綾辻行人

登録日:2012/02/05 Sun 00:11:44
更新日:2023/02/17 Fri 18:20:29
所要時間:約 5 分で読めます




綾辻行人とは日本の推理作家。京都府京都市出身。
江戸川乱歩、松本清張、高木彬光らに並ぶ日本ミステリー界の最重要人物。
代表作は館シリーズ、囁きシリーズ、『Another』など。

概要


1987年に島田荘司の推薦により『十角館の殺人』でデビュー。ペンネームも島田氏の命名による。

アニヲタ的には、何はなくとも『Another』の作者。
他には奈須きのこに強く影響を与えた人物として有名か(その誼で綾辻は文庫版空の境界の解説を書いている)。
ついでに言うと、ALI PROJECTの宝野アリカとも非常に仲が良い。

安楽椅子探偵の片割れとしても名を知られている。

ちなみに奥さんは『屍鬼』と『十二国記』でお馴染み小野不由美である。
彼女とは京大ミステリ研時代からの付き合い。他に同時期に所属していたメンバーに法月倫太郎、我孫子武丸がいる。なにこのヤバすぎる時代……

ファンにはたまにあーやとか呼ばれてる。いい歳したオッサンなのに。

余談だが、ペンネームの「辻」の字はしんにょうの点が2つあるのが正式表記である。
本来、人名漢字としてはしんにょうの点が1つの方がポピュラーであり、画数的にも良かったのだが、あえて点が2つの「辻」を使っている。


綾辻行人はなぜ凄いのか

かつて本格ミステリー界に受難の時代があった。

↓当時の世間の声
「何で人殺すのにトリックとか使ってんのw? 通り魔すればバレないのにwwww」
「なんつーかリアリティーが無いよねリアリティーww」

もっともである。

そうして台頭してきたのが松本清張を祖とする社会派ミステリーだ。
社会派ミステリーについてざっくりと説明すると、トリックよりも火曜サスペンス的な人間関係に重きを置いたミステリーのことである。

これが流行りに流行りまくった(大下宇陀児とか和久峻三とか島田一男とか)ため、トリックを使った本格ミステリーは瀕死。
アンチ本格作家や評論家には「ピザでも食ってろデブ」ならぬ「糸でも使ってろミスヲタ」とディスられる日々が続いた。
かつて本格を書いていた作家は亡くなり(乱歩や横溝)、あるいは筆を折り、社会派に転向するしかなかった(天城一や森村誠一、西村京太郎等)。

そんな本格ミステリー冬の時代に、数少ない書き手の一人、島田荘司の推薦によりデビューしたのが綾辻行人なのだ。

そのデビュー作、『十角館の殺人』で使われたトリックは当時としては非常に斬新なもので、
あらゆる意味で袋小路に陥っていた本格ミステリーに新たな方向性を示した。

「謎」そのものを再定義した上で、リアリティとトリックとプロットの折り合いを図る作品群……いわゆる「新本格」の誕生である。

綾辻氏の蒔いた種はその後、法月綸太郎、二階堂黎人、京極夏彦、森博嗣、歌野晶午ら他多数の優れた書き手によって大輪の花となった。

今ではミステリーの歴史を語る際に「綾辻以前」「綾辻以後」で分けて語られることも多い。


作風


ザ・どんでん返し。
使われるトリックは単純かつ派手なものが多く、ラスト数ページで読者の世界観をぶち壊しにかかるものがほとんど。
「十角館の殺人」で読者の度肝を抜いた一文はあまりにも有名である。

アリバイトリックや密室トリックは、
「構造自体は非常にシンプルで分かりやすいのだが、巧妙な心理トリックによって隠されている」というケースがほとんどであり、
コナン金田一の謎解きですら置いてきぼりを食らいがちで、推理小説に興味はあるけど付いていく自信がない」という人でも比較的とっつきやすい。

また、やたらとジメジメとした心象描写が多いのも特徴で、
彼の作品の主人公は大抵「ああ……」とか「これは……」とか言いながらおセンチな気分になっている。

自身の作風には楳図かずおの作品に強く影響を受けたと語っており、
ミステリー作品なのに隙あらばホラーやオカルトをぶちこもうとする癖がある。
綾辻にとってミステリーとホラーは車輪のように繋がっているらしく、どちらも切っても切り離せない存在なんだそうだ。

たまにそれがマズい具合に化学反応を起こして、とんでもなくリアクションに困るようなものを作り出すことも多い。
一時期、あまりにもマズい作品を世に送り出しすぎたせいで、とある評論家には「綾辻は枯れた作家」とか言われていたが、『Another』で見事な復活を果たした。


趣味


麻雀とゲームが好きらしい。

特に麻雀は2011年にニコ生で行われた大会で役満をあがり、非ミステリー好きの間でもしばらく話題に登った。
一方西原理恵子の『デカピンでポン!!』(1990年代前半の話)では、ぼろ負けした様子が描かれていた。

ゲームの分野では、作家仲間の宮部みゆきをゲームの道に引きずり込んだことで有名。

自身もRPGとミステリーとほんの少しのオカルトをちゃんぽんしたようなゲーム、『ナイトメア・プロジェクト YAKATA』というゲームをプロデュースしたことがある。
ただし、そのプロデュースにより3年くらい小説の執筆が途絶えてしまい、「先生、小説書いて下さい」と呆れられる羽目に。
まあ、氏が遅筆なのは今に始まったことではないが。
ゲーム自体も妙に難易度が高い上に謎解きがぶん投げ気味で、ややクソゲー寄りの評価を受けてしまっている。
綾辻氏自身も久々に出した短編集に制作中の愚痴を書き連ねたりと、相当苦しめられた模様。

折り紙にも造詣が深い。その影響か、代表作の「館」シリーズの探偵役・島田潔は折り紙が得意というキャラ付けがなされている。
彼に小説の中で架空の折り紙「三つ首の鶴」を折らせたところ、それを読んだ現実の折り紙作家*1が本当に折って送ってきたという逸話がある。

同じく小説家の法月綸太郎氏から勧められたPUI PUI モルカーにご夫婦揃ってどハマりし、奥さんはフェルトでモルカーのフィギュアを大量に自作し、ご自身のTwitterでも隙あらばぷいぷい言ってフィギュアと共に写真撮りまくっており、メディア欄はモルカーの写真で埋め尽くされている。
誰が呼んだか綾辻行人改めモルカーおじさん
そんな事もあってか、この度自身の作品集『人間じゃない』の宣伝に於いて公式にコラボが実現した。
そりゃあモルカーは人間じゃないけどさぁ…


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最終更新:2023年02月17日 18:20

*1 創作折り紙作家・前川淳。綾辻は以前の作品で彼の代表作「五本指の悪魔」を島田に折らせていた