火事場の馬鹿力

登録日:2011/05/09 Mon 05:46:15
更新日:2023/05/28 Sun 14:01:22
所要時間:約 8 分で読めます




火事場の馬鹿力とは、人間の潜在能力解放の姿をことわざ(慣用句、比喩)で例えたものである。
ここではそんな馬鹿力について少しだけ詳しく説明していきたい。


火事場の馬鹿力の意味

まずこの言葉には、「差し迫った状態にまで追い込まれたとき、普段では考えられないような力を発揮する」、といった意味がある。


これについて、世間一般の人は、
「家が火事になったとき、財産である家具をかかえて逃げ出す(ほどの力がでる)」
「家が火事になったとき、普通なら逃げられない状態から物凄いパワーを発揮して脱出する」
などといった形で認識している。
が、この「火事場の馬鹿力」がうまれたときの明確なエピソード自体は原典がないので不明。


この言葉の類義語として「窮鼠猫を噛む」がある。
これは脅威が猫に、追い詰められるのが鼠になっただけで、「力を発揮する」という面においては似たようなものとして考えられる(明確には反撃的な使われ方をする点で異なるが)。


さらに「窮鼠猫を噛む」の派生語として「追い込まれた狐はジャッカルより凶暴だ!」というのもある(これについてはグレイ・フォックスの項を参照)。


そして最も混同しやすいのが「火事場のクソ力」
これは『キン肉マン』シリーズにおける架空の能力である(Ⅱ世ではK.K.Dという略称も使用された)。
作中では「自己防衛本能」としてVSロビンマスク戦で無意識に発揮、勝利を収めており、以降もインフレを起こす超人たちと戦う術として習得、成長を続けた。
より詳細な内容については本家Wikipediaに項目があるのでそちらを参照していただきたい(ちなみに本家に火事場の馬鹿力の項はない)。


なおこの火事場のクソ力は火事場の馬鹿力が元となっており、力量などに違いはあれど意味合いはほぼ同じなので、どちらを使っていても間違いではない。


火事場の馬鹿力の実態

ここからはこの馬鹿力がどれ程のものかを知っていただきたい。


突然だが、何も考えず近くの壁を思いっきり殴ってみてほしい(自己責任で)。
あ、代行者に頼んだら意味がないので自分の拳で。

  __
  / )))   _
`/ イ‾   (((丶
( ★壁殴り代行始めました★
| (\ ∧_∧ | )
丶 丶`(´・ω・)/ノ/ 1時間
 \ | ⌒Y⌒ / / ¥1200~
  |丶  |  ノ/ 24時間営業
  \トー仝ーイ  年中無休!!
   | ミ土彡/


ご苦労様でした。おそらく殴った人は痛かっただろうし、全力では無理だっただろう。
再び唐突なのだが、今度は海外で実際にあった火事場の馬鹿力の例を一つ挙げる。


車のタイヤ交換をしようとしたトニー。
ジャッキで車体を持ち上げ下に入るも運悪くジャッキが外れ下敷きになり、気を失ってしまう。
それを見かけた近所の子供が、慌てて家の中にいた彼の母親を呼んだ。
母親は息子を助けるため、何と一人で車(350kg)を5分間持ち上げ続けたのである*1
救出されたトニーは2日間意識不明の状態になったが、命に別状はなかったという。
(世界まる見えより)


この話と先の壁パン。
これらを比較しながら、火事場の馬鹿力がどんなものか説明したい。


①力を行使するに至るキッカケ

実はこれが馬鹿力を発揮する上で最も重要なのだが、皆さんは赤の他人からの指示により壁を殴った。
対して上記の母親は、自分の子が死ぬかもしれないという「生命の危機」を感じたために車を持ち上げたのである。
この危機回避能力や自己防衛本能といった命に関わるほどの動機こそが、脳のリミッター解除に必要な条件となる。


②脳のリミッターとは?

人間の筋肉は筋線維で出来ており、それらを脳からの指令で収縮・弛緩させ動かしている。
しかしこの筋線維を100%活動させると筋断裂などを引き起こすため、人は無意識の内にそうならないよう力を抑制している。
(意識的に力を引き出せるのは50~60%、鍛えていても70~80%が限界)
これが脳のリミッターである。


③リミッターが解除されていないと/されると?

解除されていない場合は皆さんが体験した通り直ぐ様痛みを感じ、たとえ本気で殴ったと思っていても、無意識の内に力を抑えている。
解除するような状況になった場合、そのとき既に体内や脳内では大量のアドレナリンやβエンドルフィンが分泌されている。
(アドレナリンには興奮作用、血液供給量増加、痛覚の麻痺が、βエンドルフィンには鎮痛作用がある)

なので車を持ち上げる際の興奮はMAX、力を抑制どころか増幅させ、全力で肉体を酷使する代償の筋断裂・骨折などはそのときは関係なしとなる。
小難しく書いてきたが、要は筋肉に「そんなに縮むな!」という命令を送らなくなっただけ。
たったそれだけの事がリミッターの先(20~30%の筋力向上)に繋がるのである。


④その後

分泌物質は減少、消失する。
当然息子を助け終えた母親は、尋常じゃない痛みに全身を襲われただろう。


火事場の馬鹿力の発揮

ここまでの説明で、馬鹿力の正規発動には容易ではない条件があることが理解していただけただろう。
だが、100%とまではいかずとも近い効果を引き出すことは可能である。
以下にその方法をいくつか記す。


ドーピング

薬物を使って肉体強化やリミッター解除を行う方法。
公式スポーツの世界では当然タブー。
成分としてはアナボリックステロイドなどが有名であり、Wiki的例では至郎田正影のドーピングコンソメスープがわかりやすいだろう。


応援

君達の運動会を想像していただければ容易に理解出来るだろう。
憧れの女子「キャー!〇〇君頑張ってー!!(点数のために)」
〇〇君「うおおみなぎってきたあぁぁああッ!!(キミのために僕は勝つ!)」

漫画やアニメでも、仲間や恋人の応援が限界を超えた身体を動かしたーみたいな感じで決着の一撃を放ったりする。


電気刺激

脳からの伝達物質ではなく、外部からの刺激に頼る方法。
TV番組『所さんの目がテン!』ではディレクターのふくらはぎに電流を流したところ、筋力が1.4倍に跳ね上がった。
当然危険なので真似してはいけない。

仮面ライダークウガでは、体内(霊石)に電気刺激を与えたことで、アルティメットフォームの力の一端がライジングフォームとして発現している。
人体に置き換えて考えると最終形態(100%)、黒の金(90%)、金(75%前後)、通常形態(60%前後)、白(40%)といったところか。


思い込み

催眠術や自己暗示により対象を操作・強化する方法。
当たり前だが思い込む力が弱い人や悲観的な人は効果がないだろう。
鵜堂刃衛は新撰組脱退時と剣心との戦いの際に使用、長身細身から筋骨隆々の姿になった。
喧嘩商売では主人公の流派に、自己暗示により意図的に火事場の馬鹿力を発揮する無極という技が登場する。


叫ぶ

ハンマー投で有名なムロフシ選手の投擲を見たことはあるだろうか?
彼は投げた瞬間大咆哮をあげているのだが、あれは(日々のトレーニングが前提だが)大声を出して気合を入れることにより、潜在能力の一部を引き出しているのである。
これを「シャウトの法則」とよび、個人差はあれど通常より20%近くパワーが出るという研究結果が出ている。

これ単体が創作物の世界で強化要因になることは少ないが、クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングルではアクション仮面がパラダイスキングとの戦闘の際、自身を奮い立たせる雄叫びと周囲の応援も相俟って一時的にパワーアップしている。


キレる

一番身近で手っ取り早い方法である。
先程やってもらった壁パンを、何かにキレてやったことがある人もいるだろう。
そのとき壁が凹んだり、殴った手があまり痛くなかったりしたのではないだろうか。
それは馬鹿力の発揮時と同様に興奮作用のアドレナリン、鎮痛効果のあるβエンドルフィンが出ていたためである。

かつての横綱朝青龍は「対戦相手が自分の母親を虐めている」と思い込んでキレることで力を引き出し、優勝している。

創作物では皆分かるドラゴンボールがいい例だろう。
孫悟空クリリンが爆ぜたことがキッカケで超サイヤ人になり、悟飯は16号がやられたことで怒り、超サイヤ人2になった。

また特異な例としては平和島静雄がある。
彼は幼少児から沸点が異常に低く、筋繊維が壊れ続けた結果、リミッターを外しても筋断裂を起こさない体になっている。


以上である。
最後に、この100%の力を発揮しつつも筋断裂を起こさない凄い人間がいたりする。
皆さんも彼を見習い、いつ火事場の馬鹿力を発揮してもいいよう普段から身体を鍛えておこう。

人間の可能性は無限大!

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最終更新:2023年05月28日 14:01

*1 なお、車の総重量は約1.6tとのこと