キングダム(漫画)

登録日:2012/02/26 Sun 00:34:25
更新日:2024/03/18 Mon 15:59:08
所要時間:約 4 分で読めます




すべてを賭ける夢はあるか

キングダムとは、原泰久による漫画作品。『週刊ヤングジャンプ』で連載中。


【概要】

中国の春秋戦国時代末期の秦を舞台に、後に始皇帝となる少年と彼に将軍として仕える事になる下僕の少年(後の李信)の立身出世を描く歴史漫画である。
青年誌に掲載されているがそこは集英社のお膝元、努力・勝利・友情を地で行く作風であり、「青年漫画の皮を被った少年漫画」等読者に言われることもある。
しかし合戦時の描写などは首がポンポン飛ぶ、体が真っ二つになる等非常に派手であり、
その荒々しく濃い絵柄と緻密な書き込みも相まって圧倒的な迫力を生み出している。

40巻の呂不韋失脚で第1部が終了となり、現在は第2部が進行中。

単行本は2023年11月時点で既刊70巻。累計発行部数は9600万部,初版発行部数は100万部を超える。

【メディアミックス】

アニメ版

4シリーズが制作されており、いずれも放送局はNHKで、アニメーション製作はぴえろ。
初期はBSとはいえ夜7時という時間帯、内容もさることながら持ち味のド派手な合戦描写が緩くなってしまうのではと早くも原作ファンから不安視されていたが、グロ表現を抑えている以外は概ね原作に忠実。
更に第一期は一部を除いてほぼフル3Dアニメ的な装いだった。

第3シリーズは2020年4月から放映開始されたが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う製作への影響が大きく、第5話以降の放送が延期された。代替番組として『未来少年コナン』のリマスター版が放送され、更にその後番組として『進撃の巨人』Final Season(Part1)を放送した。
結局シリーズの全話放送は1年後の2021年4月からとなり、放送済みの1~4話は事実上の再放送扱いとなった。

※シーズンと原作の相関図はこちらを参照。
シーズン 放送期間 原作相当期間 放送局
第1シリーズ 2012.6~2013.2 王都奪還編~馬陽攻防編 BSプレミアム
第2シリーズ 2013.6~2014.4 山陽攻略編 BSプレミアム
第3シリーズ 2021.4~2021.10 合従軍侵攻編 総合テレビ
第4シリーズ 2022.4~2022.10 成蟜の乱編~毐国動乱編 総合テレビ
第5シリーズ 2024.1~ 黒羊丘の戦い~ 総合テレビ

実写映画

2019年には佐藤信介監督、山﨑賢人主演、東宝とソニー・ピクチャーズエンタテインメント共同製作・配給で実写映画化。脚本制作には原作者の原氏も加わっている。
山﨑氏を始めとしたキャスト陣の熱演やアクションシーンなどが評価され、興行収入は57億円を記録し、その年の実写邦画年間No.1ヒット作に。
これを受けて地上波で初放送された2020年5月に続編の製作が発表され、2022年に『キングダム2 遥かなる大地へ』のタイトルで公開。第1作同様にその年の実写邦画年間No.1ヒットを記録。
さらに同作の上映後にシリーズ第3作の公開がサプライズ発表され、2023年に『キングダム 運命の炎』のタイトルで公開された。


【あらすじ】

紀元前、中国。春秋戦国時代。
西端の大国秦にて、いつの日か戦場で武功を挙げ、天下の大将軍として史に名を刻む事を夢見る
下僕の少年・(しん)(ひょう)の2人はいつか来るその日を夢見て日々鍛錬に打ち込んでいた。
そんなある日、漂が王宮に仕える大臣・昌文君(しょうぶんくん)の目に留まり、王宮への仕官を許されることになった。

しかし程なくして王宮で王弟による反乱が勃発。漂を仕官しに来た昌文君は王の第一臣だったという噂が信の耳に入る。
漂の無事を祈る信であったが、ある日の夜傷だらけの漂が信の元へ戻ってきた。
もはや余命いくばくもない漂は黒卑村という村への地図と志を信に託し、息を引き取る。

漂から託された地図を頼りに目印の場所まで辿り着いた信が見たものは、漂と瓜二つの少年であった。
彼こそが嬴政(えいせい)――後の始皇帝であり、
この出会いを期に信は『天下の大将軍』への道を歩み始めることとなるのであった。


【登場人物】

声はアニメ版、演者は実写映画を記述し、それ以外については()内で解説する。

◆秦

主人公たちの祖国。
徹底的な実力主義に徹しており、元外国人であろうと政治の中枢に立っていることがある。
西の果ての立地などの理由から、ほかの国から野蛮人呼ばわりされている。

  • (しん)
声:森田成一
演:山﨑賢人
俺達は天下最強の大将軍になるのだ!!!!

この作品の主人公。漂から継いだ剣と2人で培った剣技、そして不退の精神を武器に乱世の戦場を駆け立身出世を目指す少年。
仕官後に転戦して武功を積み、現在は独立遊軍部隊『飛信隊』の隊長として荒くれ者どもと戦場を駆け回っている。
猪突猛進で思慮に欠ける行動も多いが、多くの戦友との出会い、そして別れを経験しながら少しづつ将としての資質を開花させていく。
武力はまだまだ荒削りであるが十分強く、また戦場において味方を鼓舞する力、カリスマ性は作中でも上位に入る。
なお、読者間では1話冒頭から予想されていたが、後に姓を「李」と決めたことで秦の武将「李信」であることが確定した。
李信は、史実では元下僕などではなく、かなりの名門の出身であった。

  • (ひょう)
俺を天下に連れて行ってくれ

声:福山潤
演:吉沢亮
信の幼馴染で、同じ家の下僕だった。
嬴政の影武者として昌文君によって王宮に仕えるが、政争に巻き込まれて死亡する。
彼が黒卑村への地図を信に渡したことで物語が始まった。
王宮から脱出する際に自ら馬に乗って周りの兵士を鼓舞し、最後まで王の影武者を演じきった。
序盤で死亡してしまうが、作者曰く重要なキャラ。

  • 嬴政(えいせい)
人の持つ本質は―――光だ

声:福山潤
演:吉沢亮
この作品のもう一人の主人公。後の始皇帝
一見冷静沈着に見えるが、500年に及ぶ乱世を終わらせ中華を統一する最初の王になるという途方もない熱き志を胸に秘めている。
権なき若王であり、王弟の反乱を鎮圧した後は昌文君達とともに丞相の呂不韋から政権を剥ぎ取るべく日々政戦に明け暮れている。


  • 河了貂(かりょうてん)
河了貂也!
ワリ 信 実はオレ女の子

声:釘宮理恵
演:橋本環奈
当作品のマスコット兼ヒロイン。
山民族の一部族の末裔であり、初期は鳥を模した蓑を被っていた。
(読者からキョロちゃんの愛称で親しまれていると言えばどんな姿か思い浮かぶだろう)
チビで短髪で少年っぽい口調、とあまりヒロインらしくはないがこれは「乱世を一人で生き延びる」為に性別を隠す必要があったため(蓑を被っていた理由の1つもそれ)。
黒卑村で王弟派の軍に追い詰められた信と政を助け、行動を共にするようになる。
信達に置いて行かれたくないという思いから軍師を志し、現在飛信隊の参謀として活躍。
身長も伸び、かなりの美少女となった。流石に誤魔化しきれなくなったのでもう蓑は被っていないが、信とのやり取りは相変わらず。

  • 羌瘣(きょうかい)
羌瘣 嫌いなことはしゃべること 以上

声:日笠陽子
演:清野菜名/山本千尋(連載10周年記念動画)*1
当作品のヒロインその2にして信の嫁その2。信もげろ。
信の初陣である対魏・蛇甘平原戦にて初登場。信と同じ伍(五人一組の部隊)のメンバーになる。
特殊な呼吸法により『神』をその身に堕とす伝説の刺客一族『蚩尤(しゆう)』の末裔であり、一族随一の剣の使い手。
作中でも屈指の武力の持ち主であり、ぶっちゃけ信より強い。
当初は冷淡な性格であったが、後々信に対してだけクーデレと化す。

  • (おう)()
これだから乱世は面白い

声:小山力也
演:大沢たかお
秦が誇る『六大将軍』最後の生き残り。
飛来するがのごとくあらゆる戦場に顔を出し勝利をもぎ取って行くその様から『秦の怪鳥』の二つ名で中華全土にその名を轟かせている。
この作品の重要なテーマの一つである『天下の大将軍』を体現した漢。
ファンからは『会長』の愛称で親しまれている。
長らく戦場から退いていたが秦趙戦争編で総大将を務め、この戦に従軍した信の人生に大きく関わることになる。
外見はぶっちゃけデカいオカマであり、口調は基本丁寧語。「ココココ」「ンフフ」「ンォフゥ」といった気色悪い笑い方をする。
知略、個人の武力、カリスマ性と、あらゆる面で作中最強クラスのキャラ。特に武力は作中TOP3に入るだろう。
その圧倒的な存在感ゆえ読者からも絶大な支持を得ている。上記の主要キャラ四人を抑えて作中人気ナンバー1。
特にコミックス16巻は丸々王騎将軍名台詞集と化しており、王騎将軍信者からはバイブル扱いされている。

  • (しょう)文君(ぶんくん)
やはり…私の直感は間違いではなかった

声:仲野裕
演:高嶋政宏
昭王の時代から宮廷に仕える文官。若い頃は武人で、王騎も一目置く存在だった。
呂不韋派が多数を占める宮廷内では数少ない嬴政派で、彼の教育係であり側近。基本的には常識人だが、若い信や嬴政の抑え役になることも多い苦労人のおっさん。結構涙もろい。
偶然、政と瓜二つの漂を見つけ影武者にしたことがその後の信の人生を変えることになる。
後に政と成蟜の宮廷工作により、秦国の左丞相となる。

  • 成蟜(せいきょう)
我慢ならんのだ そういう連中が

声:宮田幸季
演:本郷奏多
自らの体に流れる純粋な王族の血を誇りに持つが、その代わりに一般人を見下している。
政争に負けた後にしばらくの間幽閉されるが、その後解放される。
その際彼とともに解放された一派は全員が闇の人脈を持つ超有力者集団であり、呂不韋との勢力争いにおいて大きな戦力となる。

  • (りょ)不韋(ふい)
声:玄田哲章
演:佐藤浩市

秦国右丞相→相国。元々は外国で活動していた商人で、嬴政の父・子楚(荘襄王)、そして嬴政を支援し王位に就けた。
数多の優秀な人材を抱えて国内に一大勢力を築いており、嬴政にとっては最大のパトロンであると同時に最強の政敵として立ちふさがる。
合従軍編では、合従軍との戦いを見ていることしかできず、嬴政に権力争いで逆転されるも、有力者を大量に食客にすることで再び逆転する。
その後は蒲鶮を味方につけることで成蟜を謀殺する。
さらに著雍攻略編から数か月後、大人数の食客に編纂させていた一大書物『呂氏春秋』を完成し公開する。
この時、蔡沢(さいたく)からは「この乱世に書の道でも歴史に名を残す」と絶賛されるも、それだけではとどまらず、「この書には全てを記してある。儒家であろうと法家であろうと何者でも構わぬ。一字でも書き加えたものには千金を与える」と公言し、一字千金という彼らしい豪快な逸話を残す。

他にも魅力的なキャラクターがわんさと出てくる。秦の将軍だけでもめっちゃ多いし、他国の人々もそれは同じ。

◆趙

秦と国境を接する敵国。
主人公たちと因縁のある人物が多い。

声:森川智之
演:小栗旬
現在の趙国軍最高の将軍「三大天」の一人。王騎を仕留めた功績で宰相の位にも就いている。
平服を纏った参謀・文官風の優男であるが、信と剣で互角に打ち合い、燕に侵攻した際に救国の英雄である劇辛を倒すなど、武官としても優れている。
合従軍の戦略を担当し、蕞攻防戦で秦を追い詰めるが、楊端和率いる山の民の援軍に気づかず奇襲を受ける(山の民の存在自体は李牧も知ってはいたが、「山の民と平地の民は敵同士」という固定観念により秦の援軍として来ることはないと思っていた)。
合従軍の解散後は作戦失敗の責任を取らされ左遷されていたが、再び復権する(この人事については、李牧が優秀だからでもあるが、悼襄王が自身の寿命が短いために、国政に関して適当になっていたとも考えられる)。
嬴政が中華統一を表明した時には「すべての国で戦争を禁止し、破った国には他の国全てで加害者の国を攻撃する」という現代の集団的安全保障に近いアイディアで手を打つように忠告したが、「それでは嬴政や李牧が死んだ後も平和が続く保証はない」と一蹴される。

初登場は本作連載前の短編作品で、同作の主人公。
この短編が好評だったことがきっかけで本作が連載されているため、『キングダム』最古参のキャラクターともいえる。

史実においては戦国四大名将の1人であり、紛れもない名将なのだが、作中では能力に疑問符が付くシーンが少なくなく*2、一部読者から李牧とは別人のリーボックと呼ばれることも。

  • カイネ
声:村井美里
演:佐久間由衣
李牧側近の女剣士。
李牧に心酔しており、呂不韋による春平君拉致の際には、李牧が秦に行くべきではないと猛反対していた。
河了貂の友人でもあり、蕞攻防戦では秦の敗北は時間の問題と判断し、捕虜として生きながらえさせるために捕らえようとした。(その際、部下には河了貂は自分の獲物だとして他の者に危害を加えさせないように指示しているが、その発言からそっちの趣味だと誤解された。)
読み切り作品では、趙の北方に位置する鴈門に駐屯する国境軍に属する剣士。
のちに、作者から「キングダム」のカイネと同一人物だと言及されている。

  • 龐煖(ほうけん)
声:高塚正也
演:吉川晃司
自らを「武神」と名乗る大男。趙国三大天の一角。
その自負に違わぬ武勇の持ち主で、馬陽の時点でも信と羌瘣が二人がかりで斬りかかって逆に追い詰められたほど。
かつての戦いで王騎とは浅からぬ因縁がある。

一応立場は「将軍で総大将」ではあるものの、部下を持ち軍勢を指揮する描写は皆無。
しかし、猛将も多く登場するキングダムでも彼らが軍を率いて先陣を切り開いていく中、文字通りの単騎で無双ゲーを始める一種のバグキャラと化している。


  • 悼襄王
趙の王。
ショタコンで、504話では大勢のショタと一緒にお風呂に入っている姿で登場した。
(その際、青年誌で足の指フェラを披露している。)
自分が長く生きられないことを自覚しており、たとえ国が滅ぼうが、その頃は死んでいるであろう自分には関係ないとばかりの態度を李牧に見せる。

作劇的な役割としては「そのまま活躍させればあまりにも強すぎる李牧が、仕えているのがこの暗君なので十分に力を発揮できない」というヒール役なのだが、前述の通り李牧自身の能力に疑問符が付くシーンも少なくないため、その李牧に反対する立場にある彼も「それほど暗君ではないのでは?」と言われることも…
(少なくとも李牧が宰相として大きな権限を振るえているのはこの人が重用してくれているおかげである。)

  • 春平君
悼襄王の寵愛を受けている青年。
呂不韋の友人で、李牧を秦に来させるための人質として拉致されたが、人質交換により趙に帰国した。


【逸話】

連載初期は人気が振るわず、打ち切りになりかけていたことも。
原先生が師匠・井上雄彦先生に相談したところ、「信の瞳をもう少し大きく描いたらいいのでは?」とアドバイスを送られる。
実践したところ人気が伸び始め、今では看板作品にまでなったという。

作中の展開は基本的に『史記』準拠。史記の描写を忠実に再現する。
一方で「描いてなければいいよね」も基本スタンスであり、結構やりたい放題。
代表的な例が羌瘣で、「男とは書いてないよね」で女性化。
他に有名な例としては当初から地味に活躍し続けている壁将軍が挙げられる。
彼は成蟜の乱における「壁死す」の描写からここで退場する予定だったのだが、
連載中に「壁(城の中で)死す」つまり城内で将軍が死んだ=「壁」は人名ではない、との解釈が有力になったため、そのまま生き残ってしまったと裏話で明かされた。

大会戦の度に毎度毎度十万を超える兵力がぶつかりあう描写は圧巻だが、本当にかの時代にこれほどの軍隊が存在したのか?
誰もが当然抱く疑問だが、結論から言うと十分にあり得る。
毎度おなじみ『史記』に秦・楚の二強国がそれぞれ百万、魏が七十万、残る四国がそれぞれ数十万と具体的な数字が実は残されているのだ*3
秦楚最終決戦で秦軍総動員六十万というのは誇張があるとはいえ、それほど的外れでもないのである。




追記・修正よろしくお願いしますよォ、ココココ。

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最終更新:2024年03月18日 15:59

*1 後に実写映画第2作『遥かなる大地へ』にて、羌象役で出演。

*2 史実では参戦していない負け戦に何度も責任者として駆り出されているのも理由の一つではあるが…。

*3 ただし七国の兵力を合算すると五百万にもなるが、当時の中国総人口は二千万と推測されることからこの数字は最大動員数で農閑期など限られた短期的な動員能力に留まり、通常はその数分の一だろう。