紫色のクオリア

登録日 :2009/07/15(水) 00:23:21
更新日 : 2016/07/19 Tue 09:23:54
所要時間 :約 5 分で読めます





紫色 の瞳を持つあたしの友だち毬井ゆかりは、


人間が“ロボット”に見えるという――







『紫色のクオリア』は電撃文庫のライトノベル
著者は『悪魔のミカタ』『シフト』『ジャストボイルド・オ・クロック』のうえお久光。
イラスト担当は『JINKI』シリーズ綱島志朗

全一巻。


本作はロボット漫画家である綱島志朗とのコラボ企画であり、「女の子とロボット」がテーマになっている。
そのため、少なくともある視点ではマジで女の子とロボットしか登場しない。

綱島氏は現役漫画家で忙しいはずだが、折り込みカラーイラストや、
巻末に2ページの4コマ漫画、各キャラクターの設定資料など、イラスト関係は充実した内容となっている。
元々は短編だったが、作者と綱島氏がやたらこの作品を気に入ったことで、書き下ろしを加え発刊された

自分以外の全ての人間がロボットに見える少女『毬井ゆかり』と、
ゆかり曰く“最強の汎用型”である『波濤学』のほのぼの友情物語……かと思いきや、
中盤の『1/1,000,000,000のキス』から凄まじいスケールのかなりシリアスで暗いSFになる。

あまりにも重い話なので、もはやトラップの域。


『クオリア』『量子』『シュレディンガーの猫』『哲学的ゾンビ』等々、難しい単語が多数出てくるSF作品。
そういった難解な要素(と鬱展開)を受け入れられる人からの評価は非常に高く、一巻のみの単発ながら名作と名高い。

小林泰三の『玩具修理者』『酔歩する男』とアルフレッド・べスターの『虎よ、虎よ!』と、
手塚治虫の『火の鳥 復活編』へのオマージュ作品であり、これら四作を読んでおくとより楽しめるだろう。
…… 本作と同じかそれ以上にハードだが

この度『電撃大王』にて、イラスト担当だった綱島志朗による漫画版が掲載されることとなった。
全三巻で発売中。
綱島作品を見ていれば見覚えのあるロボットもチラホラ登場。
ちなみに少しだけだがグロ注意。



【あらすじ】
毬井ゆかりは、ニンゲンがロボットに見える。
それは、どうしても変えることのできない彼女の絶対条件。

――そしてあたしは、そんな彼女の友だち。
(本編より抜粋)




【登場人物】
◆波濤学
ハトウ マナブ
ゆかりの友達であり、主人公。中学二年生。本作は彼女の一人称形式で語られる。
女なのに「マナブ」という名前なのを気にしており、友人からは苗字か学の音読みで「ガク」と呼んでもらっている。
家がなぎなた道場であるため身体は鍛えられており、同年代までなら男子相手でも腕相撲で勝てるほど。
だが、名前や腕力など女の子っぽくない辺りにコンプレックスを感じており、意外と少女趣味。
笑顔を作るのが苦手で、クラスではクールガールと思われている。
ゆかりからは『スーパー系の汎用型』に見え、実際状況に適応しやすい性格。


◆毬井ゆかり
マリイ ユカリ
マナブのクラスメートで、小動物のように愛らしく素直な性格の美少女。
自分以外の生き物全てがロボットに見える。この事は親や一部の友人など少数しか知らない。
珍しい紫色の瞳を持ち、クラスではマスコット系美少女として好かれているが、
本人は自分以外の人間がロボットに見えるため自分を綺麗だと思っていない。
また、周囲の人間がロボットに見えるという特異性のため、感性が一般人のそれと大分異なる。

ロボットは大好きでプラモデルも得意中の得意だが、ロボットアニメはロボットが壊されるため見たくない。
ニンゲンがロボットに見える力の真価は……。
ドリルは漢のロマン。
『玩具修理者』のようぐそうとほうとふと『火の鳥 復活編』のロボットだけ美しく見える主人公が下敷きになっていると思われる。


◆天条七美
テンジョウ ナナミ
マナブやゆかりと同じ学校に通う少女。
ゆかりに度々嫌味を言うなどのちょっかいを出す。
ゆかりの幼なじみだが、ある事件をきっかけにゆかりを憎んでいる。
様々な学問の知識を勉強している。


◆アリス・フォイル
アメリカから留学してきた金髪天才少女。
11歳でアイビー・リーグ大学を掛け持ち卒業している。
ゆかりと同じく“特異な目”を持ち、数式が絵に見える。
ゆかり達の中学に留学してくるが、その理由は……。


◆加則智典
カソク トモノリ
ゆかりとマナブのクラスメートの男子。
一応レギュラーキャラ(?)で、名前は度々登場するが台詞は全くない空気。糸目。
特徴もなく目立たないが、ゆかりから見ると、
“大きくてぎらぎらしたすごいドリル”が付いているらしく、ゆかりの好みの男性らしい。
ドリル持ちだがリアル系。




【登場する用語】
クオリア
日本語では「感覚質」という。
何らかの刺激に対する『感じ』のこと。
赤いものを見たときの「赤い」という感じがクオリア……らしい。


哲学的ゾンビ
外見や行動は人間と全く同じで見分けることはできないが、
人間と同じ感覚を感じることができない存在。つまり“クオリア”がないということ。
腐った身体で「あ゛〜あ゛〜」言ってるゾンビとは一切関係ない。
例えば、人間は理不尽な目にあうと腹を立てて怒るが、哲学的ゾンビは、
理不尽な目にあって“怒るべき”とは分かっても、ムカムカとしたイラつきを感じている訳ではない。
例えば人間(♂)は女の子のパンチラに興奮するが、哲学的ゾンビは、
“興奮するところ”だと分かっているから興奮している(ように振る舞う)だけでチラリズムを感じている訳ではない。


シュレディンガーの猫
『猫』と『量子の有無でスイッチが入る毒ガス発生装置』を一つの箱に入れる。
量子は『観測』して初めて確定するものであり、観測するまで「有る・無い」両方の状態にある。
では箱の中にいる『量子の有無で毒ガスを吸い、死ぬはずの猫』も、
観測されるまで『生きている』状態と『死んでいる』状態とが同時にあるということになる。
いや、それはおかしくね?
という話。


人間原理
宇宙は人間が『観測』して初めて『確定』されたとする理論。
宇宙が人間に都合の良すぎる物理法則で成り立っているのは、
人間が観測したからだと言う話。調べれば調べるほど宇宙が人間に都合が良いことが分かるんだとか。










――さぁ、追記&修正をはじめよう。

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