日本語

登録日:2009/09/01(火) 00:41:51
更新日:2024/01/11 Thu 22:05:37
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「過去編のアニメ化はまだまだだな」
「スピンオフの劇場版作るのがですよ」


日本語とは、日本国が事実上の公用語とする言語。
アメリカ合衆国中央情報局の調査では難解言語のひとつに数えられる(あくまで英語話者視点で、だが)。
「日本でのみの通用」とは言うがこれは、「共通語を使用した場合殆どの日本人に通じる」という意味で、方言等は含まない。
因みに日本以外でもパラオや台湾、韓国などでは高齢者には結構通じたりする。
使用する文字は、主にひらがな、カタカナ、漢字及びアラビア数字。その他用途に応じて各種アルファベット(大体はラテン文字)等。
このため、最も複雑な記述体型を有する言語となっている。

共通語としての日本語は日琉語族日本語派に属する言語。同じ日本語派の言語である九州方言の鹿児島弁や東北方言の津軽弁などとは親戚関係にあるものの、話者同士で会話が通じないため別の言語扱いされることも多い(ある言語と別の言語とを分ける明確な基準は存在しない)。琉球語派に属する沖縄方言とはさらに遠い親戚である。ちなみに、北海道アイヌ語をはじめとするアイヌ語とは地理的に近いためにいくつかの単語を借用したりされたりしているものの、発音や文法の違いから分かる通り、まったく祖先の異なる別の言語である。

いっぽうで日本で話されているアイヌ語以外の言語を総称して日本語と呼んだ場合、日本語は同じ祖先をもつ言語が他に全く存在しない「孤立した言語」のようだ。孤立した言語は他に、バスク語, シュメール語, クーテナイ語などが該当する。実はアイヌ語も孤立した言語のひとつだったりする。

日本語と他の言語との組み合わせによって生まれたコミュニケーションのための言語、ピジンには、「~アルヨ」の元ネタとして有名な、中国語との組み合わせである横浜ピジン日本語や、満州語との組み合わせである協和語が存在する。ピジン言語がその地の人々にとっての母語となることによって生まれる言語、クレオールは、長い間確認されていなかったが、2007年に台湾宜蘭県のいくつかの街にオーストロネシア語族・タイヤル語との組み合わせである宜蘭クレオールを話す人々の存在が報告されている。

母音は五つと、世界的にはありふれた個数だが、それでも難解言語とされる理由はまず上述したように文字が体系が多いだけでなく、それらの字母が多いこと。
基本となるひらがなとカタカナだけでもそれぞれ軽く40種を超え、その上で漢字という数千種、それも他言語との互換性の低い系統の新字体のそれを覚えなければならない。
漢字は一つの文字に対して複数の読みがあることがほとんどであるという珍しい特性を持っている。マヤ文字やヒエログリフのように発音と表意文字を併記する「ふりがな」のシステムはあるものの、日本語学習者や子供むけの書籍等で使われているのがほとんどである。

アクセントは高低アクセント。ピッチの高低で単語を区別する言語であり(たとえば「柿が」と「牡蠣が」と「垣が」は別の語)、同様の言語にバスク語, 古典ギリシャ語, ノルウェー語等が該当する。
音節とは別に拍の概念がある。たとえば英語ではto, they, love, canはいずれも同様の長さのように発音されるが、日本語の共通語では 「か」「あ」「しゃ」「っ」「ん」「-」のようないわゆる「一文字」(=一拍)で一つの長さと見做されるため、「キャン」「トゥー」などは二文字分の長さである。同じく拍を採用している言語に、古典ギリシャ語, 古英語, ハワイ語などがある。

文単位の高低、イントネーションも文にニュアンスを加える要素のひとつである。「明日行く」を全体的に低高高高高のように発音した場合は明日どこかへ行くという意味になるが、低高高低低で発音した場合はタイムマシンで明日へ向かうという意味になりかねない。

「食べ-させ-られ-なかっ-た-のだ」のように単語に次々と接尾辞(国文法でいう助動詞)がついていくことで意味を追加していく「膠着語」に分類される。このため、日本語の会話をラテンアルファベットに直すと読みにくい。同じく膠着語に分類される言語にはトルコ語, 朝鮮語, モンゴル語, ハンガリー語などがある。

語順は普通、主語-目的語-動詞の順番。地域に関わらず世界の言語の約40%がこの特徴を持っている。有名どころではドイツ語, ヒンディー語, ラテン語など。
特徴的なのは主語や目的語を自由に省略できる点。通常、主語を省略できる言語では動詞が一人称・二人称・三人称, 単数・複数などのうちどの主語を持つかで分かれている場合が多い(たとえば主語を省略できるラテン語では動詞habere「持つ」の一人称単数形habeoに対して二人称単数を取るときはhabesと形を変えなければならない)が日本語では敬語以外に動詞に主語を表示する機能がなく、世界でもまれにみる曖昧性の高い言語と言える。日本語の主語や目的語はむしろ、動詞に意味を追加するいわゆる副詞のようなものなのかもしれない。

「それを燃やしたけど、燃えなかった」のように、日本語は動作に対する主語の影響を際立てないようにする言語だと言われている。英語はそうではなく、動詞が動作の完了までを想定していることが多い。
また、I don’t believe you.「あなたのおっしゃることは信じられません」のように、英語が動作の対象に主語たる「モノ」を取るのに対し、日本語では「コト」をとることが多い。このような言語をそれぞれモノ言語, コト言語というが、モノ言語ではI have a family.(「私は家族を持っている」), コト言語では「私には家族がいる」のような表現が多いらしい。同様の表現をする言語にはヒンディー語やナバホ語などがあるようだ。

指示代名詞について言えば、英語では話し手に近いものと遠いものとでthisとthatを使い分けているが、日本語では単に話し手に近いものは「これ」、聞き手に近いものや話し手から少しだけ遠いものは「それ」、それ以外を「あれ」と呼ぶことが多い。ただし、英語では話し手だけが知っている情報のことはthisやitのように呼び、聞き手も知っているものはthatで表すが、日本語でも話し手のみが知る情報は「これ」「それ」、聞き手もしっているものは「あれ」と言うなど、共通点がないわけではない。

東アジアの諸言語としてはよく見られる主題優勢言語で、「これはペンです」と「これがペンです」(=ペンはこれです)のように「主題」(は)と「焦点」(が)とを表示する。中国語同様、「ゾウは鼻が長い」のように二重の主語を取ることができたりすることも可能。同じ主題優勢言語には、タガログ語、ハンガリー語、ブラジルポルトガル語などがある。

類別詞をもつ言語のひとつ。中国語のように数詞と合わせて使い、「1個」「2匹」「3丁」と名詞によって数え方を変える。印欧語などにおける「性」や「クラス」のように動詞や形容詞の形を不規則に変化させるものではないが、数が多いため覚えるのには一苦労。読み方も「1本(いっぽん)」「2本(にほん)」「3本(さんぼん)」「4本(よんほん)」のように不規則に変化するため多くの学習者を悩ませている(「ほん」の発音が昔は「ぽん」だったことに起因するのだが、それでも「よんほん」などは入ってきた時期が異なるため「さんぼん」のように濁らないのも難易度が高いと言えるかもしれない)。同じ類別詞を使う言語には他にベトナム語, ルワンダ語, ティドレ語などがある。

文法は大陸系、発音は南方の影響がみられ、南北の混合言語であるという学説もあるが、よくわかっていないのが現状である。
その上、尊敬語表現、謙譲語表現、丁寧語表現、口語表現等、様々な表現方法が加わる為更に難解さが増す。これの完全習得を当のネイティブ日本語話者でもそうそうできていない辺りでその具合は察せるだろう。

特に、日本人は丁寧語と尊敬語をよく間違える。
例えば、「すみません、今なんと言いましたか?」と「申し訳ございませんが、今なんとおっしゃいましたか?」は同じ意味を表すが、
前者が丁寧語、後者が尊敬語である。

これら尊敬語や謙譲語は言葉の変化を覚える必要がある為、単純に難しいものである。が、ただ変化形を丸暗記すれば誰にでも喋れる為簡単だということもできる。
ただし「なんとおっしゃられましたか?」は誤用の為注意。

謙譲語は自分をへりくだるものであり、普通他人には使用しない。「わたしが行きます」から「わたしが参ります」となるような変化である。
因みに、尊敬語表現はあるのに謙譲語表現がない、という動詞もある。

敬語が目立つ言語といえばタイ語や朝鮮語などが挙げられるが、朝鮮語が絶対敬語であるのに対し、日本語は相対敬語である。つまり、日本語では他人に対して「父がいらっしゃる」というような身内に対しての尊敬語は使わないし、他社の人物と話すとき自社の人物の動作はたとえその動作の主が目上でも謙譲語を使う。

日本語に多い間違いとして、上記敬語表現のような重複表現がある。これは単語に存在する意味の言葉を更に加えてしまうことである。
例えば、落馬するという言葉は「馬から落ちる」という意味であるのに、「馬から落馬する」などと書いてしまうことをいう。*1
その他、日常では量販店や飲食店等に行くと日本語の誤りに出会うこともできる。

「こちらでよろしかったですか?」
「こちら、※※になります」
「以上で大丈夫でしょうか」
「いくらからお預かりします」

等々。普段聞きなれている為か特に違和感は覚えないかもしれないが、これらは基本的に誤りである。

掲示板等ではよく漢字を間違えていることがある。
これは変換機能に頼っているせいで漢字が分からないのか、もしくは誤変換に気づかずにいるかのどちらかだろう。顕著なのは「以外」と「意外」。このように同音異義語が多いのは古典中国語からいわゆる漢語が借用され、しかも長い年月が経ってしまったためにもともと区別されていた読み同士が同じものになってしまったことによる。字への依存度が高い言語ほどこうした同音異義語は発生しやすいようだ。

その他、本来は誤字・誤用だった言葉がそのまま使われる、なんてこともある。代表例としては独壇場(どくだんじょう)が有名か。これは元々独擅場(どくせんじょう)なのだが、読み間違いと書き間違いからそのまま「ひとり舞台」として定着している。

また、日本語にはロマンス諸語に対するラテン語のような古語表現も存在する。
これは現代人が聞くなり読むなりすると、「ああ」と納得したり、「うん?」と首をかしげたり、現代語と同じ言葉があるのに違う意味だったりと、
本当によく分からないものが多い。

とはいえ、現在でも様々な言葉が本来とは違う意味で使われていたり、または新しい意味が追加されたりと、日本語は日々進歩している。
例としては、微妙、全然、鳥肌がたつ、普通、等。
将来は現在使用されている日本語をも古語となり、同じことを思われるのかもしれない。


補足等

最近では若年層に限らず、漢字を読めない人間が増えてきている。
外来語由来の当て字である鳳梨(パイナップル)天鵞絨(びろうど)などはいいとして、王様、大きい、父さん、炎、氷、等小学生で習うような漢字の読みが出来ない人がいる。

もっとも顕著なのは「十分」で、「ふ」が半濁音の場合の読みは「じっぷん」が正しいのだが、多くは「じっぷん」となっている。
「十」を「じゅっ」と発音する言葉は本来の日本語には存在しない。

あまりに間違えて覚えている人が多い為か、「十」の読みに「じゅっ」を加えようか、という話もある。



他に常用漢字で(ふん)()()(そう)(くつ)等もネタにされるほど読めていなかったが、最近ではどうなのだろうか。


ついでに、日本語には他言語には殆どない、すばらしい機能いくつかがついている。

1つ目は「音訓読み」
外来語である漢字に自国語の読みを付け加えることで自国文化に深く効率的に吸収出来た。
漢字文化圏に属していた国の殆どは使用する言語にこの仕組みを持たず、また民衆には理解が難しかった為に自前の言語文化と漢字を廃しており、代わりにハングルやラテン文字といった表音文字を使っている。
しかしそれらを用いる言語すら、漢字という表語文字ありきで成立したもののために同音の文字・単語の前後の文脈などからの読み分けが表音文字ありきで成立した言語よりも難しく、特に現代のベトナム語はラテン文字からなるクオック・グーでしか表記されないため、その語彙の語源・所以を知らない話者が増えつつあり、一部知識層からは歴史的背景も鑑みた漢字復活論が持ち上がっている。


2つ目に表現が非常に豊かなこと。
裏を返せば日本語の難解さや曖昧さを増す欠陥的要素とも言えてしまうのだが、『兄』という単語一つ上げても

兄ちゃん/お兄ちゃん/にいやん
お兄さま/おにぃ
あにうえ/兄上さま
兄さん/兄サマ/兄たま
兄者
兄貴/アニキ
にぃ/にぃにぃ/兄や
あんちゃん


こんだけ……いやまだまだある。(漢字・カナ・かな でニュアンス・雰囲気が変わるのがミソ)
ところで兄もゲシェタルト崩壊おこすよね

またルイズたんのコピペは他の言語ではまず表現できない。

一人称も豊富である。

わたし/私/わたくし/あたし/アタシ
あたい
自分
ぼく/ボク/僕
おれ/オレ/俺
おいら/オイラ
わし/ワシ/儂
うち/ウチ
わっち/わちき/あちき
わらわ/妾
それがし
やつがれ

わて

まろ

おい(どん)
拙者
我が輩
小生

等々。今は使わないものもあるが。
スポーツ選手がよく「自分」を使うが、あのような改まった場ではわたし、もしくは私が適当。元は山口弁らしい。二人称も同時に豊富だが割愛する。

もっとも表現が豊かになる対象は文化に強く影響される為、単にその違いとも言えなくもない。


謙譲語表現を他人に対して使うことで尊大表現が可能。これは多く時代劇等で使われ、日常ではそうそうない。
侮蔑表現もあり、名詞の前に「糞」「腐れ」等をつける他、単に呼び捨てたり、野郎等も侮蔑表現に含まれる。
とはいえ察する事をお互いに求めるなどの良く言えば粋な、悪く言えば正面を切りたがらない文化が育てた言語とあってか、そういった表現のバリエーションは他言語から一歩引いた位置にあるそうな。


尊敬語、謙譲語、丁寧語をひとまとめに敬語と呼ぶ。単に敬語というと丁寧語を指す場合が多い。
この敬語の中に、丁重語、美化語等も分類によっては含まれる。ごはん、お手洗い、等は美化語である。
ヨーロッパあたりの言語には敬語表現が少ないが、朝鮮語には尊敬語、謙譲語、丁寧語の区分けがあったりする。


日本語は母音と子音が9割9分9厘一体化している(開音節をよく用い閉音節をほぼ使わない)数少ない言語であり、その為多くの外国人にとって、日本語の発音は若干難しいらしい。
逆に言えば日本語を話す日本人も大体の発音を苦手としている。英語で言えばLとR、SとThの使い分けなど。

日本語にも語順があるが、正直な話あってないものに近い。でも語順を変えるととんでもない文章になったりする。
また単語の省略も非常に多い。とくに主語や動詞が省かれることが多く、名詞一語で会話が成立することも少なくない。
津軽弁だが「どさ」「ゆさ」はその究極形と言えるだろう。
日本語の難しさに文字の多さを指摘したが、これでも少なくなった。明治期にひらがなやカタカナの統一化、簡略化がなされ、変体仮名が使われなくなった為である。とはいえ今もうなぎ屋の「な」(平仮名の「ふ」のようなあれ)など、全く使われていないわけではないが。
それ以前では、例えば花札の赤短の札を思い出してほしい。「あのよろし」と読んでいないだろうか。
あれはよく見ると「の」の上に点がついていて「可」の変形、つまり「あかよろし」と書いてある。因みに「あきらかによろしい」という意味。
また、上述の仮名の統一・簡略化時には「を」も削除される予定だったが、諸々の事情で現代まで残っている。が、発音は「wo」でなく「o」であるのがその名残である。
しかし一部の話者は未だにwoと発音しており、一部方言にはより強く残っている。


因みに、東北圏の方言はどこの言語だと言いたくなるようなものが多い割に、更に北の北海道が標準語に近い理由は、
明治時代に日本各地から派遣されて来た屯田兵が会話する為には方言だと不便だった為である。




その他

ここでは共通語について記述。

●もくじ

基本データ

日本語
[nʲɪ̟hṍ̞ŋgó̞]
分類 自然言語
媒体 音声、文字
発祥 日本
話者数 1億5千万人
系統 日琉語族
(孤立した言語)
表記 漢字、平仮名、片仮名
上層言語 中国語
学校文法 橋本文法ほか

◆類型論

基本語順:SOV, Po, GN, AN
形態論上の分類:膠着語
形態・統語アラインメント:対格言語
表示:主要部表示型
優勢:主題優勢言語
移動を表す動詞:動詞枠付け言語
副詞:閉じている
モノ・コト:コト言語、ナル言語、BE言語

アクセント:高低アクセント
拍・音節:拍
基本音節構造:(C)V(N), (C)VC̚
破裂音の有声音:YES
摩擦音の有声音:YES
子音数:12(少ない)
母音数:5(平均的)

数詞(10進法)
1 ひと いち
2 ふた
3 さん
4 し/よん
5 いつ
6 ろく
7 なな しち
8 はち
9 ここの きゅう/く
10 とお じゅう
※中央は10以下のものを数える時に使う和語。右は漢語からのもので、単体で使う時や助数詞を使う時に用いる。

特色

中国語やアジアの諸言語と同じく「○○は〜する」と「〜するのは○○だ」を形態(「-は」と「-が」)によって区別する主題優勢言語であり、「ゾウは鼻が長い」というような総主文、「僕はうなぎだ」のようなうなぎ文や、「太郎は明日大阪に行く予定だ」のような人魚文を可能とする。
ただし、英語のような主題がそれほど優勢でない言語でも、例えば少人数でカフェに入った時には"I'm coffee."と言う場合がある。これは、文脈から"having"を補った"I'm having coffee."の略と思われる。

コト言語の例に漏れず代名詞が豊富である。また「私に家族がいる」という言い回しを好むBE言語の特徴がある。
英語などモノ言語では「私は家族を所有する」という言い回しが一般的なHAVE言語である場合が多い。
一方で、ヒンドゥー語のように特定の条件で使い分けたり、まったく異なる表現を用いる場合もあるらしい。

数詞は、二倍すると子音をそのままに母音を入れ替えただけになる組がある(「ひと」と「ふた」、「よ」と「や」、「み」と「む」)。

◆類型論的に珍しい要素

基本語順が主語-目的語-動詞(SOV)である言語は珍しいという誤解があるが、実際には世界の言語の45%程度が該当する。
英語や中国語が主語-動詞-目的語(SVO)の順なので話者数的には珍しいように見えているだけで、言語数で数えるとこちらの方が珍しいのだ。
他にSOVの特徴を持つ言語はラテン語などが有名。

  • 主語に応じた表示がほぼないにもかかわらず、主語が省略できる。
英語のように主語に応じて動詞が(三単現のsぐらいしか)変わらないような言語では、主語が省略できず、ラテン語のように主語を省略できる言語は、大体動詞が主語に合わせて活用したりする。しかし日本語の場合、動作手は敬意があるかないかで最大三択しか表示がないにもかかわらず、主語を省略可能である。これは数ある言語の中でもかなり珍しく、日本語に特有な曖昧性を高める要因となっている。

  • 無声両唇摩擦音[ɸ]を音素として持つ。
「ふ」の子音を持つ言語は比較的少ない。

歴史

古墳時代より前の時代、母音がいくつ合ったのかは意見が分かれているが、元々は6〜7ほどの母音があったとする説がある。

奈良時代では連続する母音が不安定だったためai>eやio>öのように母音を言いやすくする、いわゆる「連声」が起こっていた。フランス語か悟空と同じ要領と考えると分かりやすい。

ta「手」+ tuna「綱」>taduna「手綱」

ta+i(主題化)>tai>te「手」

teのような形は元の形から変わっているということで「被覆形」、taは「露出形」と呼ばれる。

このようにしてiやeなどの前舌母音(舌の高くなる位置が前にある母音)はイ段やエ段の甲類と呼ばれるようになり、aやo、əといった後舌母音の後ろに前舌母音がつくことで連声が起こったものはイやエの乙類、oや後舌母音同士の連声によってできたオはオの甲類、əはオの乙類となる。

連声は接辞(=学校文法の助動詞)についても同様のことが起こっている。

tob·a「飛ば-(未然形)」+iri「〜てしまった」>tob·e·ri「飛べり(飛んでしまった/已然形+り)」

命令形も同様と考えられているが、意見が分かれている。
tob·a+*i(感嘆詞)>tob·e
tob·a+*jə(感嘆詞)>tob·e*2

その後中国語の影響で連続する母音の連続が許されるようになってきた。
この時はまだhの音がなかったため、中国語でhで発音されるものは調音点(発音する部位。声門や軟口蓋など)が近いが調音方法(摩擦、破裂など)の異なるkの音に借用されたりしている。

平安時代に入ると母音の甲類と乙類の区別が消える。また、破裂音であるパ行[p]の音が言いやすさのため摩擦音であるファ行[ɸ]の音になる。これは唇音弱化と呼ばれ、印欧語でも[p]>[f]のような破裂音>摩擦音の変化が起きている。さらに平安時代中期、こうしてできたファ行子音のうち語頭に来ないものが両唇接近音[β̞]へと変化した。これが現在でも「ワ行」として残っている。*3

主格を表すノと属格(所有格)を表すガが交替するガ/ノ交替が起こった他、「-か」のついた名詞を動詞の連体形が修飾していたものが、疑問や主題となるの名詞の移動によって「-か〜る」のようになったりする、所謂係結びが起こるようになった。

鎌倉時代、ファ行がさらに声門音であるハ行[h]の音に変化した。

◆アニヲタ的には

現代では、外国語の音韻を取り入れた音楽の影響からか、ク/ku/やル/ru/のような/u/で終わる字の母音が省略され/k/や/r/のように聞こえることがある。
また、シ/shi/やチ/chi/のようにヘボン式ローマ字で書くと子音字が変わったりする(ヘボン式ローマ字としてはsiはスィ、tiはティと発音されてしまう)ような場合も母音が省略されて/sh/や/ch/のように聞こえることがある。

たとえば「隅」は[sɯꜜmi]のようにそのまま発音されるが、「やります」のように「す」が低いトーンで、かつ語末に来た場合は[jaɽimaꜜs]のように子音が省略されてしまうのみならず、この拍が消失し、英語のような音節基準の発音になりつつある。くわえて「た」「て」「と」の発音もまた[t'a]のように放出音に近くなる事例がある。これはJ-POPが浸透してきた時代の若者に顕著で、高齢者を演じる声優でも若ければこうした癖が出てくるようだ。

ここでChu☆の「巫女みこナース·愛のテーマ」(2003)とロードオブメジャーの「心絵」(2005)を比較してみよう。

前者は一拍(≒一文字)ずつ綺麗に発音していることが分かるだろう。曲の方もそのように演奏されている。後者の場合、必ずしも一拍につき一つの音が割り当てられている訳ではないことに気がつくだろうか。文字を持っている場合の制約はあれど、少なくとも臨界期を過ぎた話者が異言語と接触するとこのように言語が聞き取り・発音・覚えやすさなどの簡単な方へと流れてしまうようである。

音韻

◆音素

日本語の仮名は子音と母音の組み合わせでできている。たとえば「き」を伸ばし続けると「い」の音になる(ただし「っ」「ん」は例外)。仮名はそれが共通に持つ母音によって「段」があり、共通に持つ子音によって「行」がある。たとえば「そ」はサ行オ段である。

音素とは「その言語の中で区別している音」のこと。「物理的な発音方法」である「音価」とは区別される。

例えば「シ」の音は訓令式ローマ字では/si/と書くが、音価の代表的な表記方法であるIPA国際音声記号の読み方では「スィ」に近い読み方をする。しかし、例えば「ソ」/so/はどちらの読み方でも「ソ」なのである。これは日本語において子音sが後続の母音iに同化して変化したためであり、いわば「言いやすく」したものである。日本語では「スィ」を使う機会があまりないため、厳密には「シ」を[ɕi]のように書かなければならないところを、省略して/si/と書くのである。


  • 母音
基本的には有声音(濁音のように、声帯を振動させて出す音)。ただし、「主格」「資格」などのように、「き」「きゅ」「く」「し」「しゅ」「す」「ち」「ちゅ」「つ」「ひ」「ひゅ」「ふ」といった、特殊な無声子音や狭母音を含む文字は後述する平板型アクセントの大文字部分で母音が無声化し、単に息が出るだけのように聞こえる場合がある。

あ・ア /a/ [a](より正確には[ä̝])
中舌広母音(上寄り)。舌の中ほどを上あごに近づけ、口を大きめに開けて発音する。

い・イ /i/[i](正確には[ɪ̟])
前舌広めの狭母音(前寄り)。舌の前側が上顎に近づき、口を狭くして発音。

う・ウ /u/[ɯ](正確には [ɯ̹̽])
微円唇後舌め広めの狭母音。舌の中ほどより少し前が上あごに近づき、唇もやや狭く、わずかに円くなる。母音数が5つの言語以外ではこのような母音はまれ。

え・エ /e/[e](正確には [e̞] )
前舌中央母音。唇をやや開き、舌の前側を上あごに近づける。

お・オ /o/[o](正確には [o̞͑] )
微円唇後舌中央母音。2拍以上隣接していると無声化することがある。


◆アクセント

平板型、尾高型、中高型、頭高型がある。頭高型以外は文頭で低くなる。ここでは東京式アクセントについて記述。

日本語の標準語には文全体に渡る強弱(ここでは便宜的にイントネーションと呼ぶ)と単語単位のアクセントがある。
単語単位のアクセントは、文の最初や修飾語が先行していない場合などに発音される場合とそうでない場合とで異なる。
ここでは文の最初などに発音される場合を大文字で、そうでない場合を小文字で書き始めることとする。

日本語の語にはアクセントのある語(それ、日本語、キャットなど)とない語(が、は、ない(接尾辞)、など)がある。アクセントのある語にない語がつくことで一つの単語となり、国語学ではこの単語を文節と読んでいる。
日本語のアクセントは名詞ごとにというよりは、この文節ごとに起こっている。故に、「橋」と「端」のアクセントは同じに聞こえるが、「橋が」と「端が」のアクセントは異なる。

  • アクセントの類型

判例

語句 イメージ /簡易化した発音表記(音素)/

なおイメージには_と ̄があるが、実際にはアクセントは\(そのアクセントの次が下がる)と―(そのアクセントによっては何も起こらない)の二種類の区別しかない。

  • 平板型
接尾辞(=助詞)を含めて、一度上がると低くならない。若者言葉などでは本来のアクセントが分からない場合に平板型になりやすい。

山田が
や_ま ̄だ ̄が\ /yamádágáꜜ/ (大文字始まり)
や ̄ま ̄だ ̄が\ /yámádágáꜜ/ (小文字始まり)

簡易のためにyamadaˈなどと書かれることがある。

  • 尾高型
非アクセント語がつくと下がる。

寒気が
さ_む ̄け ̄が_ /samúkéꜜga/ (大文字始まり)
さ ̄む ̄け ̄が_ /sámúkéꜜga/ (小文字始まり)

samuˈkeのように書かれる。

  • 中高型
語末だけ下がる。

お菓子も
お_か ̄し_も_ /okáꜜsimo/ (大文字始まり)
お ̄か ̄し_も_ /ókáꜜsimo/ (小文字始まり)

oˈkasiのように書かれる。

  • 頭高型
語頭だけが高くなる。

アクアが
あ ̄く_あ_が /áꜜkuaga/ (大文字始まり・小文字始まり共通)

ˈakuaのように書かれる。

大文字始まりの場合、頭高型以外は一律最初の拍は下がり二番目以降が上がっているが、小文字始まりの場合、最初の拍の下降がキャンセルされる。

  • アクセント語類
なお、方言間のアクセントは古代の日本語から規則的に変化しているため、方言が違っていても単語が対応していればその単語に割り振られた「アクセント語類」とその方言でのそのアクセント語類のアクセントから、その単語のアクセントを予測することが可能なようである。たとえば、平板型アクセントはアクセント語類では1類、6類、7類に該当する。

  • 複合語・複合形のアクセント
「危機管理」は「危機」と「管理」からなる造語だが、そのアクセントはそれら二つとは異なっている。このように複数の語から作られる語や、動詞に接尾辞がつくことによって変化したものなどは、アクセントに変化を生じさせることがある。
複合語は前部要素と後部要素が合体し、それらとは異なるアクセントになることが多いが、このアクセントは後部要素によって決まるようである;「朝日新聞」「毎日新聞」の下がり目は同じ場所にある。
させる、される、ながら、などの助動詞は、前部要素のアクセントが引き継がれる;「笑う」と「笑わせる」は共に平板型アクセントである。
ます、ましょう、などの助動詞は、後部要素のアクセントが引き継がれる。

◆全体的下降

大文字と小文字の違い、およびイントネーションの下降は、以下のように現れる。
例えば「お父さんが来た」と言いたい場合、

Oˈtousan ga ˈkita

のように、「が」の直後のタイミングでアクセントを保持したままイントネーションが全体的に下降したなら、その文は「誰が来たのか」という問いに対する答えとなるし、

Oˈtousan ga ˈKita

のように改めて上昇したなら、「お父さんは何をしているか」という問いに対する答えとなる。

また、全体的下降は倒置や仮定、副助詞「だけ」などの直前でも起こる。

◆拍(mora)

日本語の拍とは、主に俳句で数えた時の文字数のこと。
英語は母音が複数まとまっていても音節としてひとまとめに数えることがあり*4、逆にnなどの子音は多くの場合一音節にカウントしない*5が、日本語は「ん」「っ」などを一拍として数える。古典ギリシャ語やラテン語もこの拍を用いていたのではないかと言われている。

2000年代後半ごろからアニソンではこの拍が無視される傾向にあり、英語のような音節基準の歌詞が出始めてきている。

文法

日本語の文法は何種類かの解釈がある。学校で教えられているいわゆる学校文法もこれらの解釈を組み合わせたものであるが、これは形態論的・統語論的な側面が強く、他にも意味論的な品詞の分類もされていたりする。伝統的な文法(=国文法)では橋下文法、時枝文法、山田文法、松本文法の四つが有名である。

ここでは分かりやすさの関係から、品詞を以下のように分類する。

◆品詞

同じ形が品詞を跨いで存在することがある。例えば「ない」は形容詞の否定に使われる際は補助動詞だが、動詞の否定に使われる際は単なる接辞である。これらは起源が異なる場合もあれば、意味の転用によってできた場合もある。

  • アクセントのあるもの
    • 名詞
活用しない語である「体言」の一種。
    • 動詞
活用する語である「用言」の一種。活用によっては名詞を修飾する連体詞(連体形)や他の用言を修飾する連用修飾語(連用形)になることができる。連用形は名詞としても使えるため、連用形にすることを体言化と呼ぶことがある。
    • 形容詞
語幹に存在・状態を表す助動詞(繋辞)「あり」が縮約しているため英語と違い動詞のように活用する。
    • 形容動詞
体言だが名詞のように格助詞をつけることができず、繋辞「だ」などをつけることで動詞のような働きをする。「の」をつけることができるものとできないものがある。英語の副詞や形容詞に近く、実際古典では漢文の副詞や形容詞から輸入された単語が形容動詞として働いている。
    • 副詞
体言の一種だが格助詞「に」をつけることなく動詞を修飾することができる。例えば副詞「今日」は?「今日に来る」というよりは「今日来る」と言った方が違和感がない。このような語は時名詞とも呼ばれる。
    • 補助動詞
動詞が本来的な意味を失い、動詞を修飾する意味となった「やってくる」の「くる」などの単語。文法的な意味では英語の助動詞に相当する。
    • 接続詞
文と文同士を繋げる。活用しない。
    • 間投詞
「あっ」「ちわー」などのように、それ単体で文となる。活用しない。

  • アクセントのないもの
    • 副助詞
名詞または格助詞の後に好きな数つけることができる。古典では係助詞と呼ばれ、動詞に係結びと呼ばれる標識を伴うことがある。「は」「も」はアクセントを持たず、名詞と合わせて一文節(=一つのアクセントが適用される範囲)となるが、「だけ」のようにアクセントを持つものもある。また、「だけ」は「私にだけ」のように格助詞と副助詞との間でイントネーションが急降下する。
    • 格助詞
名詞にひとつだけつけることができる。格助詞がつく場合や、主格、対格、対象主格の接辞などは無標になることがある。
    • 助動詞
動詞の特定の活用形につく接辞と、名詞などについて存在や状態などを表し繋辞となる接辞の二種類がある。動詞と同じように活用する。
    • 接続助詞
動詞の特定の形につくが助動詞のように活用しない。従属節を作り、文を副詞化する。
    • 終助詞
動詞の特定の形につくが助動詞のように活用しない。従属節は作らず、語調を強めたり、話者を表示したりする。

◆用言

用言は述語の主要な構成要素となる。文が例えば「見た。」の一言だけでも通じるように、日本語においては述語が文の本体であり、主語はそれらをただ修飾しているに過ぎない。英語のほとんどの文が「主語-用言-補語、目的語」というように用言(=動詞)の「価数」を満たさなければならないのに対し、日本語の文にはそうした制約がなく、ほぼ自由という形である。

用言は語幹に語尾と呼ばれる種々の母音と、助詞と呼ばれる接尾辞がつくことで様々な意味をもつ。活用とは動詞がその用途や接尾辞に応じて不規則に語尾の形を変えるものであり、日本語ではその形=活用形は未然形、連用形、終止形、連体形、仮定形、命令形と呼ばれる6つに分類されている。形の変え方によって動詞はいくつかのグループに分かれており、活用形の中には他のグループで異なる活用であってもあるグループで同じ形同士であるものもある。

動詞グループ 子音語幹
(五段活用)
母音語幹
(一段活用)
サ行変格活用 カ行変格活用 繋辞 形容詞
未然形 -a (-o) -∅ siˈ se ˈko daro -kara
連用形 -i -∅ siˈ ˈki daQ de ni -ku
終止形 -u -ru suˈru su ˈkuru da desu -i
連体形 -u -ru suˈru ˈkuru na -i
仮定形 -e -re suˈre ˈkure nara -kere
命令形 -e -ro siˈro seyo sero ˈkoi

なお、これらは後続する接辞との同化や類推によって生まれたものであるので、同じ活用形に分類されているものでも後続する接辞によって別々の形を使い分けることがある。たとえば勧誘を表す終助詞「~う」は未然形に接続するが、「掃く」などの五段動詞について「掃かう」などとはならず、母音の同化によって「掃こう」となる。同様に過去を表す「た」は連用形に接続するが、五段動詞の場合は母音の脱落や子音の同化により「習いた」となるようなものは「習った」、「死にた」は「死んだ」、「書きた」は「書いた」といった形になる(これを音便化と言う*6)。

終止形は辞書の見出しに使われ、文を作る。たとえば「行く。」のように次に「。」が来るような形が該当する。命令形も同様に文を作るが、これを使った場合は相手に何かをするよう要求する意味になる。連体形は活用しない語を修飾するための形で、例えば「目を隠す能力」の「隠す」や「冷気を操る程度の能力」の「操る」などが該当。連用形は他の活用語や文そのものを修飾し、あるいは相関関係をはっきりさせずに複数の活用語を連続して使う時に用いられる。例えば「大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた」の「大きく」「ぶ厚く」「重く」などが該当する。通常はそのような場合、「接続助詞」と呼ばれる接辞「~て」と共に用いる。そのほかの活用形は純粋に接辞がついた場合にのみ用いられる。動詞と呼ばれるカテゴリーに入るものはその活用のしかたによって「五段活用動詞」「一段活用動詞」「サ行変格活用動詞」「カ行変格活用動詞」がある。

五段活用動詞は動詞の語幹が子音で終わっているものである。これは未然、連用、終止、連体、仮定、命令の語尾が、ア、イ、ウ、ウ、エ、エ、となっていることに由来する。ちなみに「吸う」などはsuˈw・uのように語幹の末尾がwで終わっている五段動詞である。

一段活用動詞は動詞の語幹が母音で終わっているものである。母音が連続するのが避けられた結果、五段動詞のように直接活用語尾がつくのではなく、終止形、連体形、仮定形では間に子音rが挟まれ、未然形と連用形では語尾がつかない。また命令形は「-ろ」という個別の形をとる。

サ行変格活用動詞は「する」または「(単漢字)+する」の形で「~」の末尾が「ン」「ッ」または母音同士の連続で終わっているものの大部分が該当する。前者の場合は「する」が独立したアクセント語であるが、後者は単漢字と合わせて一つの単語である。

カ行変格活用動詞は「来る」だけである。変格活用動詞は使用頻度が高いため他と異なる形をしている。

繋辞は「断定の助動詞」と呼ばれ、名詞あるいは形容動詞の語幹について存在や性質を表す「だ」「です」が該当する。後者は聞き手への敬意を表すときに用いる。なお、他の助動詞は用言につく接尾辞であるが、この記事では断定の助動詞は独立したアクセント語として扱う。

形容詞は物事の性質を表す語で、「かわいい」のように終止形の末尾が「い」で終わっているものが該当する。基本的な扱いは動詞と同じだが、打消を表す「ない」がつく場合、動詞では未然形に接辞na・iがつくのに対し、形容詞および繋辞の場合は「補助動詞」と呼ばれるアクセント語ˈna・iを連用形で修飾する形をとる。

補助動詞とは、英語の助動詞に相当し、例えば「降ってくる」は「降って」が「くる」を修飾しているが、「くる」は「降って」に意味を付与するに過ぎない。こうした動詞に特定の形を取らせることで意味を付与するタイプの動詞が補助動詞である。補助動詞は句と呼ばれる構造を形成し、この句があたかもひとつの動詞のように働く。なお、補助動詞は通常ひらがなで書かれる。

◆動詞の接尾辞

日本語は膠着語と呼ばれ、ある単語に「接辞」と呼ばれる要素が次々とつくことによって意味が追加されていく形式をとる。例えば「出ちゃいました」は「出」に接尾辞(=動詞本体の後ろにつく接辞)「ちゃい」「まし」「た」がつくことで一つの語になっている。「ちゃい」は動作が意図せずに行われることを表し、「まし」は相手への敬意を、「た」は動作が過去のものであることを表す。通常、接尾辞は、

態(動作の受け手が誰か)または相(動作の行われる時間的な幅はどのようなものか)→時勢(動作がいつ行われたか)または人称(動作が誰によって行われているか)

の順で動詞本体の近くにつけられることが多いが、日本語の場合「殴りあってしまわれた」「お殴り合いになってしまった」のどちらも可能なように人称を表す接辞はある程度融通が利くと思われる。

日本語の動詞の接尾辞には2,3の種類がある。

  • 助動詞
接尾辞のうち活用するもの。「ちゃう」「ます」「れる」などが該当する。日本語の助動詞は英語のように動詞句の本体となるものではない。なお、繋辞も助動詞に含まれるが、繋辞以外の助動詞はアクセント語ではない。

  • 終助詞、接続助詞
接尾辞のうち活用しないもの。終助詞は文の末尾につけて語調を整えたり、態度を表したりする。接続助詞は句または節と呼ばれる構造を形成し、この構造がひとつの副詞のようになることで他の動詞や補助動詞を修飾してさらに大きな句の一部となったり、あるいは他の文に条件や時間などの意味合いを付与したりする。

ここでは繋辞以外の助動詞および活用語尾を・で表し、活用しない接尾辞は-で表す。

◆主題と焦点

名詞と副詞につく助詞にはひとつの語につき幾つでもつけられる副助詞とそうでない格助詞がある。これらはアクセントを持たない。
副助詞は例えば、は、も、こそ、さえ、しか、などであり、格助詞は例えば、が、の、に、を、から、などである。

副助詞「は」は大きく分けて三つの意味合いがある。

  • 対比の標識
  • 主題の標識
  • 総主文を作る標識

対比は、例えば「こいつはカツジ、こいつはケン」のように、他と何かを分けるものである。

主題は、「これがペンだ」のように「ペンであるのはこれだ」という聞き手にとって既知の述語に対する未知の主語を表す焦点の標識「が」に対して、「これはペンだ」のように、既知の主語に対する未知の述語を表す。

総主文は、「ゾウは鼻が長い」の「ゾウは」(≒ゾウについて言えば)が許容される文である。ただし、「ゾウが鼻が長い」と言えないこともない。

対比の意味と主題の意味が常に同時にあるとは限らない。

◆対象主格

格助詞「が」には以下のような意味合いがある。

  • 主格の標識
  • 焦点の標識
  • 対象主格の標識

対象主格は、例えば「草が知りてぇ」「人が食える」「眼鏡が好き」のように、特定の動詞句や形容動詞の目的語のような働きをする。

◆ヲ格

対格、又は英語の目的格、ドイツ語の四格に相当する。ただし、場所を表す名詞についた場合は英語と違い「街を歩く」のように自動詞を修飾できる。

◆ニ格

与格または所格あるいは向格などに相当する。

方言

日本語の方言には、声調のある京阪式アクセントや、拍ではなく音節を用いるシラビーム方言といった特殊なものもある。
方言は以下のような特徴を持つ。

  • 都会から離れるほど昔の方言が残りやすい。特に日本では京都からの距離が同程度の地域同士の方言が近似しており、この分布の解釈に関する原則仮説として「周圏論仮説」というものが提唱されている。
  • 急速に広まった単語ほど変わりにくい;逆を言えば、単語に変種の多い地域ほどその単語の故地である可能性が高い。
  • 借用された単語が変わる場合、その変わり方には規則がある;例えば、ある単語の「ヂ」の音がある地方ではヂ、他の地方ではジと発音されていた時に、他の単語もまた後者の地方ではジと発音されている可能性が高い。
  • 変わり方が不規則な場合、他の方言から借用された単語であったりする場合が多い。

このような規則を利用して語源や故地を予測してみるのも一興かもしれない。

屈折表

動詞グループ 子音語幹
(五段活用)
母音語幹
(一段活用)
形容詞 形容動詞
未然形 -a -o -∅ -karo -daro
連用形 -i -∅ -kaQ -ku -daQ -de -ni
終止形 -u -ru -i -da
連体形 -u -ru -i -na
仮定形 -e -re -kere -nara
命令形 -e -ro -yo
(ここでは「っ」をQと表記した。-は前に語幹が来ることの意味で、-∅は何もつかないという意味。)

  • 言語学でいうところの「接辞」と「助動詞」は、学校文法ではそれぞれ「助動詞」「補助動詞」として教えられる。
  • 「する」「来る」といった使用頻度の高い動詞や(補)助動詞は不規則な活用(変格活用)をする。
  • それぞれの形は命令形を除けば動詞の文法機能や接辞に合わせた語形変化である。
  • 子音語幹動詞または五段活用動詞は「飛ぶ」toˈb·uのように語幹が子音で終わっている動詞、母音活用動詞または一段活用動詞は「食べる」taˈbę·ru*7のように語幹が母音で終わっている動詞である。
  • 形容詞及び形容動詞の否定は(補)助動詞を用いるため英語の不定詞に相当する連用形を用いるが、それ以外は接辞を用いるため専用の語形である未然形となる。
  • 形容動詞の未然形〜終止形は「であり」から派生しているが、連体形と仮定形は「なり」から派生した相補形となっている。
  • 子音語幹動詞の未然形は普通-aを用いるが「-う」のように後ろに狭母音である-uがつくと連声が起こり-oとなる。
  • 子音語幹動詞の連用形は語幹の最後の子音の種別によってその子音が変わる。

追記修正は正しく美しい日本語で宜しくお願い致します。

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最終更新:2024年01月11日 22:05

*1 これについては学術的には重言と呼ばれている。

*2 *は、推測された単語などを表す。また、jはこの場合ヤ行の子音である軟口蓋接近音を表し、それはイ段の母音である非円唇前舌狭母音と同じ発音方法である。

*3 英語の両唇軟口蓋接近音[w]はその名の通り、両唇の接近に加えて舌の後部も上あごの方へ接近する、いわば[u]とほぼ同じ音であることに注意。

*4 reactとかは例外

*5 buttonとかは例外

*6 語幹末尾の子音が/w/、/r/または/t/およびその有声音/d/の場合、それらは無解放の破裂音「っ」(/Q/)となる(促音便)。鼻音/n/または/m/の場合は後続のiが脱落し、解放しない鼻音「ん」(/N/)になる(撥音便)。/k/またはその有声音/g/のとき、kが脱落する(イ音便)。

*7 語幹を語尾と混同しないよう、eはęのように表記した。