ブラック企業

登録日:2013/05/22 Wed 22:10:28
更新日:2024/04/09 Tue 21:10:43
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好きな言葉は命は消耗品だ

よかったー。こいつらに払ってる給料200円が無駄になるトコだった。

産業革命の尊い犠牲となるぞい!

ブラック企業の定義はいろいろあるが、近年では
  • 労働基準法をはじめとした労働法を守らない
  • あるいは守ってはいるが法の抜け穴を突いたグレーゾーンで過酷な労働をさせる企業
を指すことが多いので、それをここでは扱うことにする。
また、労働者を過酷にこき使うこと全般がブラックと言われることもある。
最近ではワンオペとかやりがい搾取なんて言葉も取り上げられている。

仕事をして金を稼ぐのが楽ではないのは当然であり、ただ仕事が厳しいというだけでブラック企業であるというわけではない。
問題なのは厳しい労働をするための法律を守らない、あるいは("スタグフレーション"の原因になる)グレーゾーンで過酷で低賃金な労働を平気で強いることである。

就活中、転職活動中のwiki篭もりたち、あなたがエントリーしている、あなたが内定をいただいた企業はブラック企業ではありませんか?


ブラック企業の例

本家wikipediaの該当ページを参照するとブラック企業の被害者が書いたのか相当詳しいが、ここでは代表的な例だけを紹介する。

  1. 誰も達成できないようなノルマを課し、達成できないと自分や家族で契約してノルマを達成した形にしないといけない(通称:自爆営業)
  2. 開始早々研修をする…のは普通の企業でもやっていることだが、カルト宗教みたいなセミナーに参加させて洗脳。ブラック企業への不満=非常識と認識させる。
  3. サービス残業は当たり前。タイムカードも平気で偽造。あるいは仕事は家に持ち帰ってやれ。結果、過労死するような残業をするハメに。
  4. 気に入らない社員は徹底的にいびって自主退職に追い込む、もしくは言いがかり同様の理由で懲戒解雇する。自殺者が出ることも。
  5. 様々な仕事のための必須費用が全て自腹。費用を引くと実質的に最低賃金すら払われていない。 総支給額がまさかのマイナスになり税金を自分で収めないといけない事も
  6. セクハラ・パワハラなんて当たり前。止めろだって?甘ったれんな!
  7. 辞職も簡単ではない(後述)。
  8. 辞めたとして退職金や未払いの給与を踏み倒すのもザラ。離職票などの書類も送らず、自主退職でも解雇扱い(退職金を踏み倒すため)あるいはその逆(解雇予告手当を踏み倒すため)にされることも。
  9. 求人広告に書いてあることと条件が明らかに違う。キュゥべえですら提示した約束は守っているのに・・・
  10. タチの悪い弁護士や社会保険労務士*1と結託。
  11. 実際には通常の会社員と同じくらい行動を拘束しているのに、社員を「本社と業務契約を持つ自営業者」という扱いにして受けられるはずの各種社会保障をカットする(偽装請負)。
  12. 上司の責任を部下に責任転嫁する。
など

転じて、法律・モラルに反する業務を行う企業のこともブラック企業と呼ぶことがある。
先述した狭義のブラック企業とは区別されるため、使用の際には注意が必要である。
  1. データの偽造・改ざんを行う。
  2. 闇金・不法投棄など、そもそも違法な業務を行う。
  3. 表向きには真っ当なビジネスを行っているが反社会的勢力と取引を行う
  4. 反社会的勢力が経営に携わる
など

ブラック企業の恐ろしさ

一旦ブラック企業に入社して、すぐにやばさに気づいたとしよう。

「こりゃやばい…すぐにやめて別の会社を探そう!!」

ところが、ブラック企業はそれを阻止せんと方々から圧力をかけてくる場合がある。
「お前はまだ慣れてないだけ。もう少し頑張ろう?」「このくらい辛いのは何処でも同じ。」などと精神論で抑えにかかるのはまだ優しい方だろう。
人格否定でしかない恫喝じみた物言いで萎縮させ、もみ消そうとする事すらよくあること。
「お前がさっさとやめたせいで、ほかの社員のモチベーションが下がったor納品が間に合わず取引先に契約解消された。賠償しろ」などと要求して、本当に起訴してきた例もある。
法律の専門家から見れば主張の中身がお花畑ファンタジーとしか言いようのない支離滅裂さで、実際裁判でも企業の請求は1円たりとも認められなかったが、
それでも勝つまでは大変な時間的・心理的負担を強いられる*2
さらにそもそもそんな話や手続をする時間すら与えられない。上司は耳すら貸さず退職届も受け取らない。仕方なくばっくれると損害賠償を請求されたりする。

そこを突破して無事にやめられたとしよう。実際、さっさと辞めてくれて助かったとか考えて見逃してくれる(?)ブラック企業も多い。

「…で、次の仕事は?」

そう、この就職難なご時勢、一旦仕事を辞めてしまうと、次の仕事がなかなか見つからない
まだ年若く応募先が求める経験や資格免許を持っていて、応募や面接で上手く立ち回れるなら別だろうが、そもそもそれが出来る優秀な人材ならこんな事態に(ry
そもそも次の就職先の内定を貰ってから退職するのがベターなのだが、ブラック企業が従業員にそんな余裕を与えるのかというと(ry
なけなしの蓄えを食いつぶしたり、失業保険を受けながら何ヶ月ハローワークに日参しても、内定の1つももらえない人は山ほどいる。
徹夜して作った履歴書を3~4社に一気に送っても1社も面接にすらたどり着けない事すら少なくない。不採用を受け続けることの心理的な負担は相当大きく、精神的にもかなり参る。
これが怖いあまりに、ブラック企業だと知りつつやめられないという人もいる。

「なんとか面接までたどり着いたぜ!!」

甘い甘い。ブラック企業はしつこくあなたに影を落とす。

「はいはい、wiki篭もりさんは…あれ、履歴書にこの会社を2ヶ月でやめたと書いてありますね?どうしてですか?」
「ブラック企業だったから…」
「…あなたね、仮にも勤めていた会社そういう風に呼ぶんですか?単に貴方が能力的についていけなかっただけでは…おっと失礼。…本日はお疲れ様でした。合否の連絡は概ね1週間前後で郵送でお送りします。今後のご活躍を期待しております。」
「ウワァァァン(;_;)」

「性格が合わなくて…」
「へ?…会社にはいろんな人間が働いてて、性格が合わないなんてよくある事でしょ?あなたは気の合う人としか仕事が出来ない、と?それはちょっと困りますねぇ…はは。…本日はお疲れ(ry 」
「\(^o^)/オワタ

そう、ブラック企業を早く辞めても、それを単に「ブラックだから」だけでは信用してもらえない。解雇された腹いせや、退職の原因を隠すために嘘をいう者もいるため当然である。
そもそも上に記したような内容だけで前の会社の悪口雑言を垂れ流すだけ・自分の短所を露呈するだけでイメージが悪くなるばかりである*3
中途半端に誤魔化しても、すぐ話に矛盾が出て「こいつ、絶対何か隠しているな?」と勘付かれたり、仮に通せたとしても「忍耐力のない奴」とでも思われたら、それだけでほぼ不採用確定となる。

詳細を説明するつもりなら、可能な限り具体的にかつ詳細に、何より客観的に、会社を辞めるに至った経緯を説明することである。
どのような条件*4で働いていて、どういった手順を踏み*5、どのように話が進んでいったのか*6?また自身の身体・精神状態はどうだったか*7
詳細にメモをとり、書類や資料も残しておくとよい。日記をつけていればそれも役に立つだろう。
退職した後でも、忘れないうちに思い出せる限りの事を書き留めて整理しておこう。情報量と整合性を確保することで話に信憑性を持たせることができる。
もっとも、そうやってかき集めた資料を就活先がちゃんと目を通してくれるのかまたは考慮してくれるのかというのは全く別の話だが。
また、仮に信用されたとしても、ネガティブな話ばかりでは面接官の心象は振るわない。なので、 なんとかポジティブな話題・表現に繋げて、前社での出来事を引きずらない前向きな人間と見てもらえるよう話を付け足したいところ。

法律も厚労省も次の就職先までは用意してくれない。
挙句過去の記憶が脳裏にちらつき、どの会社もブラック企業に見えてきてなかなか次の一歩が踏み出せないままずるずると生活保護に頼るばかりになっていくという例もある。
一度ブラック企業に勤めたら、それこそやめてもその呪縛に付きまとわれることを覚悟しなければいけないのだ。
それ以前に数年単位での職歴があるならまだいいが、新卒採用者にとっては特に深刻である。
そして、困窮の果てに履歴書さえ持ってくれば即採用、な会社に飛び込めたかと思えばそこもやっぱりというか ブラック企業だった… という、最悪のスパイラルにはまることも…


ブラック企業への対策

入社する前の情報収集、この一点である。
もちろん、入ってしまったのであれば場合によっては弁護士を頼んだり、労働基準監督署に駆け込むしかない。だが、これらは手間ばかりかかって効果は正直薄い*8
法的手段を使って賠償を勝ち取っても、ブラック企業にいつまでも居続けられるわけがない。
第一、被害に遭わないに越したことはないだろう?
「とにかくブラック企業には入らない」ことが必須だ。
例え一時しのぎでも履歴書を汚さないためには早まった就職はしない方がいい。

だが、当然ながら、ブラック企業が自分で「私たちは法律を守らないであなたたちをこき使います!!」だなどと正直に名乗るわけがない。
会社説明の文章が響きだけやたらポジティブな文体まみれだったり…「アットホームな職場です」なんかはブラック伝家の宝刀である。
ブラック企業は、所詮労働者など使い捨てのコマ、補充の効く部品…否、一時の燃料くらいにしか思っていない。
ベテランの社員なんていつかないから、社員数が100人以上いるのに社員の30%近い人数を募集していたり、異常に若手ばかりだし、
新人にすぐ責任ある仕事を任せ、指導もバックアップもない。もちろん仕事がうまくいかなければ精神崩壊レベルの罵倒や理不尽な処分を言い渡され、逃げ出そうとすれば上記の通り損害賠償を毟り取ってくる。
アットホームと言えば聞こえはいいが、実際には私生活干渉がひどいということもある。

これはほんの一例に過ぎないが、ブラック企業を見抜くコツは結構存在している。

ハローワークで手に入る情報だけでも、よくよく見比べれば企業の体質が透けて見えてくる。
ほかにも、今ならブラック企業に関する情報がネット上に大量に流れている。
注意して欲しいのは、インターネットには解雇された腹いせにブラック企業呼ばわりされる、冤罪ブラック企業も稀に発生するという事。
こちらも情報収集で見分けがつく。とにかく情報を集め、よく考え分析しよう。


…そして耳の痛い話ではあるが、調べるだけではブラック企業は回避できても、ブラックではない企業…欲を言うならばホワイト企業に入社することが出来なければ意味がない。
そもそもホワイト企業が労働者にとって優しいのは相応の実績と能力を持つ人材を必要としているからであって、入社するには相応の能力が求められる。
お金とは信頼の証であり、そこをしっかりしているホワイト企業だからこそ、入社において厳しく審査されるのだ。
転職するのならばらどの企業でも通用する能力を身につけることが重要である。
新卒・準新卒ならば、成長の見込みはあるか、長い時間育成する期間を設けても会社を辞めない人材かを執拗に見られるし、中途ならば、入社後すぐに実績を残せるかを厳しく見られる。
どうせどこに行っても不景気だからと、国が悪い政治家が悪い大企業が悪いなどと何かのせいにして努力を怠る、あるいは勉強やサークル活動に力を入れるべき時期に延々とスマホと睨めっこして反政府活動を行うなど努力の方向性を間違える人間は、そもそもホワイト企業に入ることは出来ないのだ。*9
学生のアニヲタは勉強だけでなく、サークル、アルバイト、ボランティアなどのガクチカ作りにも身を注ぐべきである。就活が近づいてきたら遊んでばかりでいない方が良い。
転職中途採用がご希望の社会人アニヲタは他社への転職が有利になるよう日々の仕事に取り組むべきである。それが出来ないほど追い詰められているとしても、無料相談やNPO法人などを駆使してコミュ障の改善くらいはしておくべきだろう。
残酷な話だが、ブラック企業で壊された人間に良い待遇で雇ってくれる優しい会社はそう簡単には見つからないし、仮に見つかったとしても、ある程度の時間が経過したら「良い待遇を与えてやった分だけ会社に貢献しろ」となってしまう。ブラックホワイト関係なく、会社のゴール(目標)とはお金を稼ぐことなのだ。
結局のところ最後は自己責任であり、それはブラックホワイト関係ないどころか、日本だけでなくどこの国でも共通である。

そして、運良くホワイト企業の椅子に座り安泰を手にしたとしても、近年の情勢の不安定もあって会社が経営難に陥った時に真っ先に切り捨てられるのは、上司や後輩から嫌われている人間と、能力の低い人間である。とくにSNSやナレッジコミュニティなんかで学生やブラック企業戦士に上記のようなネット知識のなんちゃってリベラルでマウントを取る人間にありがち。無事にホワイト企業に入社出来たとしても人間関係や日々の言動には十分に気をつけよう。


どうしてブラック企業になってしまうのか?

これも原因はいろいろある。
  • 社長や経営陣がそもそも現代の法律を知らないという例。
  • 企業規模を拡大したものの各所の感覚が中小企業時代のままという例。
  • 人手不足をブラック化でごまかしている例。
  • 経営不振をブラック化でごまかしている例。
  • ビジネス書を自分に都合よく曲解した経営者がブラック化させる例。
そもそも労働基準法のあり方自体、労働者保護に傾きすぎなので、ブラック企業を一概に責める訳にもいかないではないか?という指摘もある。

これらの指摘はどれも間違いだとは断言できない。
労働政策をどうするかは非常に難しい問題で、唯一の答えがあるものではないし、企業による部分も大きいからだ。
企業に都合のよいように法律を改正するように働きかけるのもまた、企業の自由であるだろう。
だが、「今ある法律を守らない」ブラック企業は許されてはならないのである。

そもそも、企業とはブラック・ホワイト問わず、常に資本主義的競争の荒波に飲まれているのだ。
収益を上げられない会社であればどんなホワイト会社であれ潰れる。
ブラック企業は確かに法的責任を問われるが、ブラック企業だから取り潰されると言う訳ではない。
つまり、ブラック企業が蔓延る社会=社員を使い潰すことで効率よく金が稼げる社会、である、と言い換えることもできるのである。
ブラック企業になれば社員にこぞって逃げられ、企業が成り立たない……ということであれば、ブラック企業は自動的に潰れ、根深い問題にはならない。
だが、労働者は、解雇されれば即座に家族まで含めて生活がピンチになる。
それだけでも労働者は立場が弱く、そのためにブラック企業はどうしても出てきてしまうし、そのために労働関係諸法の保護が存在しているのだ。

我々が忘れてはいけないことは、ブラック企業で搾取されているはずの労働者もまた、ブラック企業の片棒を担いでいるということだ。
ブラック企業の労働者の中には感覚がマヒしている人がおり、
ブラック企業を当然と思ってしまうので「労働法を守る」というそれだけの希望をブラック企業の社長と一緒になって非難する例が少なくない。
それだけではない。ブラック企業の経営者も、法律を破ってもそういう人たちが働いてくれるとタカをくくってしまい、ブラック企業は今日も平気で法律を破ってしまうのだ。
ブラック企業を容認して自分が苦しむだけなら自己責任と言えなくもないが、それに他の人を巻き込む権利なんて誰にもありはしないだろう。ブラック企業の被害者だからと言って、一方的に同情ばかりできるわけではないのだ。
また、職場の人間に気を使った善意や良心から行った配慮が職場全体に広がり、由来不明なままブラックな不文律として定着するというケースもある。
たとえ善意や良心が痛むからとは言え、当然の権利を行使することに対しての萎縮や、職場への過剰な配慮も考えものなのである。

そしてまた、一般消費者もブラック企業の発生の一因と言える。
あなたは「無料○○」だとか「安価な製品」をつい選んでしまうことがないだろうか?
値段だけはどんどん安く、サービス・品質はどんどん良く、でなければ嫌、となれば、真っ先にしわ寄せを受けるのが人件費。
その企業自身が明確なブラック企業でなくとも、下請けに対して無茶な要求をしているのであればその下請け企業がブラック化していったりする。

技術の発展や企業努力による価格破壊は歓迎されて当然だが、商品・サービスの低価格化が真っ当な努力によるものなのかどうか、消費者が知る機会は少ないのが実情である。

良質の商品・サービスには相応の対価を支払う姿勢と、安いサービスの裏に何があるのか一度は考える姿勢を持ちたいものである。

「何かにお金を払っていないのなら、あなたはそこの顧客ではない――あなたの方が売り物の商品なのだ」
(Joey Tyson著"You Are Not the Product"より)

意外かもしれないが、経営者の中には、当の労働者よりもブラック企業に厳しい考え方をする人たちも少なからず存在している。
ブラック企業がのさばって、カットした人件費で安値攻勢をかけたりすることが許されてしまえば、まじめに労働法を守っている企業がバカを見るからだ。
それでサービスの質が落ちていくのは、消費者にとっても他人ごとではない。
安値のみを追い求めた結果臨界点を突破し、最低限度の安全性すら守られない商品が世に出れば、取り返しのつかない大損害を蒙るのは消費者なのである。

更に、公務員叩きとしてよくある「(公務員は定時で帰れるくせに)サービス残業は民間では当たり前」。だが、本当は「サービス残業は民間のブラック企業なら当たり前」だ。
そもそも「定時で帰れる」のは窓口業務の非正規職員など一部の人だけであり、多くの職員は残業している。特に霞ヶ関の国家公務員はコロナ対応に追われて夜中の1時まで帰れなくなることもザラ。しかも、公務員は残業代が出ないことが法律で決まっているため、民間企業とは違って残業代未払いが違法ですらなく是正のしようがない。「公務員は定時で帰れる」は過去の認識と言って良いだろう。

本来批判すべきはブラック企業なのに、関係ない場所をこき下ろして何の意味があるのか?

こんな不毛な批判はブラック企業が高笑いするだけだ。
醜いルサンチマンは、ブラック企業にとって追い風になっていることを認識すべきだろう。


どんなところがブラックか?

流石にここで社名を公表することはしないが、web上ではブラック企業ランキングやらブラック企業大賞が開催されるので、
興味のある人は見てみるといいだろう。
こうしたところでは、腹いせでのブラック告発も割と淘汰されていると言われる。

業界構造的にブラックにならざるを得ないことで有名なのが、中小企業の元請クラス、特に土建屋。
彼らは現場を仕切り、発注者からの注文に応えるために数多くの図面や資料を作成する。
そして下請の職人さんが現場で動いている間は基本、現場でその作業を監督する。
……じゃあデスクワークは何時やるの? 想像の通りだ。定時のアフター5からが大半なのである。
その日の作業が終わってから明日の作業の段取りをし、一方で発注者からの要請にも応え続けなければならない。
はっきり言って一人ですべてを残業なしに回すのは不可能である。だからといって、中小企業の規模では多人数をその現場につけられるような余裕はまずないのだ。
必然、現場担当にはとてつもない負担がのしかかる。
なんとか彼らの負担を軽減しようという良心的な会社だと、
一現場終わったら一週間とか10日間の休暇を与えてリフレッシュさせてから(というか現場が動いてたら土曜日なにそれおいしいの?である)次の現場に配置するが、
そんな余裕がない会社も多い。
伊達に3Kと呼ばれてはいないのだ。

そして広告代理店。
小規模なデザイン事務所だけではなく、エリートが集まる職場というイメージが強いトップクラスの最大手も危ない。
大手トップでも過労死(過労鬱による自殺を含む)やそれにまつわる裁判も何度か起きている。
不規則な生活が多いメディア業界や芸能界と関わるため、修正依頼も土日問わずやってくる。
また、所謂ウェイ系やゴリゴリの体育会系が入ることが多い業界であるせいか、セクハラやパワハラ、過労自慢が常態化しやすい風土もあり、過労で鬱になりだした社員にさらなる鬱材料を追加している。
過労自慢体質は出版社などメディア系全般の病理とも言える。

「社会的地位が安定したブラック職場」といえば学校や病院も少なくない。冒頭の爆弾発言も学校によるものだし
特に学校では生徒の素行や家庭環境の問題も持ち込まれやすく、さらにその競技に全く詳しくないのに部活の顧問を押し付けられるのも常態化しており教員の過労に拍車をかけている。近年はこれを解消するために「部活の技術指導は外部コーチに」「ガチで競技をしたい子供は外部チームに行け」という方針も勧められつつある。
病院は所謂三次救急系病院、小児科・産婦人科・外科系がブラックになりやすい。特に産婦人科は出産時間をコントロールしきれない*10ため勤務が不規則になりやすく、そのくせ患者の親族側も「出産は大したことがない」とナメてかかっているためうまくいかなかった時のトラブルも多い。このため志望者が減っている診療科の筆頭を長年走っている。
教師や医師は「聖職者」として敬意を持たれる代わりに「聖職者なんだから」と特に義務のある訳でもない仕事や金額に見合わないクオリティの仕事を押し付けられやすく、当人もその気になりやすいのである。

また、アニヲタ的にはアニメ業界のブラックぶりも有名であろう。
アニメーターの多くはフリーという扱いなのでブラック「企業」とは厳密には異なるのだが、扱いのひどさは唖然とするものがある。
今のアニメーターの収入は新人だと年収50万にもならず、20代平均でも100万ちょい。正社員なのに冗談抜きで最低賃金のパートタイムレベルである。副業をするか実家の援助か生活保護なしでは生きていけないのだ。
作画崩壊という現象も、こうしたアニメーターの過酷すぎる環境が一つの原因であるとも言われている。

ほら誰ですか、そこで違法配信アニメ見ながら作画崩壊乙だのまーたアニオリかよ…だの海外字幕UZEEEE!!だの文句垂れてるのは?あんたみたいなのがアニメ業界をますますブラックにしているんですよ?まあ現代では見逃し配信やサブスク・海外展開が充実してきたことで違法配信を見る人はかなり減ったと思いたいが。


近年のサブカル事情

バブル経済時期に描かれた漫画にて「地上げ屋」をモチーフにした敵ボスが出てきたのと同じように、
近年のサブカルでは「ブラック企業経営者」が敵幹部、またはラスボスになるということが増えてきている。それ以前でもアニカビで工場やアニメ業界のブラックぶりを風刺したエピソードがある。後者はロボ刑事番長ともども作画崩壊の典型的な例として挙げられる。ロボ刑事番長のアニメ化もまるっきり時間がなさ過ぎた。幸い1話で打ち切られたが
(例:プリキュア5のナイトメア)
他にもブラック企業ではないにしても、近年人気が爆発した漫画「鬼滅の刃」のラスボスが本当にブラック企業経営者のそれだったりする。

また、社会人が数多く作品を投稿している小説家になろうあたりでは、ブラック企業の社畜である主人公が異世界転生するというものが少なくなく、それが書籍化アニメ化されるという展開も多い。
(例: デスマーチからはじまる異世界狂想曲)
その場合、ブラック企業時代に培った経験知識能力で無双したり、もう自分みたいに苦しむ人を増やしたくない...とあちらのブラックな一大商会や奴隷制度を破壊しようとしたり、異世界の文化革命改革に躍起になったりする。

変わり種としては、「理想のヒモ生活」という作品もある。
詳しくは項目を参照だが、主人公は異世界の女王様と結婚し、ブラック企業勤めから解放されて、晴れて「ヒモ」になる。
…のだが、舞台となる世界が大戦争を収束した直後とあって主人公はブラック企業と変わらずの激務に追われることになる
「理想のヒモ生活はどこ行った」「(社畜であるため)金や権力では釣れない、お嫁さんにとっての理想のヒモ」などと読者からは揶揄されている。

一方で、ブラック企業で培ったものを何も活かさず、天から気まぐれや手違いで与えられたチートパワーで相手を一方的に蹂躙したり社会を変えちゃったりするような、主人公が社畜である必要性が全くない作品もチラホラ見かける。

+ 例えば…
  • 都合よく野盗や魔物に襲われている領主や豪商をチートパワーで助けて恩人となり、彼らの庇護の元素人ながらも施政や商売に首を突っ込むようになる。
  • ネットのコメント欄レベルの『ぼくがかんがえたりそうてきなほうあん』を具申したり自身が統治する地域で施政しようとして、「前例のない未来的な法案」として讃えられて結果的にあっさり採択される。
    現代日本である程度ニュースを齧っている人間ならばすぐに破綻することに気づくお粗末な政策により、何故か経済発展を起こす。例を挙げると…
    • 自分が日本に居た時に実現させたかったであろう「週5日勤務、1日8時間労働」を掲げて住民に強要する。(電卓や電話、作業機械など仕事を効率的に進める手段がない世界で仕事を8時間で終えることなどまず不可能である)
    • 国内の貴金属を海外に流出するのを防ぐため貨幣の品質を落とす(歴史上何度も経済の混乱を起こしている愚策である)
      紙幣制度を導入する(国家への「信頼」があって初めて成り立つ制度なのだが、新興国家でもお構いなしに実施する)
    • 庶民からの税金を撤廃し、その分を金持ちの貴族から搾り取る(土地の領主の貴族が領地の住民から税を徴収している税制度を分かっていない*11
    • 「ダンジョンの攻略」を主軸にして国の経済を回す(そもそも収入源としては不安定な上、団結した冒険者もとい武装集団に経済を握られる、下克上されるリスクを一切気にしない)
    • モンスターの絶滅を防ぐため一箇所に集めてそこを繁殖地とする、増えすぎたモンスターは冒険者に間引いてもらうために冒険者の修練所にもする(ナチスドイツもびっくりな優生学なのに、何故かモンスター側からも賛同を受ける)
  • 奴隷市場に足を運んで奴隷を購入する。(詳しくは該当項目にあるが、自分がやってる事がかつて在籍していたブラック企業にも劣る事を自覚していない、或いは『俺は日本のあいつらとは違って皆に良い待遇を保障してやれる!』と正当化する。)
    そして死すら救いと思えるほど凄惨な境遇に心を閉ざしている美少女奴隷ヒロインに、ブラック企業で少しコキ使われた程度の経験で同情し、ヒロインに甘言を囁いてあっさり心を開かせたりする。
  • 差別からの解放や種族間の平等などを掲げるが、各地での地道な活動や弁舌などではなくチートパワーによる武功や、転生先の親の七光りの権力でゴリ押し強行採決する。そして、「元々差別なんかなかった」と言わんばかりに突然仲良くなる*12



そういった作品類はごく少数ではあるのだが、その手の作品を槍玉に上げて面白おかしく貶すYouTuberやブロガーが多数存在しており、結果的に「小説家になろう」というジャンルそのものへのヘイトの矛先になっている。

社会を経験したことがないであろうキッズが、「主人公がブラック企業の社畜なのはブラック企業にしか入れないorしがみつくしかない無能だから」 「主人公は見た目はロリショタor青年美女だけど、転生した分も含めて中身は30、40代のおじさんおばさん」などと作品や作者に対して心ない罵声を浴びせることもあるが、彼らも社会に出たら考えも変わると生暖かい目で見てあげてそっとブロックしておこう。



え?ノルマ未達成?じゃあ追記・修正だな…

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最終更新:2024年04月09日 21:10

*1 ブラック企業の代理や顧問をしていたとしても、彼らが必死で止めているのに企業が聞かない、という例もある。だが、社員を鬱にさせて退職に追い込むことをブログで勧めた社会保険労務士もおり、流石にその社会保険労務士は厳しい処分を受けている。

*2 裁判を起こすのは憲法にも定められた権利のため、筋の通らない裁判を起こされ対応に追われても、その損害賠償を取るのは非常に難しいのだ。

*3 業界で知れ渡っているブラック企業だったりすると、同情されたり逆に「そこで○年持つ根性はすごい、採用」なんてこともあるのだが、まぁ期待しないように。

*4 働いた期間、労働時間、残業の頻度、平均の累積労働時間、仕事に対して人数は足りていたか、職場の安全・衛生状態など。

*5 やめる前に相談や抗議はしたか、労組はどう対応したか、弁護士などに頼ったか。

*6 企業の対処・態度はどうだったか、退職金は出たか。

*7 どんな症状が出たのか・病院で診察結果・どんな治療を行ったのか。

*8 後の就職活動で「こういう経緯で」と説明できるあたりは利点といえるが、法的手続を取るような人を採用するのを就活先の方が敬遠しがちになる面もあり、一長一短である。

*9 反政府活動や学生運動が悪いわけではなく、トップに立って活動している人間はちゃんと立派な企業に入社したり独立したりしている。「就活や学業を疎かにして」「問題となるニュースや事件もさほど理解せずに」「ただただ不平不満を叫び散らすだけ」なのが問題なのだ

*10 予定帝王切開でも容体が急変することは多い

*11 現実のアメリカでも、富裕層が所得の再分配や税率を高められた事に不満を抱き、郡の上位にある州議会に働きかけ、住民投票を行った上で合法的に独立する事態になったところもある。日本でも大企業の法人税を上げる事により大企業の法人が海外に流出してしまう懸念が抱かれている。

*12 建前上は奴隷身分から解放されたアメリカの黒人がどんな差別を受けるようになったのか、テレビや授業で歴史を勉強していたら理解出来るはずである