ファイブスター物語(FSS)

登録日:2011/10/12 (水) 19:06:03
更新日:2024/03/06 Wed 22:43:27
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『ファイブスター物語(The Five Star Stories)』は永野護の漫画作品。


■ファイブスター物語(F.S.S.)

「月刊ニュータイプ」誌上にて、1986年4月から連載を開始されたコミックスで(作者自身はおとぎ話であると語っている)、永野護の実質的デビュー作品であると言っても良いサンライズ制作のアニメ作品『重戦機エルガイム』の世界観をベースに、より壮大な歴史、群像絵巻としてスケールアップを図った内容となっている。
そのジャンルは同定が難しく、永野本人は「自分はノンポリだ、政治がらみはやりたくない」と言っていてもポリティカルフィクションであり、
「FSSはSFにはしない、だからあの時ログナーの言葉で終わりにしなかったんだ」と訴えるがSFでないとはとても断じられず、
「デザインがあるという事はエピソードがあるという事で、でも物語の流れがデザインを生み出すのです」という具合に服飾やメカのデザインショー会場でもある。

物語自体は文学オタクにして戦争オタクであると語る、作者らしく架空の星系である「ジョーカー太陽星団」の人類が住む五つの星を舞台とした歴史、軍事絵巻を基本とするが、何より読者を惹き付けて止まないのがデザイナーである永野護が自身の考える思想や格好良さを第一とした先進的なメカデザインやキャラクターデザインにあると思われる。
……事実、デザイナーとしての永野護と云う存在は比較対象が考えつかない程に異質なので、今や番外として扱われている感もあるのだが、永野護が本作で示したデザインはその時代、その時代の最先端である事も、また事実であろうと思われる。 今やロボットというと、ぶっちゃけMHのプロポーションになってるのが殆どだし。


【概要】

漫画として連載されている本編では主に星団歴2000年代後半~3000年代初頭を舞台とした群像劇が描かれているが、実は『ファイブスター物語』の物語自体は連載開始当初に掲げられた年表内にて既に完結しており、読者は結末に至るまでの過程を切り取って見せられていると云うのが真実である。
後世の我々は歴史の大枠の流れをすでに知っており、その上で当時の人々が具体的にどう考え、どう手足を動かしたかを追体験するのが連載その他コンテンツの意義である。
その為、本編連載とは別にデザイン集や設定資料集でも物語が進む為にフリークの財布がどんどん寂しくなるのは、また別の話。
現在は当初から予定されていた「運命の3女神編」が取り敢えず完結し、この部分だけは当初の年表に入っていなかった「シバレース編」を経て、星団中を巻き込んだ大戦争へと発展する「魔導大戦」の物語が開始されている。
ただし、作者自身の制作、連載スケジュールが数々の「連載休止期間」を挟むと云う、非常に特徴的な形態にある為か連載の進行が非常に遅い。2013年7月現在はようやくの連載再開と同時に設定のゴティックメードへの大改変という爆弾が投下されたが、ファンの今の心境はどれだけ今の連載が続くかというところにある。


【世界観】

ジョーカー太陽星団は、以下の5つの太陽(星)と太陽系を纏めた呼び名であり、その太陽系に属する5つの主要人類居住惑星と、そこに存在する国家が物語の舞台となる。
※以下に、太陽系と惑星、代表的な国家を挙げて行く。
※この他にも、極端な環境ではあるが人が定住し生活を営んでいる場所がある。第4星系の惑星ペスタコや第2星系の惑星カーマントー、宇宙人工衛星都市イズモなどが代表例。

【第一太陽系 イースター】


●デルタ・ベルン星

海と緑に囲まれているが、寒冷地帯であり気候は冷たい。
星団でも非常に古くから人類の歴史が確認出来ると云う。

  • ■A.K.D.(アマテラス・キングダム・ディメンス)
A.K.D.は物語全体の主人公である天照帝が収める国家であり、何と、生国であるグリース王国を中心にデルタ・ベルン全星を支配する。
星団歴3100年代に、突如として星団に進行を開始。
天照の私設騎士団であるミラージュ騎士団L.E.D.ミラージュを以て星団を焼き払い、ジョーカー太陽星団をその支配下に置いた。

●アドラー星

デルタ・ベルンの衛星にも見え兼ねないが、星団歴以前の惑星改造により入植可能の地となった。
比較的歴史が浅く、自由を好む風潮が強い一方で、星団歴以降の重要な役目を担う国家も存在する。

  • ■トラン連邦共和国
複数の王国、帝政国家を母体に誕生した。
未だに、古くからの王族や貴族による支配体系を残すジョーカーでは珍しく完全な共和制に移行している。
古い支配体系から逃れる為か、数々の科学者や学術機関が集まる事でも有名で、Dr.クローム・バランシェの屋敷や学術都市バルチック・アカデミーはここに存在する。

  • ■バキン・ラカン帝国
騎士の能力を一目で判断出来ると云う、特殊な力を持つバキン・ラカンの「聖帝」が収める国。
元はフィルモアの属国であったが後に独立。
歴代剣聖が守って来た国でもあり、現在でも「天位」を始めとする騎士称号は、この国で授与されるのが慣例となっている。


【第二太陽系 ウェスタ】


●ボォス星

独自の生態系が存在していたとされるが、人類の入植により絶滅したとされる。
惑星中央の広大なナン大陸の大部分であるカステポー地方は星団最強の力を持つ5種5体のドラゴン(セントリー)が領有しており、AD世紀からの契約に従い、人類はこの地方に国家を立てたり、国家の思惑・行動がこの地に踏み入る事を禁じられている。この禁を破ればドラゴンから物理的に制裁される。

  • ■ハスハ連合共和国
真の名をアトール聖導王朝と云い、AD世紀の「超帝國」の末裔が作り上げた巨大国家。
表向きの支配者は議会政治により決定された民政王だが、真の支配者は超帝国アトール皇帝の「血」を連綿と受け継ぐアトールの巫女(詩女/アトール聖導王朝女皇帝)である。


【第三太陽系 サザンド】


●ジュノー星

人類が改造無しで入植地とした若い星。
地球で云えば、未だに中生代位の環境にある。

  • ■コーラス王朝
星団歴と共に歴史がはじまったとされる南の大国。
物語ではA.K.D.と共に物語の柱となる国家と設定されている。
このコーラス王朝本家の長子は「必ず騎士の血を持って生まれて来る」と云う、星団でも他に例の無い特徴を持つ事で知られている。*1


【第四太陽系 ノウズ】


●カラミティ・ゴーダーズ星

星団でも最も古い歴史を持つ惑星であり、人類発祥の地とも考えられている。
険しい山脈も無く資源も枯渇している等、惑星その物の寿命が尽き欠けているともされているが……。

  • ■フィルモア帝国
AD世紀より続く歴史を持つ、星団最強の軍事国家。
帝政を掲げているが、実際には民意を汲んだ分厚いベールに阻まれた議会政治が国家の方針を決定しているとも言われており、皇帝ですらその深奥を見る事は叶わないとされる。

  • ■クバルカン法国
厳しい戒律と、徹底した機密主義で知られる法国家。
元々はフィルモア帝国の構成国であったがシステム・カリギュラの力を借り独立。
現在はフィルモアと共にノウズの巨大国家として君臨する。


【第五太陽系 スタント】

ジョーカー太陽星団に1500年周期で接近する不気味な遊星群で、中心となるスタント恒星は、肉眼では見えない紫外線放射光を放つ暗黒の太陽である。
AD世紀の伝説の超帝国皇帝「炎の女皇帝」がこの遊星群に調査に向かい消息を経ったとされる他、伝説では「何者か」が潜むともされる。
システム・カリギュラの本拠地だったり、S.A.T.A.N.(ライフ・ウォッチング・オーバーロード)に繋がってたり。


【用語・基礎知識】



騎士(ヘッドライナー)

※当該項目参照。
AD世紀に作り出された戦闘用の生物兵器(ウォーキャスター)、超人間の末裔であり、常人の数十倍に及ぶ身体能力を持つ戦争の代理人。
強い騎士ともなると称号として、天位を持っていることがある。天位を持ってなくても強い騎士も居るので混乱するが。
天位の更に上位の称号が小天位と強天位であるが、一時代に一人のみ。(設定変更してないなければ)
更に上位が太天位(剣聖)だが、実際には剣聖は生まれついた時点で決まるので、正確には騎士称号と呼べるものではない。
他に、黒騎士やハイランダー、人形使いといった称号があるが、これ等は強さとは別条件の、特定の国家のみの称号だったり、特定のファティマとMH(GTM)を得ると同時に付く特殊な称号である。


剣聖(シバレース)

現在は星団最強の騎士の称号であると同時に、AD世紀の超帝國の生み出した究極的な生物兵器、純血の騎士のことに。
通常の騎士の更に数百倍位は強い上に、昔はいっぱい居たことに。
また、20m位の巨体で馬力京以上のGTMだろうが、全長数kmの戦艦だろうが素手で叩き壊せることになった。


■ダイバー/バイター

所謂“魔法使い”のこと。
ただし『F.S.S.』で云う魔法使いとは、異空間より力を取り出して使える超能力者や、霊的な感応力のことを言う。
元々は騎士同様にAD世紀が生み出した生物兵器。
攻撃魔法使いに相当するダイバー(ボルテッツ)、予言者、巫女に相当するパラ・サイマル(スコーパー)、精神感応による支配能力を示すハイブレン(オペラ)、分子操作能力であるルシェミ(グレイン)の4種の力があり、新設定ではこれらの力をブリッツェン(閃光)と呼び顕し、総じて“グリント・ツヴァイゲン”と読んでいる。
基本的にはどれか1つの能力しか持てないのだが、炎の女皇帝やボスやん、マグダルは全部使える。
基本的には、身体能力やら感覚能力は例外を除いては常人レベルなので、単体で騎士と戦った場合には騙し討ちしないと勝てない程度の戦闘能力しかない。
しかし、騎士と魔法使いの能力を備えた“バイア(ツバイ)”と呼ばれるハイブリッドも存在しており、サリオンやクー・ファン・シーマ王子、剣聖カイエン辺りが相当。
この為に、カイエンはログナーや他の剣聖でも使えない“魔法”を加えた剣聖剣技も使うことが出来るのである。
新設定では、反対に魔法使いの“剣聖”に相当するフ・リエやル・ゾラが登場しており、彼女達は普通の騎士では全く手に負えない存在である。
因みに、天照や分身のメル・リンスも全部使えて騎士能力まであるが、神様なので当然である。


■マイト/ガーランド

生まれつきの異能(上記の魔法に通じる、物質の原子構造を直感で悟ったり、ファティマ(AF)以上の演算能力のこと)を持った人ことで、ジョーカー大陽星団ではこういう人達がGTMやAFを創造する。
騎士と剣聖の関係の様に、科学者の頂点ではあるが、なれるか否かは生まれついた時点で決まっているのである。
特徴が似た存在としてマイスター(スライダー)が居るが、彼等はGTMやAFの創造までは出来ない。
……尚、天照もGTMを創造出来るが、それは神様だからである。


ファティマ・ファティス/オートマチック・フラワー

※当該項目参照。
ジョーカー太陽星団の科学が作り上げた、戦争の為に生み出された人工生命体。
生きたコンピューター、生体ロボットである。


モーターヘッド(MH)/ゴティックメード(GTM)

※当該項目参照。
AD世紀のマシンメサイアを前身とする、全高15m、自重100tを超える巨大な人型兵器。
騎士とファティマに制御され、音速をも超えるその能力は他の凡る兵器を超える破壊力を持つ。
最大馬力が兆単位というのは語り種。
映画『ゴティックメード』公開後は、MHに変わって漫画本編でもMHからGTMへと世界線が変更され、読者に過去最大の賛否両論と論争を巻き起こした。
概ね不評であったが、GTMの方が格好いいロボットも出てきたので、その辺は作者の掌の上なんだろう結局。
GTMの平均的な全高は20m、自重は100t程度なのは変わらないが、最大馬力が京単位~∞はやり過ぎだろうと評判を呼んだ。
また、固有の機体名が悉くドイツ語読みになって分かりにくいことこの上ないが、数年経って慣れたヤツも増えてきた。

■バスター砲

超破壊砲とも訳される、ジョーカーの生んだ超絶破壊兵器。
その、有り余るエネルギーは次元に歪みすら作る程。
動力源と動力を転換して破壊エネルギー弾に作り変えるジェネレーターの位置関係から、バスター・ファウスト、バスター・ロック、バスター・ランチャーの3分類がある。バスターランチャーが最大威力で、ファウストが一番小規模。
現在は星団法により徹底した規制が掛けられているが、このバスターエネルギーの研究から外燃機関イレーザーコントロールが誕生している。


ドラゴン・ネイチャー/セントリー

前述の通り、ボォス星のカステポーのみに生息する5種5頭の完全生命体。
人類を含むあらゆる生命体の特徴と、機械的な特性をも兼ね備え、バスターエネルギーをも越える光学兵器(ブレス)を持つ。
その威力は、本気ならば惑星をも消滅させる程。
無知であったり、無信心な者からは“でっかい空飛ぶトカゲ”と思われているが、実態は上位世界に本体を置きながら物質世界に肉体を創る“神々”の一つ。
人類の有史以前から“存在”し、過去から現在に於いても人類の力で“どうにか出来た”ことが無い程の力を有する。
L.E.D.、サンダー、ジェット、フェザー、アースの5種が存在。
更に上位の存在として“ウォータードラゴン”と呼ばれる、ドラゴンを生み出した“神”が存在するとの伝説がある。

世界線の改編後は“セントリー”へと変更され、一応は姿が見えていたドラゴンとは違い、肉眼でも観測機器でも捉えることが不可能と、選り霊的であやふやなモノとなっている。
上記のドラゴンとの対応順に、ライブ・コントローラー(L.E.D.)、ブラウ・ブリッツ(サンダー)、パルサー・フローラ(ジェット)、カラット・ヴィンダー(フェザー)、マグマ・ハイブレーション(アース)となっているが、正直ややこしい。
また、ドラゴンとは違い、肉体の構成要素が三次元の元素では無い為に惑星級に巨大化しても重力を発しない等の特徴がある。



【余談】


※『ファイブスター物語』のスゲェ所。


●主人公が神。
●ヒロインも女神(人工)。
●十数年のスパンで伏線が回収される展開。
●モデラーの限界を試すかの様なメカデザイン。
●数年のスパンで、未登場のまま捨てられる設定資料。
●繰り返すが、物語は既に完結している。
●食事メニューの設定は毎度やたら凝っている。
●ファッションの設定も何かと凝っている。
●MHだと思っていたらGTMだった。
●後、なんか色々と名前が違っていた。





追記修正は早期の連載再開を願いつつしていきましょう。

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最終更新:2024年03月06日 22:43

*1 実は、王家に超帝國剣聖が憑いていました。