カダフィ大佐

登録日:2011/02/25 Fri 08:49:55
更新日:2024/03/10 Sun 23:14:32
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リビアを作ったのは私だ。

――リビアを破壊するのも私だ。


+ 目次


ムアンマル・アル=カッザーフィーとは、リビアの軍人、革命家、政治家である。
通称、カダフィ大佐と呼ばれる。この「大佐」と言うのは、彼の敬愛するナセル大統領が大佐であった事に由来するとする説が一般的。
だがナセル大統領の実際の階級は少佐であり、カダフィ大佐は大尉であった。

その場の勢いで威勢のいいことをポンポン言い、気に入らない相手は誰だろうと噛みつきまくるその姿勢から「リビアの狂犬」の二つ名で呼ばれた。

因みに彼の息子の一人はサッカー選手であり、イタリアのセリエAでプレーしたこともある。


■経歴

1942年、リビア南部砂漠の遊牧民の子として生まれたカダフィ大佐は、宗教教育を受け、当時エジプト大統領であったナセル大統領に非常に影響を受けた。
この頃から、アラブ民族主義に傾倒し、西欧、キリスト教に対抗意識を持つようになる。
1963年には陸軍士官学校に進むが、この頃からクーデターを企む。当時のリビア国王、イドリースⅠ世は親西欧的であったからである。
そして1969年、国王がトルコで休養中である隙を突いて、クーデターを起こす。
迅速に中枢機関を制圧、無血革命を成功させた。


■カダフィの政策

クーデターの成功でイドリースⅠ世は退位、王政は廃された。
これ以降は、カダフィが議長の革命評議会が主導で政治を行う事になる。
彼は社会主義、イスラーム、アラブ民族主義の混じったジャマーヒリーヤと言った思想を持つ。
簡単に纏めれば、直接民主制で国を運営して行きます、と言うこと。
また、ナセル大統領の汎アラブ主義も持つ。これも簡単に纏めれば、アラブ民族で国を超えて一致団結、西欧の侵略者どもに対抗しよう、と言った感じ。
彼の政策は基本的にこの二つを基盤としている。


■外交政策

前述したように、カダフィ大佐は西欧・米国・キリスト教が大嫌いである。
それは政策にも勿論現れる。
1970年から1980年までにテロリストを支援したとして、当時の米国大統領、ロナルド・レーガンから「テロリスト」だの「狂犬」だの言われ、
テロ国家に指定された。北朝鮮のアレである。
関わったテロ事件は1985年のローマ・ウィーン空港同時テロ(死者19人、負傷者140人)が有名。
一連のテロ支援の報復で1986年にアメリカに家を爆撃された
ちょうど外出していたので大佐は無傷だったのだがこれに相当怒ったらしく、爆弾抱えて米国の戦艦に突撃しようとしたらしい。部下が止めたんだとか。
因みに報復の報復として1988年に米パンナム航空103便爆破事件を起こし270人が死亡
更に1989年にはUTAフランス航空772便爆破事件(死者170人)と卑劣な航空機爆破テロを連発。
流石にブチ切れたアメリカは国連を通して経済制裁を発動。これにようやく懲りたのかアラブ主義からアフリカ主義に方向転換し、90年以降穏健になった。


■社会福祉政策

  1. リビアには電気代の請求書が存在しない。電気は全国民、無料だ。
  2. 融資には金利がなく、リビアの銀行は国営で、全国民に対して与えられる融資は、法律で金利ゼロ・パーセント。
  3. リビアでは住宅を所有することが人権と見なされている。
  4. リビアでは全ての新婚夫婦が、新家族の門出を支援するため、最初のアパート購入用に、政府から60,000ディナール(50,000ドル)を受け取る。
  5. リビアでは教育と医療は無償。カダフィ以前、識字率はわずか25パーセントだった。現在、識字率は83パーセント。
  6. リビア人が農業の仕事につきたい場合には、農園を始めるための、農地、家、器具、種、家畜が、全て無料で与えられる。
  7. リビア人が必要な教育あるいは医療施設を見いだせない場合、政府が外国に行くための資金を支払い、さらには実費のみならず、住宅費と自動車の経費として2,300ドル/月、支払われる。
  8. リビア人が自動車を購入すると政府が価格の50パーセントの補助金を出す。
  9. リビアの石油価格は、リッターあたり、0.14ドル。
  10. リビアに対外債務は無く、資産は1500億ドルにのぼるが、現在世界的に凍結されている。
  11. リビア人が、卒業後就職できない場合は、本人が雇用されているかのごとく、特定職業の平均給与を、職が見つかるまで国が支払う。
  12. リビア石油のあらゆる売上の一部がリビア全国民の銀行口座に直接振り込まれていた。
  13. 子供を生んだ母親は、5,000ドル支払われる。
  14. リビアでは、パン40斤が0.15ドル。
  15. リビア人の25パーセントが大学の学位を持っている。
  16. カダフィは、この砂漠国家のどこででも自由に水が得られるようにするため、大人工河川計画として知られる世界最大の灌漑プロジェクトを遂行した。


■カダフィ大佐の珍(?)行動まとめ

  • 米国に与するイスラエルが大嫌いなので、会議のたびに「イスラエル爆発しろ」と叫ぶ。
  • 社会主義国家なのはソ連から金をむしりとる為。
  • 一夫多妻制なので奥さんいっぱい。子供もいっぱい。爆発しろ。
  • ボディガードが愛人の女性兵士。爆発ry
  • 「恩赦を与える」とか言って刑務所の壁をブルトーザーでブッ壊す。さらにその日を記念日に。
  • アフリカ諸国の首脳が、貧困を示す為に「断食」する中、イタリア美人集めてハーレム。ばry
  • 国連で演説したら15分の筈が1.5時間になった。
    しかも内容が「ケネディ大統領の暗殺をしたのはイスラエルだ」「エイズは生物兵器だ」といったすっとんきょうな物ばかり。
  • 余りにも喋るので翻訳の人が疲れて交代した。
  • でも、米国の子供達から手紙が来た時、全部手書きで子供達一人一人に返信した。スペルも文法も滅茶苦茶だったが。
  • 因みに学生時代は英語専攻だったのだが…
  • 阪神淡路大震災に「(アメリカに媚びた為に)天罰が下った」とか言っちゃう。相当批判された。


■日本との関係

上記の通り、反米絡みで日本との関係はすこぶる悪い。
のだが、前述の軟化で日本ともだいぶ仲が良くなった。
昔、衛星通信で、日本の大学生の質問会に出たことがある。
その時に、「日本は国連でも米国の言いなり。自分の意見をしっかり突き通せるようになるべきだ。」、
「広島や長崎に原爆を落としたのに、何故米軍を駐留させているのか。自分の祖父母を殺した人間と、何故仲良くできるのか。」
等となかなか考えさせる事を言ってくれた。

また、クロマグロ国際取引禁止条約の際、日本は反対派で劣勢だったのだが、
会議開始早々に「欧米の陰謀だ!」と叫んだかと思うと、中東、発展途上国を味方に付けて反対派の逆転勝利で会議を終わらせた。流石大佐。


■内乱

2011年、周辺諸国に扇動され、『アラブの春』と呼ばれる民主化運動が起きる。
これに対し、カダフィ大佐は徹底抗戦の意志を見せた。
2011年2月22日、反政府のデモ隊(こちらも奪った武器等で武装していたが…)に戦闘機や戦車で無差別攻撃を開始。
ヘリからの機銃掃射や砲撃等で、22日時点で少なくとも500人が死亡した。
市民への虐殺任務に反発したリビア軍人が次々と離反するようになると兵力が足りなくなり、PMCに黒人傭兵達を派遣して貰い戦った。
一般人を巻き込むなと…。

※その後の新たな声明(要約)
「今起こっているのは内乱ではない、アルカイダによるテロ行為だ。連中はこの国に犯罪者を送り込み、人民を扇動している」

「私には法を創る権利も、行使する権利もない。私はイギリスの女王と同じく国民の精神的な象徴でしかない」

……項目一番上の発言と思いっきり矛盾している?気にしてはいけない。

2011年、3月。一時的に追い込まれていたカダフィ大佐は見事に逆転し、反政府側を追い込む事に成功したが、今度は仏英米から空爆を受けるハメに。
内政干渉だの言われているが…

2011年9月末時点では大佐は行方不明だった…が、2011年10月20日、どうやら遂に見つかってしまい……


死亡した。

大佐を殺ったのは19歳の少年で、ノリと勢いによって殺害された。

捕まった時の大佐の様子は鼻血を出し、異常にハイテンションな反政府勢力に取り囲まれた上でいつも被っていた帽子は剥ぎ取られ、
いつの間にかハゲ散らかしてしまった頭頂部が見えると言う悲惨な状態であり、独裁者の末路を感じさせてくれた。
最期の言葉は
「息子たちよ、撃たないでくれ」
だそうだ。
ちょび髭の独裁者の方が百倍はマシな最期に思える。

排水管に隠れていたという情報に穴蔵から引きずり出されたサダム・フセインを思わせる。
梟雄の末路や哀れなり。

もっとも彼の最後についてはよく分からないところや複数の矛盾する情報があり、詳しくは不明。
リンチ同然の殺害ならジュネーブ条約に反するとかそういうところにも話題が飛ぶとか。

要点をまとめた上、かいつまんで話すと、国民の反乱により失脚&暴走により死亡した。


この一連の騒動で日本のマスコミにも盛んに取り上げられたため、一時期日本のマスコミや論客の間では、
気に入らない相手をカダフィに喩え、「○○フィ」と呼ぶことが流行した。



追記・修正しなければ、全て油田に火を付ける!←結局付けてない
追記・修正しなければ、アラブ連盟を抜ける!←結局抜けてない

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最終更新:2024年03月10日 23:14