故郷は地球

登録日 :2012/02/14(火) 06:30:24
更新日 : 2017/05/06 Sat 08:01:10
所要時間 :約 5 分で読めます





諸君、アレハ怪獣デハアリマセン


アレハ、イヤ彼ハ我々ト同ジ人間ナノデス


そ、それは……


「それは、アメリカ、ソ連を中心に世界各国で宇宙競争が行われている頃であった」

「ある国で打ち上げられた人間衛星が遂に帰って来ないという事件が起きた。
その宇宙飛行士の名前が、ジャミラだったのである」

「しかし、科学の為に人間を犠牲にしたことがわかると大変だ。
その国はジャミラの乗った人間衛星の失敗を全世界にひた隠しに隠してきたのである」



諸君、改メテ科学特捜隊パリ本部カラノ


命令ヲ伝エル


ジャミラノ正体ヲ明カスコトナク


秘密裏ニ葬リ去レ


ジャミラヲ宇宙カラヤッテキタ


一匹ノ怪獣トシテ葬リ去レ


ソレガ、世界平和会議ヲ成功サセル


唯一ノ道ダ



「故郷は地球」とは『ウルトラマン』23話のエピソード



【ストーリー】

東京で開かれる国際平和会議に出席する各国々の代表者が乗る飛行機や船が次々に謎の事故に遭う。

事故の背後には、超振動をして不可視化するロケットが確認された。
科学特捜隊はイデの開発したスペクトルα・β・γ線を使いロケットを可視化し、撃墜する。

しかし、撃墜したロケットから棲星怪獣ジャミラが出現し、攻撃するも逃げられてしまう。
夜、パリから派遣されたムッシュ・アランはジャミラの正体について語る。

ある国の有人人工衛星のパイロット・ジャミラは宇宙に旅立ったが、ついに帰還することはなかった。
さらには本国はこの問題を隠し、ジャミラを見捨ててしまう。
しかし、ジャミラは宇宙を漂流しながらも生き延び、環境の影響により奇怪な姿になりながらも復讐する為に帰還したのであった。

翌日、ジャミラは国際平和会議会場に向かい、近くの農村を焼き払い進行する。
その後、会場付近で繰り広げられる戦闘。
そしてハヤタはウルトラマンに変身し、ウルトラ水流を放つ。
漂着した星でどれほど渇望したかわからぬ水を浴びてもがき苦しみ、はいつくばりながらも会場を破壊しようとするジャミラ。
激しくも赤ん坊の泣き声の様な断末魔を叫び続け、やがて事切れる……



【概要】

ウルトラセブン』の「超兵器R1号」「ノンマルトの使者」、
帰ってきたウルトラマン』の「怪獣使いと少年」などと並んで語られるウルトラシリーズの問題作であり、
人気投票などから一部では『ウルトラマン』全39話の中で最も人気のある話とも言われている。

また、このエピソードを道徳の授業の一環として放送し、子供達に「これを見て何を感じたか」と考えさせる小学校もある。

国に捨てられ、怪獣と化してしまい、地球に復讐しようとした被害者であり、加害者となった一人の宇宙飛行士の物語。



【登場人物】

ハヤタ・シンウルトラマン
科学特捜隊隊員
人々を守る為にジャミラと戦う。
農村で鳩を救いに向かった少年を連れ戻し、隙を突いたとはいえ、目の前で変身。
ジャミラと激しい取っ組み合いを繰り広げ、ウルトラ水流で倒す。

宇宙人が地球を守り、地球人が地球を破壊する。
そして、宇宙人であるウルトラマンが地球人であるジャミラを殺した……というある意味皮肉な考えもできる。

●ムラマツ・トシオ
科学特捜隊隊長
科学実験講座をわかりやすく説明する。

●アラシ・ダイスケ
科学特捜隊隊員
あくまでもジャミラは敵と判断する。

●イデ・ミツヒロ
科学特捜隊隊員
今回の主役と言ってもいい。
前半は見えないロケットに対処する為にスペクトルα・β・γを開発するなど活躍するが、ジャミラの正体を知ってからは戦うことを放棄しようとする。
農村が襲われた際はジャミラに批判混じりの説得をするが……
ジャミラ死亡後もやるせない怒りを静かに燃やす。

●フジ・アキコ
科学特捜隊隊員
見えないロケット探索の際には、ナビを務める。

●ムッシュ・アラン
パリ本部から派遣された隊員
怪獣化したジャミラを知っており、派遣されたのもパリ本部がジャミラ来襲を予測していたからとされる。

●少年
村が襲われている最中、飼っていた鳩を逃がし、その中の一羽を眺めて「んー可愛っ」とか言って座り込むガキんちょ。
しかし、そんな鳩は平和の象徴……



棲星怪獣 ジャミラ
元某国宇宙飛行士。
事故で宇宙を漂流し、水も空気もない惑星に漂着。
過酷な環境にも関わらず生き延びるがその姿は奇怪なものになる。
そして自分を見捨て、その事実をひた隠しにした人類に復讐する為に地球に帰還し、国際平和会議を妨害する。
それにしても、見捨てられたはずなのに、見捨てられた事情とか国際平和会議や開催地までなぜ知っているのだろう?というツッコミがたまに入る。
遭難した際に乗っていた宇宙船を見えないロケットに改造、スペクトルα・β・γ線によって撃墜されると姿を見せた。

農村を襲った際に「ジャミラ、てめえっ! 人間らしい心はもうなくなっちまったのかよー!」というイデの言葉を聞いて怯み、
燃えていく村をまじまじと見つめるが、それでも進行を止めず、国際平和会議会場を襲撃。

高熱にも耐える体を持つが水に弱くなっており、ウルトラマンのウルトラ水流を浴びて死亡する。

ジャミラは宇宙と言う未開の地へと旅立つ上で、危険地帯だと了解して行ったのに、
事故が起きれば復讐に走るのは 逆恨み ……という説もあるが、これは間違いである。
ジャミラが復讐に走った動機は「事故が起きたから」ではなく、
「事故が起きたにもかかわらず、母星は救出に何の努力もせず、面子のために見殺しにされたから」に他ならない。

ジャミラは精密な作業ができそうもない巨大な怪獣に変貌しても、一人で宇宙船を改造して戻ってくることができた。
シリーズには他惑星に科学特捜隊が出張するエピソードもあり、
別の星に行くこと自体は可能な世界だったのだから、母国もジャミラ救出に手を尽くすことはできただろう。
何もせず面子のために見殺しにした母国の罪は重い。

ただし、それであっても、見殺しにした国でもない日本に降り立って無関係の人の家を焼き払ったりしていいことになるはずもない。
ジャミラには、自分を怪獣ではなくジャミラだと理解してくれる人がいた。
国際平和会議が開かれるという情報を手に入れられるくらい地球の情報を手に入れることもできていた。
ジャミラも自身の正体を明かし、母国の非道を訴えていれば、世論は彼に同情し、支援もされたことだろう。
破壊行為による復讐と言う行動に走った結果、ジャミラは唯一母星に持って帰ってきた生命までも散らすことになってしまった。

ちなみに名前の由来はフランス兵に虐待された女性らしい。
そしてジャミラを知っていたアランはパリから派遣された……



【余談】
ウルトラマンと国際平和会議会場前で格闘する際に手違いからジャミラの目の電飾が切れてしまっているが、
これが不幸中の幸いとなり、ジャミラの表情を悲しげなものにすることに一躍買っている。

ジャミラが乗ってきた見えない宇宙船の元ネタは戦前から戦中に「少年倶楽部」などで活躍したSF作家の海野十三氏が書いていた『宇宙戦隊』からで、
脚本を書いた佐々木守氏が彼のファンだったことから取り入れた設定である。
ちなみに「宇宙戦隊」は現在青空文庫で無料で読めるため、興味がある方は一読してみるのも手だろう。

「犠牲者(為政者)はいつもそうだ……文句だけは美しいけれど……」というラストシーンでのイデ隊員の有名なセリフは佐々木守氏が書いた初期の脚本にはなく、
監督の実相寺昭雄氏が撮影段階で急きょ追加したものらしいが、この改変を佐々木氏は嫌がるどころかむしろ喜んだと伝わっている。












ジャミラ、許してくれ


だけどいいだろ?


こうして地球の土になれるんだ


お前の故郷……


地球の土だよ



A JAMILA
(1960-1993)


ICI DORT
CE GUERRIER QUI S'EST
SACRIFIE EN QUETE D'IDEAL
POUR L'HUMANITE AINSI QUE
POUR LE PROGRES
SCIENTIFIQUE



人類の夢と


科学の発展のために死んだ戦士


ここに眠る





…………





犠牲者はいつもそうだ……


文句だけは美しいけれど……

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