アイオワ級戦艦

登録日 :2011/05/17(火) 21:27:37
更新日 : 2017/12/03 Sun 00:52:36
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アイオワ級戦艦

アイオワ級戦艦は、アメリカが第二次世界大戦中に建造した高速戦艦。

全6隻が計画され、内4隻が完成した。
世界で最後に退役した戦艦でもある。


『諸元』

全長:270.43m
全幅:32.96m
排水量 基準:48,500トン
    満載:57,450トン
機関出力:212,000馬力
最大速力:33.0ノット(計画時)
     32.5ノット(就役時)
     約31ノット(満載時)
     約30ノット (晩年期)
航続距離:15ノットで16,600海里
乗員:1,921名

兵装:
主砲:
  • 50口径40.6cm砲(Mark.7),3連装3基計9門
砲弾:
  • 徹甲弾(Mark.8)砲弾重量1223kg 炸薬量18.55kg 初速762m/s
  • 榴弾(Mark.13)砲弾重量862kg 炸薬量69.67kg 初速820m/s
  • 核砲弾(W23) 砲弾重量862kg 核出力15-20kt
両用砲:
  • 38口径12.7cm砲,連装10基計20門
対空火器:
  • 40mm4連装機銃15基
  • 20mm機銃60基


装甲:対45口径40.6砲(Mark.1)防御(安全距離16088m~28519m)
  • 舷側307mm+22mm(19度傾斜)→439mm相当
  • 甲板121~127mm+22mm
  • 主砲防盾432mm+64mm
  • 司令塔440mm



同型艦は
一番艦「アイオワ」
ニ番艦「ニュージャージー」
三番艦「ミズーリ」
四番艦「ウィスコンシン」

「イリノイ」
「ケンタッキー」
は建造中止



『建造の経緯』

アイオワ級戦艦はサウスダコタ級戦艦に続き建造された、条約型戦艦である。

軍縮条約下においては戦艦の保有数のみならず、その排水量を制限されていた。
これは、戦艦の総合性能は、ボクシングの階級と同様体重で決まると言って過言ではない為である。
その枠は3万5千トンであるが大抵見積りが甘く、あるいは意図的にオーバーしている。

アイオワの場合は日本が一抜けたっと軍縮条約から脱退したため発効された『エスカレーター条項』により、
条約型戦艦よりも一万トンデブになることが許された。
そして第二次大戦に間に合った唯一のエスカレーター条項準拠戦艦である。



『建造の目的』

本艦級は「金剛型戦艦」を安心・確実に叩き潰す事を目的に造られたターミネーターといわれる。

元来アメリカ戦艦は火力と装甲に特化し、非常に鈍重であった。
軍縮条約明け後の新世代の戦艦群ではかなりの速力を持つようになるが、元巡洋戦艦の金剛型を捕捉するにはなお不足していると考えられた。
(注:長門型の公称23ktが欺瞞工作である事は見切っていたが、金剛型が第二次改装で約30ktまで向上した事実は計画当時把握してなかった)

戦艦は『海の王者』である。巡洋艦以下の補助艦艇では、まったく歯が立たない。
よって金剛を野放しにしておくと、補給線をズタズタにされてしまうと考えられた。


要求された性能は、推定で本艦と同格であろう「新型戦艦YAMATO」に対抗出来る攻防力と、金剛型戦艦を捕捉出来る速力であった。
但しそういう能力を期待されたのは確かかもしれないが、実際は「新型戦艦YAMATO」への純然たる対抗馬ともいわれる。
18インチ砲9門搭載の中速戦艦とする案が当初俎上に載せられた事もあり、上記の逸話については後世の創作や資料考証の誤りを疑う声もある。
予算上は金剛型対抗を理由に挙げているが、ポケット戦艦の脅威を訴えて以前から進めていた代艦計画を発展・結実させたダンケルク級や
欺瞞工作も兼ねて近代化改装まもない金剛型の代艦として計上していた大和型の様な事例もあり、名目上の可能性が否定できないのである。

ちなみに彼らが掴んでいた大和型の事前情報は、排水量5万トン程度、16インチ主砲搭載戦艦であった(ただし時期によって推定値の変動はある)。
※実際の大和は満載7万トンの化け物です

…という説が日本では根強いが、実際の所は根拠が乏しいのが実態である。
前述の通り、アメリカ海軍が知り得た金剛型や大和型のスペックと実際のスペックでは大きな齟齬があり、これらを踏まえてアイオワ級が建造されたというのは矛盾が生じてしまう。

当時のアメリカ海軍がアイオワ級に求めたのは”どの戦艦ともそれなりに殴り合いができて、機動部隊の護衛もできる汎用戦艦”であり、対金剛型や対大和型というのは噂程度に聞いておくのが吉と考えられる。

『性能』

その設計は、前級であるサウスダコタ級戦艦を引き伸ばし、ハイパワーのエンジンをぶち込むというもの。
結果、速力は計測値最大で35.2kt。あの大和型でさえ28.1kt(機関過負荷時計測値)だったことを考えると凄まじい速さである。
さらに言えば現代の戦闘艦艇の速力とほぼ同等である。

戦艦史上最速を誇る韋駄天戦艦の誕生である。
ただし、そのハイパワーは1960年代までであった。
年月の経過で機関が老朽化し、更に重量があるコンピュータ設備を積んだ80年代末の時点では、韋駄天の足も衰え、大和(戦艦)と大差ない速力しか出なかったという。
(機関燃料は変えられたが、大本は第二次大戦中のもののままであったために、機関出力が重量増加を受け止められなかったのだ)




主砲は長砲身化され、その破壊力は大和に肉薄するほど増大した。(ただし、砲身寿命が短いという難点がある)


…が、防御力は火力ほどには向上しておらず、自らの主砲に耐えうるという条件には厳しい。
(それでも従来型16インチ砲に対しては十分な防御力であるが)
コンセプト的には巡洋戦艦的とも言えなくもないだろうか。アメリカ式巡洋戦艦のレキシントン級はもっと装甲がペラペラだったが。

そして高速力発揮の為、艦首を絞った結果浮力が足りず縦揺れし、長砲身化したことにより横揺れも増すという安定性を欠く欠陥を持つ。

艦尾の防御力を向上させる為採用されたツインスケグ構造が起因して異常振動が生じる為、その砲戦速力は30ノット以下に制限された。
(もっとも、どんな戦艦でも最大速力近辺では大きな振動を生ずるのだが)
…と巷説言われることもあるが、それは前級サウスダコタ級の欠点であり、アイオワ級ではツインスケグ由来の揺れは改善されている。
もっとも、パナマ運河規格に揃えて無理くり横幅を絞ったりしているので、前述の理由もあって他国の戦艦と較べても凌波性や安定感に欠けるのは事実である。

一例として戦後の話となるが、英国戦艦ヴァンガードとの共同訓練に際してアイオワ級が荒天に晒されたことがあった。
ヴァンガードがKG5などの教訓を反映し航洋性重視だったこともあるが、アイオワ級はヴァンガードの倍もの傾斜角の揺れに苦しんだと言われる。


戦時急造につき、ミドベール社製の装甲板で亀裂問題が多く発生するトラブルがあった。戦後は表層剥離で対処に追われることに…
もっとも戦艦が主力兵器を務める時代は過ぎた為、これらの欠陥は重視しなくてもよくなり、高速で空母に無理なく追従できる事*。
レーダー管制による高い防空力、早期警戒力がある事が重宝された最良の戦艦たる由縁である。

正面からの殴り合いでのみ圧倒的な力を発揮する大和と違い、様々な局面で堅実に役目をこなした優良な戦艦と言える。
とはいえその優秀さは、適切な場所で適切な運用あってのものであり、必要以上に無茶をさせなかったことも大きい。
おそらく大戦末期の日本が運用していたら、敵艦載機の爆撃か謎の爆発で轟沈していたことだろう。

余談だが米海軍部内では空母直衛よりも前衛に配置して、敵機の空襲を吸収させることを多くの機動部隊指揮官は望んだ。
アイオワ級は戦艦の中でも特に戦艦半径が大きく、同じく大型軍艦の空母を抱える機動部隊の操舵負担が増加するが故である。


ちなみに「大和と戦ったらどっちが強いの?」という疑問に対しては諸説あるため、推して知るべきと言ったところか。
強いて言えば戦艦という莫大な兵站物資を求める兵器にも、十分な弾薬と重油を提供できる側が戦争に勝利した、といえるだろう。


『戦歴』

第二次世界大戦
戦中に完工した4隻は、既に活躍の場が無く、専ら空母の護衛や艦砲射撃に駆り出された。
護衛はぶっちゃけ戦艦でなくても勤まるため「戦艦」の使い道としては非常に勿体ない使い方である。アメリカならではの余裕か。

ポツダム宣言受諾後、降伏文書調印式がミズーリ艦上で行われたのは有名な話である。

以後、「朝鮮戦争」「ベトナム戦争」「湾岸戦争」と半世紀近く、大きな戦争が起こるたびに現役復帰を果たし、戦艦いまだ健在なりと存在感を示してきた。
その対地破壊力は絶大で海軍部内により寧ろ海兵隊、陸軍の前線将兵から大きな信頼を寄せられた(空母打撃群の対地攻撃力低下もあるが)。
そのため、海軍部内よりも海兵隊の要望で、他の戦艦の多くが老朽化と陳腐化を理由に解体される中、最も新しく、打撃力があるアイオワ級だけが解体を免れ、
三度の復帰を果たした。が、寄る年波と冷戦後の予算の削減には勝てなかった。
同型艦3隻はすでに除籍。
最後にアイオワのみが復帰可能な状態で保管されていたが2006年に除籍、海軍博物館として維持されている。

余談だが、大型艦艇の寿命は最長でも50年、通常は20~30年で寿命が尽きる。
90年の時点で半世紀を過ぎていたわけだが、これを人間に置き換えると…。

  • 戦後の戦力的価値・
1960年代、対艦ミサイルの普及により、戦艦の水上打撃艦艇としての価値は完全にゼロになった。
予備役にあった戦艦の大多数が除籍されるのもこの時期に重なる。
しかし、対地支援砲撃に価値が見出され、最も新しいアイオワ級戦艦のみが残された。
ただし、ベトナム戦争やフォークランド紛争で艦砲射撃の有効性が再確認されたため、
80年代に砲台代わりとして全艦が復帰し、冷戦末期の米軍のプレゼンスを支えた。
また、戦艦という船の見栄えの良さから、時のロナルド・レーガン政権の海軍戦力増のシンボルとしても使われ、80年代の復帰はその目的のためでもあった。
湾岸戦争を最後に退役したが、誘導兵器の年々の高額化に海軍は悩んでいるため、まさかの4度目の復帰もあり得るかもしれない。
また、2000年代ごろに再度の復帰が実際に検討された事実もあるため、
戦艦の戦後における擁護者は第二次大戦経験者と、支援に恩義を感じていた海兵隊だったのである。


『フィクションでの活躍』

現存する、戦後まで現役だった唯一の第二次大戦新世代戦艦(退役した戦艦なら他にもある)であるため、第二次世界大戦を舞台にした作品以外にも登場する。
その人気は老いてなお健在と言ったところか。


  • 映画「沈黙の戦艦」
まぁ詳しくはレンタルして見ろと言うところであるが要点を言えば、
元特殊部隊のコックな最強オヤヂ(CV/大塚明夫)が船を占拠したテロ屋をバッタバッタ倒す映画である。胸チラもあるよ。
基本的にはミズーリを舞台にコックが暴れまわるアクション映画だが、悪者が逃げ込んだ潜水艦を主砲で吹き飛ばす軍艦ヲタ向けサービスシーンもあるよ。
実は撮影の舞台となったのは本物のミズーリではなく、外見をミズーリっぽくしたサウスダコタ級戦艦アラバマだったりする。

  • TVゲーム「メタルギアソリッド4ガンズ オブ ザ パトリオット」
作中ではスネークの仲間の一人、シャドーモセスの一件で左遷されたメイ・リンが艦長に務めている。
新兵にシーマンシップを叩き込む練習艦として再就役していた。

作品終盤においてリキッド軍にSOPネットワークが掌握され、現用のID付き兵器全てを封じられたなか、
ミズーリは老朽艦である事が幸いしてこれの管制下になく唯一難を逃れた。メイ・リンが艦長を務める。
練習艦であったが、世界の支配権を賭けた最終決戦に参加、アウターヘイブンにカタパルトで(ォィ)スネーク達を打ち上げた後、これと壮絶な殴り合いを行った。
主砲でヘイブンから発進したメタルギアRAYを撃破している。
あわや撃沈寸前まで追い詰められるが、すんでの所で代理AIの破壊に成功した。

  • 映画「バトルシップ」
米海軍ら艦艇とエイリアンの機動兵器との戦いを描いたSFアクション映画。
物語終盤、手持ちの駆逐艦を全て失った主人公らが最後の手段として退役軍人らの協力を得て記念艦として係留保存されているミズーリを再稼働させ、戦いを挑む。

戦闘シーンなど外部からのシーンの大半はCGであるが、艦内など一部の撮影では係留保存されているミズーリにて撮影が行われている。
最新のCGを使って描かれる、戦艦最大の利点である圧倒的攻撃力・防御力で敵宇宙船に対して純粋な力押しで戦うシーンの迫力は必見。

  • 艦隊これくしょん-艦これ-
VITA版「艦これ改」にて先行実装されたのち、本家ブラウザ版でも2016年春イベント「開設!基地航空隊」の最深部E-7クリア報酬として実装。
米軍艦艇として、また現存する艦艇としても初の実装となる。
性能としては日本最強の戦艦大和型に匹敵する(一部性能は凌駕する)高速戦艦と言ったところで、まさしく米軍最強戦艦と呼ぶにふさわしい性能を誇るが、その分消費する資材も凄まじく、(改造前ですら)戦闘では金剛型改二の二倍の燃料と弾薬を消費し、入居時の鋼材使用などもかなり大量のため、運用には若干の注意を要するといえるだろう。

なお、容姿に関しては彼女を評した海外提督の「What a fucking cutie」と言う発言にて察していただきたい。

『おまけ』

戦艦が腹のうちに抱える破壊力は、野砲1000門分とすら評される。
また、核兵器を除いた場合、最大の打撃力を誇るとすら言われる。
※どう考えてもオーバーキルであるがw

なんでもかんでも核を兵器に仕込んでいた古き良き時代、爆弾に始まり魚雷に至り、しまいには


戦 術 核 砲 弾!!!!

まで製造された。風向きによっては、当然自分も危ない変態兵器である。




追記・修正はミズーリを見学に行ってからお願いします。

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