サー・ウィンストン・チャーチル

登録日:2011/12/09(金) 19:09:49
更新日:2024/03/20 Wed 05:01:24
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「過去のことは過去のことだといって片づけてしまえば、それによって我々は未来をも放棄してしまうことになる」



サー・ウィンストン・レナード・スペンサー=チャーチルは大英帝国の第61代首相及び第63代首相。
他、海相・国防相を歴任。

第二次世界大戦においては首相として対ドイツ戦の総指揮をとり大英帝国を勝利へと導いた。

フランクリン•ルーズベルト、ヨシフ•スターリンとともに連合国3首脳とされている。

また彼の仇敵であるヒトラー同様、画家でありそして優れた作家でもあった。

作家としては戦後執筆した「第二次世界大戦回想録」は1953年にノーベル文学賞を受賞している

ちなみに彼の名前には英国における貴族の敬称である「サー」が付いているが彼は生涯を通じて「平民」であった

これは
「たとえ親が貴族であっても親の爵位を継ぐか、国王より爵位を授けられ自らが貴族に列せられない限り平民である」という慣習のためである(チャーチルの父は公爵家の3男)。

このため「サー」は彼の贈られた「ガーター勲章」(正式所持者は騎士として扱われる)から来ていると思われる。

ちなみに彼には「ロンドン公爵位」の爵位を女王は与えようとしたが、
下院議員を目指していたチャーチル自身の息子によって頓挫している(爵位をもつものは下院議員にはなれない)。



■[金を失うのは小さく、名誉を失うのは大きい。しかし、勇気を失うことはすべてを失う]■

その男の伝説は数多く存在する、かの地に住む民の数だけ存在する

その男は獅子の心を持つ男であった

その男は葉巻を愛した

その男はスコッチを愛した

その男は妻と子を愛した

その男は大英帝国を愛した

その男は国王の騎士であった

そして、その男は嵐のような男であった


■[人は得るもので生計を立て、与えるもので人生を築く(1874−1936)]■

彼は日の沈まぬ帝国に生まれた
男が生まれた時、帝国は栄光に包まれていた

全ての大陸にユニオンジャックが燦然と翻り、世界は英国を中心に回っていた

彼は貴族の生まれだった、偉大な政治家を父に持ち宮殿の中で生まれた

最高の教育を受け歴史と文学を愛した

やがて青年となった彼は高貴な者の義務を果たさねばならなくなった
自らが国のために血を流す貴族の義務――――軍務を…

帝国を守るため青年は戦った。キューバでインドでアフリカで

彼は時に軍人としてそして時に従軍記者として国に忠を尽くした

そして彼は貴族としての義務を果たし権利を得た。政界への進出と言う権利を

そして運命は彼に大きな、そして栄光の舞台を彼の元に運んできた。嵐と共に…


■[人間が歴史から学んだことは、歴史から何も学んでないということだ(1936−1939)]■

やがて嵐がやって来た

海を挟んだ欧州の大国、かつての栄光を取り戻さんと、受けた屈辱を返さんとする鍵十字の大国が、ヒトラーの帝国が

第3帝国と言う嵐が欧州を飲み込もうとしていた…

ヒトラー総統は戦争を望んだ、チェンバレン首相は平和を望んだ

彼は「平和の使者」たるを望んだ

大英帝国は譲歩し続けた、ラインラントでオーストリアチェコ

かりそめの平和のために帝国は譲歩し続けた、打算のために譲歩し続けた

だが違っていた。人類は彼の願う段階まで成熟はしていなかった、人は平和ではなく闘争を求めた
そして、それに気付いた時、嵐は欧州を飲み込もうとしていた…


■[イギリスはすべての戦いに敗れるであろう。最後の戦いを除いては(1939-1940)]■

世界大戦が始まった
ヴェルサイユ体制という時代を終わらせるための、新しい時代を誕生させるための戦いが

平和の使者は退場を余儀なくされ「帝国を守る騎士」が求められた

そして人々はチャーチルを選んだ、「国王の騎士」を選んだ

1940年5月10日
大英帝国第61代首相サー・ウィンストン・チャーチルが誕生した

彼は挙国一致内閣を率いて対ドイツ戦の最高指揮を任された

男は帝国に迫る嵐を破るため自らも嵐になることを課した


男は嵐となった…


やがて英国の敗残者はダンケルクの地を去り、万感の思いで欧州の地を去ることになった

鍵十字の旗は大陸を覆い大英帝国をその対岸から見渡していた

敗北はドーバーを挟んで迫っていた…


■[凧が一番高く上がるのは、風に向かっている時である。風に流されている時ではない(1940-1944)]■

彼は演説した議会で、ラジオで全国民に、全帝国内に、そして全世界
英国の勝利を、不屈の闘志を語り続けた

「絶対に屈服してはならない。絶対に、絶対に、絶対に、絶対に」

防空壕で地下鉄で戦闘機の中でアフリカの地で大西洋で
国民が兵士が彼の詩を聞いた、勝利の詩を聞いた

国民の勇気の火は再び燃え上がり、それは炎となり、炎は嵐をより強くした

そして二つの嵐は大英帝国の首都上空でついに激突した
英国を守る戦い、帝国の栄光の戦い「バトル・オブ・ブリテン」が始まった

男たちはスピットファイアに乗り空の騎士となった
女たちはレーダーを操り騎士たちの目となった
老人と子供達は穴を掘り、民を守る盾を築いた

鍵十字の軍が、空を圧したメッサーの大群が空から消えた頃、国民の見上げる空を王立空軍のスピットファイアに見送られながら爆撃機が飛び立っていった

ドイツへ、ドイツへと向かって…

そして1944年6月6日
4年前ダンケルクの敗者として大陸を離れた兵士たちはノルマンディーの勝者として大陸の土を踏んだ


■[築き上げることは、多年の長く骨の折れる仕事である。破壊することは、たった一日の思慮なき行為で足る(1944-1946)]■

戦争は最終段階に入った。もはや勝利は決まり勝者の側に立つ者は戦後を見据えた

チャーチルもまたその一人だった、彼はヤルタへと向かいポツダムにも赴いた

来るべき未来のため、帝国の安寧のために男は汚い仕事にも手を染めた

全ては帝国のため、国王のために…

だが、誰しもが始まりは予期できても終わりは予期できないものだ
嵐の終わりは唐突に訪れた

ポツダムに並んだ連合国首脳の中にチャーチルの姿はなく、かつて彼が座っていた席には彼の後継となった労働党アトリーが座っていた


ドイツという嵐が去れば国民は太陽を求めた
国民はまるで読み終わった本のように英雄を捨てた

やがて第3帝国と言う嵐はヒトラーと共に消えさり、雲は消えた
街に繰り出した国民はパレードとビールで乾杯した


しかし国民が見上げた空にもう太陽は昇っていなかった


そして嵐は過ぎ去ってはいなかった

嵐は瓦礫と化した第三帝国の帝都、ベルリンの中で誰にも祝福されることなく産声を上げていた…


■[これは終わりではない。これは終わりの始まりですらない。しかし、あるいは、始まりの終わりかも知れない(1946−1955)]■

男はもはや嵐ではなかった、しかしいまだ獅子であった

彼は世界に警鐘を鳴らした

「鉄のカーテン」の存在を
国家でなくイデオロギーが世界をに分ける冷戦という新たなる時代の到来を

世界は二色に塗り分けられかつてオーデルの河で握手を交わした西の兵は今は壁を挟んで銃を向け合っていた

そして彼は再び英国に必要とされた、しかしそれは帝国を救う守護者ではなかった

帝国の終わりを知らせる告知者として、であった…
偉大な大英帝国はその歴史的意義を終え、舞台から退場しようとしていた

そして帝国の騎士であった「サー・ウィンストン・チャーチル」もまたその寿命を終えようとしていた

まるで在りし日の帝国の栄光につき従うように…


■[未来のことはわからない。しかし、我々が生きてきた過去が未来を照らしてくれるはずだ(1965−)]■

1965年1月15日、男は息を引き取り、老いた獅子は静かにその舞台を去った

獅子の死に帝国の民は涙し、男は「平民」として初めて国葬という栄誉にあずかり

その棺の中には帝国の旗と、あらんばかりの名誉が収められた


嵐は去り、獅子も去り、帝国もまた歴史からその姿を消した
しかし、獅子の精神は脈々と受け継がれている

彼の守りぬいた「英国」では獅子の子孫たちが今も女王を守る騎士として、かの地とそして在りし日の帝国の栄光を守り続けている


イギリスを、イギリスの栄光を…



追記・修正は「大英帝国の在りし日の栄光」に思いを馳せながらお願いします

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最終更新:2024年03月20日 05:01