遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant

登録日:2011/06/02(木) 12:44:27
更新日:2023/09/28 Thu 06:04:47
所要時間:約 2 分で読めます




Elspeth, Knight-Errant / 遍歴の騎士、エルズペス(2)(白)(白)
伝説のプレインズウォーカー エルズペス(Elspeth)
[+1]:白の1/1の兵士(Soldier)クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
[+1]:クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+3/+3の修整を受けるとともに飛行を得る。
[-8]:あなたは「あなたがコントロールするアーティファクトとクリーチャーとエンチャントと土地は破壊されない。」を持つ紋章を得る。
初期忠誠度:4

アラーラの断片で登場したプレインズウォーカーで、1枚目のエルズペス。レアリティは神話レア。
忠誠度能力は+1でトークン生成又はクリーチャー1体にパンプ&飛行付与、-8で破壊不可効果。

2つの忠誠度プラスによる効果は優秀で、主にトークン生成が使われる。
トークン生成がこのカードのメインで、プレイヤーとエルズペスを守れるために忠誠度を上げやすい上、相手の対応が遅れればもうひとつのプラス能力を用いてアタック要員にもなれる。
コントロールデッキはもちろんの事、白ウィニーでも使える。この能力で地道に忠誠度を積み重ね、奥義に繋いでいくのが理想。

忠誠度-8で使える最大効果はプレインズウォーカー以外のパーマネントは破壊されない紋章を得るというもの。
この紋章というものが曲者で、ごく一部のカード(例えばカーン)を除き、紋章を取り消す事は不可能である。
この効果を使われたらほぼ負けに近い、というかそんなになるまでエルズペスにプラス能力を起動されていたら敗色濃厚である。そしてこのプラス能力の起動が実にたやすいため、本当にしぶとい。
「無視できない脅威」であるにもかかわらずまともに倒そうとするとトークンが邪魔だし、クリーチャーを展開すれば《審判の日》なんかが飛んでくるのだからまともにやってられない。
全体火力も除去も効かず、増えていくクリーチャー…そこに清浄の名誉等が張られていたら…
とはいえ、破壊されないだけでバウンスや追放、マイナス修正などは普通に受けるので注意。
また、この時期はトーナメントシーンで見かけるカードに直接火力が多く、《荒廃稲妻》のように現在のルールでは不可能なカードがプレインズウォーカーを直接焼きに来ることもあった。

アジャニとは違い、このカードは劣勢をやりすごす事の出来る可能性を秘めている。そのしぶとさがこのカードの魅力だろう。

当時の愛称は「ペス」「ペス子」などであり、まったくトーナメントに出てこなくなった現在でも「遍歴ペス」などと呼ばれることがある。
一時期は《精神を刻む者、ジェイス》とともに最強格のプレインズウォーカーとして名を馳せており、白絡みのデッキにはほぼ間違いなく入っているカードだった。
さらに当時のコントロールデッキは青のインスタントが絶句するほど弱かった都合から「タップアウト・コントロール」という構えないコントロールデッキが主流だったため、
その戦術と完全に合致するエルズペスは入れない理由がないほどの強カードだったのである。一時期は《悪斬の天使》とともに白の強さを強力に支えた。
中には5マナ以上の続唱呪文から神ジェイスで積み込んだプレインズウォーカーを唱えていくようなデッキ「バントビッグマナ」や、
強いプレインズウォーカーを山積みにした当時のレガシーデッキより高額になるスタンダードのデッキ「プレインズウォーカー・コントロール」なんてものまで登場してしまい、当時のプレイヤーを戦慄させた。
スタンダードどころかレガシーの白系コントロールや白スタックス、エンジェル・ストンピィ、Zooにおいても採用されていたほどの強カードで、プレインズウォーカーという当時新しかったシステムの定着にも一役買った。
2つのプラス能力のおかげで奥義にも手が届きやすく、しかも片方は自分の身を守るトークンまで出してくれる。「負けている状況を耐えながら勝利につないでいく」という、実に彼女らしいカードである。
「一人去るとき」の黒や、ティボルトとチャンドラで大悶絶していた赤が欲しがっていた「強いプレインズウォーカー」の理想像とも言える存在であり、当時の黒スレでヴェリアナがやたら酷評されていた原因のひとつ。

一方でモダン制定以降はそこまで使われておらず、ある時期を境にまったく環境で見かけなくなった。
そのためこのエルズペスが、かつては最強のプレインズウォーカーの一角として名を馳せていたという話を知らない人も多い。


◆ストーリー
エルズペスはアラーラの断片の一つ、秩序を重んじる階級社会の次元「バント」に住むプレインズウォーカーである。
かつて彼女の故郷はファイレクシアによって侵略され、その時にプレインズウォーカーになった彼女はいくつかの次元を転々とした後、自身の理想郷であるバントに住むようになった。
彼女は自身がプレインズウォーカーであることを隠しており、あくまで一人の騎士として振舞っているが、その高潔な行いに魅せられるものは少なくない。
だが、ニコル・ボーラスによるアラーラの統合によってバントに迫る脅威に対し、やむを得ずプレインズウォーカーの力で対抗してしまう。
バントは守られたが、バントに住人たちが彼女を見る目は変わってしまう。
また、別の断片の侵略による傷跡、他の断片との統合によってエルズペスの理想であった高潔なバントは失われてしまった。
戦いが終わった後、エルズペスは部下に後の事を任せてバントを去った。

この時期こそ魔法主体のように描かれていたが実は結構な肉体派であり、この時期から剣や槍の扱いには非常に長けている。



エルズペス・ティレル/Elspeth Tirel (3)(白)(白)
伝説のプレインズウォーカー エルズペス(Elspeth)
[+2]:あなたはあなたがコントロールするクリーチャー1体につき1点のライフを得る。
[-2]:白の1/1の兵士(Soldier)クリーチャー・トークンを3体生成する。
[-5]:土地とトークンを除く他のすべてのパーマネントを破壊する。
初期忠誠度:4

ミラディンの傷跡で登場した2枚目のエルズペス。レアリティは1枚目と同様。

1つ目の能力は自軍依存の回復能力。2つ目の能力とのかみ合わせが良い。忠誠度も一度に2上がるので、プレイヤーへの回復も含めて総ライフ量を引き上げてくれる。クリーチャーが十分展開できていれば、黒や赤はこれだけでゲームセット。
2つ目の能力は1枚目と同様のトークン生成。忠誠度マイナス能力になってしまったが、出てくるトークンは3体となった。1枚目のようにポンポン使えるわけではないが、十分強力な能力。盤面は選んでしまうが、爆発力は遍歴時代よりも増した。
3つ目の能力は白の古典的豪快リセット。いわゆる奥義枠ではあるが、出した次のターンには使えるようになる。自身とトークンは巻き込まれないので、盤面によっては一方的な場を作る事も出来る。

1枚目よりも重くなってしまい、粘り強さこそ失われたものの、トークンとの相性が抜群なため、隣接するイニストラードブロックのそれらとかみ合っている。
特にトークン生成が非常に強力。使い方がかなり難しいカードであり環境との相性にそこまで恵まれたカードではなかったのだが、それでも白絡みのコントロール系デッキではよく採用されていた。
特に「増殖コントロール」や「青白ヴェンセール」といった鈍足系のデッキで用いられていたが、それらのデッキがそこまで主流にならなかったことからもお察しください。
そもそもこの時代のスタンダード、他のカードが全体的に強すぎて別にこいつに頼る必要がなかったんだよなぁ……。

変わったところでは《荒れ野の本質》を用いるデッキで使われた。このカードは「出てくるクリーチャーは《荒れ野の本質》のコピーになる」という能力を持つ6/6のクリーチャーなのだが、
《荒れ野の本質》が出ている状態でトークン生成を使うと、出てくるトークンが6/6でしかも1体でも残っていれば次から出てくるクリーチャーが6/6になる。非常に相性がいいのである。


◆ストーリー
バントを去ってから、エルズペスはドミナリアの闘技場で戦いに明け暮れていた。
そんなある日、闘技場に現れたコスに誘われてヴェンセールを捕まえに行き、そのままミラディンへと赴く。
だが、かつて自分の故郷を侵略したファイレクシアの者たち*1と出会ってしまったことでメンヘラを発症し、武器を置いてしまう。
コスの仲間たちの下で何とか立ち直り、ヴェンセールの提言でカーンを救出するも時すでに遅し、ミラディンはファイレクシアの油によって「完成」し、新ファイレクシアとなってしまった。
カーンがどこかの次元へ去った後も、コスとエルズペスは新ファイレクシアへの抵抗を続けていたが、日に日に悪くなる戦況にコスが捨て身の作戦を決行、エルズペスも付き添おうとするが、コスに説得されて別の次元へとプレインズウォークする。



太陽の勇者、エルズペス/Elspeth, Sun's Champion (4)(白)(白)
伝説のプレインズウォーカー — エルズペス(Elspeth)
[+1]:白の1/1の兵士(Soldier)クリーチャー・トークンを3体生成する。
[-3]:パワーが4以上のクリーチャーをすべて破壊する。
[-7]:あなたは「あなたがコントロールするクリーチャーは+2/+2の修整を受けるとともに飛行を持つ。」を持つ紋章を得る。
初期忠誠度:4
テーロスで登場した3枚目のエルズペス。レアリティは例によって神話レア。

1つ目の能力は2枚目と同様のトークン3体生成。だが、+能力になったため気軽に使えるようになり、防御性能も過去最高である。
2つ目の能力はこれまた白の古典的破壊。自分も高パワーのクリーチャーを使いにくくなるが、自身で生み出したトークンが巻き込まれる事はまずないの能力のかみ合わせは良い。テーロスには大型のクリーチャーが多いのも追い風である。さらに能力を起動しても自身が残るため、戦線を組み立てなおすこともできる。
3つ目の能力は全体強化の紋章を得る。ご丁寧に+2/+2修正なので、トークンが2つ目の能力に引っかかる事もない。これを安全に起動できたらほぼ勝利だが、この時期からプレインズウォーカーの奥義は「焦って起動すると逆転負けの原因になる」ということも増えてきた。大体「勝つ」と同じことしか書いてない神ジェイスとカーンってやつのせい

「着地したら投了」なんてことも結構多かったフィニッシャー枠。《至高の評決》などの全体除去からの巻き返しが非常に簡単であり、彼女を対処するためにトーナメントシーンでは《宿命的報復》《無慈悲な追い立て》を積むということも行われた。
能力こそ強力になったが、点数で見たコストは3枚の中で最重の6となったため、入るデッキをかなり選ぶ。少なくとも遍歴ペスのようにウィニーには入らない*2
しかし白絡みの遅めのデッキならば活躍できる性能は持っているため、トーナメントシーンでも大活躍した。彼女自身は派手な能力を持っているが、派手さのない堅実なデッキで堅牢に戦っている。
モダンで登場した「サンアンドムーン」というデッキは、ムーンは《血染めの月》、サンはこのカードの名前からとられている。

後述の通りストーリーでは殺し合うような間柄の仲だが、《ヘリオッドの指図》との相性は抜群に良い。
瞬速を持つ5マナのカードなので出す際に隙を晒しにくく、そこから続けざまに太陽ペスを出せば3/3が3体というすさまじい効率になる。
問題があるとすれば、そんなデッキ組むんだったらもっとまじめなコントロールを組んだ方がいいということだろう。結局この2人は仲良くなれる運命になかったのだ。


◆ストーリー
新ファイレクシアから逃れたエルズペスはすっかり傷心してしまう。そこでかつて訪ねたことがある次元のテーロスへと向かった。
バント程ではないが、彼女にとって良い思い出のある次元であったため、ここでエルズペスは戦いの疲れを癒やそうとしたのだ。
かつて訪れた際に出会った青年ダクソスとも再会し、エルズペスのバカンスは順調……に思われたが、テーロスも彼女を休ませることは無かった。
怪物ポルクラノスを倒したエルズペスに、テーロスの神の一人ヘリオッドが目を付け彼女を太陽の勇者に任命し、自分の下で戦うよう命じる。
元々ヘリオッドは、以前別の神パーフォロスと喧嘩をした際に剣を定命の世界へ落としてしまい、いくら探しても見つけられなかった。エルズペスがそれを持って他の次元へ旅立ってしまったからである。
それを持ったあの時の少女が目の前にいる。しかも神々のお気に入りであるダクソスとも仲良しだ。ヘリオッドの寵愛を受けるのはもはや必然だったのだ。
結局ヘリオッドの下で戦い始めたエルズペスは闘いの日々に引き戻されてしまう。そしてある時、テーロスの神になろうとするサテュロスのプレインズウォーカー、ゼナゴスの策略に嵌められてダクソスを殺めてしまい、ゼナゴスはテーロスの神の一人となってしまう。
お気に入りのダクソスを殺された上にゼナゴスが神に昇格したのはお前のせいだと糾弾したヘリオッドによって荒野に追放されたエルズペスは、エルズペスを追ってきたアジャニやゼンディカー生まれPWのキオーラ、青の神タッサなど多くの仲間に支えられ、ゼナゴスを討とうと再起し、ゼナゴスの居る地に向けて進んでいった。
そうしてたどり着いた神々が住まう世界の入り口であるクルフィックス神殿で、手はず通りならタッサが彼女に力を貸すはずだったが、エルズペスは自らの意志で死の神エレボスの名を挙げ、エレボスの出す試練を乗り越え、その対価として恋人ダクソスの復活を求める。
そしてアジャニや神ナイレアの力も借りてゼナゴスを打ち倒した。


これで終わりです。


一連の事件を片付けたエルズペスは、ナイレアから「ヘリオッドの怒りから逃れよ」と忠告され、アジャニにも説得されたが、力を使い果たした彼女は動くことができなかった。
ヘリオッドはついにエルズペスを捉え、《神送り》を取り返してそれでエルズペスの胸を一突きし、アジャニに向けて「定命の領域に帰り、エレボスの使者にその者の亡骸をくれてやれ」と言い放つ。
エレボスはエルズペスの願いを聞き入れ、しかし神の助力を請うたからにはそれに対する対価も必要であり、エレボスの使者たちがエルズペスを死の国へと連れて行った。
アジャニはなんとしてもエルズペスを連れていかせるかと奮闘しようとしたが、彼もまた傷ついており、現地のレオニンたちに保護された。
エルズペスは死の国へと連れていかれてしまう。波乱に満ちた人生は、ここで幕を閉じたのである。

一方、定命の世界――テーロスにおける生者たちの世界に、黄金の仮面を付けた一人の蘇りし者*3が姿を現していた。
それは、死の国から蘇ったダクソスの変わり果てた姿であった……



とまあ、エルズペスのストーリーはプレインズウォーカー史上でもかなりの鬱エンドとなっている(MTG的にはよくある事だが)
前後のラヴニカへの回帰/タルキールブロックが割とハッピーエンドで終わっているだけに、テーロスブロックのそれはひときわ目立つこととなってしまった。
特にエルズペスに引導を渡したヘリオッドの評価の凋落はすさまじく、このストーリーのせいで一時期Googleの検索サジェストでヘリオッドを調べると「カス」「クズ」とド直球な罵倒が出てきた上、「ヘリカス」「カスオッド」などとんでもないあだ名をつけられてしまい、
後にパイオニアで登場した《歩行バリスタ》と《太陽冠のヘリオッド》のコンボデッキが「バリカスコンボ」と呼ばれる、モダンホライゾンで登場した《ヘリオッドの高潔の聖堂》という名前が笑いを誘うなど非常に強い影響を及ぼしていた。
ひとえにエルズペスが高潔な女騎士で人気が高かったこと、それを自分の都合で謀殺したというストーリーのせいですっかりヘイトを集めてしまったのである。
中には「ギデオンが仲間を失ったのはこいつのせい」という論調が主流になるなど、割と風評被害的なものもこうむっていた。ヘリオッドが久々に登場した白の悪役*4であり、プレイヤーが耐性を持っていなかったというのもありそうだ。

なお、テーロスで出会ったダクソス(はるかに年下)とは男女の仲になっており、エルズペスに子供が出来ていたような描写もあった*5が、結局は死の国に囚われてしまった。
一応、死の国からの脱出は不可能ではないが、その場合はダクソスと同じく蘇りし者としての復活になってしまうため、何らかの外的要因が無い限りまともな復活はできないと思われていた。
もちろん裏を返せば「肉体が消滅したわけじゃないんだったら、なんか理由があればしれっと生き返るだろ」「死んだならヨーグモスみたいにはっきり言われてるはずだ」とも思われていたわけだが。これもまたMTGではよくあること



太陽の宿敵、エルズペス/Elspeth, Sun's Nemesis (2)(白)(白)
伝説のプレインズウォーカー — エルズペス(Elspeth)
[-1]:あなたがコントロールしているクリーチャー最大2体を対象とする。ターン終了時まで、それらはそれぞれ+2/+1の修整を受ける。
[-2]:白の1/1の人間(Human)・兵士(Soldier)クリーチャー・トークンを2体生成する。
[-3]:あなたは5点のライフを得る。
脱出 ― (4)(白)(白),あなたの墓地から他のカード4枚を追放する。(あなたはあなたの墓地から、このカードをこれの脱出コストで唱えてもよい。)
初期忠誠度:5
テーロス還魂記で登場した4枚目のエルズペス。レアリティはお約束通り神話レア。これまでの高貴そうな女騎士のイラストに比して、全体的に白黒っぽい雰囲気で焦りの見えるイラストが特徴。

能力のすべてが忠誠度マイナスであり、自力では忠誠度を増やすことはできず、いずれは墓地に送られてしまう。
しかし、テーロス還魂記のキーワード能力「脱出」を持っており、墓地のカードを追放すれば何度でも戦場へ舞い戻ってくる。
起動型能力も-2能力のトークン生成や-1能力の全体強化は放置してよいものではなく、かといって除去してもまた帰ってくる。理念通りに動けば大変いやらしいプレインズウォーカー。

再利用できるとはいえ肝心の脱出コストが非常に重く、コストや忠誠値に対してマイナス能力がそこまで強いわけではない。複数回の再利用をして初めて強いというデザインだが、重すぎて非常に使いづらい。
これまでプレイヤーは「ペス=強い」という印象を持っていたが、ここにきてようやく弱いエルズペスがやってきたといった趣であり、まったく活躍せずにスタンダードを去っていった。
もう少し言ってしまうと、他に強い脱出持ちのカードがいくつか存在しており、それと競合することを考えるとこちらを選ぶ理由がさっぱりないというのも挙げられる。

しかしエルズペス本人が弱くとも名前を冠する《エルズペス、死に打ち勝つ》というカードは非常に強く、環境を定義づけたほど。こちらは白絡みのデッキに頻繁に採用された。
「エル勝つ」「ペス勝つ」などと略されるほどに人気を博した。本人が弱くとも逸話は強くあり続ける。エルズペスとはそういう女である。

不屈の英雄、エルズペス/Elspeth, Undaunted Hero (2)(白)(白)(白)
伝説のプレインズウォーカー — エルズペス(Elspeth)
[+2]:クリーチャー最大2体を対象とし、それらに+1/+1カウンターをそれぞれ1個置く。
[-2]:あなたのライブラリーや墓地から、《栄光の重装歩兵/Sunlit Hoplite》という名前のカードを1枚探し、それを戦場に出す。これによりあなたがあなたのライブラリーを探したなら、ライブラリーを切り直す。
[-8]:ターン終了時まで、あなたがコントロールしているクリーチャーは飛行を得て+X/+Xの修整を受ける。Xは、あなたの白への信心に等しい。
初期忠誠度:4
テーロス還魂記のプレインズウォーカーデッキ収録のエルズペス。例に漏れず弱い。
初の白トリプルシンボルのプレインズウォーカー。

◆ストーリー
死の国のうち英雄たちの安息の地・イリーシアに送られたエルズペス。しかし悪夢を操るプレインズウォーカー・アショクの力が死の国にも及んできたことにより、エルズペスは過去の悪夢にうなされることになる。
しかし、アショクがエルズペスの悪夢の中で悪夢より恐ろしい存在、ファイレクシアの存在を知ったことによりテーロスを離れたことでエルズペスは悪夢より解放される。そして彼女の手には悪夢の中から持ち出したヘリオッドの槍クルソーによく似た黒い槍「影槍」が握られていた。

その頃、ヘリオッドは自らをテーロスの唯一絶対の神とするべく、ダクソスを亜神として蘇生させ、他の神々の神殿を破壊しようとしていた。当然他の神々は黙って見ているはずもなく、それぞれに勇者を亜神として対抗し、神々の戦争が勃発した。

この戦いの余波で死者の国と生者の世界の境界に裂け目が生じ、かつて死の国に封じられたタイタンやポルクラノスをはじめとする怪物たちが生者の世界にあふれ出すことになった。
エルズペスもまたこの機に乗じて死者の国からの脱出を目指すことになった。

死者の国の看守を務めていた運命の神クローティスは死という絶対的な運命を変えることを良しとせず、運命の工作員と呼ばれる配下を送り込んで阻止しようとする。
しかし対エルズペス用に特別に作られたケイリクスすらエルズペスには敵わなかった。そしてエルズペスは敵を打ち倒すたびに「この槍こそが本物のクルソーであり、ヘリオッドの持つ槍は偽物である」と宣言していた。

戦いの末にたどり着いた死の国の出口、そこには怒り狂ったヘリオッドが待ち構えていた。
ヘリオッドがクルソーを手にエルズペスを倒そうとしたその時、クルソーが砕け散る。先のエルズペスの宣言への信仰がヘリオッドへのそれを上回り、それが真実となったのだった。
ヘリオッドは降伏し、エレボスによって巨岩の下に封じられた。そして気を良くしたエレボスはエルズペスへの恩赦を認め、エルズペスは無事に蘇ることができた。
この一連の英雄譚は「エルズペス、死に打ち勝つ」としてテーロスで長く語り継がれることとなった。
そしてエルズペスはダクソスと再会した後、再び多元世界へと旅立っていくのであった。
一方その頃、エルズペスがテーロスからいなくなり追跡不可能となったことで自らの使命を果たせなくなったケイリクスは、苦悶の末にプレインズウォーカーとして覚醒、エルズペスの追跡を再開する。

この一件でエレボスが意外といい神様のように思われがちだが、実際には「いつか一泡吹かせてやりたいが自分ではどうにもできなかったヘリオッドに一泡吹かせた褒美」として蘇ることを超特別に許してくれただけであり、
ヘリオッドがクズすぎるだけで実際には「マジック・オリジン」のギデオンの短編をはじめ問題行動の方が目立つ神様であり、エルズペスの蘇生は本当に特例だった。
ともあれこれでエルズペスはストーリーラインに復帰することができたのだった。ギデオンの死がまだ非常に印象深く残っている中での「死んだ人が生き返った」展開はオールド・ヴォーソスに懐かしい気持ちを、新参ヴォーソスには安堵とともにギデオンが蘇るのではないかという期待と不安を与えた。

実は《執拗な探求》のフレーバー・テキストには致命的な誤訳があり、これのせいでケイリクスとエルズペスの関係を間違えて覚えている人も多い。
「ケイリクスは辛抱強く確実にエルズペスに付き従った。二人に運命的な対立が訪れるまでは。」と訳されているこのテキストだが、付き従うと訳されたfollowingはこの場合は「追いかける・追跡する」という意味。
つまり「ついていったけれど仲たがいした」のではなく、「元々殺すつもりで追いかけていた」のである。
エルズペスが人から恨まれるキャラではない上にケイリクス自身が緑白ということもあり、おそらく翻訳班もそこを忖度して訳して裏目に出てしまったのだろう。それに「運命的な対決が訪れるまで辛抱強く追いかける」ってのもなんか不自然だし。

テーロスブロックから打って変わってハッピーエンドとなったテーロス還魂記。しかし追跡者ケイリクスに新ファイレクシアに向かったアショクと、エルズペスの前途は多難である。多難じゃない時期なんてあったっけ
さらにニューカペナの街角のストーリーでは「蘇ったダクソスはもはやあの純朴な彼とはまったく異なる存在だった」「ケイリクスが追いかけてくるせいで安住の地がない」とアジャニに愚痴る姿があり、
一概にハッピーエンドというわけではなかったようである。ヘリオッドも岩を担いでいるだけなので、多分ソリンみたくそのうち戻ってくるだろう。

華やいだエルズペス/Elspeth Resplendent (3)(白)(白)
伝説のプレインズウォーカー — エルズペス(Elspeth)
[+1]:クリーチャー最大1体を対象とする。それの上に+1/+1カウンター1個と、飛行や先制攻撃や絆魂や警戒のうち1種類のカウンター1個を置く。
[-3]:あなたのライブラリーの一番上にあるカード7枚を見る。それらの中からマナ総量が3以下であるパーマネント・カード1枚を、盾(shield)カウンター1個を置いた状態で戦場に出してもよい。残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。
[-7]:飛行を持つ白の3/3の天使(Angel)クリーチャー・トークン5体を生成する。
初期忠誠度:5
ニューカペナの街角で登場した6枚目のエルズペス。故郷カペナへ帰還した。

プラス能力は単体強化。+1/+1カウンターと、1種類のキーワード能力カウンターを乗せる。
強化幅は低いが、永続すること、そしてキーワード能力を4種から選べることによる腐りづらさは魅力。

小マイナスの‐3能力は山札上7枚からの踏み倒しと盾カウンターの付与。盾カウンターはニューカペナの新メカニズムで、古典的な「再生」のリメイクメカニズムと言える。一発だけ攻撃を無力化する。
このプレインズウォーカーの核となる能力で、除去耐性を持ったクリーチャーをリクルートしたり、ただでさえ除去されづらいエンチャントを除去耐性持ちで呼び出したりできる。土地も出せるので外れの心配はない。

最後に奥義は3/3飛行の天使5体の生成。
決まれば概ね勝つが、返しの全体除去に弱いのが難点。

スタンダードではエスパーや白単の遅めのデッキで用いられる。

大天使エルズペス/Archangel Elspeth (2)(白)(白)
伝説のプレインズウォーカー — エルズペス(Elspeth)
[+1]:絆魂を持つ白の1/1の兵士(Soldier)クリーチャー・トークン1体を生成する。
[-2]:クリーチャー1体を対象とする。それの上に+1/+1カウンター2個を置く。それは他のタイプに加えて天使(Angel)になり飛行を得る。
[-6]:あなたの墓地にありマナ総量が3以下であり土地でないすべてのパーマネント・カードを戦場に戻す。
初期忠誠度:4
「機械兵団の進軍」にて登場した7枚目のエルズペス。まさかの天使としての覚醒。
能力の構成は1枚目である《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》に近く、トークン生成と単体強化+飛行付与の能力を持つ。

プラス能力は絆魂を持つ1/1の兵士トークンの生成。1枚目の時と比べると随分インフレしている。
自身の壁としても十分であり、-2で強化すれば3/3飛行絆魂とかなり優秀なクリーチャーになる。しかもスタンダードでは兵士デッキが有力なので、部族サポートも手厚い。

次に-2能力は単体強化。1枚目と比べるとプラス能力でなくなり、強化幅も1減ったが、それでも『カウンター』になったことで永続するのは大きな強み。

最後に奥義は、軽量パーマネントの大量リアニメイト。墓地にウィニーが溜まっていれば勝負も決められる能力。

全体的に非常に強力なプレインズウォーカーではあるのだが、使用率は低め。というか、競合となる同コストの《放浪皇/The Wandering Emperor》が強すぎる。


アニヲタwikiの編集者は見返りを求めない。彼らにとって、項目を追記修正することの愉悦を上回る時間のつぶし方など存在しないのだ。


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最終更新:2023年09月28日 06:04

*1 新ファイレクシアはかつてのファイレクシアとは出自が違うが

*2 そもそもこの時代はカードプールの都合もあり、白ウィニーが成り立たなかった。「核戦争が起きてもゴキブリと白ウィニーは生き残る」と言われたアーキタイプは、この時期やっと消滅したのである。おそらくウィニーと信心の相性が良すぎることが警戒されたのだろう。

*3 生前の記憶を失っており、長期的な記憶力も失われてしまっている死の国から戻ってきた者たちの総称

*4 エリシュ・ノーンは登場とほぼ同時にストーリーが終わったため、それより前になるとそれこそ《永岩城の君主、今田》《アウグスティン四世大判事》あたりになる。《成金、グヮファ・ハジード》は手駒だったし。

*5 これは「一人の女として子供と夫がいた」というもので、エレボスの試練が見せた象徴的な未来のことだったらしい。