パワー9(MtG)

登録日:2009/05/27 (水) 21:37:35
更新日:2023/08/16 Wed 15:29:51
所要時間:約 10 分で読めます




パワー9(パワーナイン、Power 9)は、Magic the Gatheringの黎明期とも言える、
アルファ・ベータ・アンリミテッド環境当時に存在した、あまりに強大な力をもった9枚のカードの総称。


一覧


Black Lotus (0)
アーティファクト
Black Lotusを生贄に捧げる:あなたのマナ・プールに、好きな色1色のマナ3点を加える。
Time Walk (1)(青)
ソーサリー
あなたはこのターンに続いて追加の1ターンを行う。
Timetwister (2)(青)
ソーサリー
各プレイヤーは、自分の墓地と手札を自分のライブラリーに加えて切り直す。その後、カードを7枚引く。
Ancestral Recall (青)
インスタント
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを3枚引く
Mox Pearl (0)
アーティファクト
T:あなたのマナプールに(白)を加える
Mox Sapphire (0)
アーティファクト
T:あなたのマナプールに(青)を加える
Mox Jet (0)
アーティファクト
T:あなたのマナプールに(黒)を加える
Mox Ruby (0)
アーティファクト
T:あなたのマナプールに(赤)を加える
Mox Emerald (0)
アーティファクト
T:あなたのマナプールに(緑)を加える

以上の9枚がパワー9と呼ばれるカードである。
その強さに関してはリンク先の項目を見ていただくとして、「パワー9」なんて大層な称号をもらっているのだから圧倒的に強い。
とはいえ「追加ターン」と書いてある《Time Walk》、雑にカードを3枚引く《Ancestral Recall》以外のカードの強さは、初見では他TCGのプレイヤーには通じにくいかもしれない。

解説

ざっくばらんとした説明になるが、このゲームは「1ターンに1枚しか土地を出せない=マナを1ターンに1つしか伸ばせない」という根本的な制約がある事を留意して頂きたい。
それを踏まえると、上から順にこんな感じになる。
  • 一時的だが3ターン分のマナ確保(1ターン目に4~5マナあたりに手が届く=相手に先んじてパワーカードを展開できる)
  • 非常に軽いコストで追加ターンを得る(現在の相場だと5マナ以上)
  • 全プレイヤーの消耗した山札と手札を疑似的に初期状態に戻す*1
  • どのタイミングでも使える1マナ3ドロー(現在の相場だと5マナ)
  • 土地とは別扱いでコスト無しにマナ源を追加展開。各色対応の5種類あり

こう書くとその凶悪さが分かるかもしれない。しかもいずれもレアリティはレア。
現在のカードとはもちろん、当時からしても次元の違うぶっ飛んだ強さゆえ、誰もが当たり前のようにデッキに投入する。そして少ないコストで多大な効果を得られるこれらのカードは環境を大きく定義する。
結果として「デッキに投入しないと勝てない・入れなければならない」という誤った認識さえ生まれたほど*2

現在はヴィンテージでのみ各種1枚ずつ使用可能で、他のフォーマットでは基本的に禁止カードかそもそも使用不可カード扱い。
一応《Timetwister》は統率者戦では使用禁止されていないので使える。むしろ統率者需要のせいで下手なパワー9よりも値段が高くなっているなんて話もあるくらい。


9枚のうち6枚が0マナのマナ・アーティファクトであり、TCGにおいて最上級の汎用性を持つ。
特に《Black Lotus》と色の合うMoxに関しては「本来よりも数ターン早く行動できる」ため、入れない理由がほとんどない。
さすがに色の合わないMoxまで「どんなデッキにも入る」というのは言い過ぎだが、無色マナ代わりでも良いからマナ源を早期構築できれば重いカードを素早く唱えられる様になる局面は多い。Moxより使いづらい様に調整された後発カードですらスタンダードやモダンでたびたび規制されている事からも、カードパワーはずば抜けて高い。
もしくは「唱え易い呪文(消費無し)」「頭数を揃え易いアーティファクト」という性質を見込んで投入するデッキもある。

残りの3枚は揃いも揃っての呪文である。青の呪文は簡単に投入出来ないように見えるが、青マナ要求はどれも1マナだけな上に青マナを出せるMoxがあるのでやっぱり簡単にデッキに入る……というよりもこの3枚の存在に加え、青には他の色に比べて
  • ドロー
  • 追加ターン
  • ブロック不可
  • 打ち消し(無効化)
  • カードのアンタップ(≒ターン1回制限効果の再利用)やスペルの再利用
など、「システム的に強力なカード」が多いので「デッキを青に寄せる」という理由になってしまう。

さすがに世界初のTCGであり、「前例やノウハウがない」からこそ生み出されたカードといえるだろう。
最近でも新規TCGは出てくるが、MTGをはじめとしたこれらの前例のせいで「マナ加速、追加ターン、過剰なドロー」の3つに関してはかなり警戒されたデザインになっている。
逆にこの前例があまり重要視されていなかった時代のTCG、特にポケモンカード、デュエルマスターズ、遊戯王OCGなどの最初期のぶっ壊れカードの話は今でもオタクたちに好まれる話題である。

近年では、他のカードゲームにおいてパワー9を決めると言った動画が出ることもある。

現代において

取引価格もニアミント(美品の最低基準)以上であれば非常に高額になり、プア(非常に傷が多いもの)のものですら高額で取引される
ちなみに2017年3月現在、一番価値の低い「アンリミテッドのヘビープレイド9枚セット*3」が120万である*4


なお「パワー9」という言葉は「高いパワーを持つカード上位9枚」の事では無く、「マジック史においても重要な意味を持つ上記9枚」に対する尊称である。
出現から長い月日が経ち、カード・プールの拡大に従って、これらよりも高いパワーを持つカードも生まれつつある*5
特に《太陽の指輪》は英名である《Sol Ring》と《Black Lotus》とMoxen*6との合成語である「SoLoMoxen」の一角になるレベル。アンコモンだからパワー9に入らなかったとネタにされることもある。
例えば《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》などがそうであるが、それらが上記9枚に取って代わったり、数が加わって新しく「パワー10」「パワー11」を名乗ったりする事は無い。
一応ある1枚が黎明期のプレイヤーに特別に仲間入りを許されたため「パワー10」と言われる事はあるのだがそれはまた別の話だし、そもそも現在パワー10なんて言うと大体この話になってめんどくさいのでまず言われない。
とはいえパワー9の末席として参入を許されたという唯一の実績を持つカードではある。


そしてこれらのカードは
  • 高いカードパワーゆえの需要
  • 初期にしか印刷されなかった希少性
  • 「パワー9」という名前を付けられたことにより爆上がりした知名度
から値段は沸騰した。コレクターの資産価値を保証するため、再録が紙媒体では絶対にされない事が保証されている(再録禁止カード)
その為今後もこれらのカードの値段は上昇していくと予想されており、実際MTGが始まってから今に至るまでずっと値上がりが続いている*7
MTGでは「カードが欲しいならその時買え」とよく言われるのはこれが理由。
つまりあなたがこの項目を読んでいる今現在はもっと値段が高いかもしれない、ということ。言い方を変えれば「ヴィンテージや統率者戦でさんざん遊んだ後にカードを売るとなぜか買った時より金が増えた」なんてことが起こるというわけ。
いつかバブルがはじけるだろうと言われ続けて20年近く、いまだに値段が上がり続けている。


TBSの番組『東京フレンドパーク』のダーツの景品として、格闘家の佐竹雅昭(MtGフリーク)氏が
「アルファのジェムミントのパワー9全種」(つまり「初期ロットの最美品」=最も価値の高いカード)を要求した。
だが番組が調べた結果、その合計金額はパジェロより高くなることが判明し、
結果、《Black Lotus》《Ancestral Recall》の二枚(当時の価値で総額10万円。二枚で)で妥協した、しかもアルファジェムミントではないもので。
なお佐竹氏はこの放送でダーツを外し、結局後日コレクターから買ったとのこと。
念のため言っておくが、当時でも《Black Lotus》の「リミテッドエディション・アルファ、ニアミント」(初期ロット+パックから出てきたばかりくらいの美品+9枚の中で最高価値)1枚で120万が相場である。現在は驚きの2000万円。ニアではなく、世界で7枚しか確認されていないジェムミントに至っては5000万円オーバーとなった。
当時のレートでもアルファジェムミントなら、パワー9最安値の《Mox Emerald》でも20万は軽く越えてくる。
このクラスのカード9枚となれば、そりゃパジェロより高くなるのも納得出来るだろう。2021年に同じことやったら果たして買い戻せるかどうか……。

これらは後のマジック界にも影響を与えており、多くのカード・デザインの基礎(と言っても、反面教師的な立場ではあるが)となり、また数多くの調整版・リメイク版の亜種も生まれた。
パワー9そのものも世界大会優勝者に送られる「盾(トロフィー)」代わりのカードに選ばれる事がある。大判カードで公式に使うことはできない(使えてもデカ過ぎて不便)なのでこれは再録禁止には抵触しない。


ぶっ壊れカードの多いTCGの歴史であるが、パワー9はTCG史上初のぶっ壊れカードと名高い。マジックは詳しくないが、パワー9なら知っているというプレイヤーも多い。
特に《Black Lotus》はその名前の憶えやすさと値段から
  • 面積だけなら銀座の土地より高い
  • 「粉末にするとふりかけは高級車より高くつくらしいがロータスはもっと高い
  • 「高級車は移動できるだけだがロータスは3マナを出せる
など、しょっちゅう大喜利のネタにされる。ここまでくるとヴィンテージワインである

また、MTGひいてはTCGプレイヤー・コレクターにとってパワー9の所持は憧れであり、一種のステータスとしても機能する。
コレクターの中でも印刷された時期で格がついており、できれば高いほうを買いたいと思っているうちにどんどん値段があがっていく。

遊戯王原作の初期には、海場社長が作中でレアカード《青眼の白龍》のためにコレクターを自殺に追い込んだというなかなかロックな話が出てくるが、実は似たような話で2012年に「《Black Lotus》をはじめとしたカードコレクションを目当てにした殺人事件」という話が報道された。これは純粋な窃盗目的だったらしいが、加害者もプレイヤーだった。
また、「息子のコレクションを断捨離する」という名目でヤフオクに出品されたことが「こんなの息子自殺するだろ」と大きな話題を呼んだ。

当然ここまで高額なカードなので偽造の話も多く、古いカードゆえに印刷技術が今に比べて低いこと、状態が悪いものも多いため偽造のハードルもかなり低い*8
上記のヤフオクの話も偽造カードではないか?という説が有力である*9
偽造にまつわる話としては、
  • 「カナダで捕まったカードの偽造団が一番印刷していたのが《Time Walk》だった」
  • 「本国で偽造したカードをトレカ大国の日本に持ってきて売ろうとする。言葉が通じないふりをしてボケ通す」
など、暗い話題にも事欠かない*10
無論、偽造カードの販売は「商標権侵害」「著作権法違反」「詐欺罪」などで処罰されるため、絶対にやってはいけない*11


現代の使用環境

さて、このパワー9は現在ヴィンテージでしか使えず、そのヴィンテージでは「ほとんど投入されている」と思われがちである。
確かに一時期は「色が合わなくとも無色が出る土地扱いで」Mox全投入(ついでにアンリコとタイムウォークもほぼ投入*12)のデッキが当然だったため完全に間違った認識ではない。
書いてあることが強いし、特に色の合わないMoxも「重いカードを素早く唱える」という理念に合う。1ターン目に4マナとか5マナのカードが出てきたらゲームにならないのだ。
しかしカードの質が上がり戦略が洗練されるにつれて「1マナ加速しかしない色の合わないMoxより、それらのパワーカードの密度を高めたほうがいい」という理屈から、必要分のMoxしか使わない方向にシフトしていくことになる。
当時はアーティファクト対策が横行しているという環境の事情もあるし、その後も主に白のカードに「1~2マナで使える強力なメタ能力持ちカード」が増えていったので、現在ではMoxをフル投入しないデッキもだいぶ多くなってきた。
特殊な戦略をとる【ドレッジ】に1枚も入らないのは有名だが、それ以外ならどんなデッキにも入りそうな《Black Lotus》すら【ホロウヴァイン】などにも入れないレシピがある
軽量カードによる即死コンボを仕掛けるデッキ(【ハルクフラッシュ】や【ベルチャー】)では《Time Walk》も入らないこともある。こういうデッキでは追加ターンを得てもやることがないため、せいぜい《探検》《成長のらせん》のような効果にしかならないからだ。
ヴィンテージの【デス&タックス】(白ウィニー)では、パワー9のうち青の3枚を入れないことも多い。デッキが青くないんだから当然である。
これらのカードは相当に強力なのだが、使える環境では「デッキの方向性にがっちりマッチしてない限り入らない」って意味では他環境どころか他のTCGと全く同じなのである。その方向性が指す範囲がやたら広いってだけで。

また、これらのカードが中心に存在することを利用した戦略というのも存在する。
最近のプレイヤーにもわかりやすい例を言うと、たとえばMoxなんてオーコに鹿にされて【オース】からエムラを呼ぶための餌にされる
非常に極端な例だし、もちろんそのうえでMoxは強いのだが、「パワー9を採用するデッキが多いことを前提にした戦略が組まれ、それらのデッキにもパワー9を入れることができる」という意味では結構バランスはとれているってわけ。


ヴィンテージはパワー9をはじめとした他環境の禁止カードが許されているからと言ってよくプレイヤーが想像するような世紀末環境というわけではない点には留意していただきたい。
やってみると多様性もあって「意外と普通のMTGだな」ってなる…っていうか下手な時期のスタン*13より全然平和だったり。
いくら強いカードでも、どんなデッキにも無条件に入るわけではないのだ*14

ただしヴィンテージという環境は減価償却パワー9をはじめとした古い時代のカードを使ってもらうために制定されているフォーマットだ、ということも忘れてはいけない。
たとえばMox対策として様々なデッキに投入されていた《虚空の杯》が制限カードに指定された時の文言がこちら。

「モックスを使わないことで対応はできますが、このフォーマットの意義の1つがそれらのカードを使える場所を提供することなのです。」

これ自体は環境のトップメタだった【ワークショップ】を咎めるための制限改訂だったが、同時にMoxを存分に使えるようにするための配慮でもある、という姿勢を大きく打ちだした文章である。


《Timetwister》だけは、パワー9の中でも少し事情の異なるカードである。
このカードは自分だけが暴利をむさぼる他の8枚と違い、対戦相手の山札を修復したうえで7枚ドローさせてしまうという欠点がある。
盤面には一切干渉しない上で相手にドローさせてしまうというのは、どんなカードゲームでも利敵行為につながる*15ためかなり危険で、そのため格が一段落ちる扱いを受けてしまいがちである。
パワー9の中でも格落ちするカードという印象は多くのプレイヤーの共通認識であり、実際ヴィンテージでも「他の8枚は無条件に投入されるがこいつだけは別」という扱いだった時期も多かった。
そしてこの風潮に加え、調整版の《時のらせん》が【MoMA】で大暴れして禁止になったのに対し、こちらは大した話を聞かないため一時期は「パワー9のくせに後継カードに追い抜かれた」ような扱いを受けることもあったほどだ。

しかしこのカードは、後の調整版カード《先細りの収益》すら【MoMA】に投入されたことからも分かるように「ソリティアとの相性が極めて良い」。
また3マナと軽量なこと、処理を行った後にこのカードが墓地に残るので再利用が容易である。そのため試しに4枚解禁してみたり、レガシーなどで1枚解禁してみるととたんにわけのわからないコンボデッキが生まれてくる
強いことが分かりきっているほかの8枚に比べると、こちらはパンドラの箱というポジションなのかもしれない。

統率者戦で使用が許されているのは、ショップの在庫を掃くため周囲に7枚をドローさせるという性質が、すべてのプレイヤーの手札が詰まってしまうことでダラダラしがちな倦怠感を軽減するためだろう。
現在では統率者戦の流行によりよく売れるらしく、値段も下手なMoxを超えるようになり今では格落ちというよりも「別の方向性で活躍」といったニュアンスになってきている。
そもそもヴィンテージよりEDHのほうがやる機会多いからね、しょうがないね。

カードゲームを問わず、この手の大量ドローは強力である。
弟分のデュエル・マスターズにおいてほぼ同じ効果を内蔵した*16クリーチャーの《サイバー・N・ワールド》が登場し、案の定こちらもソリティアデッキで一時期大暴れしていた。とはいえ、こちらは相方の《ボルバルザーク・エクス》が壊れすぎていただけであり、エクス規制後は一部のループデッキが迂遠なフィニッシュコンボのパーツとして使うことが稀にある程度の立位置に落ち着いている。
まったく関係のない遊戯王でも《ファイバーポッド》は禁止リストに名を連ねてから長い時間が経っている。マッチキルやフルバーンで存分に暴れまわった話が有名だが、当時にしてもカジュアル環境で友人が使うファイバーに理不尽さを覚えた人も多いだろう。


Magic Onlineにおいては、Vintage Mastersにのみ特殊レアリティ「スペシャル」(53パックに1枚の確率)で収録されている。
再録に見えるが紙媒体では無いので別にルール違反ではない。そもそもこの環境にはこのセットが発売されるまでパワー9そのものが存在しなかった。
現在ではヴィンテージのデイリーイベントなどが行われており、日々様々なデッキがしのぎを削っている。紙でそろえるよりは断然安いので、もし興味があるならMOでプレイしてみることを強く強く強くお勧めする*17
挨拶代わりにワンパンされたりもするがやり込むと多様性もあって「なんだかんだで普通にMTGしてるな」ってなる。


また年末年始などに開催される「キューブ・ドラフト」の大会ではこれらのカードも入ったキューブが作られ、運が良ければ使用できる。
大会が終わったら消滅するので資産になることは無いと判断したのだろう。データカードだからこそ出来る技である。

余談

以上の話から「MTGのカードの中でも最高峰の価値を持つカード」と思われがちだが、実はコレクターに言わせると、この程度だと「金を出すだけで入手できる」ためまだまだザコの部類らしい。ハンターハンターのヨークシン編にそんな話あったな
というのも、世の中には超特殊なプロモカードやエラーカードの流出品というものがある。つまり「そもそも希少価値そのものがばかげて高い」カード。

  • 古いエキスパンションのPSA9〜10(カード鑑定会社によって完美品評価を受けたもの)のカード全般*18
  • エラーカードがやたら多く本来廃棄される予定だったものがうっかり出荷されてしまった「サマーマジック」版のエラーカード
  • 本来Foil版が存在しないはずのエキスパンション「エクソダス」のFoil版カード(テストカードが流出したものと言われている)
  • リチャード・ガーフィールド氏に子息が生まれたことを記念し関係者にのみ配布された《Splendid Genesis》《Fraternal Exaltation》
  • 同じくガーフィールド氏再婚時に制作され、現存が確認される僅か3枚のうちの1枚が何故かマーケットに流れた《Phoenix Heart》*19
  • 有名なプロポーズ用のカード《Proposal》 (ただしこちらは現物の絵を知っている人がまずいないし、いたとしても言わないだろうからそういう意味では真贋の判断すらできない)
  • 現時点で現物が存在するかどうかも分からない記念品カード《1996 World Champion》(このカードが埋め込まれたトロフィーが盗難されたため、完全に行方不明になっている)
  • ホビージャパン関係者が厳重保管、貸し出しも限られている《Shichifukujin Dragon》(ちなみに1996WCとともに「世界で一番貴重なトレカ」でギネス記録入りしている。
  • そもそも正式なマジックのエキスパンションとして扱われない非公式セットのカード*20

ここまでくると単にマニアックな品物となる。MOなどのデジタルゲームでも使用できないカードが含まれており、まさに高嶺の花。
ウィザーズ側もこういった「お宝」が社員から流出することを防ぐために、最近社員に配られる特殊カードはデュエマからイラストを流用した上で「MTGとは裏面が違う(裏面のデザインは非公開)」と公言されている。
真贋が判断できないから、マニアになるほど高い値段がつけられないのだ。


さて、上述のバカみたいに高い値段と希少価値が参入障壁となり、エターナル系のフォーマット自体が極めて先細っている*21ことから大会参加者が減ってきている。
そのため2010年代後半からは「パワー9および数枚のパワーカードのみプロキシで参入することを許可する」「サイドボードを含めてデッキに○枚プロキシを入れることを許可する」というルールで行われる大会も増えていた。
そしてさらに、MTG発売30周年を記念した「MAGIC 30TH ANNIVERSARY EDITION」では、裏面や枠が異なる金枠カード≒公式のプロクシが収録されることが決定した。アンティに関するカードとイラストがえっちなカード以外は収録されるため、パワー9どころか《Kudzu》《Fastbond》、それどころか《ジャンプ》や色サイクルのような誰得枠なども網羅されている。
早い話が公式プロキシ*22で、テキストがちゃんと現在準拠になっているので偽造対策もしっかり行われている。
今後この潮流が強まっていくと、「再録禁止カード自体の価値は落ちていないのでセーフ」という理屈で再録禁止リストをすり抜けた金枠版の再録が常態化していくかもしれない。再録禁止カードの日本語訳も出るかもしれないぞ!

その一方で2010年代末期あたりから、非常にディープな店員以外普通に騙せてしまうレベルで精巧化した贋物が出回ったり、ヤフオクやメルカリなどで「プロキシ」として偽物を堂々と販売するという行為も目立つようになっている。
「パワー9の値段が高くてヴィンテージに参入できない」という問題はそろそろスマートに片付きそうだが、この問題全体が落ち着くにはまだまだ時間が必要そうである。


「考えてもみてよ」とハナは項目をながめながらしみじみと言った。
「こんなに粗だらけの項目が、アニヲタの追記修正欲を起こさせるなんてね」

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最終更新:2023年08月16日 15:29

*1 遊戯王の禁止カード「ファイバーポッド」あたりが近い。ロックマンエグゼ3でぶっ壊れと名高い「フォルダリターン」なんかもある意味近いか

*2 そもそも「当たり前のようにデッキに投入する」って文章自体がこの誤った認識そのものである。

*3 印刷枚数が多い+スリーブに入れてないとマークドで反則になるレベルのヨレヨレカード9枚。

*4 この話を書いたのとは別の筆者だが、2010年前後にあるショップのショーケースで「パワー9セット一式で60万円」というのを見たことがある。状態は覚えていないものの、当然だが60万円でショップ中で話題になるほどの高嶺の花扱いだった。

*5 っていうかすでに《Wheel of Fortune》《悪魔の教示者》あたりは相当強かった。

*6 Mox5枚をひとまとめにしたもの。

*7 よく言えば「MTGプレイヤーが高齢化したことで資産に余裕ができたことから「憧れに手を出す」ことができるようになって需要が高まっていること」、悪く言えば「再録禁止が保証されている=絶対に値段が高くなる上に需要があることが明確なのでバイヤーの介入を非常に招きやすいこと」などが要因。

*8 現在は見破るための技術が高まっていることから一概にそうとも言えない。

*9 パワー9が目立つ前方に出ていることなどから。また、仮に偽造だとしても「息子がやったこと」だと責任転嫁できる。

*10 というか今更紙のパワー9の話になると、大体話題が暗くなってしまう。レスバトルの定番「再録禁止撤廃論VS買えないお前が貧乏人」とか「コレクターに2EDのアンリコは2枚しか引けないんですよ~と嫌味ったらしい冗談言われた」とか。

*11 日本国内でも偽造したTCGを販売した者が逮捕されている。

*12 青いってことは《意志の力》や《誤った指図》も使える=めっちゃ強い。特に「FoWとブレスト使える青は強い」は当時のエターナル環境の基本の考え

*13 オーコや3テフェのように最終的に禁止になったカードが支配的だった時期や、エルドレイン期やカラデシュ期のような禁止改定が頻発した時期は容易に想像がつくだろうが、他にもフェアリーや続唱、Φマナ期やカンパニーのように「禁止になるほどではないが間違いなくゲームをゆがめている」ような時代などと比べてもバランスがいい。右も左も即死コンボのようなイメージがあるだろうが、墓荒らしやデスタクのように相手を縛り上げていくタイプのデッキや、ドレッジのように毎ターン強い動きを押し付けていくデッキもあるので実際は「普通のフォーマットの動きがバカみたいに派手になっただけ」といった趣。さらにヴィンテージは世紀末的なイメージに反してプレイヤーの競技志向がレガシーより低く、「クソ環境だと思ったらしばらく別のフォーマット(現在だと大体EDH)や別のゲームに避難する」「そもそもヴィンテージが息抜きである(MO勢やプロキシ認可環境に多い)」という選択を取る人も多いため、その値段やカードパワーに反して「最もカジュアルな公式フォーマット」とも言える。

*14 余談となるが、かつて遊戯王の《強欲な壺》をはじめとした「必須カード群」やポケモンカードの《オーキドはかせ》《エネルギー・リムーブ》などはどんなデッキにも入るカードだった。この時期のカードゲームをプレイしたことがあると、「こんなに強いのだからどんなデッキにも入るに違いない」と勘違いしてしまうのかもしれない。実際8枚入ってた時期もあるし。

*15 対戦相手の手札を潤沢にしてしまうのは当然として、さらに《意志の力》をはじめとした手札を犠牲にマナを使わずに唱えられるカード群で相手の妨害を招いてしまう。

*16 初期手札枚数が異なるためそこだけは違う

*17 紙でそろえるよりは断然安いと言ったが、MOの中だとぶっちゃけかなり高い。

*18 現存するのが世界に一桁枚数というのも珍しくなく、ベータ版の《因果応報/Karma》と《Darkpact》に至ってはPSA10が1枚も発掘されていない。

*19 当時の価格で800万。

*20 マジック黎明期、まだ著作権などの概念が曖昧だった時代に、ウィザーズ以外の第三者により作られたセット。「Middle Ages」などが有名だが、当然ながら即発売停止になっている。

*21 これは値段もさることながら、人間自体の健康や寿命なども問題になる。ヴィンテージプレイヤーも今は病気や老化や死去、そうでなくとも数百万になるような資産とそれで遊ぶ時間を天秤にかけて金を選ぶ人もいるし、そもそも遊び道具なので遊びに飽きたら引退するのだ。

*22 これは初の試みというわけではなく、禁止カード(MtG)の項目の「金枠」の部分を見ればわかるように、20年ほど前までは普通に販売されていた。