ライタークロイス

登録日 : 2012/01/27(金) 23:33:29
更新日 : 2016/11/14 Mon 15:29:50
所要時間 :約 7 分で読めます




『帝国』の騎士は、聖獣を駆る。


レーベル:富士見ファンタジア文庫
著者:川口士
イラスト:紫倉乃杏

第1巻は2007年刊行。全5巻。



【概要】

騎士を目指す少年とその仲間が、魔物との戦いや国家間の争いの中で成長していく 姿を描いたファンタジーライトノベル。
作者は西洋世界を舞台にしたファンタジーものを多く書いているが、初期作にあたる本作がその草分け的位置を占めている。

主人公の少年は決して『英雄』と呼べる類の人間ではなく、あくまで自分のできる範囲で精一杯の力を尽くしていく。
そうした積み重ねの果てに、ちっぽけではあるが大切なものを掴み取る……といった話を、生活臭溢れる描写や芯の通ったキャラ造形を裏付けに、実感ある物語として魅せているのが本作の特長。

少しずつ明らかになる国単位の水面下の争い、様々な思惑を持って動く国内外の敵、そしてファンタジーに欠かせない魔物などが絡んだ相関もまた見所。
(ちょい地味だが)落ち着いた筆致で丁寧に紡がれるストーリーに興味があれば、手に取ってみてはどうだろうか。



【復刻版】 New!!

2014年5月、一迅社文庫による復刻版の制作が発表された。
イラストはこっちの作品の絵師であるアシオが描きなおし、小説部分も当時のものに加筆修正がなされるとのこと。



【あらすじ】

幼い頃の憧れのままに『騎士』を夢見る少年、カイン。
村の誰もにその夢を馬鹿にされながらも、彼はこの度ついに騎士登用試験の最終段階として帝都にやってきた。

……が、帝都に到着早々スリに会い、宿泊を予定していた家が夜逃げするなど踏んだりけったり。
そうしたトラブルが続く中、同じく騎士を目指す仲間の出会いは数少ない幸運だった。

偉そうで勝気な少女、アルファ。
やたらと軽い性格の少年、レイク。
寡黙な剣士、バルト。

彼らと共に試験を待つカインだが、ある日、試験に関するイカサマの存在を耳にしたことで更なるトラブルに巻き込まれてしまう。
果たしてカインは、無事に騎士になることができるのか。



【主要登場人物】

○カイン=パルス
主人公。
やや押しに弱くお人よしで、けれども揺るがない正義感を持つ少年。17歳。
10年の鍛錬を重ねた槍の実力は相当に高く、伸びしろもまだまだ残している……が、達人には到底及ばない、そんなレベル。
初めは憧れるだけで「騎士になって何を成したいか」が眼中にない。それをどう見出すかが、彼の成長と並ぶ本作のテーマなのかも。


○アルファ=イシュトー
勝気で我侭な少女。ヒロインその一。17歳。
カインと同じく騎士志願者らしく、剣の扱いを得意とする。やけに身なりが良く、その出自には秘密があるようだが?
……といっても正体はすぐ明らかになり、むしろそこからが物語の本番。


○レイク=ロノベ
帝都にやってきたカインが出会う、帝都暮らしの平民。17歳。
貴族の少女と恋仲にあり、身分差を越えて結婚するために騎士を目指す。
その恋心は本物だが浮気性でもあり、性格はややアウトロー。しかしながらカインとは馬が合い、やがては仲間に、そして親友となる。
基本的に何でも器用にこなし、後半ではボウガン(のような武器)を得物とする。


○イングリド=マルバ
カインが帝都での下宿予定地としていたバラム家に仕える女性。ヒロインその二。
侍女としての丁寧な態度を崩さない律儀かつ頑固な性格で、感情の起伏に乏しい。
カインが訪れる数日前に家主が蒸発し、その屋敷まで差し押さえられたために行く当てを無くしてしまう。
そうして路頭に迷っていた所でカインに出会い、二人して住処と働き口を捜す羽目に。


○バルト=オルガー
人並外れた技量と怪力を持つ寡黙な剣士。やや老け顔の22歳。
騎士志願者の一人で、特にカインとは武術の師が同じという縁で親しくなる。
しかし、年齢的に受験機会は最後という焦りが彼を思わぬ未来へと導くことに。


○ファリア=アステル=ガストリア=バーラント
現皇帝の娘。病弱なため滅多に人前に出てこられないらしい。
アルファの正体。病弱という嘘を隠れ蓑に、公務そっちのけでアルファとして活動している。


○ハイラム=アズモート=ファルメイン=バーラント
帝国の継承権第一位皇太子。26歳。
他の候補が妹のファリアだけという都合上、彼が実質の次期皇帝と目されている。
病床に伏した皇帝に代わって既に国政を取り仕切っており、その手腕は確か。
感情をあまり表に出さない冷徹な人物だが、妹には厳しいことを言いつつもその身を案じている。


○クローディア=アイン
ファリアの護衛官を務める女性騎士。
穏やかで優しい言動に反し、その役割に十分な実力を備えている。
聖獣の一種、 朱鳳(アーグ) と契約している。


○アヴァル=レラギエ
カインの故郷の隣村、その村長の息子。17歳。
カインとは会うたびにケンカする腐れ縁で、同年度の騎士志願者でもある。
イングリドに一目惚れするが……。


○ウルバ
騎士志願者に対し、試験当日のイカサマを紹介して廻っている胡散臭い男。カインにも接触してくる。
カイン以上の槍の使い手で、後に因縁の相手となる。



【用語】

◆帝国
とある大陸の東端に位置する、建国後三百余年を経て無敗を誇る強国。
物語の中心地であり、カインの育った村もここの一部。


◆魔物
帝国の東方、海の果てから襲来する異形の化け物。強固な装甲や怪力を持ち、たった一体が村一つを全滅させる。
決まって帝国を通る経路で西進するので、帝国は『騎士』の防衛線で自国以西の地域を守っている。


◆騎士
帝都で行われる認定試験(対象年齢17~22歳)を潜り抜け、『聖獣』の召喚能力を与えられた人間。国庫の都合上、定員は約三万人。
聖獣に乗っている間は『魔物』を単独で討つほどの力を得られ、その力で国防の要を担う。
当然ながら常人との戦力差も歴然で、指揮の程度にもよるが騎士百騎で敵国の軍五千を壊滅した例すらある。しかし聖獣の召喚には隠れた“制限”もあるため、それを知るハイラムは騎士の力で他国を攻めようとしない。


◆聖獣
騎士が一人一体ずつ契約・召喚する獣。帝国の建国を助けた 聖蛇(アトル) という存在の眷属とされる。
通常の騎士は
空戦・高速機動特化の 朱鳳(アーグ)
万能タイプ(?)の 蒼竜(レヴァ)
水辺で最強を誇る 黒亀(ドムス)
の三種のうちどれかと、また、皇族のみ 麒麟(ソル) という特殊な聖獣と契約できる。

なお、タイトルにもなっている『 ライタークロイス(騎士勲章) 』は聖獣の召喚具を指す名称である。


◆インフェリア
帝国の西方に隣接する国。衣食を始め様々な文化が栄える。
騎士の力の秘密を盗んで帝国や魔物の脅威に対抗すべく、帝国に工作員を忍び込ませている。
ウルバはここの工作員。



【余談など】

《打ち切り》

分かりやすい派手さやキャッチーさに欠ける内容、萌えとは若干の距離を置いた大人しめのイラスト……どれが足を引っ張ったかのか定かでは無いが、「ここからが本番」といった場面で打ち切りの憂き目にあっている。
そのために多くの謎が放置されたまま。いつか続編が書かれないものか……。


《後の作品との繋がり》

★ちっぽけな少年が仲間と一緒に頑張る
千の魔剣と盾の乙女

★戦記物としての面を強め、より派手さや痛快さ(とエロさ)を求めた
魔弾の王と戦姫

……といった風に、本作のテーマの一部は後の作品にしっかり受け継がれている。


また、同レーベルの次作漂う書庫のヴェルテ・テラとは世界観が微妙にリンクしている(例:作中で同じ童話が話題に挙がる)ので、併せて読むとニヤリとできるかも。



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