探査機「はやぶさ」

登録日:2010/06/10(木) 02:24:25
更新日:2023/05/05 Fri 08:16:08
所要時間:約 9 分で読めます




田―(`・ω・´)―田
「おつかい、頑張るよ」


はやぶさ(MUSES-C)とは、2003年5月9日M-Vロケット5号機で打ち上げられた日本の工学実験探査機である。
元々は上記にあるようにあくまで実験機で、目的は惑星探査の為の様々な技術を検証することだった。
しかし予想以上の成果を挙げた為現在では正規の探査機に近い形で運用されている。
これらは、技術立国日本を体現する素晴らしい働きを見せたことになる。

しかし、事業仕分けの結果JAXAの予算は一時大幅カットになり今後同じような実験は行われないと見られていた。
仕分の理由は「費用の割に効果が薄い宇宙技術を今財源の乏しい日本でわざわざ行う必要性が感じられない」から、とのこと。

ところがはやぶさへの予想以上の反響に流石にまずくなったのか、
手のひら返しの増額(元鞘)によりめでたく?はやぶさ2プロジェクトが開始された。

ちなみに研究者によれば、後述のイオンエンジンが多大な功績をあげたので、今後世界に向けて売り出していくとのこと。
あれ?これってかなりデカい経済効k(ry

そして2014年12月3日、「はやぶさ2」がついに打ち上げられた。
「はやぶさ」はイオンエンジン等などの実験を行うためのプロジェクトであるのに対し、
今度は「はやぶさ」が確立した技術によって確実に小惑星サンプルを持ち帰る、いわば本番飛行である。
プロジェクトの質が全く違うので、JAXA的には「はやぶさ2」というネーミングは不本意だとか。
まあその辺は色々と察してほしい。


■はやぶさの足跡

2003年5月9日13時29分25秒
M-Vロケットで「はやぶさ」は打ち上げられた。イオンエンジン一基不調になるも成功。
その後一年かけてイオンエンジンを併用した地球スイングバイに成功。一路、イトカワへ向かう。

10月末-11月
観測史上最大規模の太陽フレアに遭遇し搭載メモリのシングルイベントアップセットや太陽光電池の出力低下が発生したものの、
幸いミッション遂行への影響は軽微で済んだ。

2005年2月18日
遠日点(1.7天文単位)を通過。イオンエンジンを搭載した宇宙機としては、世界で最も太陽から遠方に到達した。

7月31日
搭載された星姿勢計(スタートラッカー)により小惑星イトカワを捉え、合計24枚の写真撮影に成功。
しかしリアクションホイール(姿勢制御装置)3基の内1基が故障。
2基による姿勢維持機能に切り替えて飛行した。
なお、当初より2基の運用も想定されていた為、支障は無かった。

9月4日
イトカワへ到着し、地球を結ぶ直線上でイトカワから20kmの位置(ゲートポジション)に静止。
公式にはこれによりイトカワとのランデブー成功とされた。

10月2日23:08
初めての悲劇がはやぶさを襲う。リアクションホイールがさらにもう1基故障し、更に科学スラスタが全損してしまう。

11月26日
燃料が漏れ、機体内で漂っているという緊急事態が発生。
また同時にはやぶさの姿勢が乱れてることが確認された……がこちらは緊急制御プログラムが作られ対応された。

因みにプログラムは一晩で作られました。

その後再び異常が発生し通信途絶してしまう。
しかしそこは日本が誇る変態技術者達、こんなこともあろうかと、充電を繰り返しつつ姿勢制御するように造っていた。
後ははやぶさから通信が来る事を信じ待つだけ。

2006年1月23日
3ヶ月ぶりにはやぶさからの通信を受信する。
流石だはやぶさ!多少の問題なんてなんともないぜ!

しかしバッテリーは放電し尽くされバッテリー中4セルは使用不能、酸化剤も漏洩し残量はゼロ……普通ならば絶体絶命である。

しかしそこは変態技術者達、姿勢制御にイオンエンジン運転用のキセノンガスを外に放出しその勢いで姿勢を安定させるという通常では考えられない方法をとる。

その後太陽光を利用して再充電を試みる事になるのだが……。
エンジンから出るガスの向きでは姿勢制御は普通不可能。
しかしこんなこともあろうかと中和機の位置を微妙にずらしていた事が功を奏し姿勢制御に成功。

しかし姿勢制御にキセノンガスを使用した分このままだと帰還分の燃料が足りなくなる事態に。
しかしこんなこともあろうかと機体の回転軸が中心を貫くように設計されていたお陰で首振り状態の回転からスピン回転状態への移行に成功する。
最早先読みしてるってレベルじゃねーぞ。
期せずしてソーラーセイル実験機となった。


その後太陽光を利用して充電を開始しようとするも、過放電したリチウムイオンバッテリは充電時に爆発する危険性があるため、
通常の充電は不可能という致命的な問題が発生する。
遂にここまでか……。







しかしこんなこともあろうかと!





充電回路に予備回路(補充電回路)を搭載しておいたのでそれを使い充電開始。

2007年4月25日
二ヶ月間で充電を完了し以後は充電状態維持に。イトカワから採取した資料を格納した後、一路地球へと向かう事になる。

しかし残るイオンエンジンは二基にホイールが一基のみという状態…正に満身創痍である。


2007年10月18日
復路第一期軌道変換完了するもイオンエンジン一基が寿命を迎えるも想定の範囲内。

2009年8月13日
メモリエラーが発見されるも帰還への影響は薄いとして帰還続行。

同年9月26日
軌道調整の為イオンエンジン再起動完了。

同年11月4日
このまま順調に帰還が完了するかと思われた矢先に、

イオンエンジン一基が異常停止


再起動不能に陥る

このままでは推力が足りず帰還が絶望的に……。





しかしこんなこともあろうかと!


エンジン同士を予備回路で繋いでおいた為中和器Aとイオン源Bを繋いでニコイチしてしまったのだ。

しかしこの運用法、推進剤の消費量が倍になる上地上ではテスト不可能な為これがぶっつけ本番。
(イオンエンジンは陽イオンを加速して推進力としているのだが、陽イオンだけ放出していては衛星がマイナスに電荷してしまう。
これを回避する為中和器から電子を放出しています。通常運転では陽イオン源と中和器が一セットとなる訳です。
つまり変態技術者達はこんなこともあろうかと!他のエンジンの中和器を使用出来るようにしていた)


因みにこの時はやぶさの命を救ったのは一つ80円のダイオードである。

実はこれ、とてつもないことであり厳密な重量計算を行うはやぶさにとってダイオード一つ積むことは非常に大変なことである。(僅か数gの違いでも移動速度がとてつもなく速いため発生する遠心力、つまりは飛行する軌道が大きくずれてしまう。同時に航行距離もとてつもない距離であるため、極僅かな軌道のズレでも大きな差となってしまう。)
それが出来たのもこんなこともあろうかと徹底した軽量化を施した為。

また、本来の計画よりも大幅に延長しても燃料が足りてるのもこの軽量化により大量の燃料を積めたからである。

変態開発者達は真田志郎整備班長をどれだけリスペクトすれば気が済むのだろうか。
正に「危機突破!」

日本の技術力は世界一ィイィィ!



田―(´・ω・`)―田
「おつかい、頑張ったよ」



2010年3月27日
予定通り復路第二軌道変換完了。

4月4日
地球外縁部への精密誘導を実施(TCM-0 4月6日迄)。

5月1日
精密誘導に伴う加速の補正の為、減速処理を実施して到着時間を調整(TCM-1 5月4日迄)。

5月12日
星姿勢計(スタートラッカー)が地球と月を捉える。

5月23日
地球外縁部(高度約630km)への精密誘導の為、接線加速と太陽方向への加速を実施(TCM-2 5月27日迄)。

6月2日
オーストラリア政府が同国内ウーメラ立入制限区域(Woomera Prohibited Area、WPA)へのカプセル落下を許可。

6月3日
地球外縁部からWPAへの誘導目標変更の為、軌道補正を実施(TCM-3 6月5日迄)。

6月9日
TCM-4が正常に実施されたことを確認。
この運用によりWPA内着陸想定地域への精密誘導が完了。

6月13日22時51分
カプセル分離後、大気圏突入。

しかしカプセル以外は大気圏突入出来るように、設計されてない。


全てを賭け、イトカワにたった一機で出発し、帰還。
全ての任務を終え、彼は風になった。

正に日本の誇りである。


因みにこのはやぶさ、本体のお値段がなんとたったの三千万円。この事を知ったNASA関係者は「日本の技術者はクレイジーだ!」と驚いたそうな。

はやぶさの存在が認知されるにつれ二次創作も数を増やしていき現在ではかなりの数がある。
初音ミクの「はやぶさ」、歌愛ユキの「風のただいま」は一聴の価値有り。

最後に

はやぶさは、長い長い旅から地球に帰ってきました。
残念ながら本体は燃え尽きてしまいましたが、それでもふと、思い出す事があればお疲れ様と言ってあげてください。

願わくば、不死鳥のように燃え尽きたはやぶさの遺した物が人類の発展に役立たんことを。


みんな、ただいま…


カプセル内からは微粒子が発見され、11月16日、イトカワ由来のものであることが発表された。
真の意味でお使いは完了した。

「イトカワの破片が微レ存」とか茶化してはいけない(戒め)。




この荷物を降ろしたら
僕の身体は風になる
あなたの頬をなでる風
それは僕からの
「ただいま」

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最終更新:2023年05月05日 08:16