大富豪/大貧民(トランプ)

登録日:2010/08/04 Wed 20:59:30
更新日:2024/04/03 Wed 01:00:07
所要時間:約 9 分で読めます




目次

【概要】

トランプを使うカードゲーム。どちらも呼称の違いであり同じものを指す。
自分の手持ちのカードを全て場に出し終えたら勝ちというシンプルなルールで、子供からお年寄りまで楽しめる。
だが、知名度の高いゲームでありながらローカルルールがやたらと多い事で有名であり、見知らぬ人と遊ぶ際は事前に入念なルールのすり合わせが必要という難儀な一面を持つ。
それをうっかり忘れたばかりに摩擦の起きたケースは数知れず。


【ルール】

基本ルールがシンプルなため独自ルールの策定などに対して拡張性が高く、前述したようにあまりのローカルルールの多さから「これが基本ルール」と断言するのは極めて難しい。下記もそれを踏まえた上で読んで欲しい。

  1. シャッフル後、参加者全員にカードを全て配る
  2. 最初の手番のプレイヤーを決め、以降順次手番を回す
  3. 手番のプレイヤーは手札のカードを1枚場に出すかパス(回数無制限)を選んで手番を終了
  4. 全てのカードを出し終えたプレイヤーは上がりとなり、早く上がった順でそのゲームの順位が決定される

カードには強さがあり、3<4<5<………<10<J<Q<K<A<2<ジョーカー、となっている。
場に出ているカードより強いカードしか出す事はできない。手持ちに出せるカードがないならパスする事になる。
場に出たカードに対し、それを出したプレイヤーを除く全員がパスした場合、場に出ているカードを全て捨て札とし、0の状態からそのプレイヤーの手番で再び始める。

プレイヤーには直前のゲームの順位によって称号が与えられる(初めのゲームでは全員「平民」)。
1位←「大富豪」「富豪」「平民」「貧民」「大貧民」→最下位
これがゲームの名前の所以となっている。
次のゲームの最初の手番は概ね「大貧民」、つまり最下位だったプレイヤーから始める事が多い。
参加人数が5名に満たない場合は「平民」が削られ、逆に6名以上の場合は「平民」が増える。




…ここまでである。

え?
ルール少なすぎね?
ていうか俺の知ってるルールと違うんだけど?

そう思うのも無理はない。

この先は全て地域差のある可変ルールなのだ。



【準基本ルール】

基本的には一般的と目されるもの。大抵の地域で通用するはずだが、確実ではない。

  • カード交換
先ほど「大富豪」「富豪」「平民」「貧民」「大貧民」という順位・格付けについて触れた。
この称号は無意味ではなく、次のゲームから(カードを配った後に)称号に則ってカードの交換を行う。
枚数は、貧民-富豪の間で1枚、大貧民-大富豪の間で2枚ずつ。
 貧民・大貧民→手持ちの中から最も数字の大きいカードを強制選択
 富豪・大富豪→手持ちの中から不要なカードを任意選択
理不尽に見えるが、手持ちのカードが偏るため逆に駆け引きの緊迫感が増すルールである。「刀狩り」「徴税」などと呼ばれることも。

このカード交換自体は基本ルールではあるのだが、その内容については差異がある。
例えば貧民側から渡されるカードは「富豪側が貧民側の手札を覗き見て任意のカードを選べる」とか、後述するジョーカーについての扱いなど。
当たり前だが貧民側が本来渡すべきカードを詐称するのは重大なルール違反であり、ゲーム以前の問題である。そこはきちんと守ろう。

  • 使用カード
基本的には52枚のカードを全て使う。だがジョーカーについては地域差が大きい。
特にジョーカーを含める場合、その効果についてしっかり決めておく必要がある。
単に2より強いだけのカードとするのか、他のカードの代わりとなれる可変ルールか。
可変の場合、後述するローカルルールにおいて特殊効果のあるカードになれるかどうか。
カード交換に応じるかどうか(隠し持てるか、交換に応じなければならないか)。
…などなど。
ローカルルールの採用数が増えるほど扱いが厄介になりがちである。

  • トリック(リード)
そのターンにおいて場に出されたカードのルールを場が流れるまで保持するかどうか。
これの適用については、まず先に「複数のカードの同時使用」について策定する必要がある。
同時使用で最もメジャーなのは、「同じ数字なら異なるスートでも同時に出せる」というルール。
これを採用した場合、以後は場が流れるまで「同枚数でなければ出せなくなる」というルールが一時的に追加される(これがリード)。
ターンの途中から突然ダブルやトリプルに変更できるかどうかはローカルルール次第。



【ローカルルール】

冒頭で述べた通り、このゲームはローカルルールのバーゲンセールやたらとローカルルールが多い。

なぜここまで多いのかは不明だが、恐らくは単調なゲームになってしまう事を防ぐためだろう。
「大富豪」「大貧民」のカード交換はあまりに圧倒的な戦力差を生み出すため、一度「大富豪」「大貧民」が決まると、以降ずっと同じゲーム、同じ状態が長引いてしまいやすいのだ。
ローカルルールはこうした固定化を防ぐために生まれたものと推察できる。

ただ、ローカルルールは知っているプレイヤーと知らないプレイヤーの力量差が絶望的に開くため、採用すればいいというものでもない。
プレイ前の念入りな相談がどれほど重要かは言うまでもないだろう。

以下に比較的メジャーなものを挙げるが、同じ名称ですらバリエーションがあり、確定的に採用されて当たり前というものは一つも存在しない
逆に言えば任意にローカルルールを選択・採用でき、固定化しがちな定石や単調な戦略を壊して新鮮なゲームを楽しめるということでもある。
たまには当たり前に使っていたルールを排してみたり、知らないルールを追加してみるのもよいだろう。


  • 縛り
トリックのリードをさらに厳格に、強制力を強めたもの。
「スート縛り」場に同じスートのカードが連続で出た場合、場が流れるまではそのスートのカードしか出せなくなる。
「階段縛り」場にカード数字が序列順に連続で出た場合、場が流れるまでは続く数字のカードしか出せなくなる*1
スートと階段を組み合わせたものを「激縛」「完縛」と呼ぶ。
複数枚出した際に全ての記号が一致しているかではなく、一部だけ重複している場合にも扱うなどがある。

  • 階段
同じスートかつ数字が3枚以上隣接したものであるなら同時に出せるというルール。
例えばハートの4・5・6などを同時に出せる。あまり揃うことがないのでほぼ流せるが、この場合5以上または7以上(ルール次第)で構成される階段があればまた上に出せる。縛りとの組み合わせもしばしば見られる。

  • 革命
同じ数字のカードを4枚出すことで発動。ジョーカー以外の数字の序列を逆転させ、そのターンが終わっても継続する。
一転して状況がひっくり返せる大どんでん返し。
…なのだが、他のローカルルールが増えるほど有難みの薄れる不憫なルールでもある。
派生として、革命状態の時に再度4枚出すと通常状態に戻る「革命返し」、5枚以上の階段で発動する「階段革命」、3枚の3や9で発動する「砂嵐」や「クーデター」など特殊な革命もある。

  • 都落ち
大富豪が1位抜けできなかった場合、強制的に大貧民になるもの。逆転要素で、急転落し、2枚巻き上げたのに…と蔑む目で見られる。
さらに都落ちすると次のゲームで大貧民にもかかわらず最初の親になる権利すら剥奪されることもある。このルールは都民ファーストと呼ばれる。
派生として富豪が2位以上を保てなかった時に同様に落とされるルールもある。
特に「あがれる状況なのにパスをしてわざと二位をキープする」という露骨なチキンプレイに対しては特別なペナルティが課される事もある。

  • 反則上がり
強いカードを使用して上がった場合に強制的に大貧民となるルール。強カードによる独占の阻止。
主に「強カードを出して上がり」もしくは「強カードで場を流す→最後の一枚を出して上がり」を指す。
ジョーカー・2・特殊効果持ちのカード*2が該当するのがメジャー。
先述した都落ちと被った場合は都落ちが優先される事が多い(既に都落ちした大富豪がいる場合、反則者は下から二番目→貧民になる)。

  • スペードの3
代用ではなく最高位としてジョーカーが使われた際、唯一スペードの3のみさらに上に出すことができる。
3は持たざる者 猶予のない……虐げられし者……そういう最低のカードだ……
しかし……その何も持たぬ……劣悪な環境にあるがゆえに ジョーカーを討つのだ……!
3を三枚の場合もある。
なお、ジョーカーに対するスペ3返しで上がると反則上がりとなるルールもあるので注意しよう。通常のスペ3で上がれば反則上がりにならないこともある。

  • 8切り/8流し
8を出すと、その時点で強制的に場を流すことができる。いわゆる切り札に相当するルール。
「8切り」の読み方は、地方によって「やぎり」「はちきり」「はちぎり」だったりする。
また、Qで8切りと同じ効果の「Q切り」というものもある。
当然、これで上がると反則上がりとなる。

  • Jバック/イレブンバック/Jターン/ジャックダウン
Jを出した際、そのターンでのカードの序列を逆転させることができる。
あくまでそのターン内であり、革命と違って永続性はない。また逆転させずそのまま進めることもできる場合も。
「縛り」でこのカードを使うとき「縛バック」とも……いや、特になにも……
激縛時に11を出す快感はヤバい。
なお、これで上がると反則上がりとなることもあるので要注意。

  • 救急車
9を2枚出すと、8切りと同じく強制的に流せる。キューキュー(99)シャが由来。

  • 10捨て
10を出した際に、任意のカードを捨てることができる。

  • 7渡し
7を出した際に、任意のカードを次の番の相手或いは任意の相手に渡す事ができる。かなりの友情ブレイカー。

  • 5飛ばし(5っ飛び)
5を出した時出した枚数分次の相手の番を飛ばす。うまくいけば自分の番に出来ることも。

  • 4殺し 
4を出して、出せない相手は強制的に負け。
しかも負けた相手の次の番のプレイヤーも出せないと負け、という恐怖のカード。
基本的に低いカード*3なのであまり脅威ではないが革命やJバックで出されるとかなり辛い。
4で革命されたら\(^o^)/状態である。

  • 下剋上
大貧民が一番に上がると全ての順位が逆転すると言うもの。最強カードを二枚奪われてからの逆転劇に心が熱くなる。大富豪にとっては笑えないが。



【オフィシャル・ルール】

かようにカオスな遊びではあるが、実は「公式」と呼べるものは一応存在する。
これは2011年11月に有志が設立した任意団体、一般社団法人『日本大富豪連盟』によって決められたルールで、それによれば
  • 革命
  • 8切り
  • 都落ち
  • スート縛り
  • スペ3返し
  • 反則上がり
を大富豪公式ルールとしている。
同数字の複数同時出し可(以後同枚数縛り有)、同スート階段3枚以上(続きは1つでも上回れば出せる)。
ジョーカーは可変かつ2より強いカードとしても使用可だが、特殊カードにはなれない模様。
またジョーカーを含んだ手では縛りが発生しない。8は階段で使用した場合特殊効果が失われる…など。
詳しくは公式サイトへ。

誤解される前に書いておくが、同団体が大会用に統一しそれによって世界大会を意図している公式ルールであり、
それ以外について「このルールでなければならない」「このルールが絶対的に正しい」といった強制力はない
そもそもこのルールはプレイ人数が3~4名固定で「平民」がいない上、最終的な勝敗はポイント制。(しかも3人の場合「貧民」が削られて「大富豪・富豪・大貧民」になる)
大会以外では採用の難しいルールなのである。




【戦略】

基本的に低い数字のカードや、ペアにならないカードを出していく。
だが革命やJバックに警戒して、低めから中ぐらいのカードを保持するのも。

地域によるルールの差異が大きく、特に特殊効果のあるカードは地域どころか学校やクラスごとに適応しているかどうかが違うことも多く、慣れた相手以外は最初にきちんと確認しておくと良い。
聞いたことがないからと揉めることもよくあるが「実はローカルルールだった」ということがほとんどであるためあまり意固地になるのも考えものである。

また革命発動中のみ数字が逆転するローカルルールも存在する。

ポピュラーなのは、
  • Jバック→7バック
  • スペード3→スペード2
  • 7渡し→11渡し
など。

上記の変化があるにもかかわらず、8切り、救急車、10捨てなどは変わらないルールもある。
確認が必須なのだ。





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最終更新:2024年04月03日 01:00

*1 3→4、と場に出た場合は5しか出せなくなる

*2 特に場を流せる強力なカード

*3 通常なら下から二番目