ダモクレスの剣

登録日:2011/11/09(水) 15:27:30
更新日:2022/02/04 Fri 15:34:28
所要時間:約 3 分で読めます




イタリア南部の島に、シュラクサイという都市国家があった。

ディオニシウス1世(紀元前430-367年)に仕える廷臣ダモクレスは、いつも王にお世辞を言うお調子者の男。


「いや~王様はマジパネェっす。マジ幸福でうらやましいっす」
「そんなにすごいと思うなら、ちょっとここに座ってみなよ」
「マジですか?!」
「うん、いいよ」
「服も貸してあげる」
「わぉ!」


ダモクレス大歓喜。

最高権力者の立場から人を見下ろす優越感。
自分は今、王の衣装を来てここに座っている。


「どう?」
「最高っす!」


興奮するダモクレスを見たディオ様は、無言でダモクレスの頭上を指差した。
その指の先にあるものを見て、ダモクレスは固まった。
謁見するときは幕で見えなかったが、玉座の頭上、高い天井から垂れた糸の先に剣がぶら下がっていた。
切っ先は言わずもがな、玉座に座る者に向けられている。

もしこの細い糸が切れたら、脳天に突き刺さることは想像するに容易い……。
(※細い糸は、話によっては馬の尾の毛だったり髪の毛だったりする)


「どう? 王様っていうのは常にこういう、いつ死ぬかもわからない立場にいるんだよ? それでも羨ましいと思う?」


ディオ様は、ダモクレスの卑屈な態度の裏に嫉妬と羨望が渦巻いていることを知っていたのだ。
ダモクレスは全力で玉座から逃げ、以降、権力を求めようとはしなかったという。
尤もこれは、腹に一物持った奸臣を直接糾弾せずにあえて王の位置に据えて諭すような形で自らの立場の重さを知らしめたディオ様も、それを正しく受け止めて我が身を正したダモクレスもどちらも賢かった為になり立ったエピソードともいえる*1

ヨーロッパ文化圏で「ダモクレスの剣」は、常に戦々恐々としている状況、あるいはそのような状況をもたらすものの譬えに用いられるようになった。
見方を変えれば一見華やかに見える立場にも相応の苦労や責務があり、それを試みずに上辺だけを見て嫉妬や羨望をしてはいけないという戒めの言葉とも言える。

本当にこんな剣があったかはわからないが、栄枯盛衰は世の常。
繁栄を享受していたシュラクサイは、ローマの侵略により遠からず終わりを告げることになる……。






V




                                                       ∧_∧ 
                                                      ⊂(冥ω冥)つ-、 
                                                    ///  /_/ | 
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最終更新:2022年02月04日 15:34

*1 ダモクレスが賢くなければ「剣を頭上に吊るすなんてアホですねw」と王の立場を理解しなかったり、「自分は賢いから死にましぇ~んw」と身の程をわきまえず態度を改めないばかりか「ディオ様はチキンだから俺が簡単に成り代われるぞw」とより増長した可能性もあったのだ。