あなや

登録日:2011/07/12(火) 22:21:57
更新日:2022/10/29 Sat 22:19:13
所要時間:約 4 分で読めます




男「女・・・お、俺も初めてだから・・・」

女「ええよ。ウチが教えたげるから・・・」

男「えっと、どう入れるのか、俺、わからないよ・・・」

女「違う違う。ちゃんと見。この」

女「あなや」

男\あなや/




あなやとは古典における文法表現の一つである。
あな…感動詞

や…間投助詞
を合わせてできあがった言葉である。

“あな”自体に喜怒哀楽を表現、感動したときに発せられる言葉であり、“ああ、あら、まあ、あらあらまあまあ”といったような訳がつけられる。
“や”自体は助詞なのでそれ単体で意味を持つことはほとんど無いが、こちらも詠嘆・感動の効果を付け加えるはたらきを持っている。

この2つを合わせて完成された「あなや」ではあるが、この言葉自体にこれだという訳はなかったりする。
前述のように、人の感動―主に強い驚き―を表す時に使われる言葉であるため、もっぱら
「うわぁ!」(驚き)
「ぎゃあ!」(断末魔
というように訳される。


厨房・工房時代に古典を習ったのならば、高い確率で『伊勢物語』の『芥川』にてこの「あなや」と遭遇することになる。

以下あなや使用部分を抜粋

鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、
あばらなる蔵に、女をば奥にをし入れて、おとこ、弓・やなぐひを負ひて戸口にをり、
はや夜も明けなんと思つゝゐたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。
「あなや」といひけれど、神鳴るさはぎにえ聞かざりけり。

(現代語訳)
鬼がいる所とも知らず、雷もとても激しく鳴り、雨もひどく降ったので、
荒れ果てた蔵に、女を奥に押し入れ、男は弓矢を背負って戸口に座り、
早く夜が明けないものかと思っていたところ、鬼がたちまち女を一口で食ってしまった。
女は「あなや」と叫んだが、雷が鳴り響いたため男には聞こえなかった。

とあり、女が鬼に喰われるわけだが、そこでの叫び声として使われている。
ここでは「あれえ!」、「きゃあああ!」といった訳が適切だろう。



さて、今日の日本の小説や漫画、アニメ、ゲームではこのような場面では
「うわあああああ!!!」
「ぎゃあああああ!!!」
「きゃあああああ!!!」
「あべし!!」
「ギギギ…」
といったように表現され、日々日々悲鳴・叫び声に関しては新たなものが誕生している。
しかし、この当時では現在頻繁に使われる“(エクスクラメーションマーク・強調表現)”は存在しておらず、
どのような危ない場面でも「あなや」の3文字で終わってしまっている。
今の感覚からするとなんともシュールである。



以下、有名な場面をあなやに変えてみる。


「お前はもう、死んでいる」
「あなや」


「役に立たぬやつめ!次元のはざまへ行くがいい!」
「そ、そんな!それだけはかんべんを!」
「だまれ!」
[デジョン]
「あなや」


「ん?お前なのか・・・バ・・・?」
「もしそうなら、俺の剣をかわせるはず!」
「行くぜ!」
「あなや」


「じつはお前の母さんはまだ生きているはず……。わしにかわって母さんを」
(ゲマのメラゾーマ)
「あなや」


「ワン、ワン、あなや」


「エリック、上だ!」
「えっ?あなや」


(0M0)<あなや


「あなや」ウンメイノ-







このように見てきたが、実にインパクトの違いは明らかである。
やはり日本語の発展はすさまじいことが理解できる。
しかし、そこには数々の滅んできた言葉があることを、我々は忘れてはならないのかもしれない。





男「やっぱり、無理・・・」

女「言うてるやんかー。入れるのは、この」

女「あなや」

男「ちくわの穴にチーズ入れるのは難しいんだなぁ…」



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最終更新:2022年10月29日 22:19