高麗航空

登録日:2012/02/27(月) 17:59:27
更新日:2023/10/29 Sun 12:34:02
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概要

高麗航空とは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の国営航空会社で、同国唯一のキャリアフラッグである。読み方は「コリョこうくう」と読む。
元々は、朝鮮民航という航空機運営部門と管轄監督部門が一緒であったが、1993年に運営部門を独立させて国営会社とした。
航空識別コードは、朝鮮民航時代からかわらず「JS」が使われている。
拠点空港は、平壌国際空港(通称・順安空港)。



北朝鮮の財政事情や政治事情により、アジア極東地域で唯一、西側諸国の航空機メーカーから機体を受領していない会社としても知られている。
使用機体は全て旧ソ連・ロシアのイリューシンかツポレフ製のもの。
機体の近代化が非常に遅く、1960年代前半まで旧式のプロペラ機を酷使、同年代後半にようやくソ連から中古のターボフロップ機を導入。
75年になってツポレフからジェット旅客機を受領した。
ただし、受領したのは中距離型のTu-154で、モスクワや当時の東ベルリンなどへ飛行する際は、ソ連領内にて二回もテクニカルランディングをして、給油をしなければならなかった。
その後、イリューシンIl-62型を受領し、無給油で東ヨーロッパ方面への飛行が可能になった。


杜撰な管理体制

そんなこんなでかなり怪しい運営状況だったのだが、東西冷戦終結後、ソ連からの支援がなくなったことで事態はより悪化してしまう。
度重なる飢饉や天災などによって財政がほぼ破綻した北朝鮮政府は、高麗航空が保有する機体の買い替えはおろか、整備も満足に出来なくなったのだ。
結果、機体に亀裂、故障、航路逸脱は日常茶飯事となってしまう。

フランスとドイツの運輸当局が抜き打ち検査を行ったところ、
  • 過去の飛行記録がない(当然、保安不適格)
  • ブラックボックスが機体に搭載されていない(当然、(ry
  • エンジンが古過ぎて騒音規制に合わない
  • 整備記録がない(当(ry
  • 航空機関士が必要な機体に機関士が乗っていない(t(ry
  • 目視でわかるほど、機体の劣化が著しい
  • 主翼に劣化により出来た亀裂をよりにもよってガムテープで補修(一歩間違えば空中分解に陥る危険性のある状態)

との理由で、ごく最近までEU加盟国とスイスの空から締め出され、世界一危ない航空会社という烙印を押された。


運行状況

この会社の機体は、日本にも度々チャーター便として、新潟や福岡に顔を出していた。
しかし、使用していたツポレフTu-154型が日本の騒音規制に引っ掛かったため、2002年を最後に日本からも姿を消している。
高麗航空はその後、ツポレフTu-204型を2010年に受領する。エンジンが航空機エンジンの名門、ロールスロイスであったため話題となった。


2011年、EU諸国はTu-204に限って高麗航空の飛行を認めたが、今度は各国の経済制裁で乗り入れを断られており、臨時便でスイスの空港に数回着陸した程度である。
日本もやはり経済制裁により、高麗航空の機体が日本に着陸するのを禁止しているため(領空通過は可能)、
日本の朝鮮総連メンバーが平壌に迎う際には、わざわざ中国の瀋陽などにTu-204を飛来させて渡航している。


前述の通り、国際線として実質長距離運用はTu-204のみである。
短距離国際線用として主力は、機体運用年数が三十五年以上が経過しているツポレフTu-154やイリューシンIl-62など。
この古い機種はロシア極東や中国・北京などに騒音規制を大幅に上回っているが、特例として乗り入れを認められている。
Tu-204はいわゆる胴長タイプで、ボーイング737NGシリーズとほぼ同じ長さ。ただしこの機体、桁違いに安い代わりにメーカーのサービスの質が非常に悪い。
ツポレフの本社のあるロシアでさえ、機体は高いがサービスの良い欧米の航空機メーカーを採用しているレベルという……。
なお、イリューシンの方が若干サービスの質は良いらしいが、ソ連解体後、新しい機体の開発はしていないようである。
引き続き、高麗航空の安全面での疑念は取り払われていないのが現状である。


なお、パイロットの操縦方法が荒っぽいことでも有名。
北京-平壌間を搭乗した日本人ジャーナリスト曰く

「飛行機酔いをした」

と正直に語っている。
よど号ハイジャック事件の容疑者の子供たちが、日本へ帰国する際、平壌から北京に向かう時に使ったが、
「(北京から成田に向かった全日空機と比較し)二度と乗りたくない」とポツリ。

西側諸国への乗り入れは、夏に台湾へ季節限定で乗り入れているほかは、国際線は全て中国かロシアである。

ちなみに、イギリス人の医療ボランティアの医師二人が、北京-平壌間の便に搭乗していた際、
この便が順安空港に着陸した際、ハードランディングをした挙げ句に滑走路をオーバーランして、機体が大破した。
怪我人は軽傷者だけで済んだが、機体は全損したという。


こちらはツポレフTu-204


高麗航空のツポレフTu-204型について、エンジンを納入したロールスロイス航空エンジン部門によると、
Tu-204の整備は、北朝鮮国内で行うことが困難であるため、中国国際航空がかわって整備、点検を行っているという。
これは、Tu-204に使われている電子製品が、ほとんどが日本で作られているものであり、経済制裁により直接北朝鮮に納入できないため、
同じくTu-204型を保有している中国国際航空に※中国国際航空用の部品として輸出し、部品交換や修理、整備を行っているためである。
また、旧型機についても、経済的余裕のあるロシアがエンジンの新型への交換や、計器の交換を行う計画があるという。
※中国国際航空は、兵器に転用可能な電子部品の輸出に関する日本の法律では、対象外である。


政府専用機

北朝鮮唯一の航空会社ということもあり、政府が独自の専用機を保有していない国の通例として高麗航空の機材が政府専用機として運用されることがある。
前指導者だった金正日専用機はIl-62M(登録番号P-618)が専用機になっていた。
現指導者金正恩専用機は父親同様Il-62Mを使っていることは確認されているが具体的な機は明らかにされていない。


余談

上記のようなこともあり余程のマニアでないと知らないような航空会社であり創作物の出演など皆無…と思われて実はウマ娘のアニメ1期
運行案内板に他の航空会社がある程度推測できる範囲で名前を変えられている中、高麗航空だけがそのまま使われていた。
映るシーンは僅かで機体が出たわけではないのだが、はっきりと見えるだけに高麗航空を知っているユーザーからは驚きの声が上がった。




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最終更新:2023年10月29日 12:34