月に寄りそう乙女の作法

登録日: 2012/11/08(水) ??:??:??
更新日:2023/10/08 Sun 17:42:35
所要時間:約 15 分で読めます




桜小路(さくらこみち)を陽が照らす




『月に寄りそう乙女の作法』は、Navelにより制作された18禁アダルトゲームである。
公式での略称は『つり乙』……分かりにくいことこの上ない。
2012年10月26日発売。

原画:鈴平ひろ、西又葵
シナリオ:真紀士、王雀孫、東ノ助、森林彬



【概要】

昨今ではお馴染みとなった「女装主人公の学園生活物」を扱いつつ、服飾技術養成学校を舞台とすることで独自色を出した作品。
登場人物の友情や恋愛と共に服飾の話題が物語のウェイトを占めており、服飾方面の専門知識が紹介されるほか、
残酷なまでに“才能”が物を言うデザイン業界の厳しさにも言及されていく。

作風はシナリオ重視。主に序盤で繰り広げられるドタバタのギャグシーンと、各ルートでのシリアスな展開とがバランスよく組み込まれた作りとなっている。
困難にぶち当たる主人公たちが懸命に足掻いていく物語を見届けたい人には特にオススメかも。

Hシーンの数は少なめだが、稀にドM垂涎のディープなプレイが紛れている辺りは侮れない。
……まああれだ。とにかく朝日のエロさがヤバい。

2012年の2chベストエロゲーではTOP10以内に名を連ねる結果に。
集計者ごとに細かい順位のズレがあるので、気になる人はサイトなどで確認されたし。



【ストーリー】

日本の財界を代表する大蔵家の末端に、妾の子として望まれぬ生を受けた大蔵遊星。
彼は長らく屋敷で飼い殺しにされ、人並みの夢や希望とは無縁な日々を過ごしていた。

そんな遊星にある時、一族の監視下を離れて自らの夢を追う――ファッションデザインを学ぶ転機が訪れる。
素性を伏せて小倉朝日という偽名を名乗り、上流階級の子女が集う服飾専修機関『フィリア女学院』へ潜入することになったのだ。
その一環として遊星は、学院一のスーパー同級生・桜小路ルナに仕えるメイドとして彼女が住む『桜屋敷』で働くことに。

そしてそこには、ルナと縁のある学院生らが同居するという。
スイスから来た誇り高き留学生・ユルシュール。
旧華族の流れを汲む家柄の大和撫子・花之宮瑞穂。
少年時代の主人公に恋していた庶民派社長令嬢・柳ヶ瀬湊。

これら個性的なお嬢様方に加えて、それぞれに付き従う超個性的な従者たちが遊星の生活を引っかきまわす。
果たして遊星は素性(おもに性別)を偽ったまま、屋敷と学園の二重生活を無事に過ごすことが出来るのか?



【舞台】

◇フィリア女学院
遊星が憧れる有名デザイナー、ジャンが世界各地に設立している女学校。主に本作では、ルナたちを一期生として迎える新設の日本分校を指す。
『女』学院なのは、ジャン曰く「日本にはろくな女性デザイナーがいない。なら俺らで育てちまおう」的な意向から。
学園側の資金稼ぎの一環として金持ち用の『特別クラス』が一般クラスとは別に設けられており、
こちらの生徒は高い学費と引き換えに入学試験が免除されると共に、各自で雇った修学支援用メイドを授業に同伴させることが許可される。
遊星はこの制度を利用し、特別クラスに入学するルナの同伴メイド『小倉朝日』に扮して入学、共に授業を受けていくことになる。


◇桜屋敷
ルナのほかに湊、ユルシュール、瑞穂といった客分、そして朝日を含むメイドたちの住まいとなる屋敷。フィリア女学院からは歩いて数分の距離。
元は桜小路本家の物だったが、本編開始以前、資金難から売りに出されるところをルナ個人に買い取られた。
また、それと同時にルナは本家から独立し、この屋敷で自分が雇った使用人たちと暮らすようになっている。



【作中用語】

◇フィリア・クリスマス・コレクション
フィリア女学院で12月に開催される学内ファッションショー。
生徒4人(特別クラスの場合は各々の従者を合わせた8人)のグループ単位で製作した衣装を持ち寄り、その出来を競う。
年度の授業の総決算であり、この結果が次年度のクラス分けを左右するという重要イベント。
ほとんどのヒロインの個別ルートにおいても重要な場面となるが、製作開始段階、花形の役割であるデザイナー枠の競争もひとつの見所。

ルナが桜屋敷を友人の住まいとして提供したのは、人付き合いの悪い自分の性格を鑑みてあらかじめグループ要員を確保しておく狙いもあったりする。



【登場人物】
◎の付いた4人が攻略対象。
名前は銀行ネタから取られている。
これは、俺たちに翼はない の事後インタビューで「次回のネタは銀行にしようかなと思っている」と王が言ってしまったため。


○小倉朝日/大蔵遊星(こくら あさひ/おおくら ゆうせい)

CV:なし→月乃和留都(続編に付属のパッチ適用後。詳細は後述)
主人公。大蔵家頭首の長男である父とアイルランド人の母を両親に持つハーフで、母親そっくりの容姿を受け継いでいる。マンチェスター出身。
大蔵家の一員として一流の教育を施されつつも、妾腹の子であるために日の目に出ることを許されず、また虐げられてきた。
(教育云々は、一族の優秀な「道具」となるべく幼い頃から無理やり叩き込まれたもの)
かつてジャンに憧れてファッションデザインを数年学んだことがあるが、こちらに関しては兄・衣遠に才能が無いと判断され道を断たれている。
それでも夢を諦めきれず、本編にて『朝日』として兄に隠れてその道を再び志し始める。
家事はもともと得意なのでメイド業にはすぐに順応し、相手にとことん尽くす真面目な性分もあってルナと良好な関係を築いていく。
名前ネタは日本郵政、大蔵省、あさひ銀行。


桜小路ルナ(さくらこうじ -)

CV:卯衣
メインヒロイン。生まれつきの真っ白な肌や銀髪、赤い瞳という外見的特徴を持つ小柄で華奢な少女。作中での明言こそないが、おそらくアルビノ体質と思われる。
物言いがきつく近寄りがたいが、根っこは優しい捻くれ屋。
稀にデレた時の破壊力が凄まじいものの、そうした一面を知るのは一部のごく近しい者に限られる。そしてドS。
デザイナーとして衣遠が手放しで賞賛する才能の持ち主で、本来は免除されるフィリア女学院の入学試験をあえて受け、主席合格を成し遂げてもいる。
加えて学生の身でありながら既に起業家として成功し、個人資産は実家のグループ全体を上回るほど。なにこの超人。
そうした諸々から特別クラスにおける最大の発言権を有し、湊たち以外の令嬢からおべっかをつかわれる立場にある……が、裏ではやっかみや陰口の対象にもなっている。
遊星の妹・りそなとは株の取引の関係で友人となり、今でもネトゲを通して交流が続いている。
その繋がりから朝日を紹介され、学院でのお付き兼屋敷での世話係として雇い入れた(朝日の正体は知らされていない)。
名前ネタはさくら銀行。


◎柳ヶ瀬湊(やながせ みなと)

CV:森谷実園
運送会社の社長令嬢。至って庶民的な性格で、明るい笑顔を振りまいてグループの賑やかし役になるタイプ。
しかし上流階級にはそぐわない素振りも多く、ルナたち以外のクラスメイトから「成金」と冷笑されて悩む場面も。
幼い頃に遊星や彼の妹・りそなと仲良く過ごした時期があり、当時から遊星に好意を抱いていた。
その面識が原因で本編序盤にて「朝日=遊星」と気付くことになるが、以降もそれを周囲に秘密にすると約束してくれる。
服飾の知識や技術については、勉強を始めてから日が浅いこともあって総じて劣りがち。ただし、アクセサリ作りにはなにやら光るものがある様子。
遊星に憧れて「女の子らしくなろう」と思い立つまでは、かなりやんちゃで男勝りだった(遊星にプロレス技をかけたり木に登ったり)。
今でもその名残は残っており、普段は抑えつつもいざとなれば口より手が出るっぽい。
運動も得意で、往復10km超の遠泳をこなす脅威の体力を備えている。
名前ネタはみなと銀行。


◎ユルシュール=フルール=ジャンメール

CV:五行なずな
スイスの伯爵家からやってきた留学生。ルナの古い親友の一人で、「ユーシェ」の愛称でも呼ばれる。
ほぼ完璧な日本語をマスターしつつ、その所々に、ルナやサーシャの悪ふざけで吹き込まれた変な言葉遣いが混じる残念な子(「~ですわ」口調とか)。
そこをルナに弄られた挙句、更に変な言葉や誤った日本文化を吹き込まれたりしている。
庶民(しかもただの使用人)と身分を偽っている朝日に対しては、貴族という立場への誇りから酷く見下した態度をとることも。
……まあ、先の残念具合が逆に幸いして腹立たしさは感じさせないのだが。
日本に留学してきたのはルナとデザインの実力を競うため。才能はルナに比肩するほどと評されるが、実は今までルナに勝てたことが無い。
これが密かに大きなコンプレックスとなっており、その克服のために影では鬼気迫るほどの研鑽を続けている。
名前ネタはUFJの頭文字。


◎花之宮瑞穂(はなのみや みずほ)

CV:星咲イリア
旧華族の家柄で育った京都出身の大和撫子。ユルシュールと同じくルナとは長い友人関係を続けている。
穏やかではんなりした物腰とは裏腹に、言うべきことは言う芯の強さも持つ。ただし、幼い頃のトラウマによる極度の男嫌いが対人関係のネックになっている。
というかむしろ「関わるのは女の子だけで良い」という境地に達していて、本編で知り合った朝日をいたく気に入っては百合を思わせる勢いでグイグイ迫ってくる。
服飾面では和服のデザインに格別の能力を発揮し、既に業界から注目されつつある。
本人はそれに加えて、従来の伝統から外れたものを作りたいと考えているようだが……?
名前ネタはみずほ銀行。


○山吹八千代(やまぶき やちよ)
CV:松田理沙
桜屋敷に仕えるメイドたちの長にして、気難しいルナが心を開く数少ない人物の一人。
ルナのことは実の妹かそれ以上というくらいに溺愛しつつ、必要とあれば容赦なく叱りつけるようにしている。
そうした態度は桜屋敷の他のメイドたちを相手にしても同様らしく、面倒見の良さと厳しさの両面でもって彼女たちを指揮している。
かつてはデザイナーの卵として将来を嘱望されていたが、学費不足によりその道を諦めて桜小路家の使用人となり、やがてルナのお付きに抜擢されて今に至る。
道半ばで挫折したとはいえ服飾技術は元学友のジャンから認められるほどに優秀で、
その縁からフィリア女学院日本校の臨時講師をジャン直々に依頼され、これを引き受けている。
ルナにデザインを始めとする服飾関連の手ほどきをしたのも彼女。
なお、彼女の前で年齢の話は禁k「私はまだ20代です」
名前ネタはやちよ銀行。


○名波七愛(ななみ なない)
CV:丹下葉子
湊に付き従う、彼女と同い年のメイド。身寄りを無くした所を湊の実家に救われ、現在の立場に落ち着いた苦労人。
その経緯から柳ヶ瀬家には強く感謝していて、とりわけ湊に対して周囲が引くレベルで心酔している。……つかぶっちゃけ、ガチレズの域にまで踏み込んでしまっている。
湊が好意を抱く「大蔵遊星」への嫉妬具合は当然ながら凄まじく、もし会ったら本気でブチ殺そうかと考えているほど。朝日逃げてー。
基本的に根暗で、何か話すときも小言。また、湊や目上の相手には丁寧に接するが、それ以外には強烈な毒を吐く傾向にある。特に朝日が被害者。
何気に作中キャラ屈指の巨乳。
名前ネタはセブン&アイ銀行。


○サーシャ=ビュケ=ジャヌカン
CV:月代綾人
ユルシュールのメイド。フランス出身。
見た目は完璧に女性だが身体は男性で、しかし本国での戸籍を女性に変更しているというややこしい人。超ナルシストの変人。
とはいえメイドとしては優秀で、細かいフォローをさりげなくやってのける気配り上手でもある。また、服飾技術についてはそこらの専門家以上の腕前を持つ。
常日頃から面白半分にユルシュールをからかうが、本心では彼女を誇りに思っている……はず。多分。
主にユーシェのルートにて、とある人物たちとの浅からぬ縁や意外な経歴が明らかに。
名前ネタはSBJ銀行。


○杉村北斗(すぎむら ほくと)
CV:民安ともえ
瑞穂のメイド。主の男性嫌いを少しでも改善するために男装している。
真面目な中にもユーモアを解する優秀な使用人。
……なのは確かだが、過去に世界中を旅したときに出会った部族の影響で、事あるごとにトマホークを振り回したり奇声を上げたりする変人でもある。ポゥ!
ふざけた性格のサーシャとはそりが合わず、何かにつけ互いに武器を手に取り喧嘩する仲。
名前ネタは北都銀行。


○大蔵りそな(おおくら -)

CV:咲野かなで
遊星の異母妹。名前は漢字表記では『里想奈』。本妻の子であるため、大蔵家における地位は遊星と比較にならないほど高い。
公の場や両親の前では立場にあわせて猫を被りつつ、限られたプライベートでは超ブラコン妹としてだらけた姿を遊星にさらす。
一方、もう一人の兄である衣遠には心からの恐怖を抱いている。
遊星に女装してフィリア女学院で学ぶことを提案した張本人で、『朝日』が着る服はりそなの私物。
攻略不可なことを嘆く声が多かったが、後述の続編にてまさかのメインヒロイン昇格を果たす。
名前ネタはりそな銀行、大蔵省。


○大蔵衣遠(おおくら いおん)
CV:鳩万軍曹
遊星の異母兄にして天敵。大蔵家長男筋の嫡男としてグループの運営に携わりつつ、服飾デザイナーとしても一線で活躍する人物。
対人関係において相手の才能を何よりも重視する価値観の持ち主で、望む基準を満たさない者には身内だろうと容赦はしない。
ただし、他人に対する以上に自分自身に厳しい努力家でもあるため、それを知る遊星からは畏怖されると同時に強く尊敬されてもいる。
大抵のルートで最大の壁として登場し、遊星を全力でいたぶり、潰しにかかってくる。
Navelの2013年エイプリルフール動画では、ある人物に対する屈折しきった胸の内が明らかに。
名前ネタはイオン銀行。


○ジャン・ピエール・スタンレー
CV:嶋崎比呂
世界的に有名な若手ファッションデザイナー。衣遠が友人と認める数少ない人物だが、性格は見事に対極。
飄々とした気分屋で、時おり突拍子のない発言をぶちまけては衣遠をすら振り回す。
過去にある出来事を通じて遊星の友人となり、当時、大蔵家の劣悪な環境下で塞いでいた遊星に「前向きな生き方」を提示したことで恩人扱いをされてもいる。
「ああ楽しかった!」は名台詞。
彼が日本に分校を立てたことが、本作の物語の発端に繋がっていく。
名前ネタはJPモルガンとモルガン・スタンレー。



以下、本編以外の話題











― 花の都を蝶が舞う ―




【続編について】

2013年3月に続編『乙女理論とその周辺-Ecole de Paris-』が製作中であると発表され、2013年7月26日に発売された。


続編とうたっているものの、位置づけとしてはパラレル作品の性格が強い。
というのもこの『乙女理論』、「もしも前作で主人公がバッドED(誰かとくっつく前に桜屋敷を追い出されるED)を迎えたら」という仮定のもとに、
前作の舞台・東京を遠く離れたパリにてヒロイン総取っ換えでリスタートする物語なのだ。
決して「各前作ヒロインルートのその後」へと続く作品ではなく、このへん勘違いしてプレイするとえらい事になりかねないので気をつけよう。
(なお、公式のアナウンスによれば『つり乙』『乙女理論』の全ルートを含め「どれが正史かは特に定めない」とのことらしい)


ちなみに、初回版特典として同梱されるアペントディスクのパッチを前作に適用することで
各『つり乙』ヒロインとのアフターストーリーが追加
『つり乙』本編にて(Navelのサイトで新たに配布されたパッチもあてれば、アフターストーリーの方も)朝日がフルボイス化
される。本来の意味(?)での前作の続編を求める人はこちらを楽しもう。
念のため繰り返すが、この特典はあくまでパッチ。前作『月に寄りそう乙女の作法』とセットでなければ機能しないことに注意。
手順としては、『つり乙』がインストールされている状態でアペンドディスクのパッチを適用し、
次に『つり乙』のゲームディスクを認証させることでアペンド版がプレイ可能となる。


また、アペントディスクにはNavelがweb上で公開しているエイプリルフール動画『月に寄りそう乙女の作法 衣遠兄様の華麗なる一日』がゲーム形式で収録される。
約一名の凄まじいキャラ崩壊っぷりが笑いを誘うが、実は『乙女理論』本編に関する伏線があちこちに……。未見の人は乙女理論のプレイ前にこなしておくといいかも。



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最終更新:2023年10月08日 17:42