ジョジョの奇妙な冒険 Part1 ファントムブラッド

登録日:2012/09/06 Thu 21:01:10
更新日:2024/04/05 Fri 21:16:47
所要時間:約 6 分で読めます





二人の囚人が
鉄格子の窓から外を眺めた。

一人はを見た。
一人はを見た。


―フレデリック・ラングブリッジ
『不滅の詩』


ファントムブラッドとは、荒木飛呂彦のロマンホラー漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の第1部。
後に百年以上に渡って続いてゆくジョースター家とディオの因縁の始まりが描かれる。

【概要】

俗に「3回打ち切られたらアウト」とも言われるジャンプ連載において、
魔少年ビーティー」・「バオー来訪者とツーアウト状態の当時の荒木飛呂彦が起死回生を懸けて送り出した会心の一作で、
本作の連載開始時点で既に1~3部までの構想は頭にあったという壮大な物語の序章。
多くの作品が作者の構想をよそに人気が出ず坂を上ったりして未完で終わる中、
ジョジョは担当編集が荒木のユニークな作品に理解を示してくれたという「運命」に恵まれたこともあり、
当初は低空飛行でありながら着実に物語のピースを積み重ねていき、やがて伝説的な傑作として漫画史に名を遺していくこととなった。

コンセプトとしては前作「バオー来訪者」に続き、超人的な「肉体の戦い」を描くことにあった。
今回は新機軸として荒木飛呂彦の愛するホラー映画の中でも、貴族の如き品格を有し圧倒的なパワーを持つが、
同時に弱点にも従わねばならない「ルール」(美学)の中で生きるモンスター、「吸血鬼」を登場させることを決定。
加えて一般的な善や道徳とは別に、己の信念のもとにあえて悪の道を往くダークヒーロー然としたキャラクターを主人公に据えたいと考え、
前々作「魔少年ビーティー」の主人公である罪悪感ゼロの犯罪少年ビーティーをさらに過激かつ冷酷にしたような主人公、ディオ・ブランドーが誕生した。*1

…つまりこの物語はまずディオありきで構想され、ジョジョは後からディオと対になる形で誕生したキャラクターということになる。*2

そしてダブル主人公制のもとにスタートした本作に「人が生きるとはどういうことか」というテーマが誕生。
対照的な性格・価値観・目的を持ったジョジョとディオが共に暮らし、そして戦う中で描かれていく重厚な物語は、
後付けの形であるが「人間讃歌」と号され、以降の荒木飛呂彦の作品展開にも太い軸としてそびえ立つことになるのだった。


【あらすじ】


我はついに手に入れたぞ!!
永遠の生命を!

かつて、永遠の命と世界を支配する圧倒的な力を求めたアステカのとある部族が、
人間を不老不死の怪物『吸血鬼』へと変貌させる道具『石仮面』を作り出した。

しかし、その部族はある時こつ然と歴史から姿を消す。
彼らの王国があった地メキシコに、無人の廃墟と石仮面を残して…。


時は流れ、19世紀のイギリス
名門ジョースター家の一人息子であるジョナサンは、ジョースター家に養子として迎えられた少年ディオ・ブランドーと出会う。
ジョースター家乗っ取りの野望を内に秘めるディオは、様々な手段でジョナサンを陥れ、彼を孤立させるのだった。

それから7年後。ディオの策謀に負けず立派な紳士として成長したジョナサンは、ディオの野望を暴き、彼を追及する。
警官隊に包囲され追い詰められたディオは、ジョースター家が所有していたあの『石仮面』を使い、吸血鬼と化す。
ジョナサンは知恵と勇気をもってディオに立ち向かい、最愛の父ジョージとディオとの青春を過ごした歴史あるジョースター邸を失いながらも、ついにディオを打ち倒すのだった。

その数日後。幼馴染のエリナと結ばれ平穏なひと時を過ごすジョナサンの前に、不思議な力を使いこなす謎の男・ツェペリ男爵が現れる。
ツェペリはジョナサンにディオが生きていること、そして自身の不思議な力の正体は、吸血鬼に唯一対抗しうる太陽の力『波紋』であることを教える。
ジョナサンは今度こそディオとの青春に決着を付けるべく、ツェペリに弟子入りし波紋を学ぶ。

一方、ジョナサンに敗れ重症を負ったディオは、傷を癒しながら次々と部下の屍生人(ゾンビ)を増やし、世界征服という新たな野望のために動き出そうとしていた……


【用語】

古代に存在したとあるアステカの部族が作った仮面。
血液に反応し飛び出す骨針を脳に食い込ませることで、生物を吸血鬼へと変貌させる。

石仮面を被った生物が変化した存在。
不老不死の体と人知を超えたパワーを持つが、太陽の光に弱い。
人間の生命エネルギーを食料とし、エネルギーを吸い取った人間を屍生人(ゾンビ)として蘇らせ従わせることも可能。

『仙道』とも呼ばれる東洋に伝わる技術。
特殊な呼吸法によって血液に波紋を起こし、それによって生み出された生命エネルギーによって様々な効果を発揮する。
生み出されるエネルギーは太陽の光と同じ性質を持ち、不老不死の吸血に唯一対抗できる手段である。


【登場人物】

項目があるキャラクターに関してはそちらを参照。


ジョージ・ジョースター
ジョースター家当主にしてジョナサンの父。逆に考える人。
ジョースターの血に恥じない厳しくも心優しい紳士。
養子であるディオにも実子のジョナサンと同様の愛情と期待を向けていたが、最終的には彼によって殺害されてしまう。

ポコ
ディオが潜伏していた町「ウインドナイツ・ロット」に住む少年。
臆病ないじめられっ子で、いつも姉に助けられている。
ディオによって操られ、ジョナサンたちを誘い出す囮として利用されるが救い出され、以降は彼らと行動を共にする。

トンペティ
ツェペリに波紋を授けたチベットの波紋使い達の長。
ツェペリの連絡を受け、弟子のダイアーとストレイツォを引き連れジョナサンと共闘する。
人間の運命を読み取る力を持ち、ツェペリに出会った時『波紋を習得すれば死の宿命を背負う事になる』と予言した。

ワンチェン
ディオにジョージ暗殺の為の毒薬を売っていた東洋人。
後にディオによって屍生人にされ、彼の側近的な立場となる。
最初は「〇〇あるね」的な口調だったが、最後の方は「〇〇でっせ」的な口調に変わった。

ジャック・ザ・リパー
イギリス中を恐怖に陥れた殺人鬼。実在する人物。
ディオによって屍生人に変えられ、ジョナサン達に襲いかかる。
全身に埋め込んだメスを使い戦う。

血管針カルテット
ディオの手下の屍生人4人組。
下っ端であるにもかかわらずそれぞれ「ペイジ」「ジョーンズ」「プラント」「ボーンナム」という名前が付いている。
ストレイツォに自在に伸びる血管針を用いて襲いかかるが、あっけなく返り討ちに遭う。


【余談など】

☆当時の少年ジャンプは連載から単行本の発行にかけてのペースが今より遅めで、第1部が単行本化している時点では既に本誌の物語は第2部に移行している。
そのため、第1部の頃に生じてしまった矛盾点が本誌第2部で明らかになったので、
  • 第1部の単行本発行の際にあとがきで作者が謝罪
  • 先の展開のネタバレ要素がでかでかと書かれたファンレターが感謝のページに大量に掲載
  • 作者の作画タッチが変わってから改めて表紙絵を描いたため、途中から第1部の表紙なのに第2部のキャラっぽい雰囲気に見えるという感想が多く寄せられた
…結構カオスな様相を呈している。

「外国人を主人公にする」という当時の少年漫画界のタブーを破った作品。
そのタブーや独特な作風もあってか当時の人気はあまり高くなく、現在まで続く大ブームが始まるのは日本人主人公や新要素『スタンド』が登場する第3部を待つこととなる。

☆初代だけあってジョジョでは3部に次いで多くメディア化されており、ゲーム版劇場版が制作されている。
…が、ゲームは原作再現度は高いものの操作性やテンポの悪さなどからクソゲー扱い、
劇場版は内部のゴタゴタやはしょりまくりの内容のせいで評判は悪く現在もDVD化されていないなど質には恵まれていない。

一方で2012年秋には第2部とともにTVアニメ化。原作再現度の高さや声優の熱演もあり、こちらは概ね好評である。




二人のアニヲタが鉄格子の窓からwikiを眺めた。
一人は追記を見た。
一人は修正を見た。


To Be Continued
→Part2

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最終更新:2024年04月05日 21:16

*1 ビーティーは敵には容赦しないが、親友である麦刈康一少年には心を開くなど、まだ優しさと取れる側面を持っていた。また、短編集「ゴージャス★アイリン」で再筆されたビーティーのビジュアルは完全に少年期のディオそのままである。

*2 とはいえ、ビーティーの時点で「魔少年」というタイトルや主人公が犯罪に積極的に関わっていくというスタンスには当時の編集からは相当の難色を示されており、ディオ単独で主役を張るのはほぼ不可能・ジョジョの誕生は必然だったともいえる