アーケードゲーム基板

登録日:2009/05/28 Thu 04:53:51
更新日:2024/02/08 Thu 01:35:42
所要時間:約 5 分で読めます




アーケードゲーム基板とは、ゲームセンター含むアミューズメント施設で使用されることを想定され作られた
業務用ゲームソフトの収録されたハードウェアのことである。



◆仕組み

筐体とハーネスを介して結合させ、電源を入れることで起動する。

基板を起動し、稼働させるために必要なものは

  • 電源装置
(電圧などが基板に合ったもの。重要)
  • モニター
  • コントロールパネル
(操作レバーやボタンが一体になった装置のこと。単体でも入手可能で、電源装置が一体化したものがある)
  • コインシューター
  • ハーネス
(80年代末からある程度規格が統一され、JAMMA規格、もしくはJVSと呼ばれるもので動くようになっている。
それより以前のものはメーカーごとの"専用ハーネス"を使う独自規格を使う基板がほとんど)

筐体にはこれらが備わっており、電源まわりやハーネスの対応などが違わない限り、基板を交換して接続するだけで違うゲームを稼働させることができる。
特定の基板には、動作のサポートをするハードウェア役の「マザーボード」とソフト役の「ROMボード(サブボードとも)」に分かれている場合がある。

製造メーカーはコスト削減のためマザーボードの流用が利くように作っている場合があり、
そのマザーに対応したROMボードを用意すれば、違うゲームに差し換えることができる。

例を挙げると、
CPS2と呼ばれるカプコンのマザーボードは、ソフトウェアとなるROMカートリッジを差し換えることで、

スーパーストリートファイターIIX

ヴァンパイアセイヴァー

のように変更できる。

物によってはマザーとビデオボード、ROMボードの3枚に分かれている場合もある。

もちろんマザーとROMに分かれていない専用基板も多数存在し、グラディウスIIIや達人王などシューティングゲームに多く見られる。
最近のケイブの弾幕系シューティングなどは専用基板ばかりである。


◆モノとカネ


新品の基板は非常に高価で、最近のものだと10万単位は下らない。
稼働率やイン・カムの問題を考えて入荷しているゲーセンの店長さんはかなり苦労しているはず。

逆に"一昔前のゲーセンやデパートの屋上には必ずあった"ゲームや、リリースしたものの数々の要因で売れなかった基板は、
供給過多の中古や売れ残りの在庫が数多く出回っているため安く手に入れる事が出来る。

先程挙げた『スーパーストリートファイターIIX』はおおむね3150円、『ヴァンパイアセイヴァー』は4200円で購入できたりする。
『テトリス』などが2000円台で出回ることも珍しくはない。

本wikiに項目がある『青春クイズカラフルハイスクール』はインストカードや販促ポスターがついた新品が10,000円ポッキリ、
中古基板のみだと5000円前後で入手出来たり、『子育てクイズマイエンジェル』シリーズ3作品は一枚1500円で投げ売りされていたりする。
だが昔の基板でも、稼働出来る基板が数少ない物や、コンシューマに移植されない人気作は価格が高くなる。

ダライアス(タイトー)が20万を超えたり、グラディウスII(旧コナミ)が4万円台に及んだりする。


【カプコン】を例にすると…
  • エイリアンvsプレデター(約3万円~)
※20世紀フォックス側の意向で移植が難しいタイトル。ベルトアクションで難度は高めだが、原作を重視した演出やアクションは非常に評価が高い人気作。

※カプコンが世に送り出したベルトアクションの傑作。面白さ・難易度・インカムの高さが高バランスで揃っており需要が高い。
また、権利はカプコンUSAが保有しており、日本国内において最近は移植自体がなくなったことでオリジナル版は希少価値がある。

※新谷かおる氏の漫画が原作のSTG。
ライフ制の採用やミッション前にアイテムを購入出来る斬新なシステム、傭兵の乾いた世界観を再現したBGMなどで人気を博した。
だが現在は基板の数が非常に少なく入手困難。


◆基板はデリケート


基板は大抵のものは電子部品が剥き出しであり、外部からの衝撃や静電気には滅法弱い。
中には稼働させる際の電圧などにも気を配らないと破損する基板も存在する。

特に、CPシステムⅢ基板を採用している「ストリートファイターⅢ」「"ジョジョの奇妙な冒険"シリーズ」や、
バブルシステム使用の「グラディウス」といった基板は異常なほど脆弱であり、少しのショックでン万円がパーになった例も聞く。


種類やジャンルはどうあれせっかく手に入れた基板であるなら神経質なくらい丁寧に扱いたい。
使わない基板は、梱包材のプチプチでくるんで保管するとホコリの侵入や部品の劣化を防ぐ事が出来、長持ちする。


◆基板のアーキテクチャ

歴史上の理由で「基板」と呼ばれているが、実際はもはや基板ではなくなっており
かつハードウェア的には家庭用のものと差異は縮んでいる*1

初期:ハードウェアで構成

まさに「基板」と呼ばれた通りアーケードゲーム黎明期である70~80年代中心の長いことプリント基板上にたくさんのICなどが実装されたものだった。
当然現在SoCと呼ばれる1チップにたくさんの機能を詰め込んだものやUSBなどのような汎用的な規格も無く、記憶媒体もROMということが普通だった。
80年代中盤からようやく一定の規格はできてきたものの、それでも中身はほぼ専用設計という状態で
早い話、ソフト=ハードウェアそのものであったことから大抵の場合メーカーがほぼ1から設計しなければならなかったのだ。

また諸設定も基板上に存在し「ディップスイッチ」という言葉にピンとくる人もいるのではないだろうか。

1980年代:メーカーごとに汎用化が進む

初期の状態は今から見れば貧弱もいいところだったが、当時の家庭用ゲーム機の水準はそれ未満であったため、業務用として差別化し供するには十分な性能だった。
しかし、開発がめんどくさい・コストがかかるといったデメリットも徐々に無視できなくなってきた。
そこで考え出されたのは共通または小カスタムした専用ハードを設計し、ソフトも後から入れ替え可能にするというもの、所謂システム基板ないしマザーボードと呼ばれる形式である。

システム基板への移行に伴い、ソフトとハードが1:1関係では無くなったため、各メーカーで基板のアーキテクチャに名前が付与されることが多くなった。

このころから設定もソフト上で行えるものが増え、わざわざ基板上にあるスイッチを操作する必要がなくなりオペレーターによる操作の利便性向上に寄与している。


1990年代:家庭用ハードとの距離縮小

アーケードゲーム自体の隆盛と共に家庭用ハードの性能向上も大きく進んだ時期。
早いところではファミコンやメガドライブにも存在した、家庭用と共通設計のシステム基板が
設計・開発や移植コストを抑えるために一般化。
PS版レイストーム等が忠実に移植できたのもこのお陰。

ただしネオジオ/MVSが物語るように、流石に完全同スペックはまだヘビーユーザーしか手が出ない代物、もしくはアーケードで少々見劣りするものとなっており、一定の差別化は保たれていた。

21世紀:一般的な機器の流用化

21世紀、第6世代ハードの時代になり、USBやEthernetなど使える汎用規格が増えたことにより、家庭用ハードで遊べるゲームソフトの範囲は大きく広まり、アーケードとスペック・コスパともに見劣りしなくなった。
そのため、わざわざアーケード専用の設計をすることはほぼ無くなり、家庭用ハードと同一あるいはほぼ同じ仕様の基板やPC/AT互換ハードをそのまま使うことが主流になる。

最早「アーケード用PC」となったPC互換機は、当初はカスタマイズ性や安定性から比較的Linuxベースが多かった(タイトーはかつてMS-DOS基板なんてものを出したことがあるが、見事に失敗)。
一般ユーザーのPC用OSとしてMicrosoft Windowsが爆発的にシェアを広げると、必然的にPCゲーム開発の主戦場もWindowsになる。
2000までは安定性に、XPあたりまでは開発環境にも難があったが、これらが解決すると共にMicrosoftも安定性重視の組み込み版をリリースするなど需要にマッチするようになる。
したがって現在のアーケードゲームはほぼPC/AT互換機、言ってしまえば家庭や家電売り場で普通に見られるパソコンと根本的には変わらない。
OSも殆どがMicrosoft Windowsで、OS上でできる範囲のチューニングは行われるものの根本は一般人でも十分に入手可能なものと同じOSで現代のアーケードゲームは稼働しているのである。
実際起動画面に立ち会うことができたら家で見るようなWindowsの起動画面を拝むことができるだろう。

伝統の?プリント基板式アーケードゲームは2012年の「怒首領蜂最大往生」が最後とされ、以降は完全に姿を消している。

追記・修正はゲーセンの裏方でせっせと筐体の配線をしている店員さんや、
「オレの部屋をゲーセンにしてやるぜえェッ!!」といった物欲にまみれた兄ちゃん達でお願いします。

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最終更新:2024年02月08日 01:35

*1 もちろん実際はカスタマイズは行うため「全く同じ」ではない