅でも並の魔剣使いには手に余り、黄金は準魔王級という凄まじい強さを誇る。
大半の魔物は同じ種族のものが何体も存在するが、『黄金の首環つき』は基本的に一体一種族と言われているとか。




【主要登場人物】
○ロック
直情的でバカだが仲間思いな少年。本作の主人公。16歳。とある理由から、本名の『アマロック』ではなく『ロック』と知り合いに呼ばせている(地の文でも後者で表記される)。
幼い頃に魔物の襲撃で家族を失ったあと、偶然に出会ったバルトゥータスに弟子入りして魔剣使いとなった。現在は生まれた都市を離れ、バルトゥータスの出身都市プロトミルズにてエリシア、フィルと活動中。
師への憧れから同じく魔王の打倒を目指すが、やがて他人の目標に依存する在り方を問われ、改めて進むべき道を見つめ直すことになる。
パーティー内の役目は前衛に立って敵に切り込むアタッカー。総じて年齢の割に実力が高く、特に攻撃力は相当のもの。反面、防御を疎かにしがちでもある。
本編開始以前より、長らく 「手持ちの魔剣が折れやすい」 という原因不明の問題に悩まされ続けていた。ホルプの入手で一応の解決を見るも、問題の原因は判明しないままなのだが……?


■ホルプ
序盤でロックに発見され、彼の相棒になる “意思を持ち、人語を話す” 珍しい魔剣。発声方法が人間と異なるため、他のキャラと違ってセリフが「」ではなく『』で括られる。
『魔剣潰し』と揶揄されるロックが使ってもビクともしない破格の強度と攻撃力に加え、自身の形状や性質を何通りにも変化させるチート臭い力を持つ。炎を出す、冷気を放つ、凄まじくデカい刀身を生み出すなど最早なんでもありである。
理知的だが相当の堅物で、自分の性能を貶されると静かにキレることも。また「剣は斬るためにある」という好戦的な考えを持ち、自分の担い手には戦場に立つことを強く求めている。ロックを所有者と認めたのは、彼の「魔王を倒す」という目的が自分の求めに沿っていたため。
ロックと出会うまで数百年も眠っていたらしいが、断片的な内容が時おり語られる以外、すすんで自らの過去を明かそうとはしない。


○エリシア
巨乳金髪ツインテツンデレヘタレ という濃い属性持ちのメインヒロイン(?)。17歳。
大商人の父と吟遊詩人の母を持つ裕福な出でありながら、一年ほど前からロックと共に魔剣使いとして活動中。
『光護(ウォード)』という名の小盾・小剣ワンセット(盾が剣の鞘を兼ねている)の魔剣を持ち、盾に備わった結界でパーティー(特にフィル)の防御役を担う。
ロックへの好意から道を共にし続けることを願うも、ロックの目的である「打倒魔王」が叶うとは全く信じておらず、それに付き合って魔王に挑める気概も持ち合わせていない。
加えて“自分自身の目標”に欠けるために度々迷いを抱くことになるが、それでも少しずつ成長していく。


○フィル
15歳という年齢に成長が追いついていないツルペタロリの青髪ロング少女。巨乳許すまじ。
エリシアと同様に少し前からロックと組み、パーティー唯一の錬成師としてバックアップを務めている。『オブデン』という軟剣状の魔剣も持つが、身のこなしの悪さから魔剣使いとしてはほぼ戦力外。
常にぽやっとした目つきで無表情、かつ毒混じりの淡々とした調子の敬語が特徴的。ロックやエリシアへのからかいが過ぎて小突かれることもあるが、普段は妹ポジションとして可愛がられている。
エリシアが抱く好意を知りつつ、自身もロックが大好きなので 「二人してロックに嫁げばいいのでは?」 と本気で画策中。


○ナギ
他の都市に旅立ったロック達が二巻にて出会う、黒髪ロングの穏やかで礼儀正しい少女(そしてド天然)。18歳。巨乳。
『魔槍使い』 という極めて珍しい使い手であることや、国という概念が失われた今では半ば無意味な“騎士道”を志していることから、彼女が住む都市では魔剣使いのギルドから敬遠されている。
長い一人暮らしゆえに家事全般が得意だが、ずれた美的センスのせいで変てこな刺繍をする欠点も。


○バルトゥータス
途方も無い強さを持つ『黄金の首環つき』に独力で抗し得る、作中最強候補の魔剣使い。31歳。
性格はがさつにしていい加減で、よほどの知り合いを除いて名前すら覚えないという極度に人付き合いの悪い人間。ロック曰く「社会不適格者一歩手前」。
一般的な魔剣使いとは違って大陸にも単独で出向くが、ロックの師となってからは時々その修行に付き合っている。
企画段階では主人公候補でもあったとか。話が『ベルセルク』ばりに殺伐としそう、との理由で却下されたらしいが。
11巻にて、ロックを差し置いて男性キャラ初の表紙デビューを果たしている。


○ニーウ
エリシアの師である、優しく包容力溢れる女性魔剣使い。25歳。弟子同様の戦法を取るが、実力は桁違い。
バルトゥータスに数少ない戦友として認められる一方、彼女自身はは『バル』の愛称で呼ぶ彼を恋い慕っている。
しかし、その方面では (時に色仕掛けをしてさえいるのに) 全く相手にされていない。


○ナイジェル
フィルの師である錬成師。42歳。バルトゥータスが親しくする戦友の一人で、ニーウとも面識がある。
優れた魔剣使いでもあったが、片脚を怪我してからは前線を引き、錬成師としてのみ活動している。
気が乗った話題ではいきなり饒舌になるものの、それ以外では誰かといても口を開かないことすらあるという偏屈な男。
それでもフィルのことは気にかけており、フィルからも「先生」と慕われている。


○サーシャ
約20年前に『魔王』に挑み、己の身ごと魔王を封印した女性魔剣使い。当時20歳。ショタコン疑惑あり。
その偉業から『蒼輝の勇者(フィニステール)』の名で謳われている。
幼いバルトゥータスが剣を教わり、現在でも一心に想う人物。バルトゥータスは封印に囚われている彼女を救うために魔王打倒を目指している。
うっかり名前が被っているが、『魔弾』に登場するほうのサーシャとは無関係。


○魔王バロール
魔物達の頂点に位置し、吟遊詩人の詩に「百万の騎士、勇者が魔王に挑むも、一睨みにてことごとく息絶えたり」と言い伝えられる存在。
現在は大陸の中心地にてサーシャの肉体に封じられており、『黄金の首環つき』達がその封印を解こうとしている。
作中にて魔王に挑んで敗れた人物が登場するが、その人物が描いた絵ですらロックに心底の恐怖を抱かせた。



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