仮面ライダー響鬼

登録日:2010/10/10(日) 15:10:58
更新日:2024/04/19 Fri 17:06:15
所要時間:約 8 分で読めます





ぼくたちには、ヒーローがいる。


鍛えてますから、シュッ!



画像出典:仮面ライダー響鬼
(C)2005 石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映




【概要】


『仮面ライダー響鬼』は、2005年1月から2006年1月にかけてテレビ朝日系列にて放送された、東映制作の『平成ライダーシリーズ』第六作……なのだが仮面ライダー要素が全く無いというかなりの異色作で、『完全新生』と銘打たれた。

序盤は専用バイクなし(中盤で登場)。変身ベルトや「変身」の掛け声もなし。
見た目も仮面ライダーに見えない(複眼なし)。なお、平成ライダー第14作目の仮面ライダーウィザードも複眼がないデザインだが、そちらも魔法使いという異色設定である。脚本家も同じきだつよし氏。
メインプロデューサーは仮面ライダークウガを手がけた髙寺成紀とあって、大人向きの作品を期待するファンも多かった、当初は。
また主役のヒビキ役を本放送時33→34歳でTVライダー主人公最年長な細川茂樹が務め、前半脚本家が当時劇団『TEAM 発砲・B・ZIN』主宰だった脚本・演出家兼舞台俳優のきだつよし*1と『クウガ』の文芸から参加した当時新人の大石真司*2な事等、キャスト・スタッフ面でも冒険が成されていた。

ライダーキックもなく(跳び蹴りは通常技)、必殺技は“音撃”。
そのあまりの異色ぶりから『平成のアマゾン』と呼ばれる(アマゾンだって響鬼に比べれば仮面ライダーの要素はあるが……)。
それから11年後にガチで平成のアマゾンが登場したけどな。
しかし、これは構想段階では仮面ライダーではなく、『変身忍者 嵐』のリメイク作品だったためである(後半で嵐をリメイクしたスーツが登場する)。


怪人が妖怪でライダーが鬼だったり、画面に漢字の演出が入ったり、キャストロールが縦書きで表示されたり、話数が『(漢数字)之巻』でカウントされるなど、非常に和風テイストな作品。
経緯が経緯なので全く仮面ライダーらしくはないものの、それはそれで独特の味があってなかなか好評だった。
だが、大人向けな内容と渋い設定は子供ウケせず、販売業績などは低かった。(後述のディスクアニマルがグッドデザイン賞を受賞した為、完全に不評だったとは言い難いが)

しかし後半から脚本とプロデューサーが突如井上敏樹白倉伸一郎に交代、作風もガラッと変わる事になりファンの間では大混乱と論争を巻き起こし、2chの特撮板は大戦争となった(当時はまだtwitterが普及する前)。
交代の理由は現在に至るまで公式に明かされていないが、前半Pの髙寺はクウガ時代にも脚本や設定にこだわりすぎるあまりスケジュール管理が崩壊しかかり、怒った上層部に白倉を手伝いとして付けられた前科がある。
また他作品でも商業的実績が芳しくないと言う「だけ」ではP降板にはなっていないという現実があり、響鬼より1億円も売上が下回った未来戦隊タイムレンジャーの担当日笠淳は途中降板もなく完投した。
この状況から鑑みて現在では寧ろ玩具の売上より予算やスケジュール管理の問題が響いたという見方が多い*3
後半脚本を担当した井上氏に明後日までに1本書き上げてくれという無茶な依頼がなされたことや、東映でも後にも先にも類を見ない3班6話同時撮影、後半プロデューサー白倉氏の放送継続できたことが奇跡的という発言からもスケジュールがかなり破綻していたことがうかがえる。
なお、髙寺はその直後東映を退社し角川に移籍したが、退社の原因はこれとは関係ないと公言している。

ただ、降板直前に別舞台の演出も引き受けていた偶然も重なって降板を余儀なくされたきだも後半の展開を嫌っていたわけではない旨を公言している。
むしろ前半は高寺プロデューサーの清書係に過ぎなかったという思いがあり、後半の展開を評価しているというスタンスである。


仮面ライダークウガ』以来、久しぶりにEDが存在する(ただし後半で消滅)。

クウガと響鬼は平成ライダーで主役スーツアクターが高岩成二ではないという共通点もある(クウガは富永研司、響鬼は伊藤慎)。高岩氏はこの年、三十分前の番組『魔法戦隊マジレンジャー』のレッドを演じていた。
クウガ、響鬼ともに、髙寺P作品ということもあり、髙寺Pと高岩氏の間の不仲説も囁かれている。

後に放送された『仮面ライダーディケイド』の『響鬼の世界』(脚本は本作にも参加した米村正二)は、本作でできなかった話の補完的な内容となっており、なかなか評価が高い。
また、『ディケイド』作中において、ディケイドの変身という形ではあるが、高岩氏がクウガ、響鬼を演じ、晴れて平成ライダーをコンプリートすることになった。


【あらすじ】


ぼく、安達明日夢は東京の下町に住む中学3年生。
屋久島で奇妙な男の人――ヒビキさんに出会ったのですが、ヒビキさんは魔化魍という怪物と戦う鬼だったんです。


【登場人物】


ヒビキ仮面ライダー響鬼
演:細川茂樹

仮面ライダー響鬼に変身する、本作の主人公で本名は日高仁志。
気さくで優しく、器が大きい不思議なおっさん。音撃鼓を使う鬼。「鍛えてます」が口癖で、「シュッ」と言いながら敬礼みたいな仕草をする。よく“カエルのうた”の替え歌を歌う。
車やバイクの運転ができないという仮面ライダーにあるまじき欠点を持つ(後に練習して乗れるようになった)。
後半、響鬼に関しては逆に人物が掘り下げられ、「独学で鬼になったので後進をどう導けばいいのか自信がない」など人間的な弱点が取り上げられた。

安達明日夢
演:栩原楽人

高校受験を間近に控えた中学生。本作は彼の成長劇であり、もう一人の主人公。
屋久島でヒビキと出会い、以降猛士に関わることになる。ヒビキからもらったコンパスを御守り代わりにしている。ドラムをやっている。
当初は鬼になる予定だったが、プロデューサーの一存で取り止めになった。
弟子になる展開をいわゆるライブ感で取りやめた結果、盲腸になったりブラバンに入ったりと思いきやサボったり、響鬼を山まで追いかけたりバイトをしたりと彼は迷走していくことになる。
一応ハイパーバトルビデオでだが鬼になった。


持田ひとみ
演:森絵梨佳

明日夢の同級生。明らかに明日夢に好意を持っている。いわゆる友達以上恋人未満な関係。


イブキ(仮面ライダー威吹鬼)
演:渋江譲二

穏やかな性格の優男で、音撃菅を使う鬼。お洒落に気を遣い、バイク(一般車)を持っている。香須実と良い感じ。
実はヒビキと並んで劇場版・ディケイド・小説版2作と派生作品全部に登場している(並行世界なディケイドでもトドロキ・ザンキ・あきら共々オリジナルキャストだった)。


天美あきら
演:秋山奈々(現・秋山依里)

イブキの弟子であり、イブキのサポートをしている女の子。努力家。高校で明日夢やひとみの同級生になるが、猛士の仕事であまり出席できていない。


戸田山登巳蔵/トドロキ(仮面ライダー轟鬼(トドロキ)
演:川口真五

ひとみの従兄で、斬鬼の弟子。斬鬼大好き。免許皆伝して一人前の鬼『トドロキ』となる。音撃真弦を使う。
二年も弟子をやっていたのになぜか夏の魔化魍の特性を全く知らなかった。
生真面目な性格で目上に対しては語尾に「~ッス」と付ける体育会系。かつては警官だった。終盤の様は涙腺崩壊。
八年後にはドラマ版セーラームーンを伴侶とし、絶望の淵から立ち直り魔法使いとなった。


ザンキ(仮面ライダー斬鬼(ザンキ)
演:松田賢二

轟鬼の師匠の強面おじさん。弦の鬼。身体にガタがきたため現役を引退。轟鬼のサポートに回る。
朝八時のお茶の間に生尻を晒した伝説の人。三年後に盛った狼になってたりする。
蟹にやられて入院していたころはネタにされていたが、登場と同時にその渋さに人気が爆発。爆発しすぎて後半は専用のディスクアニマルや武器が発売するなど優遇され、イブキやトドロキどころかヒビキまで喰われ気味になっていた。


立花勢地郎
演:下條アトム

皆から「おやっさん」と呼ばれる男性。立花だけに。
孟士の関東支部『たちばな』の責任者。常に軟らかい物腰で笑顔を絶やさない。
同じタチバナでも一年前のタチバナとはえらい違いである。
戦国時代には彼そっくりな「藤兵衛」さんがいた。


立花香須実
演:蒲生麻由

勢地郎の娘。
はっきりとした性格で思ったことはすぐに口にする。
『たちばな』の店番以外は主に現場でのサポーターを担当。イブキとは幼なじみで良い感じ。


立花日菜佳
演:神戸みゆき

勢地郎の次女。テンションは高いが「姉上」や「父上」など言葉遣いは古風。
轟鬼に惚れている。
主に『たちばな』の店番や、連絡係、資料探しを担う。

2008年に演じた神戸女史が24歳の若さで早逝、響鬼ファンや関係者達が涙した。
しかし、『ジオウ』でトドロキが登場した際に彼の口から日菜佳の名が言及されており、作品の中で今も生き続けていることが示唆されている。


滝澤みどり
演:梅宮万紗子

猛士の技術者であり、鬼の装備の開発を担当する気さくな女性。
ヒビキの中学時代の同級生。


安達郁子
演:水木薫

明日夢のおりゃべりな母親で、タクシー運転手。
イケメンに会うとはしゃぐ。
後半は出番激減。


桐矢京介
演:中村優一

後半登場キャラ。明日夢の自信過剰なクラスメート。なぜか突然勝負をしかけてくる。
いろいろな意味で後半の象徴的キャラであり、14年後響鬼編は彼のアフターストーリーとして描かれている。
最終的には作中唯一、他人の顔色を常に窺う明日夢が本音をぶつけられる相手というポジションになった。

2年後にはツンデレな2号ライダーに転身した。『ジオウ』でそちらが客演した際、ソウゴから京介に間違われる小ネタがあった。


シュキ(仮面ライダー朱鬼)
演:片岡礼子

後半登場。女性の鬼で斬鬼の師。憎しみに固執し、鬼の資格を剥奪された。奇妙な術を使う。
彼女の登場があきらに変化を与え・・・
演じた片岡氏は脳出血からの復帰直後であり、活舌の悪さが話題になった。
ただ、東映としては北京原人という大きすぎる借りが片岡氏にはあるので暖かく見てあげよう。

童子・姫
演:村田充(童子)、芦名星(姫)

魔化魍を育てる雌雄の怪人。
普段は人間の姿で、怪人形態は“怪童子”“妖姫”という。
声が性別とは逆(童子は女声、姫は男声)。
魔化魍によって異なる能力を持つ。
童子の方はチェックメイトフォーやファントムに似た人がいたり、姫の方は前半脚本家と舞台で共演したりテレパスになったりした。


【用語】


猛士(たけし)
昔から続く魔化魍退治の組織。直接戦う鬼以外にも、現場でサポートする者や装備を作る者などがいる。表向きはオリエンテーリングのNPOとして活動。



本作の仮面ライダーで『音撃戦士』と呼ばれる。修行を積んで変身する
変身すると服が消失し、変身解除すると全裸になるため、戦闘が終了した際には頭だけ変身解除した状態になる。一人立ちした鬼は、鬼の名前を名乗る。


ディスクアニマル
円盤から様々な生き物に変形するサポートアイテム。『式神』の現代版。主に魔化魍の探索に使われる。音叉などに装着し、回転させて発生した音から情報を読み取る。
2005年グッドデザイン賞獲得。
仮面ライダーW以降定番化する自律型サポートアイテムの先駆け的存在。


魔化魍(まかもう)
いわゆる妖怪で二種類の生物を合成したデザイン。各魔化魍には、それを育てる“童子”“姫”という雌雄の親役がいる。魔化魍は鬼が音撃で“清めの音”を打ち込まなければ倒せず、魔化魍の種類によって太鼓やギターなど有効な音撃が異なる。
等身大の個体から巨大な個体までその種類は多岐にわたる。
また、夏の魔化魍は人間大で分裂する特性を持つ。

後にクグツと呼ばれる者が多くの個体を故意に生み出していることが明らかになる。


たちばな
立花勢地郎が経営する甘味処。猛士の関東支部であり、地下には魔化魍の資料や鬼の装備開発室がある。半ば忍者屋敷。


【主題歌】


●OP

○前期『輝』
平成ライダーとしては唯一のインスト主題歌。
作曲はお馴染み佐橋俊彦

○後期『始まりの君へ』
こっちは布施明による応援歌。『少年よ』の続編・アンサー的内容となっている。

●ED(前期及び最終回のみ)

○『少年よ
各種アルバムではこっちがOP差し置いて主題歌扱いされている。

この年の紅白歌合戦に布施明は『少年よ』で出場。
熱唱のバックで響鬼たちが戦い、最後にヒビキが登場して全国の少年たちにエールを送る、非常に熱い時間となった。

【劇場作品】


前期と後期の狭間に制作された、戦国時代を主な舞台とした番外編で、本編とは異なるパラレルワールド。戦国時代にも本編レギュラーそっくりな人達が多数いるのはお約束。
登場する音撃戦士は戦国時代の鬼たちを参照。
装甲響鬼が先行登場しているが、脚本担当の井上もこの時点では後半メインになるとは思っていなかったという。


【小説作品】


  • 『仮面ライダー響鬼 明日への指針』
明日夢視点で描かれた本編序盤のノベライズ版で、著者は稲元おさむ。

こちらは前半メインライターのきだが手がけた、江戸時代初期を舞台とした『変身忍者 嵐』とのクロスオーバー小説。
本編と同じ名前のキャラはヒビキ・イブキのみ(しかも2人とも劇場版以上に設定が異なる)で、トドロキら他の本編音撃戦士や明日夢ら非戦闘要員組、童子・姫がカットされているためある意味劇場版よりも人を選ぶ作品。


【交代騒動】


先述の通り、後半(30話)から脚本とプロデューサーが交代、作風が大きく変わり騒ぎになった。

前半は明日夢がヒビキと関わる光景を描きつつ、孟士の活動や彼らの葛藤も綿密に見せていた。リアルな設定やじっくりした作風が好まれたが、子供ウケは非常に悪く玩具の売上等も壊滅的といった有様であった。
そのため、後半では子供が楽しめない明日夢の描写が薄くなり、戦闘に力が注がれた。しかし、展開は駆け足気味で登場人物の内面描写が減った(ヒビキやイブキなどは逆に内面描写が増えたところもある)、設定の作風の大きな変更なども見られ、日常の風景や細かい描写が削られる等、前半の自然な世界観を壊す結果になった。
もっとも、前半は前半で結構な矛盾や伏線放置があったためそう手放しで誉められたものでも無い(よく例として挙げられるのが悪名高い太鼓祭り)。実際、前半よりも後半の方が好みという視聴者も多く存在している。
いわば、大人の特撮オタク向けドラマが良くも悪くも子供向けヒーロー番組になったわけである。

元々そういう作品だったならいざ知らず、一つの作品であまりにも異なる作風に変化したため、批判的な意見が多い(個々のエピソードの善し悪しはともかく)。
主演の細川茂樹もブログやイベントで「不完全燃焼」や「プチ詐欺」など否定的な意見を出している。
だが視聴率や販売業績が低ければ打ち切られていただろうと考えるとやむを得ないことであり、前半で予算を使い過ぎた過酷な状態から最後まで持っていった事は大きな功績である。

なお、高寺Pは角川へ移籍した後に、スタッフと作風と問題点の多くが響鬼前半と共通している『大魔神カノン』を手がけることになるが、それはまた別の話である。



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最終更新:2024年04月19日 17:06
添付ファイル

*1 この時点においては「俳優経験があるライダーのメイン脚本家」はきだだけであり、後に『仮面ライダーエグゼイド』の高橋悠也が出てくるまで不倒の記録だった。芸能界で脚本家兼俳優な人自体は宮藤官九郎‎等複数いるが。

*2 後に高寺作品の『大魔神カノン』でメイン脚本家となる。また2017年発売のアルバム『仮面ライダー生誕45周年記念 昭和ライダー&平成ライダーTV主題歌 コンプリートベスト』にスペシャルサンクスの一人としてクレジットされている。

*3 なお、髙寺は2012年にTwitterで「予算もかけてましたし、玩具売上も芳しくはなかったけど、降板の理由は、そこではなかった、というのが高寺個人の認識です」と述べている。