機動戦士ガンダム MS IGLOO

登録日:2011/07/28 Thu 02:15:34
更新日:2024/02/05 Mon 12:47:57
所要時間:約 6 分で読めます





 Ms igLoo 


サンライズによって製作された映像作品でガンダムシリーズ初のフルCGアニメ。(SD除く)
監督は「0083 ジオンの残光」の監督を担当した今西隆志。
ガンダムミュージアムにて期間限定公開された「1年戦争秘録」と、その続編OVA「黙示録0079」の二期に渡って製作された。


【概要】

今作品では「一年戦争」を題材に、ジオン軍「第603技術試験隊」に所属するオリヴァー・マイ中尉とその母艦「ヨーツンヘイム」の視点から描かれる。
戦争真っ只中、正式採用されず歴史の闇に埋もれていった試作兵器に命を懸けた男達の軌跡にスポットを当てた物語。

完全にジオン側からの目線の作品の為、地球連邦軍兵士はかなりヤクザチックな乱暴者、はっきりとした悪役として描かれている。
中には新兵を盾にしたり新兵を切り捨て敵ごと撃墜する描写もあるなど、余りにも粗暴かつチンピラ然としているためやり過ぎとの批判を受けたことも。
この点に関して今西監督は黙示録0079小説版の巻末解説にて、「主役がジオン側の実直な青年なので、顔も見えない連邦の連中はキャラを立てるのも兼ねて意図的にヤクザっぽくした」などの反論を記載している。
しかしマイ目線ということでフォローしようにも、停戦命令を無視して攻撃し続ける連邦軍などほぼ全編に渡ってあれなので、そちらの線も無理がある主張になってしまっている。
後述の重力戦線では連邦側が主役になりヤクザっぽさは多少マシになってはいるが、それでも監督直々に「ヤンキー軍隊」とまで言われる有様。
監督…連邦のこと嫌いなんだろうな。

…尤も軍規の乱れについては戦争で多くの有能な上官を失って内部がガタガタだったと考えれば説明がつくし、コロニー落としやジオンの地上進行によって故郷や家族、仲間の多数を奪われた側からすれば情け容赦のないやり方になるのもやむを得ない*1*2ともいえる。

連邦の描写が明らかにおかしいことは確かだが、0083のシーマ様の件と同様に「完全なジオン賛美」というわけでもない。
「ジオンにおける603の差別にも近い冷遇」「わかりきった欠陥を備えた試作兵器を兵士ごとぽこじゃか使い捨てる」「政争によるゴタゴタ」「学徒動員兵の投入」など、
ジオン軍の内ゲバ当然の状況も結構酷く描かれており、603からしたらジオンも上から下まで内なる敵である

更に本作品はそれこそ実用など出来る訳がない欠陥品だらけだが、
これまた0083と同様にオーパーツじみた兵器がそろい踏みであり、そこもよく批判されている。
ロマンに溢れた兵器揃いなので好きな人はとことん好きな兵器群ではあるのだが。

アニメーションとしては『SDガンダムフォース』で蓄積した3DCGノウハウをいかんなくつぎ込み、当時としてはかなり美麗な映像を実現。
『黙示録0079』では更にクオリティがアップしていく様子がわかる。「3Dだから…」と敬遠せず、是非一度は観てほしい。



【登場人物】

●オリヴァー・マイ
CV:石川英郎
本作の主人公。
大学を出たばかりで、階級は「技術中尉」
「第603技術試験隊」に所属し、数多の兵士・兵器と出会い、一年戦争の果てに自身の役目を知ることとなる。
物語は彼の視点から描かれ、エンドロールで彼の口から語られる技術試験報告書は戦争の悲壮感が漂うものである。
作中の描写では理想と現実に揺れ動きながらも真っすぐに向き合う優秀な技術中尉かつ好青年であるが、モニクが語る所によると「技術バカ」だったりワシヤと仲良しという設定があったりするため、本編で語られないところでは気さくでお調子者な性格なのかもしれない。


●モニク・キャディラック
CV:長沢美樹
もう一人の主人公兼ヒロイン。
ヨーツンヘイムに派遣された女性士官。
階級は大尉だが、いわゆる「政治将校」である為に二階級上の中佐と同等の権限を有している。
マイ中尉と同様、戦争の中で自身の考え改め、成長していく。
毒舌家な面が目立つ一方で弟エルヴィンが志願兵となった際は彼の身を案じるなど、家族としての感情を露にすることもあった。
当初はヨーツンヘイムを足掛かりにする腹積もりで、クルーや艦長からは「お客様」「とにかくあちこちに吼えまくる犬」のような扱いであったが、彼女なりに真面目かつ真剣だということは理解されていた。
やがて本人も知らずのうちにヨーツンヘイムが己の居場所となっており、外から来た人間を「お客様」と呼ぶようになっていた。
(最初に彼女を「お客様」と称したマルティンは微妙な反応を示していたが)
スーツをびっしり決め明らかに「事務係」に見えるが実はMSパイロットもできる。(しかも割と腕利き)


●マルティン・プロホノウ
CV:飯塚昭三
技術支援艦「ヨーツンヘイム」艦長。
ヨーツンヘイムはもともとは民間の輸送船だったところを無理矢理軍属にさせられた物であるが、本人はその事を受け入れつつも「船乗り」としてのプライドを持ち続けた。
軍属の人間に対しても「お客様」と呼び一触即発だったもののその軍人のモニクを気遣ったり人間としても優秀であった。
また少年兵を使うことに最後まで難色を示しており、カスペンとはその事で論争していたが…。


●エーリッヒ・クリューガー
ヨーツンヘイム副長。


●ヒデト・ワシヤ
CV:福山潤
第603技術試験隊に所属するテストパイロット
MSパイロットに憧れて士官学校に入学したが、得意科目と不得意科目の成績差が激しかったため、前線に配備されず第603技術試験隊のテストパイロットになったという経歴を持つ。
お調子者で軽薄な印象を受けるが、小説版によると「マイの良き話し相手で腕は確か」らしい。実際暴走の危険性のあるMSで最後まで無事だったから嘘ではないのだが…。
意外にもモニクには信頼されているらしく、彼女に適当にあしらわれる事はあれど怒鳴られる事は少ない。むしろ後述のヴェルナー・ホルバイン少尉に対し「ワシヤも一緒で結果を残せないのか」と毒づく程。*3
カスペンにも「(前線の支援の為に)ヨーツンヘイムの護衛を割くわけにはいかん」と戦力として重要視されていた。
基本的にコメディリリーフだが、暗くなりがちなストーリーの清涼剤でもあったのは事実。


●ジーン・ザビエル
ヨーツンヘイムの2等航海士。


●ドメニコ・マルケス
ヨーツンヘイムの3等航海士。


【作品】


●1年戦争秘録


EPISODE.1「大蛇はルウムに消えた

登場兵器:「QCX-76A ヨルムンガンド

【ストーリー】
UC.0079年1月15日、古くからジオン公国軍に携わってきた砲術士 アレクサンドロ・ヘンメ大尉は、試作兵器のコンペとしてヨルムンガンドと共に「ルウム戦役」に配備されるが…

せめて…大砲屋の時代の幕引きは……俺に…やらせてくれや…


EPISODE.2「遠吠えは落日に染まった

登場兵器:「YMT-05 ヒルドルブ

【ストーリー】
UC.0079年5月、かつてはキャディラックの教官であった 戦車兵 デメジエール・ソンネン少佐は、押され気味の地上戦力を補うべく、再評価試験として配備されたヒルドルブを駆り、鹵獲された連邦のザク部隊と戦闘を繰り広げるが…

一発あれば充分だ…ヒルドルブは……俺は…まだ、戦える…


EPISODE.3「軌道上に幻影は疾る

登場兵器:「EMS-10 ヅダ
【ストーリー】
UC.0079年11月、ヅダの性能を信じて止まない男 ジャン・リュック・デュバル少佐 は、連邦軍の襲撃を受けたオデッサからの敗走兵を救出するためヅダのエンジンに火を灯す…

ヅダは…最早ゴーストファイターではない…


●黙示録0079


EPISODE.1「ジャブロー上空に海原を見た

登場兵器:「MSM-07Di ゼーゴック

【ストーリー】
海をこよなく愛し、漁師である祖父を尊敬する ヴェルナー・ホルバイン少尉は、UC.0079年12月、ゼーゴックの運用試験のため、数回に渡り地球へと降下を行うが…

エントリィィィィィ!!


EPISODE.2「光芒の峠を越えろ

登場兵器:「MP-02A オッゴ

【ストーリー】
戦争末期、ジオン公国軍に志願入隊した少年兵 エルヴィン・キャディラック曹長は、グラナダに進出した連邦軍との戦闘のため急遽配備されたオッゴを駆り、出撃するが…

我々は全員志願兵であります!腕は未熟かもしれませんが、やってみせますっ!!
自分は死ぬ為に来たのではありません!公国の為!家族を守るために来たのでありますっ!!


EPISODE.3「雷鳴に魂は還る

登場兵器:「MA-05Ad ビグ・ラング

【ストーリー】
UC0079年12月末、ジオン軍技術士官 オリヴァー・マイ技術中尉は、決戦の地「ア・バオア・クー」Eフィールド防衛のためビグ・ラングと共に決戦に赴く…

我々の最後の戦いの映像を送ります。記録願います!!願います!!



【余談】

  • 「ルウム戦役」でシャア・アズナブル赤いザクが活躍する場面が始めて映像化された珍しい作品。
    しかしこの時にすでに「角付き」だったために一部で物議を醸すことに…
    (当時のシャアは中尉で、ルウムでの活躍によってS型支給+二階級特進した)。
  • 「ガンダム」の名を持つ作品であるが、「ガンダム」は一瞬映る程度である。
  • 1年戦争秘録の漫画版である「603」では映像化されなかったエピソードも描かれており、登場兵器はいずれもOVA版の物以上に重大な欠陥を抱えている。
  • また題名に「MS」とあるが、主役として登場するMSは「ヅダ」と漫画版に登場する「ゲム・カモフ」のみである
    (漫画版エピソードではザクにスポットライトが当たるエピソードが二つあるが、いずれも主役メカはその時装備・運用している試作兵装の方)。
  • スーパーバイザー、デザインワークスを務めた出渕裕曰く「負けていくプロジェクトX*4
    • それでもキチンと戦果という名の死花・徒花を咲かせるなど、一定のカタルシスは維持してある。
    • 連邦サイドの視点で描く続編「重力戦線」に関しても「連邦軍はあくまで仇役。主人公にはしてもヒーローにはしない」とのこと。
      それを証明するように重力戦線のエピソードは犬死にと言うに等しい結末ばかりである。
      重力戦線では、各エピソードの主人公たちの上司もかなり人間的にアレな人物として描かれており、この点に関して監督は自身の連邦軍の認識(曰く「連邦の仕官でイイ人なんて、マチルダさんしかいないじゃない!」)を誇張して表現したことを認めている*5
  • デュバル少佐はしきりにジオニック社を目の敵にして陰謀説を唱えていたが、実際にはジオンの各種MSを見れば分かるように一年戦争が始まった頃には既にツィマッド社とジオニック社は協力関係にあり、ツィマッド社としては少佐は(多少の事実もあったかもしれないが)妄言を吐いて本業を邪魔する口煩い男でしかなく厄介者扱いされていたことがうかがえる。そのため、他の主要人物と比べてある意味異色の人物となっている。




彼らの物語をこれで終わらせはしない

たとえ

ジオンの旗が永久に消え去ったとしても…




ヘンメ「追記・修正はまだか? とっくに艦隊戦は始まってるんだぞ!」

モニク「時期にデータが送られてきます。もう少しの辛抱ですっ!」

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最終更新:2024年02月05日 12:47

*1 事実、最終話では明確に仲間を殺された怒りを口にする描写が見られている。

*2 他の作品でも自分の故郷を滅ぼされたから投降を認めず殺そうとしたり戦闘能力を喪失したにもかかわらず止めを刺そうとするパイロットの存在や、敗勢時に「大切な物を奪われた怒りがかろうじて戦意を保つ原動力となっていた」と言う描写がある。

*3 当の本人はヴェルナーの起動と奇声に悲鳴をあげ「うるさくなっただけ」だったが

*4 http://www.msigloo.net/sp/event04.html

*5 http://www.msigloo2.net/special/director-interview2.html