T-1000(ターミネーター)

登録日:2011/07/14 (木) 22:00:13
更新日:2023/11/19 Sun 22:21:57
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降りるんだ。




T-1000」とは、映画『ターミネーター2』に登場するロボット
日本語読みはそのまま「てぃー せん」で通じる。


●目次


【概要】

スカイネットによって開発されたターミネーターであり、『ターミネーター2』の時点における最新型。

T-800シリーズとの最大の違いは、ボディ全体が液体金属*1で構成されている点*1で、エンドスケルトン(フレーム)が存在しない。
それにより、従来機のような骨格の都合で大柄な身体に限定されることが無くなり、スマートな外見と体格になっている。
さらにその特性上、銃弾などのダメージを負ってもすぐに再生が可能で、従来のターミネーターよりも高い耐久性を手に入れた。
動力やCPUがどのように収まっているかは不明。

また自身の体積を越えない範囲内かつ複雑なものでない場合*2に限られるものの、床など他の物体に擬態する事が可能であり、隠密性も高い。
特にこの隠密性に関しては、完全に液体金属で構成されている関係上、後発のT-Xにも勝ると思われる。
あまりに描写が自然なため忘れられやすいが、服装や装飾品もT-1000本体で構成された「身体の一部分」に過ぎないため、銃撃を受けても修復が終われば元通りになり、破れたりすることはない。
変身可能キャラにありがちな本人と同じ衣装がどこから発生するかの問題も発生しない。
なお擬態を優先させすぎたのかT-1000本体ではない物体を装備していたせいで隙間抜けのさいにそれがひっかかって追跡が一瞬止まるといううっかりミスをやらかしてしまっている。

擬態能力の応用で腕など身体の一部をや槍といった刃物類等に変形させることも可能であり、劇中でも白兵戦用の武器として用いていた。
更に一度接触して記憶すれば、あらゆる人間に変身することも可能。なお接触された人間は証拠隠滅や、擬態の際に「同じ人物が2人居る」という事態を避ける為に必ず殺害する。
その他に頭が通れるほどの隙間があれば、その都度に身体を液状化して侵入することができる。
骨格を持たないものの、格闘戦でもT-800とほぼ互角のパワーを持っており、序盤の戦闘シーンでは、二人が組み合い力が相殺されて動かない描写がなされている。

また人探しをするために警官姿に扮したり、ヘリコプターを奪う際はパイロットに「降りるんだ」と命令したり*3、高速道路でのカーチェイスでは腕を2本増やしてヘリコプターの操縦とサブマシンガンの操作をしたりと、高い判断力と知能を持っていることが分かる。T-800に比べると人間的な感情表現も多く、ジョンの写真を見て「可愛い子だ」と言ったり、白バイを盗む際は白バイ警官に「ところで、良いバイクに乗っているな」と声をかけたり、サラのショットガンの弾が尽きた際には指を振って愚弄するなどの一面がある。

しかしながら実験的なプロトタイプであることは否めず、T-800シリーズには無い決して無視できない欠点もいくつか存在する。

前途の高い耐久性は破損した部位を瞬時に修復することで成り立っている為、ダメージを受けた時点から修復を優先させる関係上動きが鈍くなり、隙が生じてしまう。
加えて修復中に強いダメージを連続で受けた場合、一時的ではあるものの完全な無防備になってしまう。

また液体で構成されているために極低温に弱く、曝され続けた場合凍結してしまう恐れがあり、劇中でも大量の液体窒素により凍結後、一発の銃弾により粉砕されてしまう描写が存在する。


良くも悪くも液体金属で構成されているという点が本機を特徴付けているといえよう。



【劇中の活躍】

◆『ターミネーター2』


演:ロバート・パトリック
吹替:江原正士(フジテレビ版)
   佐古雅誉(VHS版)
   咲野俊介(DVD&Blu-ray版)


本作における最大・最強の脅威(敵役)として登場。

T-800よりもやや遅れて未来から転送され、本来の殺害対象であるジョン・コナーの追跡を開始。
この時居合わせた警官を殺害後、その服装に擬態。
ついでに拳銃も奪取し、住所を調べたり事情聴取を行ったりなど警官としての身分を利用して行動を開始する。
警官という立場や如何にも優男っぽい風貌、先に登場したT-800があまりにも悪人ヅラで、前作では敵として登場した前科がある上に、物語開始早々に大暴れしたもあって、序盤では「このターミネーターは味方?」といった観客へのミスリードを誘っている。


ショッピングモールにてジョンを視認するも、T-800と鉢合わせになる形となり、遂に初交戦。
一般車を巻き込んだ壮絶なカーチェイスに発展するが、搭乗していたトラックが爆発したことにより、追跡を断念。

直後に方針を変更し、養母に擬態してジョンを待ち構えるも電話越しにいつものふるまいとは違う話し方にジョンから違和感を持たれてしまったことでT-800から電話口の養母はT-1000の擬態で、本人はT-1000に殺害されたと感づかれてしまう。
その結果、ジョン達の逆に仕掛けた策で偽物だということがバレてしまい、策は失敗する*4
尚、この過程で小言を挟んだ養父を殺害している。些細でも任務の支障になると判断すれば排除するという冷徹な一面がうかがえるシーンである。決してイラっとして殺した訳では無い……と思う。
さらに異変に気付いてか吠え続ける飼い犬までも殺して首輪をはぎとり*5、名前を確認してジョン達に鎌をかけられたことを悟る。


失敗したと分かるや否や、サラ・コナーの救出に向かったジョン達に先んじてサラのいる精神病院に潜入。
サラを捜索するが、ジョン達と鉢合わせになる形となり、再び交戦。

パトカーで逃走されかけるが尚も張り付き、ジョンを殺害する一歩手前まで追い詰めるが、ショットガンの接射を受けて吹き飛ばされ、またも追跡を断念。
その後、病院の通報を受けて駆け付けた警官から白バイを奪い、尚且つその姿に擬態。この形態は白いヘルメットにサングラスを着用しており、後半の活躍も相まってT-1000の不気味さが最も滲み出ている形態といえる。


一旦追跡は鳴りを潜めるものの、ジョン達がスカイネットの元凶を断つべくサイバーダイン社に突入したのとほぼ同時期に再登場。
サラ・コナーの襲撃の影響でボロボロになったマイルズ・ダイソンの家に、上記の白バイ警官の姿で現れる*6
既にダイソンの家族は避難しており、もぬけの殻となったダイソンの家では、改心したダイソンの手により、スカイネット開発に関わる資料などが火にくべられ燃やされていた。
そのまましばらく室内を調査するT-1000だが、警察無線によりサラやジョン一行がサイバーダイン社を襲撃していることを知ると、
自身も白バイを駆りサイバーダイン社に向かう。

間も無くサイバーダイン社に到着するが、ジョン達は既に脱出した後であった。
尚も諦めずに白バイで階段を駆け上り、周辺を飛んでいたヘリコプターを視認するや否や、助走をつけた白バイで飛び移り、奪取に成功。再三に渡る追跡を開始する。

さほど時間もかけずに追い付き、高速道路を舞台にして銃撃戦を交えた壮絶な追走劇を繰り広げる。
この時ヘリコプターを操縦しながらサブマシンガンを連射・リロードを行うという離れ業をやってのけるが、よくよく見ると腕が4本に増えており、上の2本でサブマシンガンの操作を、下の2本でヘリコプターの操縦を行っている。下半身がどうなっているのか気になるところ。

サラの脚に弾丸を撃ち込み優位に立つが、T-800が急ブレーキを掛けたことにより衝突。ヘリコプターは爆発・炎上するもまるで意に介さず、心配して降りてきた通りすがりのタンクローリー運転手を殺害し、タンクローリーを奪取。追跡を再開する。

しかし、何故かこの後運転手に擬態するようなシーンは存在しない。些細とはいえ任務の支障になった前途の養父とは違い、身を案じる言葉を掛けただけのおっちゃんなのだが、それでも容赦なく殺害である。
なんとも不憫な話であり、運転手が死ぬ必要性はあったのかと問い詰めたくなるが、これはT-1000が如何に冷徹であるかを印象付けるシーンでもあるので必要な犠牲である。*7運転手は犠牲になったのだ…
しかし前述のヘリを奪うシーンでは何故かパイロットを殺さずに「降りるんだ」で済ませているため、そこだけむしろ浮いて見えたりもする。
これはいつものように刺殺した場合死体が操縦の邪魔になるか、そもそも降りたというより降ろした・・・いや放り出されたという感じの描写のため
高所から落ちればそれで落下死するからわざわざ刺殺しなかったと思われる。*8


小型ピックアップトラックに乗り換えたジョン達をタンクローリーのパワーに任せて追い詰めるが、接近した際にT-800に乗り移られてしまう。
アサルトライフルで蜂の巣にさせられた上、ハンドル操作を奪われてタンクローリーは横転。
そのまま進路上にあった製鉄所に突入する。

タンクローリーを失ってなお追跡を続けようとするが、突入の際の衝撃でタンクの中身であった液体窒素が漏れ出していたのが災いして凍結。 
歩み寄ろうとする度に片足、また片足と失っていき、四つん這いになりながらも諦めなかったが、右腕の肘から先も失い、完全に凍結。
T-800の放った一発の銃弾により粉々になってしまう。

この際銃弾と共に放たれた台詞がかの有名な「地獄で会おうぜ、ベイビー」であり、粉砕されるT-1000と相まって強烈な印象を残す名シーンとなっている。
運転手の無念もきっと晴れたであろう。万が一の事を考えて積み荷を液体窒素にしておくとはなかなかの策士である
粉砕される直前のT-1000は珍しくいつもの無表情ではなく、「えっ!?」という驚いた感じの表情を見せながら、凍結で失った右手(が、あるはずの位置)を見つめているポーズも本作の印象に残るシーンの1つである。



ここで追走劇は終わりかと誰もが思ったが、突入したのが製鉄所であったために熱で徐々に解凍。
破片が一滴、また一滴と集っていく様はなかなかに不気味である。

序盤の警官の姿に再構成を終えると追跡を再開。サラが負傷していることも相まって段々と距離を詰めていくが、この時既にT-1000の様子がおかしくなっており、
凍結・粉砕・解凍・再生といった想定外の事態が短時間で立て続けに起こったために機能不全、即ち全身バグまみれ状態に陥っていた。
事実、上半身が序盤の警官、下半身が白バイ警官の姿に再構成してしまっていたり、何気なく触れた手すりに擬態して張り付いてしまう、擬態している体の表面に時折ノイズが走る、床の鉄板の柄に足が勝手に擬態してしてまうといった障害が現れていた。


間も無くしてジョン達を先に逃がしたT-800の不意を突く形で交戦状態に。
閉鎖的な場所であったために格闘戦にもつれ込むが、液体金属で構成されたT-1000に打撃が効くはずもなく、状況はT-1000有利に展開する。

T-800の腕を歯車に巻き込ませてその場に釘付けにすると、ジョン達の追跡を再開。ジョンを逃がしたサラを徐々に追い詰め、針状にした指を突き付けて脅迫。
ジョンを誘い出そうとするが、腕を引きちぎって脱出したT-800の妨害を受ける。
これには、今度は容赦しないとばかりに滅多打ちを加え、T-800を行動不能にまで追い込んだ後、サラに擬態し、ジョンを誘い出すことに成功。

しかし、背後に本物のサラが現れたこと、また前述の機能不全によって足だけが勝手に床に擬態していた点をジョンにより見破られ、ショットガンの連射を受ける。

溶鉱炉に突き落とされる寸前で弾切れを起こした為に命拾いするが、直後予備電源で復活したT-800にグレネードランチャーの直撃を叩き込まれ、体のバランスが崩壊。
溶鉱炉に転落し、これまでに擬態した形態を次々と切り替えてもがくが、抵抗むなしく完全に溶けてしまい機能停止。


以上でT-1000の追走劇の幕は閉じられた。


【余談】(T2)


◆前述の「手すりや床に勝手に擬態してしまう」と言った一連の機能不全が確認出来るシーンは未公開シーンであり、特別編等でしか視聴することが出来ない。
終盤の展開においても重要なシーンであるだけ未視聴の方には是非特別編を視聴していただきたいところ。ただし、「体の表面にノイズが走る」演出は通常版でも1シーンのみ描かれている(タイミングはT-800の片腕を歯車に食い込ませた後、踵を返してジョンの元へと向かおうとする場面)。特別編に比べて機能不全の描写には気づきにくいが、逆に言えば通常版の方が最後の最後まで強キャラ感満載のT-1000を描いている・・・かもしれない。人によって好みが分かれるところ。


◆台詞数は少ないものの、ロバート・パトリック氏の熱演もあってT-1000は抜群の存在感を放つ悪役であった。
『ターミネーター2』が時が経っても名作たらしめているのは彼の活躍によるところも大きいだろう。

ちなみに普段のパトリック氏は陽気かつ人当たりの良い性格なのだが、この役作りの為に日常生活においてもT-1000を意識して暮らしていたため奥さんが頭に来てしまい、夫婦関係が一時期ぎこちなくなったのは有名な話。
いわゆる「メソッド演技法」に近い物であった為、一時は撮影スタッフや役者陣との人間関係まで破綻しそうな状態だったがT-800役のシュワちゃんが「せめて食事位は一緒にとらないか」と誘った事でその辺りは改善された模様。

さらに、当時のSFXの技術ではCG製作のために体に直接線を引く必要があり、ロバート氏は街中をパンツ一枚かつ線まみれで疾走する羽目になった為、周囲の一般市民から怪しい目で見られていた。
彼は当時を振り返って「街行く人達の視線が痛かった」と回想している。


◆サラにショットガンの連射を受け弾切れで命拾いし「チッチッチ」とジェスチャーを返すシーンは有名だが、
原語版では無言でジェスチャーをしており、舌打ちの音を出すのはフジテレビ版の吹き替えを担当した江原氏のアドリブである。





◆『ターミネーター:新起動/ジェニシス』


「5月12日84年、お前が来る日だ」

久々の銀幕登場。今回はイ・ビョンホンが演じているが能力の厄介さと追跡の執拗さは健在。
本来ありえない時間軸で登場し、視聴者を驚かせる。
その後は『2』同様の執拗さでカイルら一行を追跡、戦闘時には自分の一部を使って新たな技を披露し、如何に厄介な能力を持った恐るべき存在であるかを改めて視聴者に見せつけてみせた。
が、以前に襲撃され特性を把握していたサラとT-800(ガーディアン)が襲撃を見越して対策を用意していたため、T2に比べてあっけない形で撃破されてしまった。






何があった?

いや、何も……



ところで……いい追記・修正をしているな


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最終更新:2023年11月19日 22:21

*1 空想科学読本ではナノテクロノジーで作られたナノロボットの集合体で構成されているのではと推測している

*2 具体的には爆弾や車のような複数の部品に分かれるものや、マッチ箱のようにサイズがあまりにも異なる物など。

*3 殺さずに降りるよう命じたのは、殺害すると死体で重量バランスが崩れ墜落の可能性が高くなることを考慮したと思われる

*4 この知能戦のためか養母を殺害したシーンも養母の死体も映っておらず、殺されたと台詞のみで説明されている

*5 こちらも犬の断末魔と血まみれの首輪で示唆されるのみ

*6 これは劇中の時をを少し遡って、ジョンとT-800がダイソンを暗殺しようとするサラを止めるために移動中の車内の会話にて、T-800が「奴(T-1000)も同じデータ(マイルズ・ダイソンの個人情報)を持っている。奴に遭遇する可能性もある」という旨の発言をしており、そういう意味では、サラがダイソンの暗殺を決意しなければ「T-1000がダイソンの家に先回りしていた可能性があった」とも言えるかもしれない。

*7 ひょっとしたら標的のサラをあと一歩の所で逃がしてしまったことの腹いせで殺したのかも知れない。

*8 小説版T2では、飛び降りさせられたヘリパイロットは死んだと明言されている