俺達は永遠になれない刹那だ。どれだけ憧れて求めても、幻想にはなれないんだよ

登録日 :2012/03/31(土) 12:42:59
更新日 : 2017/05/07 Sun 12:24:46
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あんたは正気だよ





Dies irae。そのエピローグで語られた台詞。

新たな世界の神を決める戦いに敗れ、新世界の法則――輪廻転生の理に従い、人間として生まれ変わったラスボス、ラインハルト・ハイドリヒは前世の記憶を持ち、それについて苦悩していた。


自分は人間だ。
ならばこの記憶は何か。
新世界の開闢を決める闘争。
魔人と呼べる部下と、それに追従する何百何千万の魂を引き連れた怒りの日。
それの主演――黄金の獣と呼ばれた自分は何者か。
今の自分は間違いなく人間である。
市政の民と変わらず、銃で撃たれれば死に、殴られれば死ぬ。
そういうモノとして生まれ変わったはずだ。
しかし確証は持てない。誰か、この渇きを、この飢えを満たしてはくれないか。
そんな想いを抱きながら訪れた遺産管理局――アーネンエルベ機関で彼は救いを得ることになる。






先述の悩みをある青年に打ち明けたラインハルト。人として、一人の男として悩む彼に、青年・ロートス・ライヒハート――かつて共に神の証を競った好敵手――藤井蓮の転生体はこう返す。




「あんたは正気だよ」

「俺達は現実に生きている。良いこともあれば悪いこともあるし、満たされない夢を抱えて飢えてもいるさ」

「だけど、それが人間だろう?」

「俺達は永遠になれない刹那だ。どれだけ憧れて求めても、幻想にはなれないんだよ」





黄金の獣、愛すべからざる光とまで呼ばれた彼にとって、その言葉がどれほどの救いになっただろうか。




「生に真摯であること。ああ、確かに卿の言う通り。」

「飽いていればいい、餓えていればよいのだ。生きる場所の何を飲み、何を喰らおうと足りぬ。だがそれでよし。」

「そう思えぬ生物は、その時点で自壊するしかない」

「そんな生物は、生まれてきたことが過ちなんだ」





自戒するように呟くラインハルト・ハイドリヒ。その眼に、先程までの苦悩は一切ない。
その後、自分の立場――ドイツ軍中将であることを打ち明け、驚愕したロートスに、ラインハルトは自嘲したように語る。




「与えられた地位をなくせば、それこそ市井の一角と変わらんだろう。その程度なのだ、いや、そうでなくてはならない。

殴れば倒れ、撃たれれば死ぬ。人はそうであるべきだ。いずれ訪れる死の時まで生き、そして朽ちればいい。

ああ、誰かに言って貰いたかったのだよ。感謝しよう。幻想にはなれぬか。なるほどな」

「総て野垂れ死ぬ。ならば私も、かく野垂れ死ねばいい。ありふれた人間、職務を全うして滅びる一人の軍人で構わない」

「私は満足した。もはや何も求めない。この先どうなろうと生きていく。そう誓ったのでな」

こうして、世界の小ささのせいで全力を出すことが叶わなかった男は 生涯全力を出さないことを誓い その言葉通り、飢えたまま、飽いたまま、1942年に暗殺された。














「こんな自分は認めない」 「こんな世界は認めない」 という願いがそのまま自分自身の強さ――異能力の覚醒に繋がり、そんな経緯を経て人外の魔人となった悪鬼羅刹がはびこるDies iraeの世界においては最大級のアンチテーゼ。

要約すれば、「現実を見て生きていくことが人間として生まれて来たものの最低限の義務であり、権利である」ということであり、これは二次元に命を捧げた人間にとっては十二分に考えさせられる言葉である


作中において不動の悪、絶大的なカリスマをもって部下や大多数のユーザーを魅了したラインハルトが、本当の意味で救済されたシーン。

全ての黒幕、カール・クラフト死ね、糞ニートなメルクリウスは既に救済されていたためなおさら感慨深く、ユーザーの中でも、最終決戦やヒロインとの掛け合いを差し置いて名シーンとして上がることが多い。

内容もDies irae、ひいては神様シリーズをある意味全否定している台詞とも言える。





追記・修正はオデュッセウスになってからお願いします

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