仙界伝 封神演義

登録日:2012/10/11(木) 17:35:36
更新日:2024/02/25 Sun 02:36:22
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1999年より放映された、藤崎竜による漫画『封神演義』を原作とするテレビアニメ。全26話。

大まかな筋は原作漫画をなぞりつつも展開はほぼ独自のやりとりで描かれており、終盤は完全オリジナル展開に突入する。
また、一部のキャラクターの性格や口調が異なっていたりする他、武吉や天祥等漫画では序盤から目立っていながらも存在を割愛されたキャラもいる。

キャラクターデザインはフジリュー絵より90年代っぽさがやや増し増し。
後に原作漫画の完全版刊行に伴い再版されたDVDや主題歌CDの描き下ろしと比較すると、時代の変遷を感じさせてくれる。

内容についてはその外見が同じながらも一部別人化したキャラや独自解釈を行くストーリー等から漫画ファンからは黒歴史扱いされがち。
しかし一方で、主題歌やキャスティング、何かと不遇だった雷震子の扱い救済に関してはそういった層でも絶讚する者は少なくない。
現在では原作漫画完結からずいぶん経過したこともあって、当時よりは割と落ち着いた好意的な評価も下されている。
フジリュー曰く「漫画版が原作(安能務版)に対する『メタ封神演義』なら、アニメ版はそのさらに『メタメタ封神演義』と言える」とのこと。


主な登場人物


「封神計画の駒のままでは奴らの気持ちに応えることはできん。わしはあの時、封神計画よりも奴らを選んだ」
主人公。原作漫画と比べると普段の言動や友情を説く等の精神的な若さが目立ち、ジジイ口調もよく崩れる。「こいつはすげえや!」
1話の申公豹との交戦で実力不足を痛感し仲間集めに出る為、妲己との対面はかなり先送りとなる(その為後の展開では楊ゼンの変化した妲己が自分で名乗ることに)。

「ま、どっちにしても結局、人間たちは仙道の思うままに動かされるしかないんじゃなくって?」
ヒロイン…と言えるかはアニメでは微妙なところ。その正体は元始天尊に作られた傀儡であり、仙人達が人間界に介入する口実作りの為の存在。
終盤で彼女が杏黄旗や盤古旛を使ってくるのは、原作ファンならニヤリとする伏線かもしれない。一度は妹達共々倒されたかと思いきや、己が傀儡であることへの憎悪から最終形態を取って復活し、ラスボスとして立ちはだかる。
ラストの衣装はバストトップに房飾りがついているという扇情的なデザインなのだが、最終形態と相まってイマイチ抜きづらいことから「乳毛」と呼ばれてしまうことに。
さらにアニメの展開は後に漫画でもネタにされた。「やっぱわらわって光り輝いてるわねんvアニメでは死んだけどんv」

  • 四不象 CV:増川洋一
「武王がご主人を探してたみたいっスけど…もう少しいいっスよね」
比較的漫画通り。最終話にて戦闘形態を見せ、妲己攻略の一端を担った。

  • ナタク CV:宮田幸季
「死ぬな……死ぬな!師叔!!」
父子の騒動が終わった後は太公望に同行することとなり、一応最初の仲間という位置づけになる。
また、雷震子の出番が増えたことに伴ってそちら方面での掛け合いや漫画以上の感情の起伏が見受けられるようになっている。

  • 楊ゼン CV:千葉進歩
「僕も降りることにしました。いわゆる封神計画とやらからね」
原作漫画と比べて穏やかでやや抜けたところも出てきている。
元始天尊より太公望の監視と封神計画に背いた場合の抹殺を言い渡されていたが、最終的に太公望との対話の中でその命に背くことを決める。

  • 雷震子 CV:松本梨香
「オヤジ、オレさ、仙人界で言われてきたんだ。大きくなったらオヤジを助けて世の中を救えって!」
アニメで最も扱いの良くなったキャラ。
漫画では初登場の話に反して以降は基本空気で出ればかませという何かと不遇な扱いだったが、こちらではレギュラー入りをしている。
義父との出会いが本編中に描かれた他、漫画では間に合わなかったその最期を看取ることが叶う等大きく救済されている。
「水系は電気に弱ぇって相場が決まってんだよ!」と声優ネタをぶっ込んでくる。

「気にしないことさ。そのうち道の方から行き先を教えてくれる。そういうもんさ」
表現規制か煙草が木の枝に変えられた。天祥を始めとした他の兄弟が登場せず、親子関係も彼のみに絞り込まれている。
漫画版よりも精神面が成熟しており、太公望の相談に対し答えを返す描写もある。
初登場早々に突然弦楽器をギターの如く持ち歌いだしたのは今でもある意味伝説のシーンとして語り継がれている。
また、オリジナルの女の子とフラグらしきものが立っており、最終話でも彼女の元を訪れていた。

  • 黄飛虎 CV:田中一成
「あなたとは戦えない!もうこれ以上愛する者を失うのはたくさんだ!!」
妻の死と殷からの離反関連がオリジナル要素が強くなっている。
沢山いた息子たちや四大諸侯はカットされ黄天化のみになっており、造反エピソードが太子二人のエピソードと統合され「王子二人を連れて出奔する」という形になっている。
それによって脱出を助けた殷郊との因縁が太公望から彼へとシフトしており、終盤では殷郊と一騎打ちし、その手で封神している。
原作での豪快なオッサンっぷりは鳴りを潜め、終始シリアスなキャラ。

  • 聞仲 CV:松山鷹志
「だが今、私はそのたった一人の友を倒さねばならない。……断腸の思いだ!」
原作通り殷の太師として敵対する。造反した黄飛虎を自ら追い、宝貝を捨て剣での一騎打ちを行う。
終盤では妲己により紂王と殷洪の命を奪われた怒りで彼女の盤古旛を使用し、黄飛虎と黒麒麟と共に打ち倒す。
殷の滅亡後は黄飛虎から西岐へ誘われるも、殷の者としてそれを拒否して立ち去る。その後、妲己が封神されていないことに気付き、崑崙山へ向かい最終決戦へと参戦した。
原作での朱氏とのエピソードこそ無いが、歴代の王家を見守ってきた過去が回想で語られる。

  • 紂王 CV:松田佑貴
「歴代の皇帝がそうやって守ってきたのだ。永きにわたる大平をな」
妲己により化け物へと改造されるが、喜媚が殷洪を殺そうとした際に息子を庇い、逆に彼女を封神する等正気を垣間見せる。最終的に妲己により親子共々封神された。
正気を取り戻した際は妲己に「余とともに死ぬのだ」と言って襲いかかっており、国を滅ぼした罪を贖おうとしていた。
序盤は原作であった憎めない面が無く、堕落した悪しき王という面が強調されている。
その分終盤で名君であった頃の姿がかなりオリジナルで盛られており、かつての栄華が失われてしまったことの悲しさを際立たせている。
ただ、聞仲ともども掘り下げのために、戦いが超佳境に入っているのに回想シーンが挟まりまくるのが玉に瑕。

  • 姫昌 CV:麦人
「私は西岐の旗である。旗は常に兵たちの前に在り、翻っていなければならない」
原作とほとんどブレが無い。最終回でその生涯に幕を下ろす。
弦の名手であることが印象的に描かれている。ナレーションも担当しており、漫画以上にバトル方面が強調されがちな本作に古代中国の雰囲気を保たせている。
彼が西岐に帰った際に飯屋に立ち寄るシーンは、実は全くのアニオリではなく、原作(フジリュー版)でカットされていたが原作の原作(安能版)では存在したシーンである。

  • 伯邑考 CV:飛鳥紅一
「父上……お会いしとうございました……」
原作どおり捕らえられた姫昌を救うため貢物を持って朝歌に赴く。
琴ではなく父親と同じ弦の名手で、禁城に囚われた父と弦の音色を交わすことで束の間の再会を果たす。
しかし妲己の策略によって罪を着せられ処刑される。3分クッキングは無く匂わせる程度だが、妲己のセリフから原作と同じ目に遭わされたと思われる。

  • 姫発&周公旦 CV:小林和矢&瀬野雅彦
「霊獣を使うってことはこいつも仙人だ。俺は仙人なんざ信用できないね!」
「あれほどの大規模な破壊をもたらす仙道の力、人に不幸しかもたらしませぬ!」
姫発は原作のような放蕩ぶりはなく、血気盛んな所はあるものの最初から王族として真面目に働いている。
崇黒虎の説得では逸るあまりに衝突を激化させるが、姫昌に窘められ、その後は殷軍を冷静に説得するなど次期王として成長を見せる。
周公旦は姫発とセット扱いなためか、原作での冷静キャラは鳴りを潜め、兄と同じく融通の利かないところがある。

  • 殷郊(インチャオ) & 殷洪(インホン)  CV:鶴野恭子&豊島まさみ、輝山新&茉雪千鶴(成長後)
「ごめん、飛虎……やっぱり僕、分を弁えてなかったみたいだ……」
「私は昔の幼い殷洪ではない。今あいつらを倒せば、この国をまだ救える!」
漫画では読みが同じな為、アニメではインチャオ・インホンと呼び分けられている。仙人界へ赴いた後は、元始天尊の指示のもとで短期間で仙道の力を得る改造をされていた。
仙道の力を得て妲己を倒せば殷を救えると信じていたが、既に時遅しと説かれ、ついには敵対。殷郊は黄飛虎との一騎打ちのすえ封神、殷洪はその後の妲己三姉妹との戦いで封神された。
殷洪は成長後は原作より大人びた性格で、原作では使わなかった陰陽鏡を使って胡喜媚を倒すところはなかなかの燃えシーン。
さらには相討ちで妲己の傾世元譲を破壊するなど、実は雷震子と並んで活躍がマシマシにされている人。

「お兄ちゃん喜媚のタイプ~!生け捕りだぁ☆」
「城の奥で人に守られることしか知らぬ王子などに、一人で何ができる!」
原作どおり妲己の妹として王宮に居ついている。時折妲己の命令で尖兵の役目を果たす。崑崙山に潜入しセクシールックで視聴者にサービスした。
終盤の朝歌での決戦で太公望達に立ちはだかる。王貴人はオリジナルの毒蛾の粉に引火する技でやたら攻撃力が高くなっているが、ほとんど面識のないこっちでもやっぱり太公望に倒される。
胡喜媚は黄天化を「タイプ」と言ったり、殷洪を背後から狙うなど、ロリキャラながらもしっかりと「悪女」として描かれている。宝貝の相性により殷洪に敗北し、後に彼に背後から襲いかかったところ、割り込んだ紂王に封神された。
二人は妲己を姉と慕っていたようだが、妲己は彼女らが死んでも特に反応を見せないため、原作と違って単なる手駒としか思っていなかったのかもしれない。

  • 九竜島の四聖 CV:佐伯洋史(王魔)、木内力也(高友乾)、上別府仁資(楊森)、笹島かほる(李興覇)
「聞仲様の命により、これよりお前たちを西岐より排除する!」
原作と違い戦うのは聞仲→四聖の順番なので、聞仲の助けは入らずそのまま封神されてしまう。
聞仲からの指令を待つ間、市井に溶け込み潜伏している姿が見られる。

  • 元始天尊 CV:大木民夫
「いわば人間界は、仙人界にとっての畑である」
本作の黒幕。歴史の道標に指示されるまま、仙人界に支配された人間界を作る為に邪魔な仙道を封印する封神計画を実行していた。最終的には太公望の説得により和解へと至る。

「分かってたはずだよ、望ちゃんには。ただ振り返る余裕が無かっただけ」
終盤で結構いきなり出てくる。監督曰く太公望の過去(オリジナル)を掘り下げるにあたっての必要要員としての投入だとか。

「諸君、往診に来たぞ」
冒頭で封神計画遂行者候補としてちらっと名前が出る。ナタク編では回想でシルエットが映るのみで登場はせず、四聖戦の後、太公望たちを回復させるためにちょっとだけ登場。
四聖戦後が初登場だがナタクとはすでに見知った仲のように会話しているので、ナタクを蓮の花の化身として蘇らせたあたりで面識を持っていたものと思われる。

  • 雲中子 CV:石川大介
「あの装置は一体なんだ?マニュピレーターの調子がすこぶる悪い!」
太子二人の改造関連の話で科学者ポジとして登場。雷震子との関係は無い。
「変わり者」とは言われているが原作のようなイカれた科学者ではなく普通っぽい人。生物学専門でもないようで機械設備の開発をしている。

「いやなに、怖がることはありません。私も皆さんと同様、面白いものが見たいだけなのですから」
1話冒頭で視聴者に語り掛けるような口ぶりで世界観を解説する。
最初の戦いで太公望をライバル視することはなく、太子二人にも関与しない。上記のガイド役も相まって「視聴者と一緒に物語を見ている傍観者」のような存在。
封神計画に裏があることを察し、それについて探っていた。
また、最終決戦で逃亡しようとした妲己を美学に反するとして参戦した。

  • 標(しるべ) CV:西脇保&加藤優子&ひのもとはじめ
「意志を持ったものの末路を」
中華皇帝僧侶ドレスの女の3人。原作漫画でも序盤から匂わせていた「歴史の道標」を独自に解釈して描いた結果と思われる。
元始天尊に命を下し人間界を管理させている。

主題歌


OPテーマ『WILL』
作詞:鵜島仁文、米倉千尋
作曲:鵜島仁文
編曲:岩本正樹
歌:米倉千尋

EDテーマ『FRIENDS』
作詞・作曲:米倉千尋
編曲:見良津健雄
歌:米倉千尋

OPテーマの『WILL』は仲間から太公望へと向けた歌、『FRIENDS』は太公望から仲間へと向けた歌らしい。
ネガティブな意見も多い本作だが主題歌は当時から一貫して好評を集めている。

その他メディア展開


アニメ以外にもゲームやドラマCD等が複数展開されているが、オリジナル要素の濃い作品としては珍しく「仙界伝」「アニメ」とついてアニメ絵でありながらも原作漫画に準拠した作品が多い。
アニメに出ていないのにアニメグッズがあるというキャラもいくらか存在している。

また、このアニメに出ていない漫画キャラもそこでキャスティングされており、こちらもなかなか豪華。
あと趙公明(CV:子安)戦や国立アンニュイ学園もまさかのパワーアップを遂げてドラマCDに収録されている。


追記・修正は夢の国を探す君の名を心に刻んでからお願いします。

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最終更新:2024年02月25日 02:36