東方不敗(笑傲江湖)

登録日:2012/06/09(土) 20:38:42
更新日:2024/04/23 Tue 13:19:07
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東方不敗とは武侠小説「笑傲江湖」およびそれを基にした作品に登場する人物。
現地読みはドンファン・ブバイ(Dōngfāng Búbài)。



【概説】

物語初期の頃から名前だけは登場しており、主人公の令狐沖がその名前を引き合いにだしただけで場が凍りつく程に恐れられている武芸者。
江湖(世間)を騒がす邪派の武術集団「日月神教」の教主(リーダー)であり、その名の通り敵はいないとされる。

しかし長きにわたって江湖に姿を見せることはなく、先代教主の任我行からクーデターで奪いとった日月神教の支配権も楊蓮亭という男に預けている。

その楊蓮亭の武術は大したことがなく、また東方不敗の威を借りて威張り散らしているので非常に毛嫌いされている。

そのため配下の中では楊蓮亭が東方不敗とアッーな関係であるが為に優遇されているとの噂がたっている……



【本編】

さて、その東方不敗が本格的に登場したのは物語も半ばを過ぎた頃。東方不敗のクーデターの後に幽閉されていた任我行が教団の実権を奪い返すべく日月神教の本拠地を襲撃した時のことである。
任我行たち一行は変装をして本拠地に潜入、そして東方不敗の兄貴分だった童柏熊が起こした騒ぎに乗じて場を制圧。
楊蓮亭の足の骨を折って東方不敗の下へ案内するよう脅迫した。
楊蓮亭も東方不敗に仕返しさせようと思い一行を彼のみが知る東方不敗の隠れ家に案内した。

そこで彼らが見たのは何とオカマになった東方不敗の姿。

これには彼が修得した武術である葵花宝典の影響があるのだが、それは後述。

まさかの事態に唖然とする一行だが、当の東方不敗は楊蓮亭のこと以外は眼中に無し。

なんと東方不敗はオカマ化した影響でせっかく手に入れた日月神教の指揮権もどうでもよくなっており、完全に楊蓮亭に恋する乙女状態になっていたのだ。
アッーどころの騒ぎではない。

ただし見た目は爺がオカマしているだけの妖怪じみたとまで言われる姿なので全く萌えない。残念である。*1

さて一行がまさかの展開に驚いている中、楊蓮亭から事情を聞いた東方不敗は、一行に協力していた自身の兄貴分にあたる童柏熊を「蓮亭を怒らせた」という理由で殺害。

童柏熊もかなりの武芸者だったのだが、東方不敗の神速の動きの前には手も足も出なかった。

そして任我行たちとの戦いでは

  • 先代教主の任我行

  • 最強の剣術「独孤九剣」を学んで以来、対剣術では負け無しの令狐冲

  • 二人には劣るが達人と呼べる向門天

  • 女性ながら一角の武芸者の任盈盈

の4人を刺繍針一本であしらうという超人的武芸を発揮。東方不敗の名が伊達ではない事を証明した。

いまいちイメージがつかみにくい人は悟空ベジータピッコロクリリンの4人がブロリーに指一本で圧倒されているのを想像して欲しい。

描写的に凄まじい速さでの高速戦闘が可能な様子。

けっきょく正攻法で東方不敗を倒すことはできず、盈盈が動けない蓮亭を人質にして気をとられた瞬間に令狐沖の攻撃が入ったことでギリギリ勝利をおさめたのだった。

この結末に任我行はいいようにやられていたクセに「東方不敗!もはや名前負けじゃな!」と偉そうに呵々大笑したが、令狐冲は武芸者としての敗北を認めた。
そして東方不敗は令狐冲の謙虚な姿勢を褒め称え、任我行には刺繍針を投げつけ片目を失明させ、そして絶命した。


【葵花宝典】

東方不敗が修得した武術で、日月神教の教主のみが学ぶことを許されている。

もともと宦官が編み出した武術で、非常に強力…なのだが、唯一大きな欠点がある。

この武術を学ぶためには去勢しなくてはいけないのだ

というのも葵花宝典は内功(気)の陰の気と陽の気のバランスが重要なのだが、金玉ぶら下がったまま修行すると欲情して気が暴走して修得不可能。

そのため葵花宝典には去勢が第一にして最大の関門。

作中でも指摘されているとおり、まさに宦官(去勢された役人)に相応しい武術といえる。
ちなみに女性には最初から陰の気しかないので修得は完全に不可能。
また陰の気が強まる副作用なのか、葵花宝典と、それを基にした僻邪剣法を学んだ者は女性的な面が強まり精神にも異常をきたす傾向にある。
具体的に言うと、ヒゲは抜け落ち服装の好みも派手になり、声も高くなる。

そのせいか東方不敗は教主の座を得たのに次第に権力とか色々どうでもよくなってしまい、楊蓮亭とニャンニャンする日々を選ぶことになったのだった。オェ。

しかし男の命ともいえる玉金を犠牲にするだけあって効果は凄まじく、東方不敗は本編の通りまさに無敵の力を得たのだった。
…まあ東方不敗が葵花宝典を修得する以前から既に東方不敗と呼ばれていたほどの実力者だったからこその無双だったのもあるが。

じっさい後にこれと同系統の「僻邪剣法」を使う人間と令狐冲は戦うが、最初こそ速さに苦戦したものの最後は速さにも慣れてしまい、動きもワンパターンだったため勝ってしまった。ただこれは令狐沖が対剣術に限っては最強レベルなことも大きく、その前の戦いでは仁我行レベルの使い手が僻邪剣法の前に敗れ去っている。

任我行はこの葵花宝典を毛嫌いしており、処分しようとしていた。
ちなみに日月神教が所持していた葵花宝典は正派の華山派から略奪したもの。
さらに華山派に伝わっていたのは、かつて華山派の弟子2人が少林寺から一部を盗み見たものを、追いかけてきた少林寺の高僧に解釈して纏めてもらったものである。この2人の内、片方は葵花宝典の「気功」を、もう片方は「剣術」を重視した。
後にこの2人の考えの違いが華山派を「気功流」「剣術流」の2派に分離してしまうことになる。気功流には内功の奥義があるが、それが葵花宝典に由来するかは不明。
また二人に解釈してあげた人物は2人に解釈したことで葵花宝典の真髄を悟り、去勢して内功と剣術双方を納め『僻邪剣法』を開発した。
そして還俗すると「林遠図」として江湖にて最強の名を欲しいままにしたのだった。


少林寺にある葵花宝典は、この時の事件を受けて作中では既に破棄されている。
また林遠図も力への誘惑に勝てずにこの技を会得したが、元々徳のある坊さんだったためか還俗した後も仏門の心は失わず、話からしておそらく他の使い手よりも精神に異常をきたしていなかったようである。
そして自分の行いを悔い、子孫(養子)や弟子に秘伝(要するに去勢)を教えることは無かった。しかし完全に世から消失させることは惜しかったのか、少林寺時代に使っていた衣に密かに書き遺しておいた(ただし子孫にこれを見ることは禁じていた)。
やがて林家は護衛業として名を挙げ一大勢力を築きながら、林遠図以外の実力は凡庸なものとなっていたことから、数代後に滅ぼされ、唯一の生き残りが華山派に弟子入りしたことに端を発して笑傲江湖の物語が始まることとなる。

【映像版】

原作では老いて妖怪じみた外見のはずだが、映像版では基本的に若い女性が起用される。まあ仕方ないね。

特に映画「スウォーズマン」シリーズで出演した台湾人のブリジット・リン演じる東方不敗像が有名であり、人気が大爆発。
以後は美形の最強キャラとして描かれるのが定番。ブリジット・リンも男装の麗人役を演じさせれば右に出るものはいないと言う評価になった。

ドラマでは刺繍針のみならず糸と髪を用いた奇抜な戦い方をし、やたら令狐冲を誉めるのが特徴。

あと童柏熊の殺され方が糸を全身に巻かれ八つ裂きにされるという非常に残酷なものになっている。
童柏熊の役者が太っている関係で糸に巻かれている姿がボンレスハムみたいに見えるのは内緒。

ちなみに原作者の金庸氏は若い女性が東方不敗を演じることに不満であったとのこと。
まあオカマになった結果性格やらが狂って妖怪にーって設定が若返って美形化。
日本で東方不敗が男の娘の萌えキャラにでもされたら、草葉の陰でお怒りになられるかもしれないのである意味解からなくもない。


【関連人物】

  • 任我行
先代教主にして宿敵。世話になった恩義からこいつを生かしておいたのが徒となった。

  • 任盈盈
彼女が幼い頃から可愛がっていたため、父親の任我行を追い落とした後も丁重に扱っていた。盈盈も良くしてもらった事には感謝していたが…ぶっちゃけこいつを生かしておいたのが(ry
東方不敗はオカマ化してからは盈盈の美しさに憧れていた様子。


  • 向門天
かつては東方不敗がクーデターを企ていたことを察知し、クーデター後は任我行復活の為に行動した東方不敗にとって目の上のたんこぶ。
こいつを生かし(ry

  • 童柏熊
かつては東方不敗の危機を救い、親が死んだ時には親身にしていた為に東方不敗もオカマ化した後も彼への恩は忘れなかった…が、殺された。哀れ。

  • 楊蓮亭
東方不敗の恋人。東方不敗の側にいたのは権力目当てだったのか純粋に愛だったのかは不明だが、「妖怪」と描写される東方不敗と10年近く恋人でいたあたり気骨ある男である。

  • 令狐冲
ぶっちゃけ東方不敗本人とは特に因縁が無かったのだが、彼の数奇な運命と義を通す性格から敵対することに。
ドラマでは剣術や人格についてやたらと東方不敗から褒められる。


【余談】

日月神教と敵対する者は東方不敗を「東方必敗」と呼んで鼓舞する場面がある。
「東方不敗」と名が付くキャラがだいたい敵キャラであり、最終的に主人公側に倒されているのを考えるとあながち間違ってはいない言葉かもしれない。


また東方不敗は作中で活躍した期間こそ非常に短かったが、その圧倒的実力とインパクトから金庸の武侠作品に度々名前が登場する独孤求敗と並んで最強キャラに挙げられる。
まあ独孤救敗は本人が登場したことがない(しかし彼の遺した武術を学んだ主人公は皆ケタ違いの強さを身につける)ので実際にどれくらい強いのかは不明だが。
ちなみに独孤求敗も東方不敗も共に負け知らずな圧倒的強さから付けられた名前。

色々原作無視でぶっ飛んでいることで有名な「スウォーズマン」シリーズでは葵花大法などの必殺技を会得。
建築物を内力でもって爆砕したり砲弾を投げ返したりと色々おかしいことになっている。
また何を血迷ったのか令狐冲とのロマンスがあったり、服部半蔵が東方不敗の部下になり「先生」と呼ぶというカオスっぷりである。



【同名キャラ】

ご存じ、機動武闘伝Gガンダムに登場する我らが師匠で生身とクロス(布)でモビルファイターを撃破する、モビルファイターが拘束具の化け物。
本作の東方不敗が元ネタである事は有名である。なお見た目ご老人の49歳の中年だがガンダム有数の漢の中の漢
元々は仮採用の名前だったのだが、結局そのまま通す事となった。
と言うのも、監督がスウォーズマンのファンなのが原因だったとか。また「マスターアジア」は東方不敗の英語訳の1つ*2
どうも監督的にはこの訳がツボったらしい。
ちなみにGガンダム作中で「東西南北中央不敗・スーパーアジアとなってくれるわぁっ!」と宣言するシーンがあるが、
これは「スウォーズマン 女神復活の章」で当人がユーラシア大陸を制覇し「東西方不敗」を名乗ろうとするシーンから来ている。
なんなら本家の方もイスパニア(スペイン)船の砲弾を素手で止めてるし。

  • トウホウフハイ
FINAL FANTASY Ⅶに登場する最強チョコボ。せん馬(せんチョコボ?)の可能性が・・・?




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最終更新:2024年04月23日 13:19

*1 一応映画では中性的な面立ちの若いイケメンとして登場することが多い。女性が演じているパターンもあり、この役から男装の麗人的なイメージを確立させた女優もいる。原典そのままだと威厳もへったくれもなく強敵役として絵的に映えないので仕方がないか。

*2 本来の英訳はInvincible Eastであり、Gガンダム北米版ではThe Undefeated of the East。